• 更新日 : 2023年8月29日

仮想通貨取引でかかった経費はどうなる?経費にできるものや計上方法を解説

ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は暗号資産ともいわれ、年末調整を受けるサラリーマンでも、仮想通貨による利益がある場合は、所得税の確定申告が必要になることがあります。今回は、仮想通貨の確定申告時の所得の種類や、経費にできるもの、所得税の確定申告の注意点などについて解説します。

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確定申告で重要なのは収入から経費を引いた「所得」

所得税の確定申告で重要になるのは、収入から必要経費を差し引いた「所得」の金額です。所得税の課税は、簡単に説明すると所得の金額を基準に、所得控除が行われた後の課税所得金額に対して行われます。

なお、所得によってその性格が異なりますので、所得税の計算で一律の計算をするのは適していません。そのため、発生形態によって10種類に所得を分類してそれぞれ計算を行い、総合課税のものはその所得金額を合算して所得税額を求めていくことになります。

仮想通貨の所得は雑所得で申告

仮想通貨(暗号資産)による利益は、事業所得などに基因するものなどを除き、原則として雑所得に区分されます。仮想通貨の譲渡(売却)による利益だけでなく、マイニングによる利益も含まれる点に注意が必要です。マイニングは、仮想通貨の取引承認や確認をサポートすることで得られる利益をいいます。

雑所得は収入から必要経費を差し引くことが認められる

仮想通貨の売却などで得た利益(収入)全額が所得税の課税対象になるわけではありません。雑所得では、事業所得や不動産所得などと同様に、収入から必要経費を差し引いた額を雑所得の所得金額とすることが認められています。

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仮想通貨で全額が経費と認められるものは?

仮想通貨の所得の計算では、仮想通貨による収入額から必要経費を差し引くことが認められると説明しました。

必要経費とは、その収入を直接得るために直接要した費用、その収入にかかわるその年の販売費一般管理費、その他業務上必要な費用のことをいいます。

具体例を挙げながら、仮想通貨の取引で全額を必要経費に計上できるものについて解説していきます。

仮想通貨の取得費

仮想通貨の取引で必要経費に算入されるものとして代表的なのが、仮想通貨の取得費(取得価額)です。仮想通貨の取引の対価(売却額)全額ではなく、売却額から取得価額を差し引いた額が利益として計上されることになります。

取得価額は取得の方法で異なり、購入した場合は購入時の対価の額、贈与や遺贈により取得した場合はそのときの時価、相続や死因贈与などで取得した場合は被相続人が選択していた評価方法を用いた価額、それ以外の方法で取得したときはそのときの時価が取得価額となります。

取引や出金にかかった手数料

仮想通貨の取引では手数料が発生することがあります。仮想通貨を取得する際に支払う取得手数料、仮想通貨の売却時に負担した売却手数料、通貨(円)を送金するために負担した送金手数料は、基本的に全額を必要経費にできます。

なお、取得手数料に関しては、そのまま費用とするのではなく、取得価額に含めて譲渡原価の計算に含める必要がありますので注意しましょう。譲渡原価は、移動平均法(仮想通貨取得の都度、平均取得価額を求める方法)、または総平均法(その年の仮想通貨の総取得価額を総取得数で割って平均取得価額を求める方法)のいずれかで計算します。届出をしない場合は総平均法での計算となります。

仮想通貨に関する書籍代やコンサルティング料

仮想通貨で利益を上げるために購入した仮想通貨関連の書籍代やコンサルティング料は、全額を仮想通貨の必要経費にできます。対象のものがあれば領収書などを証拠資料として保管しておきましょう。

仮想通貨関連のセミナーの参加費用

専ら仮想通貨の取引に関するセミナーへの参加費用であれば、仮想通貨取引の必要経費として全額を経費にできます。参加を証明する資料として、領収書の他、セミナーの概要がわかるパンフレットなどもあわせて保管しておくとよいでしょう。

PCやスマホの代金が経費になる場合も

仮想通貨の取引のためだけに購入したスマートフォンやパソコン、仮想通貨の取引のためだけに契約したインターネット回線の費用があれば、その購入代金や費用の全額を経費にできます。ただし原則として購入代金1単価あたり10万円以上の資産は後述のように減価償却の対象資産となり、その年の経費に全額を計上できません。

ただし、プライベートでも利用している場合は、経費にできる金額は仮想通貨の取引に直接必要と認められる部分に限られますので注意しましょう。

そのままでは経費にならないもの

仮想通貨の必要経費の計算において、注意が必要なものについて解説します。

仮想通貨で使用する高額なパソコンの購入は減価償却に

仮想通貨取引では、取引を円滑に進めるために、仮想通貨取引専用にパソコンやタブレット端末を購入することもあるかと思います。

原則としてその取得価額10万円以上かつ使用可能期間1年以上の場合は、取得費用の全額をその年の経費にはできませんので注意しましょう。耐用年数を通じて少しずつ必要経費に計上していく減価償却が必要です。

先述したように、プライベートでも利用している場合は、減価償却によりその年の経費にできる額のうち、仮想通貨の取引に直接要したと認められる部分しか経費にはできませんので注意しましょう。

自宅の家賃や電気代などは按分で計算する

仮想通貨取引のために自宅に専用の空間を設けていたり、仮想通貨の取引を行う時間が合理的に計算できたりするような場合は、按分(あんぶん)計算によりその一部を必要経費に計上できます。

按分とは、基準値をもとに割合で割り振ることです。例えば、仮想通貨取引で使用する専用のスペースがある場合は、自宅の床面積を専用スペースとそうでない部分に分けて割合を求めます。自宅の家賃のうち、専用スペースの割合分だけ必要経費に算入するイメージです。

電気代については、仮想通貨取引に充てる時間が毎日2時間だった場合、電気代のうち年額の1/12を必要経費に算入できることになります。

私的な交際費や旅行代は難しい?

必要経費は、その取引に直接または間接的にかかわる費用になりますので、仮想通貨の取引にかかわりのないプライベートの交際費や旅行代は必要経費にはできません。

ただし、仮想通貨取引の遠方のセミナーに参加するにあたり、空いた時間をプライベートな旅行に充てるようなケースでは、セミナー参加に関する部分が明確に区分できる場合については区分した額を必要経費にできます。

仮想通貨を申告する際の注意点

確定申告をすると、会社に仮想通貨取引で儲かっていることがバレるかもしれないと思っている人もいるかもしれません。会社に収入が多いことがバレるのは、確定申告をするからではなく、確定申告時に普通徴収(自分で納付すること)を選択しなかったことでバレることが多いのです。

そもそも、会社から給与をもらっている会社員で、本業以外に仮想通貨による所得がある場合で、給与以外の所得の合計金額が20万円を超えるようなケースなどでは確定申告が必要になりますので無申告にならないように注意しましょう。

※確定申告が不要なケースでも、住民税の申告は必要です。

経費はできるだけ計上する

仮想通貨取引において、本来経費にできるものを必要経費に計上していなかった場合、利益額によっては思った以上に課税対象の所得金額が膨らむ可能性があります。

プライベートで使用したものなど仮想通貨取引に関係のないものは必要経費にはできませんが、確定申告の際は、仮想通貨で要した費用で必要経費への算入漏れがないかよく確認してから申告することをおすすめします。

赤字なら申告しないでもよい?

仮想通貨取引が赤字になった場合は、基本的に確定申告の必要はありません。

雑所得は損益通算の対象から外れているためです。損益通算とは、各所得で生じた損失のうち一定のものを、総所得金額などから控除することをいいます。損益通算は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得のみで認められおり、雑所得に区分される仮想通貨取引で赤字が出ても、他の所得と相殺できません。

ただし、仮想通貨取引の他に、副業による原稿料など雑所得に区分される所得が他にある場合は、雑所得の範囲内であれば損益通算(内部通算)ができます。仮想通貨取引の他に雑所得があるときは、仮想通貨が赤字でも、確定申告をすることによって、結果的に所得税額を抑えられる可能性があります。

売却せずに保有し続けることで節税も可能

仮想通貨を保有している間の含み益や含み損は所得税の課税対象にはなりません。賞金の受け取りや生命保険の満期返戻金の入金などによってその年だけ他の年と比べて所得金額が上がりそうな場合などは、売却の時期を翌年にずらすことによって、高い所得税率による課税を避けられる可能性があります。

ただし、仮想通貨の特性上、利益や損失を確定させるタイミングをずらすことによって、想定以上に損失が膨らむ可能性などもありますので、仮想通貨取引のリスクを踏まえた上で確定の時期を検討するとよいでしょう。

会社員が仮想通貨取引をした場合の注意点

所得税の確定申告には、青色申告制度があります。

これは、不動産所得、事業所得、山林所得がある場合にのみ選択できる制度です。原則として雑所得に区分される仮想通貨取引は青色申告ができません。

ただし、仮想通貨取引による収入が300万円を超える場合で帳簿書類の保存があるようなケースでは、仮想通貨取引による所得も事業所得に区分されます。事業所得に区分されるようなケースでは青色申告の選択が可能です。

ここでは、上記の他、会社員が知っておきたい仮想通貨取引の注意点についていくつか取り上げます。

経費はどこまで認められる?

認められる経費の範囲は、白色申告者と青色申告者で違いはありません。仮想通貨取引に関しては、仮想通貨取引に要した経費のみが必要経費として認められます。具体的な経費の範囲は先に示したとおりです。

雑所得でまとめて申告してもOK?

仮想通貨の損益は、仮想通貨の売却時の他、先に説明したマイニングを行ったとき、仮想通貨の交換時、仮想通貨の決済時に発生します。

これらの損益はすべて仮想通貨取引にかかわるものですので、すべて雑所得としてまとめて計算し申告して問題ありません。仮想通貨取引以外にも会社員が副業により収入を得ているときは、原則として副業による所得は雑所得になりますので、副業の所得と仮想通貨取引による所得を合算して申告をします。

必要経費を正しく計算すれば節税も可能!

仮想通貨取引が赤字の場合は基本的に確定申告の必要はありませんが、仮想通貨で利益を確定している場合には確定申告が必要なケースがあります。

仮想通貨は雑所得に区分され、雑所得の計算には収入から必要経費を差し引くことが認められますので、必要経費に漏れがないか費用をリストアップして確認し、かかった費用の額を証明できる領収書などは残しておいてください。取引所以外の個人間で取引を行った場合はデータが残りませんので、その都度記録しておくとよいでしょう。

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よくある質問

取引で儲かっていることが会社にバレますか?

住民税の申告を確定申告時に普通徴収にしていなかったなどで会社にバレることもあります。詳しくはこちらをご覧ください。

仮想通貨の収入も青色申告でOK?

仮想通貨取引は原則として雑所得に区分されるため、事業所得に該当するものでない限り青色申告はできません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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