- 更新日 : 2024年9月30日
根抵当権極度額変更承諾書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
根抵当権極度額変更承諾書とは、根抵当権の極度額を変更することについて、利害関係人が承諾を与える書面です。根抵当権極度額変更承諾書の提出を求められたときは、その背景や条件をきちんと確認しましょう。本記事では、根抵当権極度額変更承諾書の書き方やレビュー時のポイントなどを、文言の具体例を示しながら解説します。
目次
根抵当権の極度額変更とは
根抵当権の極度額とは、根抵当権によって担保される債権の上限額です。
根抵当権は、特定された債権を担保する通常の抵当権とは異なり、不特定の債権を担保します。そのことを踏まえて、根抵当権設定者の負担が無制限に拡大することを防ぐため、根抵当権には極度額の設定が義務付けられています(民法398条の2)。
根抵当権の極度額は、設定した後でも変更することができます。ただし、根抵当権の極度額を変更するためには、利害関係人の承諾を得なければなりません(民法398条の5)。
根抵当権極度額変更承諾書を作成するケース
根抵当権極度額変更承諾書を作成するのは、根抵当権の極度額の変更について利害関係を有しており、根抵当権者または根抵当権設定者から変更の承諾を求められた場合です。
根抵当権の極度額の変更に係る利害関係人に当たるのは、一例として以下の者などです。
①極度額を増額する場合
- 同順位の担保権者
- 後順位の担保権者、差押債権者、仮処分債権者、仮登記権利者
②極度額を減額する場合
- 根抵当権の転抵当権者
- 根抵当権の被担保債権の差押債権者
根抵当権の極度額が変更されると、利害関係人は不利益を被るおそれがあります。そのため、根抵当権の極度額の変更を安易に承諾すべきではありません。承諾を与えるとすれば、対価が支払われる場合や、別の担保が提供される場合など、何らかのメリットが得られるケースに限るべきでしょう。
根抵当権極度額変更承諾書のひな形
根抵当権極度額変更承諾書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に根抵当権極度額変更承諾書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
根抵当権極度額変更承諾書に記載すべき内容
根抵当権極度額変更承諾書の文例は以下の通りです。根抵当権を特定する情報、変更前と変更後の極度額、承諾者の情報などを記載します。
なお、根抵当権者または根抵当権設定者が指定する様式がある場合は、その様式に従って作成してください。
根抵当権者 ○○ 殿
私は、●●氏所有の下記土地に設定された、貴殿を根抵当権者とする根抵当権(令和〇年〇月〇日〇法務局〇支局受付第〇号)につき、その極度額を、金○○円から金●●円に変更することを、異議なく承諾いたします。
土地の表示
所在 ○○県○市○町○丁目
地番 ○○番
地目 宅地
地積 ○○平方メートル
令和〇年×月×日
住所 △△県△市△町△丁目
氏名 △△(利害関係人) 印
根抵当権極度額変更承諾書を作成する際の注意点
根抵当権者や根抵当権設定者に言われるがまま極度額の変更を承諾すると、不測の不利益を被ってしまうおそれがあります。
そのため、根抵当権極度額変更承諾書を作成する際には、極度額の変更を求められている理由や、変更によって自社が被る不利益を許容できるかどうか、自社にとって承諾するメリットがあるかどうかなどをよく検討しましょう。
根抵当権の極度額の定め方(金額の目安)
根抵当権の極度額は、被担保債権を十分にカバーできる水準に設定することが望ましいです。例えば、金融機関の貸付債権を担保するために設定される根抵当権の極度額は、融資予定金額の120%から140%程度に設定される傾向にあります。
もっとも根抵当権の性質上、被担保債権の金額を設定時において明確に予測することは困難です。被担保債権の金額が当初の予想からずれてくれば、極度額の増額や減額が行われることもあります。
なお、根抵当権の被担保債権の範囲には、元本だけでなく利息や遅延損害金も含めることができます。ただし、担保される金額は極度額が上限です。
根抵当権の極度額を増額する手続きの流れ
根抵当権の極度額の増額は、以下の流れで行います。
①根抵当権者と根抵当権設定者の合意
根抵当権者(=被担保債権の債権者)と根抵当権設定者(=担保不動産の所有者)の間で、極度額を増額することにつき合意します。
②利害関係人の承諾
同順位の担保権者や後順位の担保権者などの利害関係人から、極度額の増額について承諾を取得します。
③極度額の変更登記
法務局または地方法務局に対して、根抵当権の極度額を増額する旨の変更登記を申請します。
根抵当権の極度額を減額する手続きの流れ
根抵当権の極度額の減額は、根抵当権者と根抵当権設定者の合意によって行う場合と、極度額の減額請求による場合の2通りがあります。
根抵当権者と根抵当権設定者の合意により減額する場合
根抵当権者と根抵当権設定者の合意によって極度額を減額する場合の手続きは、増額する場合と同様に、以下の流れで行います。
①根抵当権者と根抵当権設定者の合意
根抵当権者(=被担保債権の債権者)と根抵当権設定者(=担保不動産の所有者)の間で、極度額を減額することにつき合意します。
②利害関係人の承諾
根抵当権の転抵当権者などの利害関係人から、極度額の減額について承諾を取得します。
③極度額の変更登記
法務局または地方法務局に対して、根抵当権の極度額を減額する旨の変更登記を申請します。
極度額の減額請求による場合
根抵当権の元本が確定した後、根抵当権設定者は、極度額を以下の金額の合計額に減額することを請求できます(民法398条の21)。過大な極度額が設定されている状態を解消して、根抵当権設定者の負担を軽減するためです。
- 現に存する債務の額
- 以後2年間に生ずべき利息その他の定期金
- 債務の不履行による損害賠償の額
極度額の減額請求は、根抵当権者に対して行います。まずは協議を試みるのが一般的ですが、根抵当権者が協議に応じないケースもあります。その場合は、訴訟などの裁判手続きを通じて極度額の減額を請求することになります。
協議または裁判手続きによって極度額の減額が確定したら、法務局または地方法務局に対して、その旨の変更登記を申請しましょう。
根抵当権極度額変更承諾書は、安易に提出しないようにしましょう
根抵当権極度額変更承諾書の提出を求められても、言われるがまま安易に提出してはいけません。自社の債権の担保が目減りするなど、不利益を被るおそれがあるためです。
根抵当権極度額変更承諾書を作成する際には、極度額が変更される理由、変更によって自社が被る不利益、承諾の見返りとして自社が得られるメリットなどをよく検討することが大切です。疑問点や懸念点がある場合には、極度額の変更に関する承諾を求めてきた根抵当権者または根抵当権設定者に質問をして、回答を求めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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