- 更新日 : 2024年10月31日
個人事業主が引越し・住所変更・転居した時の手続きと必要書類まとめ
2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
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初心者から経験者まで、毎年多く読まれている記事です。確定申告の必要性、やり方、簡単に済ます方法についてまるっと解説しています。
個人事業主が引越しなどで自宅の住所変更があったときや事業所の移転があったとき、所得税や消費税だけでなく、健康保険や労働保険、厚生年金などの社会保険関係の手続きはどうなるのでしょうか?
この記事では、青色申告者として納税地の所轄税務署に提出すべき書類や届出書の提出について取り上げ、実際に「個人事業の開業・廃業等届出書」の書面を参照して解説します。
目次
個人事業主の引越し・住所変更・転居で必要な手続きは?
個人事業主が引越し・住所変更・転居をしたとき事業主として必要な手続きは、どのような引越しや住所変更なのかによって少し異なってきます。
この記事では、主として次のケースなどについて取り上げ、必要な手続きを解説します。
- 個人事業主の「納税地」に異動があった場合
- 個人事業主の事業所の住所変更をした場合
- 個人事業主に「納税地」の異動があった場合の振替納税
- 個人事業主が労働保険・社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している場合
- 個人事業主が海外に引越し、住所変更をする場合
いずれの手続きも、時間的な余裕をもって対応されることをおすすめします。
個人事業主の納税地に異動があった場合の手続きは?
サラリーマンにおける引越しなどによる住所変更の場合には、住民票などの変更後、勤務先や金融機関、その他住所を登録している所に対し変更手続きを取らなければなりません。
個人事業主においては、勤務先に代えて税務署に対し住所変更の手続きをする必要があります。
個人事業主の場合、自宅での開業もありますので次のように整理します。
上記は代表的なもののみであり、たとえば事業で利用する車両や電話回線、銀行口座、クレジットカード、許認可が必要な業種における住所変更手続きなど事業の状態によって手続きは多岐にわたります。
なお、納税地・振替納税についての詳細は、それぞれ以下の記事をご参照ください。
そもそも青色申告における納税地とは?
納税地とは、一般に住所地のことをいい、国内に住所がある人はその住所が納税地となります。確定申告書は、提出時における納税地、つまり住所地を所轄する税務署に提出することになっています。事業所得の場合は、その事業をしている事務所等の住所が納税地です。
所得税だけでなく、消費税の申告書や届出等も、原則としてその提出時における事業者の納税地の税務署長に提出することになっています。個人事業主の所得税、消費税は事業者単位で申告しますので、納税地である本店等の住所地でまとめて納付します。
また、納税地については、特に青色、白色の区別はありません。引越し先の納税地を調べたい場合には、国税庁のサイトで検索できます。
「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を税務署に提出
納税地の変更があった場合について解説します。
現在では、所得税または消費税の確定申告の際に、申告書に異動または変更後の納税地を記載して提出することで変更されます。
参考:No.2091 個人事業主の納税地等に異動があった場合の届出関係|国税庁
ただし、年の途中で納税地の異動又は変更がある場合で、国税当局からの各種文書の送付先を異動・変更後の納税地とする意思があるときは、申出書を提出することができます。(以下では、その方法について解説します)
異動後における納税地の所轄税務署に「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出します。
書式は以下のように所得税と消費税が一つの用紙となっていますので、不要な税は二重線で消して使用します。
出典:[手続名]所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出手続|国税庁、 所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書
この「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」において、異動後の振替納税について引き続き同じ金融機関から引き落としができるように振替納税の引き継ぎができます。ここで、引き継ぎを希望しなかった場合には新たに振替納税の手続きが必要になります。
届出書は税務署にも置かれており、国税庁のウェブサイトからダウンロードできますし、e-Taxにより提出することも可能です。
提出期限は、納税地の異動後すみやかにと定められています。遅くとも、次回の確定申告書提出時には届け出た状態にしておきましょう。
参考:No.2091 個人事業主の納税地等に異動があった場合の届出関係|国税庁
振替納税を利用している場合は「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」も提出
振替納税とは、納税者名義の金融機関の口座からの引き落しにより、国税を納付する手続きのことです。税務署が変更とならない場合は、自動的に次回以降も引き続き振替納税が継続されます。
しかし、税務署が変更となった場合には、次のいずれかによります。
- 変更後の税務署へ新たに口座振替依頼書を提出する
- 異動後も振替納税を継続する旨を記載した「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を変更後の税務署に提出する
- 申告所得税または消費税の申告書の振替継続希望欄に「◯」を記載して提出する
参考:No.2091 個人事業主の納税地等に異動があった場合の届出関係|国税庁
e-Taxソフト(WEB版)では、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(振替依頼書)」を送信することができますので便利です。
また、都道府県税事務所、年金事務所、労働基準監督署等にも届出書等を提出しなければならない場合もあります。必要な届出書等については、各行政機関へご確認ください。
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個人事業主の事業所の住所変更をした場合の手続きは?
個人事業主は、事業所の住所に変更があった場合には、「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出します。市内での事業所移転などで納税地に異動がない場合には、この「個人事業の開業・廃業等届出書」だけを提出します。
提出時には、移転によって他に提出するものがないかをよく確認してまとめて提出するようにしましょう。事前に税務署に問い合わせて、どのような税金を支払っており、どのような引越しなのかを説明して必要な手続きを聞いておくと安心です。
「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出
事業所の住所変更があった日から1ヶ月以内に異動後の納税地の所轄税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。いわゆる「開業届」と呼ばれるものです。
出典:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁 個人事業の開業・廃業等届出書を加工して作成
上記書面の中ほどに、移転前後の住所を記載する欄があり、これで移転前後が結びつきますので忘れずに記載しましょう。また、提出方法は上記の異動届と同様に国税庁のサイトでダウンロードするか、e-Taxにて提出することができます。
なお、個人事業の開業・廃業等届出書の詳細は、以下の記事をご参照ください。
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出は不要
個人が事業のための事務所を移転した場合には、先述のとおり「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄税務署長に提出することになっています。所得税法では、個人事業主の事務所移転などにおいては、この開業届を提出すべき場合を除き、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出することとされています。
したがって、開業届で変更の手続きをした場合は、改めて「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出する必要はありません。
労働保険・社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している場合は、別途届出が必要
労働保険・社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している場合は、日本年金機構に変更届をする必要があります。具体的には、以下2つの書類となります。
- 健康保険・厚生年金保険事務所関係変更(訂正)届出書
- 適用事業所所在地・名称変更(訂正)届
どちらの届出書も日本年金機構のサイトにてダウンロードして使用することが可能です。これらの書類を提出する期限は、事務所の移転から5日以内と定められています。提出先は、個人事業主の事務所のある地域を管轄している年金事務所(事務センター)となります。また、電子申請も可能です。
個人事業主が海外に引越し・住所変更・転居する場合の手続きは?
海外に引越しをして日本国内の住所がなくなった場合(非居住者となった場合)の確定申告の提出先はどこになるのでしょうか。この場合の手続きは、非居住者の親族や友人などを納税管理人に委任します。ただし、確定申告を代行する納税管理人の住所の所轄税務署に提出することはできません。
国内に住所がない非居住者の場合、国内源泉所得(わが国にその発生の源泉がある所得)があれば課税の対象となります。
国内源泉所得のある非居住者等が、事業所などの「恒久的施設(国内にある事業の管理を行う場所)」を有している場合には、一般にその恒久的施設の住所等が納税地となります。
個人事業主の納税地の特例とは?
国内に住所のほかに居所(住所とは別に、実際に住んでいる場所)がある人は、住所ではなく居所を納税地に変更することができます。また、国内に住所のほか、事業所などがある人は、事業所などの所在地を納税地にすることも可能です。
これらは納税地の特例と呼ばれ、特例を適用して、納税地を住所地以外の場所に変更する場合や、住所地以外の納税地を住所地に変更する場合には、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出しなければなりません。この届出書は本来の納税地を所轄する税務署に提出します。
個人事業主の引越し・住所変更・転居は慎重に!
個人事業主が事業の状況に応じて、事業所を移転するのはよくあることです。しかしながら、移転による事業の影響ばかり気にしていて、手続きを怠っていては正しい確定申告ができません。従業員がいる場合には、手続き漏れによる影響はさらに大きくなります。
これら移転手続きについては、基本的に費用が発生するものはありません。個人事業主の引越しや住所変更をした場合の手続きはできるだけ早めに行い、ゆとりを持った確定申告に繋げましょう。
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