- 更新日 : 2025年1月31日
収入より経費が多い個人事業主は確定申告の義務がある?行うメリットや申告書の書き方を解説
収入より経費が多い個人事業主は、基本的に確定申告の義務はありません。しかし、義務はなくても、確定申告をした方がよいケースもあります。赤字でも確定申告を行うことにどのようなメリットがあるのか、事業が赤字の場合の確定申告について解説します。
目次
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収入より経費が多い個人事業主の確定申告は義務?
確定申告は、1年間(1月1日~12月31日)の所得金額と所得税額を確定させ、税務署に申告する手続きです。収入より経費が多い個人事業主については、所得税額が発生しない限り基本的に確定申告は義務になっていません。
確定申告が不要なケース
国税庁によると、以下に該当するケースでは確定申告が不要とされています。
収入より経費が多い状況とは、基本的に「計算により納めるべき所得税額がない場合」が該当します。したがって、赤字の場合は、原則として所得税の確定申告は不要です。
収入より経費が多い個人事業主が確定申告をするメリット
収入より経費が多い個人事業主は、確定申告をする義務はないと説明しました。それでは、義務のない確定申告をする意味はあるのでしょうか。確定申告をするメリットを3つ紹介します。
損益通算ができる
損益通算とは、各種所得の計算で生じた損失について、一定額をほかの所得から控除できる手続きです。各種所得のうち、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得については損益通算できます。個人事業主の本業は、基本的に事業所得に該当するため、損益通算の対象になるのです。
損益通算が効果を発揮するのは、個人事業主が本業で得た所得以外の所得がある場合です。例えば、本業以外に会社に雇用されて仕事をしている場合、雇用先から支給される報酬は給与所得に区分されます。
事業所得が赤字の場合は、確定申告することで、給与所得の黒字と事業所得の赤字を相殺できることから、所得税額を軽減できるメリットがあります。
過去の赤字の繰越控除ができる
青色申告をしている個人事業主は、過去3年のうちに発生した赤字については、翌年以降に繰り越すことができます。赤字が発生した年の翌年以降の確定申告で黒字が発生した場合に、繰越対象となっている過去の赤字と相殺できる仕組みです。翌年以降の所得税の負担軽減に役立ちます。
注意しなければならないのは、青色申告を選択していても、赤字のあった年の確定申告書(損失申告書)を提出しなければ、繰越控除を適用できないことです。確定申告は、翌年以降に繰越控除を利用できるようになる点においてもメリットがあります。
所得証明ができる
確定申告書の控えは、その年の所得の証明書として利用できます。確定申告書では、所得税額のほか所得金額など、その年の所得税に関する情報を確認できるためです。
また、確定申告書からは、所得証明書以上の情報を得ることができます。各種所得ごとの収入金額がわかるほか、添付される青色申告決算書や収入内訳書から、売上や必要経費などの科目別の金額や資産状況などがわかるためです。
そのため、住宅ローンを利用する場合や事業融資を受ける場合は、確定申告書の控えの提出が求められることも。借入金の利用や公的機関に所得証明を行いたい場合は、赤字であっても確定申告書を作成していた方がよい場合もあります。
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収入より経費が多い個人事業主が確定申告をしないデメリット
収入に対して経費が多い場合で、個人事業主が確定申告をしないときの主なデメリットを3つ取り上げます。
ローンなどの融資の際に所得の証明ができない
個人事業主が住宅ローンなどの融資を受ける際には、所得の証明ができる確定申告書の提出を求められることが一般的です。確定申告を行っていないことで申告書の控えを用意できない場合、ローンの申し込みができないなどの問題が生じる可能性があります。
非課税証明書が発行されない
非課税証明書は、市民税や都道府県民税が非課税であることを証明する書類で、住民税の課税がない場合に発行されます。住民税の課税がある場合は、非課税証明書ではなく、課税証明書が発行されます。
非課税証明書が必要になるのは、奨学金の申請や公営住宅の入居申し込み、各種手当などを申請する場面です。
所得税の確定申告をすることで住民税の申告も自動的に行われますが、確定申告をしなければ、住民税の申告も行われないことになります(別途、住民税の申告をした場合を除く)。非課税証明書は住民税の申告がないと発行できないため、確定申告をしないことで非課税証明書を取得できない可能性もあるでしょう。
国民健康保険料の軽減措置を受けられない
国民健康保険料には、法令に定める所得基準を下回る場合は、2~7割の保険料額を軽減する制度があります。しかし、国民健康保険料の軽減措置を適用するには、確定申告や住民税の申告が必要です。赤字であっても確定申告をしない場合は、所得基準では適用できるはずだった軽減措置が受けられないというデメリットがあります。
収入より経費が多い個人事業主が確定申告をするかの判断基準
収入より経費が多い個人事業主は、基本的に確定申告の必要がありません。確定申告をすることで、申告書作成の手間や書類を収集する手間が発生する可能性もあります。
赤字でも確定申告をするかどうかは、確定申告書作成の手間以上のメリットがあるかどうかがひとつの判断基準となるでしょう。
例えば、一時的な赤字が発生したものの、翌年以降は黒字が見込まれるようなケースです。青色申告者であれば翌年以降に繰越控除が利用できることから、赤字の金額によっては確定申告をした方がメリットを得られる可能性があります。
国民健康保険料の軽減措置や手当の申請など、各種手続きが見込まれている場合も、確定申告をした方がよいでしょう。
個人事業主がわざと収入より経費を多く計上するリスク
個人事業主が、事業所得で黒字が発生しないように計上することで、所得税を軽減できるメリットがあります。しかし、事業の状況により仕方なく発生した赤字を除き、無理に経費を多く計上することはおすすめしません。
単純に、事業の出費が増えることで、資金繰りが悪化する可能性があるためです。また、本来経費にできないものを計上するなど誤った会計処理をした場合、税務調査で指摘される可能性も。税務調査で発覚した場合には、ペナルティとして本来の税金に上乗せして税金を支払わなければなりません。
収入より経費が多い個人事業主の確定申告の書き方
収入より経費が多い場合の個人事業主の確定申告について解説します。
赤字の確定申告は、青色と白色どちらを選ぶべきか
確定申告には、青色申告と白色申告があります。
青色申告は、複式簿記による記帳を条件とした制度です。白色申告は、複式簿記ではない簡易的な記帳が認められています。
収入より経費が多い場合は、青色申告を選択するとよいでしょう。青色申告であれば、赤字の3年間の繰越控除が認められるためです。白色申告には、事業所得などで生じた赤字の繰越控除は認められていません。
青色申告をするには、原則としてその年の3月15日までに、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。提出期限を過ぎると翌年以降の適用になるため、注意しましょう。
申告書の書き方
確定申告をする場合に、必ず記載して提出する必要があるのが確定申告書の第一表です。確定申告書の表紙のような役割をする書類です。各種所得の収入金額、所得金額、所得控除、所得税額などが一目でわかります。
【確定申告書第一表】
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)
個人事業主が事業で赤字を出したときは、収入金額等の「事業」の欄に収入金額、所得金額等の「事業」の欄に所得金額を記載します。収入より経費が多い場合は赤字になるため、数字の頭に△を付すようにしましょう。
赤字の場合に作成しなければならないのが、損失申告用の確定申告書第四表です。
第四表は、「損失額又は所得金額」「損益の通算」「翌年以後に繰り越す損失額」「繰越損失を差し引く計算」の4つの項目に区分されています。
「損失額又は所得金額」は、赤字の所得について記載する項目です。「損益の通算」は、損益対象となる所得が赤字で、損益通算をする場合に記入します。
「翌年以後に繰り越す損失額」は、赤字の繰越控除が発生する場合に記載する項目です。「繰越損失を差し引く計算」は、申告年度において繰越控除を適用して、前年までの赤字と黒字を相殺する場合に記載します。
>>第四表の様式はこちら
確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)
収入より経費が多い個人事業主は基本的に確定申告が不要
収入より経費が多くなり赤字になった場合、事業所得のみであれば、確定申告は基本的に不要です。しかし、確定申告をした方がよいケースもあります。例えば、翌年以降に赤字を繰り越す繰越控除を利用したい場合などです。その時々の状況で確定申告をすべきか判断することをおすすめします。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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