- 更新日 : 2026年6月29日
【国外転出時課税制度】富裕層は知っておきたい制度
国外転出時課税制度は、1億円以上の有価証券等を持つ富裕層が国外転出する際、その含み益に所得税が課される制度です。
- 1億円以上の有価証券等の含み益が課税対象
- 要件を満たせば最長10年の納税猶予が可能
- 5年以内に帰国した場合は課税取消しも可能
Q:国外居住者へ有価証券を贈与・相続した場合は対象になりますか?
A:はい。1億円以上の対象資産を国外居住者に贈与と相続した場合も同様に、含み益に対して所得税が課税されます。
2015年7月1日以降に国外に転出する高額資産家を対象に、資産の含み益に対して所得税(復興特別所得税を含む。令和9年分以降は防衛特別所得税を含む。以下同じ)が課税されるようになりました。また、国外に住む人に対して相続や贈与をした場合も同様に、資産の含み益に対して所得税が課税されます。
これらをまとめて「国外転出時課税制度」(正式名称:国外転出をする場合の譲渡所得等の特例。「出国税」とも呼ばれます)といいます。
どのような人が対象になるのでしょうか。また、どのような資産が対象になるのでしょうか。これから、国外転出時課税制度の概要について、必要な手続きも含めてお伝えします。
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1億円以上の有価証券等を保有する資産家が対象に
日本国内では、株式や投資信託など有価証券の売却益には15.315%の所得税が課税されます(このほか5%の住民税も課税されます)。
一方、有価証券の売却益に課税しない国や地域もあり、アジアではシンガポールや香港があてはまります。日本からこれらの国に出国することで、有価証券の売却益に対する課税を回避することができます。これは、日本の経済にとって、税収の減少を招くだけでなく、資産が日本国外に流出する点でも問題になります。
世界的にも同じような問題を抱えている国は多く、欧米の先進諸国では、出国時に資産の含み益に対して課税する制度があります。日本でも租税回避を防ぐために、国外転出時課税制度が導入されました。
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国外転出時課税制度の対象者・対象資産
国外転出時課税制度の対象になるのは、日本国内に住んでいて次のどちらにもあてはまる人が出国する場合です。出国とは国外に住所を移すことをいい、短期間の海外旅行は対象になりません。
- 出国する時に対象資産を1億円以上保有していること。
- 原則として、国外転出の日前10年以内において、国内に5年を超えて住所または居所を有していたこと。
国外転出時課税制度の対象となる資産は、次のとおりです。
なお、暗号資産(仮想通貨)は現時点では対象資産に含まれません。
上記の2要件をともに満たす方が出国する場合、出国時に対象資産を売却したとみなして、その含み益に所得税が課税されます。
施行日は2015年7月1日で、同日以降に出国する人が対象になります。
- 在留資格(外交、教授、芸術、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、短期滞在、留学等)で在留していた期間は、国内居住期間に含まれません。
対象者に国籍は問われず、外国籍の方でも要件を満たせば対象になります。
「国外転出時課税制度」の手続き
国外転出時課税制度の手続きは、納税猶予を受けるか受けないかによって異なります。それぞれの場合について、概要を説明します。
納税猶予を受ける場合
納税猶予を受けると、一定の要件のもとで納税が5年間猶予されます。さらに所定の手続きを行うことで5年間延長することもできるため、最長で10年間の猶予となります。ただし、有価証券等の含み益以外の所得に係る税額は猶予されません。
- 納税管理人を置く
日本国内で納税などの手続きを行う納税管理人を、出国時までに税務署へ届け出ます。 - 確定申告書を提出する
出国した年分の確定申告書を、納税管理人を通じて確定申告の期限(翌年3月15日)までに提出します。有価証券等の含み益とそれ以外の所得をあわせて申告し、含み益は出国日の価額で資産を売却したとみなして計算します。 - 担保を提供する
確定申告期限までに担保を提供することで納税猶予が開始します。
納税猶予期間中は「継続適用届出書」の提出が必要
納税猶予期間の間は、納税管理人を通じて、毎年末時点における適用資産の種類等の一定事項を記載した「継続適用届出書」を翌年3月15日までに提出します。
提出しないと、その4か月後に納税猶予期間が終了するため注意が必要です。
納税猶予期間中に起こりうる3つのケース
納税猶予期間中の状況によって、次のように取扱いが分かれます。
- 手放した分に見合う所得税と利子税を、4か月以内に納付します。
- 売却価額等が出国時の価額より下落した場合は、出国時にその下落した価額で売却したとみなして、出国した年の所得税を再計算できます。
- 国外転出時課税制度の適用を取り消して、出国した年の所得税を再計算できます。(帰国日から4か月以内に税務署で更正の請求手続が必要)
- 更正の請求手続をしない場合は、帰国日から4か月以内に、納税が猶予されていた所得税と利子税を納付することになります。
- 納税猶予期間が終わるまでに、納税が猶予されていた所得税と利子税を納付します。
- 有価証券等の価額が出国時よりも下落した場合は、出国時にその下落した価額で売却したとみなして、出国した年の所得税を再計算できます。
納税猶予を受けない場合
納税猶予を受けない場合は、有価証券等の含み益とそれ以外の所得をあわせて申告・納税します。納税管理人を置くかどうかによって、申告・納税の期限と含み益の計算方法が異なる点に注意が必要です。
【納税管理人の有無による違い】
| 納税管理人を置く場合 | 納税管理人を置かない場合 | |
|---|---|---|
| 申告・納税の期限 | 確定申告の期限(翌年3月15日)まで | 出国日まで |
| 含み益の計算基準日 | 出国日の価額で資産を売却したとみなして計算 | 出国予定日の3か月前の日の価額で資産を売却したとみなして計算 |
5年以内に帰国した場合は「更正の請求」で還付を受けられる
納税猶予を受けない場合、出国から5年を経過する日までに帰国して、引き続き保有している有価証券等があれば、国外転出時課税制度の適用を取り消して 、出国した年の所得税を再計算できます。
再計算により納めすぎとなった所得税は、更正の請求によって還付を受けられます。
- 手続きの期限:
帰国日から4か月以内に、税務署で更正の請求手続きをする必要があります。 - 期限を過ぎると:
更正の請求ができなくなり、払いすぎた所得税の還付を受けられなくなります。

相続や贈与で「国外転出時課税制度」の対象になる場合も
国外転出時課税制度は、対象資産を持った人が出国するときだけでなく、相続や遺贈で国外に住む人に対象資産を譲った場合や、国外に住む親族等に対象資産を贈与した場合も所得税の課税対象になります。対象者と対象資産は出国時の場合と同じです。
また、出国時の場合と同様に、納税猶予制度や減額措置が受けられます。
贈与の場合は、贈与したときの価額で売却したものとして含み益を計算し、贈与した人の所得として確定申告を行います。
相続の場合は相続が開始したとき、つまり資産を持っていた人が亡くなったときの価額で売却したものとして含み益を計算します。亡くなった人が所得税の確定申告をすることはできないので、相続人等が亡くなった人の所得について準確定申告を行います。
国外転出時課税制度の対象になりそうなら、早めに専門家に相談しよう
国外転出時課税制度は知らなかったからといって、課税が免除されることはありません。国外転出時課税制度の対象になりそうな人は、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
なお、本制度について現行住民税は適用対象外となっております。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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