• 更新日 : 2023年2月20日

「副業でFX」をしている会社員の確定申告のやり方 節税対策も

「副業でFX」をしている会社員の確定申告のやり方 節税対策も

副業としてFXを始めた会社員の方もいらっしゃるでしょう。儲かった方も、そうではなかった方も、2022年分の損益は、2023年2月16日(木)~3月15日(水)の間確定申告する必要があります。

今回は、FXにまつわる確定申告のやり方を見ていきましょう。「確定申告はやったことがあるけど、FXの申告は初めて」という方は必見です。

広告

FXの確定申告で必要な書類

FXは昨今、副業としても人気があります。ここではFXをしている架空の会社員「為替太郎さん」の収入をもとに、確定申告書を作成していきます。

<為替さんの基本情報>
名前  :為替太郎さん
職業  :会社員
家族構成:専業主婦の妻がいる
経費  :セミナー代3万円、書籍代5千円
その他 :社会保険料控除分は30万円、FXの年間損益は200万円

FXの確定申告で必要な書類は4点

まず、FXの確定申告で必要な書類は次の4点です。

<FXの確定申告で必要な書類>
・申告書(第一表、第二表)
・申告書第三表(分離課税用)
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
・所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用) ※FX損失の繰越控除を使う場合

このうち<申告書第三表(分離課税用)>と<先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書>の2点が、FXの申告をするために必要な書類です。

もし損失が発生している場合は、3年間損失を繰越できる繰越控除という制度を使用するために、<所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)>も必要となります。

FXの申告書を作成する際に必要な書類は2点

申告書を作成する際に必要な書類は次の2点です。

<申告書作成時に必要な書類>

<年間取引報告書(年間損益報告書)>は、取引で使用しているFX会社のホームページからダウンロードできます。<給与所得の源泉徴収票>は勤務している会社から受け取りましょう。


FXの申告書を作成-年間取引報告書(年間損益報告書)

申告書(第一表)の左側の書き方


申告書(第一表)の左側の書き方-確定申告書

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】」を加工して作成

はじめに、左側の「収入金額等」「所得金額」「所得から差し引かれる金額」を、源泉徴収票を見ながら記入します。ここまでで、FX特有の記入事項はありません。

基本的な確定申告書の書き方から確認したい方は、まずはこちらをご覧ください。

先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書の書き方


先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書の書き方-確定申告

引用:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書

<申告書(第一表)>の左側を埋めたら、右側に進む前に、<先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書>と<申告書第三表 分離課税用>を作成します。

所得の選択と氏名の記入

この書類では、課税対象となるFXの所得を計算します。まず、上部に氏名を記入し、「雑所得用」を丸で囲みます。


先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書

取引の内容を記入

取引の内容の箇所は、種類に「外国為替取引」、決済の方法に「仕切」と記入します。



総収入金額は、年間取引報告書をもとに記入

総収入金額の箇所は、「差金等決済に係る利益又は損失の額」の空欄に、先ほど出てきた<年間取引報告書>に記載の「損益合計金額」を記入します。(2)(3)に該当がなければ、(1)の金額2,000,000円をそのまま(4)に記入します。



必要経費等があれば記入

(7)~(9)「その他の経費」に、FXの経費として認められるセミナー代、書籍代、ソフトウェア代などを記入し、(11)に合計35,000円を記入します。



所得金額を計算

(4)「総収入金額」から(11)を引いた値1,965,000円を記入します。



これで、FX投資の課税対象となる所得が算出できました。

申告書第三表(分離課税用)の書き方


申告書第三表(分離課税用)の書き方

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】」を加工して作成

ここからは、先ほど作成した<先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書>を見ながら、<申告書第三表(分離課税用)>の記入を進めていきます。

収入金額を記入

(ト)「先物取引」に、<先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書>の(4)「総収入金額計」2,000,000円を記入します。


収入金額を記入-確定申告書

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】」を加工して作成

所得金額を記入

(74)「先物取引」に、<先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書>の(12)「所得金額」1,965,000円を記入します。


所得金額を記入-確定申告

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】」を加工して作成

税金の計算を記入

まずは、課税所得を記入していきます。

(12)「総合課税の合計額」に、<申告書第一表>の(12)「所得金額」2,020,000円を、また(29)に<申告書第一表>の(29)「合計」1,160,000円を記入します。

(77)に、(12)から(29)を引いた金額860,000円を記入します。

そして、(82)「(74)対応分」には、(74)「先物取引」の金額1,965,000円をそのまま記入します。


税金の計算を記入-確定申告

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】」を加工して作成

税額を計算

それでは、ここから税額を計算していきます。はじめに、給与の課税所得に対する税額を計算します。

(85)「(77)対応分」には、「令和4年分所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」P.24の方法で算出した金額を記入します。計算方法は、(85)の課税所得の金額によって異なります。


税額を計算-確定申告

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】」を加工して作成

為替さんは、給与所得が(12)2,020,000円で、社会保険料控除等の所得控除が(29)1,160,000円なので、控除額を差し引くと所得金額は(77)860,000円になります。この所得金額の税額を「令和4年分所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」P.24で調べると、課税される所得金額に0.05をかけたものが税額になります。つまり、(85)「(77)対応分」には860,000円に0.05をかけた金額(=43,000円)を記入します。

FXの課税所得に対する税額を計算

次に、FXの課税所得に対する税額を計算します。ここで気をつける点は、FXの課税所得に対する税率は一律20.315%ではあるものの、単純に20.315%をかけて、税額を出すのは誤りです。

20.315%の内訳は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%です。

まずは所得税15%から計算していきます。(82)に15%をかけた値294,750円を、(90)「(82)対応分」に記入し、(93)に(85)~(92)の合計額337,750円を記入します。


FXの課税所得に対する税額を計算-確定申告

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】」を加工して作成

第三表の記入はこれで終わりです。

あれ、FXの税率の残り住民税5%、復興特別所得税0.315%はどこで計算するの?」と思う方が多いと思います。

住民税5%については、この確定申告書を元に各地方自治体が計算しますので、今回算出する必要はありません(そもそも、所得税額を算出するのが確定申告の目的でした)。

では、復興特別所得税0.315%はどこで計算するのでしょうか? それは、この後に<申告書(第一表)>に戻ってから計算していきます。

申告書(第一表)の右側の書き方


確定申告書(第一表)の右側の書き方

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】」を加工して作成

最初に作成した<申告書(第一表)>に戻ってきました。最後に右側を埋めて行きましょう。

まず、(31)に<申告書第三表(分離課税用)>(93)の数値337,750円を転記します。

(30)は給与所得のみの場合は(12)-(29)の金額を記載しますが、<申告書第三表(分離課税用)>を作成した場合は記入しません。(31)にはすでに給与所得の税額が含まれているため、給与所得をもう一度記入する必要がないためです。


確定申告書

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】」を加工して作成

ここから先は通常の確定申告と同じですが、まだ復興特別所得税0.315%の計算が残っています。

復興特別所得税は(44)で計算します。この場合税率は2.1%と印字されていて0.315%ではありません。


確定申告-復興特別所得税

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】」を加工して作成

(31)に転記した税額は、すでにFXの所得税15%が含まれた値です。詳しくはFXの課税所得に対する税額の計算方法をご参照ください。

所得税15%に2.1%をかけることで、15%×2.1%=0.315%となり、結果的にFXの所得に対して0.315%の(44)復興特別所得税7,092円が申告されるという仕組みです。

ここから先は一般的な確定申告の流れと同じです。

節税チェックポイント

最後に、税金を安くするためのポイントをご紹介します。

①FXで損失がある場合は繰越控除を活用

FXで発生した損失は、3年間繰越ができる制度があります。利用する場合は「所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」も合わせて提出してください。

②源泉徴収額の記入

会社から給料をもらっている方は、会社からあらかじめ源泉徴収された金額を、<申告書(第一表)>の(48)に記載するのを忘れないようにしましょう。

③必要経費の確認

FXの所得からは次の費用が経費として認められています。抜け漏れがないか今一度確認しましょう。

  • セミナー参加費
  • 新聞代、書籍代、ソフトウェア代
  • 通信費 など

また、FX特有のものではありませんが、<申告書(第一表)>の所得控除を全て記入したか、最後にもう一度点検しましょう。医療費控除生命保険料控除寄付金控除など、抜け漏れはあるかもしれません。

以上、「FXをしている会社員」を例にした確定申告書の作成方法でした。

よくある質問

FXの確定申告で必要な書類は?

申告書、申告書第三表、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書、所得税の確定申告書付表の4点です。詳しくはこちらをご覧ください。

FXの申告書を作成する際に必要な書類は?

年間取引報告書、給与所得の源泉徴収票の2点です。詳しくはこちらをご覧ください。

税金を安くするためのポイントは?

FXで損失がある場合は繰越控除を活用すること、源泉徴収額を記入すること、必要経費を確認することなどです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

副業の確定申告の関連記事

個人事業主の節税の関連記事

新着記事