- 更新日 : 2024年9月3日
借地契約更新契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
借地契約更新契約書とは、すでに締結している借地権契約を更新する際に、借地権設定者と借地権者との間で取り交わす契約書のことを指します。
この記事では借地契約更新契約書の書き方、盛り込むべき内容や注意点を、ひな形をもとにご紹介します。
目次
借地契約更新契約とは
借地契約更新契約書とは、借地権契約の期間が満了した際に借地権設定者(土地を貸している人。いわゆる地主)と借地権者(土地を借りている人)との間で締結する契約書です。借地契約更新契約を締結することで、借地権者は引き続き土地を使用でき、借地権設定者はその対価として地代を受け取れます。
借地契約更新における更新料の相場
借地契約を更新する際には借地権者が借地権設定者に対して更新料を支払います。更新料の金額は明確に法律では定められていませんが、一般的には借地権価格の3~6%が目安となります。なお、都心部ではこれよりも高額になるケースもあるようです。
借地権価格は「土地の評価額×借地権割合」で求めることが可能です。例えば評価額が1,000万円、借地権割合が70%の土地がある場合、借地権価格は700万円となり、更新料は20~50万円程度となるでしょう。
借地契約更新における更新料の支払義務
更新料の支払義務に関しても、特に法律で定められていません。そのため、更新料を請求するかどうか、あるいは更新料を支払うかどうかは、両当事者の判断に委ねられます。そもそも更新料とは、借地権設定者が借地権者に対して異議を唱えない代わりに、借地権者が借地権設定者との信頼関係を維持する目的で支払われるものです。
旧法借地権と新法借地権による借地契約更新の違い
借地権更新に関するルールは借地借家法によって定められています。この法律は1992年に施行された比較的新しい法律で、それまでは借地法というものがありました。
借地法では、借地権契約の期間が満了したときに借地契約を継続でき、借地権設定者が土地を自分で使う場合や正当事由がない限り、借地権者側に土地の使用を継続できる権利が生じると定められていました。借地権契約の更新を拒絶することはまず難しく、地主にとっては非常に厳しい規制だったのです。
借地借家法では借地権設定者が正当な理由があってそれをしっかりと説明したうえで、土地の明け渡しの条件として財産上の給付を申し出た場合、借地契約更新を拒絶できるようになりました。地主側にとって少し契約更新拒絶のハードルが下がったのです。
とはいえ、借地権者にとっては借地権を失うことで住まいを失うなどの重大な事態にもつながります。借地権設定者は無計画に借地契約更新を拒絶できないのには変わりがありません。
借地契約更新契約の種類
借地権の更新には「合意更新」と「法定更新」の2種類があり、いずれかの形で契約を更新します。
合意更新
合意更新とは借地権設定者、借地権者双方の合意によって借地権契約を更新することを指します。契約内容は双方で自由に決めることができ、相手方の合意が得られれば借地契約更新時に条件を変更することも可能です。
法定更新
法定合意では法律によって借地権契約の更新がなされたとみなされます。契約期間の満了1年前から6ヵ月前までに、借地権設定者もしくは借地権者から契約更新の拒絶の通知がなければ、自動的にそれまでと同一の条件で借地権契約が継続することになります。
借地契約更新契約書の作成が必要なケース
借地権更新契約書を作成するケースとして挙げられるのは、借地権の更新期間が満了する際です。特に地代の金額や支払条件など、契約の内容を変更する場合は合意更新が必要になるため、契約期間満了の半年〜1年前までに借地権更新契約書を用いて双方で合意を形成しておく必要があります。
なお、借地権更新契約書を交わした合意更新がなくとも、どちらかが更新拒絶を申し出なければ、法定更新によって借地権更新がされたとみなされます。とはいえ、よい機会なので今後のトラブルを防ぐためにも、なるべく契約内容を再確認されることをおすすめします。
借地契約更新契約書のひな形
借地権の期間は30年以上と長期にわたるので、一般的な地主さん、あるいは住居用に土地を借りている方は借地権更新契約書を作成する機会がほとんどないかと思います。一から借地権更新契約書を作成するのは非常に大変です。この記事ではすぐに使える借地権更新契約書のひな形をご用意しています。以下よりダウンロードし、ご使用いただけます。
借地契約更新契約書に記載すべき内容
ここからは借地契約更新契約書に盛り込むべき内容について、ひな形をもとにご紹介します。
契約書の概要
まずは借地権設定者と借地権者の氏名と借地契約更新契約を締結する旨とその日付を記載します。なお、両者の氏名を「甲」「乙」と置き換えるとスマートな文面になります。
借地契約更新の合意
対象となる借地契約とその契約が締結された日付、更新後の有効期間を記載します。
更新料
借地契約更新契約時に支払う更新料の金額や振込先(銀行名、口座番号、口座名義)や振込手数料の負担者、更新料の支払い遅延が発生した際の遅延損害金の有無や金額について明らかにします。
敷金
借地契約時に借地権者が支払った敷金の引き継ぎについて記載します。
費用の負担
借地契約更新契約を締結するにあたって発生した費用の負担者を明らかにします。
契約解除
借地契約更新契約の解除ができる条件について記載します。更新料の支払いがなかった場合などを条件として記載するのが一般的です。
損害賠償
一方が借地契約更契約違反によって損害を相手方に与えた場合の損害賠償の支払いについて定めます。
合意管轄
両当事者間に紛争が発生した際に訴えを起こす裁判所を指定します。「●●地方裁判所」と指定することもあれば、「敷地を所管する地方裁判所」というような書き方をする場合もあります。
協議
借地契約更新契約について疑義が生じた場合、あるいは契約書で定められた取り決めでは解決できないような問題が発生した際に、両者が協議して解決を目指す旨を記載します。
署名・押印欄
契約書の末尾に契約を締結する日付と借地権設定者、借地権者両者が署名・押印する欄を設けます。
借地契約更新契約書を作成する際の注意点
最後に、借地契約更新契約書を作成する際の注意点についてご紹介します。後々のトラブルを防ぐために、以下のことを意識しましょう。
契約内容を再度確認する
借地権契約の契約期間は非常に長いものです。契約期間中は手軽に条件を変更できませんので、再度契約内容を確認しましょう。これを機会にこれまでの契約期間を振り返り、トラブルなどが今後予見される場合、あるいは借地権設定者、借地権者が建物を建築するなど土地の活用方法について大きな変更が生じると見込まれる場合は、契約書の内容も変更しましょう。
金額や条件は具体的に記載する
更新料や延滞遅延金の金額は「●●円」、支払期限は「●●日」というように金額や条件は具体的に記載しましょう。曖昧なままだと双方に認識のズレが生じ、トラブルに発展するおそれもあります。
早めに作成する
前述の通り合意更新がなされなかった場合は法定更新がなされたとみなされ、借地権契約が継続します。契約の内容を変更したい場合はなるべく早めに双方が協議をし、借地契約更新契約書をもって契約を更新しましょう。合意更新をする場合は契約期間満了の1年前、遅くても半年前までに借地契約更新を締結するのが望ましいです。
借地契約を更新する際にはしっかりと条件を見直し借地更新契約書を締結しましょう
借地契約は契約書で契約を締結しなかったとしても自動的に更新されます。しかし、法定更新の場合はこれまでの条件も自動的に引き継がれることになります。もし借地契約の内容や更新料などの条件を変更したいということであれば、借地契約更新契約書を用いて再度契約をしなおしましょう。
また、特に変更がないとしても、よい機会なので借地契約の内容を再度確認し、今後の予定や想定されうるリスクなども鑑みて、必要に応じて借地契約更新契約書を締結したうえで借地契約を更新されることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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