- 作成日 : 2024年11月7日
電子契約法とは?特例やトラブル防止策をわかりやすく解説
ネットショップの開設を目指す企業において、避けて通れない法律が電子契約法です。電子契約法とは、消費者による誤発注についての救済ルールを定めた法律です。法の理解を深めておかないと、トラブルに発展しかねないため注意しましょう。
本記事では、電子契約法の概要や押さえておきたいポイント、特例の対象となる取引とならない取引などについて解説します。
目次
電子契約法(電子消費者契約法)とは
電子契約法とは、電磁的方法で締結される消費者契約について、民法の錯誤の規定に関する特例を定めた法律のことです。正式名称は「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」で、「電子消費者契約法」とも呼ばれています。
ここでは、電子契約法(電子消費者契約法)が制定された目的や2020年から施行されている改正法について詳しく解説します。
インターネット上の取引の錯誤救済を目的に制定
インターネット通販などで商品を購入する際に、誤ってクリックしてしまい、不要な個数を購入してしまうケースがあるかと思います。電子契約法は、そういったインターネット上の取引において、消費者が誤操作で意図しない契約を取り交わした際に取り消しを認めるもので、消費者の錯誤救済を目的に制定されました。
2020年4月1日から改正法が施行
電子契約法は、2020年4月1日から改正法が施行されています。改正される前の電子契約法では、電子的に契約承諾の通知が行われる場合について民法の特例が定められていました。
契約の成立時期について、2020年改正前の民法では隔地者間の契約は承諾の意思を発信したときに成立するものとされていましたが(改正前の民法526条)、電子契約法では民法526条を適用しないものとして、承諾の意思が到達した時点で成立する到達主義を採用していました。
しかし、民法も2020年4月1日に改正されて改正前の民法526条が廃止されたことにより、民法と電子契約法の双方で、契約の成立時期が到達主義に一本化されています。
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電子契約法で押さえておきたい2つのポイント
電子契約法で押さえておきたいポイントは、2つあります。
- 誤操作による契約は無効として取り消しができる
- 契約の成立時期は到達主義とする
企業の法務・経理担当者にとっては、必ず理解しておきたいポイントでもあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
誤操作による契約は無効として取り消しができる
1つめのポイントとして、誤操作による契約は無効として取り消しできる点が挙げられます。
電子契約法では商品・サービスを申し込む前に、消費者が申込内容を確認できる画面の設置が必要です。購入内容を確認できる画面があれば、確認画面で修正できるでしょう。しかし、確認画面がなければ、消費者の意思確認が不十分だったということになります。
そのため、確認画面を申し込み前に設置していない場合は、消費者の操作ミスによる申し込みが無効であると主張できます。
契約の成立時期は到達主義とする
2つめのポイントは、契約が成立するタイミングが到達主義であることです。到達主義では、購入を申し込んで、申込者に承諾通知が到着した時点で契約が成立することになります。
2020年に改正されるまでは、民法第526条により、承諾通知が申込者に届いていなくても承諾の意思表示を発信したタイミングで契約成立とされてきました(発信主義)。それまでの、インターネットが普及前の時代では、承諾通知の到着に一定時間を要していたためです。
しかし、近年はインターネットが普及したこともあり、発信した承諾通知は申込者にすぐ届きます。2001年に施行された電子契約法では旧民法526条を適用しないものとし、契約の成立時期を承諾通知が到達したタイミングとされていました。2020年の民法改正により526条が廃止されたことにより、民法と電子契約法のいずれにおいても承諾の到達時を契約成立時期とすることで統一されました。
発信主義では、申込後取り消し連絡をすぐしても、承諾通知が発信済みであれば取り消しができませんでした。タイミングが到達主義に変わったことで、申込後でも承諾通知が届くまでは申し込みの取り消しが可能です。
電子契約法の特例
電子契約法では「電子消費者契約」における、消費者の錯誤に関する救済が特例として認められています。ここでは、電子契約法の特例について解説しましょう。
民法においても錯誤取消しの規定を適用し、誤って契約をしてしまった場合には契約を取り消す手段は存在します。しかし、錯誤を理由に契約を取り消したい場合は、「重大な過失」がなかったことも必要です(民法95条3項)。
そこで、電子契約法ではインターネット上での契約申し込みについて、民法95条3項の規定を一定の場合には適用しないこととしており、消費者側は自身に重大な過失があったとしても、錯誤による取り消しを主張できるとしています。
そのうえで、事業者側が「契約申し込み」ボタンを押したあとに確認画面を表示して、再度申し込み確認を行ってボタンが押された場合は、錯誤による取り消しはできないとしています。
つまり、インターネットで商品の販売などを検討している企業としては、契約をあとで取り消しされたくないのであれば、確認画面を表示するなどの措置が必要ということです。
特例の対象となる取引
電子契約法の特例対象となる取引とならない取引が存在するため、それぞれの対象の違いを理解しておくことは重要です。まずは、電子契約法の特例対象となる取引から見ていきましょう。
対象となるのは、次の要件をともに満たした取引です。
- 電子契約法自体が企業対個人間の取引(BtoC)である
- 消費者の意思確認がなされなかった場合
たとえば、ネットショッピングの際に操作ミスで注文個数を誤って入力したものの、確認画面が表示されずに購入してしまった場合が考えられます。
他にも、いわゆるワンクリック詐欺も対象です。近年、Web上の広告をクリックすると、自動的に会員登録や請求を告知されるページに飛ばされるワンクリック詐欺が頻発しています。実際に、Web上で買い物をしていて、ワンクリック詐欺の被害に遭いかけたという方も多くいるでしょう。
ワンクリック詐欺で、意図しない商品を購入してしまった場合も特例の対象となるため、購入や契約をキャンセルできます。
特例の対象にならない取引
一方で、電子契約法の特例対象とならない取引もあるため、注意が必要です。電子契約法は前述したようにBtoC間の取引に限定されるため、CtoC間の取引は、対象外になります。
<例>
- インターネット上のフリーマーケットで商品を購入したが、購入個数を間違えた
- インターネットオークションで、落札価格の金額を1桁間違えていた
消費者間の契約は電子消費者契約法の対象外のため、インターネットオークションやフリーマーケットなどを利用する際は気をつけましょう。
消費者の錯誤によるトラブルを防止する方法
ここでは、消費者の錯誤によるトラブルを防止する方法を紹介します。
契約締結の意思確認ページをわかりやすく設置する
消費者の錯誤によるトラブルを防止するためには、契約締結の意思確認ページをわかりやすく設置することが重要です。
確認画面を設けることで、消費者の操作ミスによる契約無効の主張が通らなくなります。逆に、一度押しただけで商品・サービスの申し込みができてしまう場合は、事業者の意思確認が不十分となり、契約の無効を主張されてしまうため、意思確認画面を必ず設置するようにしましょう。
その他、契約内容の確認画面に「このボタンを押すことで契約が成立します」という文言を表示したり、重要事項の色やフォントを変えて視認性を高めたりするなどの工夫が効果的です。
消費者の錯誤によるトラブルは、双方にとって避けたい事象といえます。お互いが気持ちよく購入手続きを行えるように、トラブル対策をしっかりと行うようにしましょう。
電子契約法について正しい知識を身につけよう
電子契約法とは、電磁的方法で締結される消費者契約において、消費者による誤発注の救済ルールを定めた法律です。消費者の誤操作による契約は無効として取り消しが可能なほか、契約の成立時期が到達主義であることは理解しておきましょう。
また、電子契約法の特例の対象となる取引は、企業対個人間の取引(BtoC)であり、かつ消費者の意思確認がなされなかった場合になります。本記事で紹介したような消費者の錯誤によるトラブル防止策などを活用して、お互いが満足いく契約につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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