- 更新日 : 2024年8月30日
賃料不払いによる賃貸借契約解除通知書とは?ひな形をもとに書き方を解説
賃料不払いによる「賃貸借契約解除通知書」とは、貸主が契約解除を知らせるときに作成する文書です。賃料を払ってくれない借主と契約は続けられませんので、不払いになっているときはこれを作成することになるでしょう。
ただし解除も自由にはできません。どのようなケースに作成するのか、どのような書き方をするのか、ここで整理しておきましょう。
目次
賃料不払いによる賃貸借契約解除通知とは
賃料不払いによる賃貸借契約解除通知とは、「借主が賃料を支払わないことを理由とする、賃貸借契約解除の知らせ」を意味します。そしてこの知らせは通常文書により行いますので、賃貸借契約解除通知書を発行することになります。
当初定めた契約期間の満了などを理由とする契約の終了であれば双方の納得がありますし、あらかじめ契約の終了は予期されています。
しかし「解除」は、貸主または借主、契約当事者一方の意向に基づく契約終了ですので相手方が常に予期できるものではありません。仮にその背景に賃料の不払いがあったとしても、いつ契約が終了するのか借主にわかることではないのです。そこで相手方に契約解除通知書を出し、その事実を知らせます。
賃貸借契約解除通知書を発行するケース
賃貸借契約解除通知書を発行するのは、貸主による契約解除に「相応の理由(正当事由)」が認められるケースです。
借主に多少の問題があっても簡単に賃貸借契約の解除はできません。そこで具体的なタイミングとしては「賃料の支払いが滞ってから3カ月程度」が挙げられます。
催告を行っても返事をしてくれない、賃料を支払う意思がない、などの状況が続いて互いの信頼関係が壊れたといえる段階に入ったと評価されれば、一方的な解除通知も法的に認められます。
なお、貸主による契約解除ができるのは「賃料の不払い」に限られません。「別の入居者とのトラブルが相次ぐ」「ペット禁止の物件でペットを飼育するなどルール違反が改善されない」などのケースでも、賃貸借契約解除通知書を発行することになるでしょう。
賃料不払いによる賃貸借契約解除通知書のひな形
賃料不払いによる賃貸借契約解除通知書を発行する場面では、明確に借主との対立関係ができてしまいます。後々、弁護士を介した交渉、裁判所を利用した手続きに進む可能性もありますので、一つ一つのやり取りは証拠として使える形に残しておくべきです。
作成方法に悩むこともあるかもしれませんが、こちらのひな形を使えば難しくはありません。
ただしそのまま使うことはできませんのでご注意ください。
賃貸借契約解除通知書に記載すべき内容
ひな形をもとに、賃貸借契約解除通知書に記載すべき内容を説明します。
記載すべき内容 | 記載方法 |
---|---|
表題 | 「賃貸借契約解除通知」など、どのような文書であるのかを一言でわかりやすく記載する。 |
契約解除を行う旨 | 「貴殿との本件建物の賃貸借契約を、本日をもって解除します」など、契約解除を知らせる旨を明確に記す。 |
契約解除の理由 | 「未払賃料〇円の支払いを請求しましたが、支払期日である令和〇年〇月✕日を経過しても、貴殿から一切の支払いを受けておりません」など、契約解除に至った理由を記載。 |
契約解除の日付 | 「令和〇年〇月分より」など、いつから解除となるのかを明示する。 |
賃貸物件 | 「貴殿に賃貸している、○○県○○市○町○丁目○○家屋番号◯◯の建物」など、どの物件に関する契約解除なのかを明確にする。 |
契約当事者 | 誰が誰に対して提出した文書なのかを明確にする。 氏名(事業者の場合は名称)と住所により当事者を特定する。 |
長々と文章を作成する必要はなく、伝えるべき情報を整理し、簡潔にまとめていきましょう。
賃貸借契約解除通知書を作成する際の注意点
家賃の滞納は契約を解除する正当な理由となり得ますが、一度支払いが遅れただけで即座に解除ができるわけではありません。そこで賃貸借契約解除通知書を作成する際も、「借主による信頼関係を破壊するような行為があったこと」「契約解除が認められる相当の理由があること」がわかるように記載しましょう。
例えば、何度も支払いに応じるよう催告を繰り返してきたが半年以上返答をしてくれない、などの事情があれば契約解除も認められやすいです。
また、一つ一つ明記することを意識し、意思表示を明瞭にしましょう。丁寧さに配慮しすぎて遠回しな表現になってしまうのではなく、明確に契約解除したいことを伝えるべきです。そのほかにも、解除する賃貸借契約の内容の特定、当事者の特定、賃料が不払いになっている期間の特定などわかりやすく簡潔に通知書にまとめます。
万全を期して契約解除通知書を発行しよう
賃貸借契約解除の通知から賃貸物件の明け渡しに至るまでの間で、借主と揉める可能性は十分に考えられます。「契約解除は無効だ」などと主張される危険性がありますので、解除通知を行う前に、法的に正当な理由があることをしっかりと評価しておきましょう。
賃料の不払いがあってもいきなり解除を求めず、まずは催告などを行うべきです。先走ってしまうと立場を悪くしてしまう恐れがあるため、法的な観点から問題がないことを確認して万全を期してから契約解除通知書を発行しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
取締役決定書とは?ひな形をもとに書き方や本店移転登記申請時の注意点を解説
取締役決定書とは、取締役会を設置していない会社で、重要な事項について取締役が決定したことを証明する書類を指します。会社法上において、作成は義務ではありませんが、本店移転時や合同会社の移転時など登記簿を変更する際に法務局への提出が求められます…
詳しくみる工事請負契約書はどちらが作成する?記載事項や注意点も解説
建設工事の契約時には、工事請負契約書の作成が必要です。工事請負契約書を作成することで、発注者と受注者の権利や義務が明確となり当事者間のトラブルを防止できます。 本記事では、工事請負契約書の作成者や記載事項、作成時の注意点を解説します。契約書…
詳しくみる契約書の日付は西暦と和暦のどちらで表記するべきか?
日付を記載する時に「西暦か、和暦か」で悩んだことはないでしょうか。どちらも日常的によく使われていますし、西暦での記載を求められることもあれば、和暦での記載を求められることもあります。では、契約書の日付はどちらを記載するべきなのでしょうか。 …
詳しくみる駐車場契約書・駐車場賃貸借契約書のテンプレートと書き方をご紹介
取引先や従業員などに駐車場を貸して駐車料金を受け取る場合、駐車場賃貸借契約書を作成し、契約を交わす場合もあります。不備のない契約書を作成するため、適切なひな形を参考にしましょう。 本記事では見本となるテンプレートを紹介しつつ、駐車場賃貸借契…
詳しくみるシステム保守契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
システム保守契約とは、購入した機械の修理対応やサーバーの維持やメンテナンス、修理といった、保守義務に関する契約のことです。この記事では、システム保守契約の対象や記載すべき事項について解説します。システム保守契約書の雛形も掲載しているので、修…
詳しくみる緊急連絡先同意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
緊急連絡先の提供についての同意書(緊急連絡先同意書)は、主に従業員の緊急時対応のためのもので、連絡先などの個人情報が記載されている重要な書類です。本記事では、緊急連絡先同意書の書き方やポイント、具体例を交えながら、実務で活用できる知識を解説…
詳しくみる