- 更新日 : 2025年1月28日
個人事業主の廃業に関する給付金・補助金とは?手続きも解説
個人事業主の廃業給付金には、上限150万円までの補助金を申請できる「廃業・再チャレンジ事業」や、ポストコロナ時代に対応した新分野事業向けの「事業再構築補助金」など、さまざまな種類が存在します。
この記事では、個人事業主が廃業をした場合に申請できる廃業給付金制度の種類と、廃業手続きに必要な書類について解説します。
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目次
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個人事業主の廃業に関する給付金・補助金
個人事業主が廃業した際に申請できる給付金や補助金の一部をご紹介します。対象要件や利用目的が一致する場合は、積極的に制度を利用しましょう。
事業承継・M&A補助金
事業承継・M&A補助金は、事業承継をきっかけに新しい取り組みを行う中小企業者に対し、事業再編や事業統合を支援する制度です。制度は「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「PMI推進枠」「廃業・再チャレンジ枠」に分かれており、対象要件や支給額もさまざまです。
【廃業・再チャレンジ枠の場合】
対象要件 |
|
---|---|
補助上限額 | 150万円以内 |
問い合わせ先 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構(2025年1月22日現在 事務局公募手続中) |
廃業・再チャレンジ枠では、廃業支援費や在庫廃棄費、解体費などが補助の対象です。事業継承後の新たな取り組みのために廃業費用がかかる場合は、活用しましょう。
参考:中小企業庁「令和6年度補正予算 事業承継・M&A補助金」
参考:「事業承継・M&A事業」に係る事務局の公募要領 |独立行政法人中小企業基盤整備機構
住居確保給付金:家賃の相当額を支給
住居確保給付金とは、主たる生計維持者が離職や廃業などで生計を立てられなくなった場合に、住宅補助として用意された給付金制度です。この制度は、事業を継続するための制度ではありませんが、事業継続ができなくなった場合に生活を支える制度として活用されています。
対象要件 |
|
---|---|
支給額 | 支給額や支給上限額は在住の市区町村や世帯人数によって違います (例)東京都特別区の支給上限額(月額):1人 53,700円・2人 64,000円 |
相談・申請先 | 在住地域の自立相談支援機関 |
個人事業主が給付金・補助金を受ける際のポイント
個人事業主は、自身が受給できる給付金や補助金制度の種類を把握し、申請に必要な書類を効率的に準備することが求められます。
以下にまとめた、給付金・補助金を受ける際のポイントと注意点を念頭におき、計画的に準備を進めましょう。
申請期限を確認する
前述した給付金は個人事業主が受けられる一部の制度です。ほかにも給付金にはさまざまな種類があり、各制度後ごとに申請期限が設けられています。
当たり前ですが、申請期限に間に合わなければ補助金は受け取れません。数種類の補助金制度を検討している場合は、それぞれの申請期限を把握した上で段取りを組みましょう。
受給までの期間を計算しておく
どの制度も申請してすぐに給付金を受け取れるわけではありません。制度によって違いますが、申請から受給までには数ヶ月の期間がかかります。給付金が必要な時期から逆算して、申請時期を計算しておきましょう。
たとえば、旧制度の事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)では、給付までに以下のようなステップが発生します。
- 補助対象事業者の確認
- 認定経営革新等支援機関へ相談
- gBizIDプライムの取得
- 交付申請
- 交付決定通知
- 補助対象事業実施
- 実績報告
- 確定審査・補助金交付
参考:事業承継・引継ぎ補助金|廃業・再チャレンジ|事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ)の交付までの流れ
自治体の給付金・補助金もチェックしておく
国からの補助金のほかに、各自治体が独自で展開している補助金制度もあります。ひとつ例をご紹介します。
【菊池市事業承継推進事業補助金】
対象要件 | <経営革新事業の場合>
|
---|---|
補助内容 |
|
補助限度額 | 2分の1以内で限度額100万円 |
対象要件は5項目あり、すべてに該当している方に限ります。受給できる給付金や補助金の幅を広げた方が、新たに事業を始める際のメリットになるので、こまめにチェックしておくといいでしょう。
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個人事業主の廃業・再チャレンジに関わる融資制度
融資とは、金融機関から資金を受け事業開始後に一括や分割で返済する制度です。借り手は資金に利息を付けて定められた期間内に返済する義務があります。
個人事業主が廃業や再チャレンジをする際に受けられる融資には、以下の2つがあげられます。
自主廃業支援保証:信用保証協会
自主廃業支援保証とは、現在行っている事業の継続が見込めず、自主的な廃業を選択する中小企業者に対して、廃業のための資金調達を支援する制度です。要件や支給額は以下の通りです。
要件 | 以下のすべてを満たす中小企業者
|
---|---|
保証限度額 | 3,000万円以内 |
保証期間 | 1年以内(かつ、終期は解散予定日より前) |
参考:自主廃業支援保証|2024年度版中小企業施策利用ガイドブック
保証の申込には、廃業計画書や確認書の提出が求められます。詳しくはお近くの信用保証協会にお問い合わせください。
新規開業資金(再挑戦支援):日本政策金融公庫
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)とは、過去に事業に失敗した経験のある経営者の資質や事業内容を再評価し、再起を図る事業者を支援する制度です。日本政策金融公庫の直接貸付で、7億2,000万円までの限度額が設定されています。
対象者要件 | 新たに開業する方又はは開業後おおむね7年以内の方で、次のすべてに該当する方
|
---|---|
返済期間 |
|
申込先 | 日本政策金融公庫各支店の中小企業事業窓口 |
参考:再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)|日本政策金融公庫
融資審査では、過去の失敗から何を学び今後どのように活かしていくのかが問われる可能性があります。事業の成功性を具体的にアピールする必要があるため、知見のある分野で再チャレンジするのが賢明です。
個人事業主の廃業手続きの流れ
個人事業主は法人のような複雑な手続きはありません。個人事業主の廃業手続きは4つのステップに分かれています。
- 廃業日を決める
- 関係者に廃業通知を送る
- 資産売却、売掛金回収などの資産整理を行う
- 廃業に関する各種書類を提出する
廃業に関する書類については、次の章で提出先も含めて詳しく解説します。
個人事業主の廃業に関する必要書類
個人事業主が廃業した際は、廃業届だけではなく、さまざまな届出を行う必要があります。消費税の課税事業者の場合や青色申告をしている場合などで必要な届出が異なるので、自身の状況に該当する手続きを把握しておきましょう。
税務署・都道府県税事務所
まず、所轄の税務署や都道府県税事務所に提出する書類について解説します。
個人事業の開業届出・廃業届出等手続
個人事業主が廃業した際は、廃業した日から1ヶ月以内に税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
事業廃止届出手続
事業廃止届出書は、消費税の課税事業者が廃業した場合に提出する書類です。個人事業主で消費税の課税事業者に登録している方は、廃業後すみやかに所轄の税務署に提出しなければなりません。
また、事業廃止届出書を提出した場合、以下の書類の提出があったものとみなされます。
- 消費税課税事業者選択不適用届出書
- 消費税簡易課税制度選択不適用届出書
- 消費税課税期間特例選択不適用届出書
- 任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書
参考:No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合|国税庁
所得税の青色申告の取りやめ手続
廃業を機に青色申告の取りやめを行う方は、所得税の青色申告の取りやめ手続を提出します。提出期限は、青色申告を取りやめる年の翌年3月15日です。
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書手続
所得税を予定納税している個人事業主が廃業し、所得税等の見積額が予定納税基準額より少なくなる場合には、予定納税額の減額申請が可能です。
「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を所轄の税務署に提出します。提出期限は以下の通りです。
- 第1期分及び第2期分の減額申請:その年の7月1日〜7月15日(令和6年分は、7月1日〜7月31日)
- 第2期分のみの減額申請及び特別農業所得者の減額申請:その年の11月1日〜11月15日
提出期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限になります。
参考:A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁
個人事業税の事業開始(廃止)等申告書の提出
事務所や事業所を設けて、法定業種の事業を行っている個人事業主の方は、所轄の都道府県税事務所宛に「事業開始(廃止)等申告書」を提出します。提出期限は、廃業した日から10日以内です。
労働基準監督署・ハローワーク
従業員を雇用している場合は、以下の届出を所轄の労働基準監督署、もしくはハローワークに提出する必要があります。
届出名称 | 期限 | 提出先 |
---|---|---|
確定保険料申告書 | 事業を廃止した日から50日以内 | 労働基準監督署 |
労働保険料還付請求書 | 確定保険料申告書と同時 | 労働基準監督署 |
雇用保険適用事業所廃止届 | 事業を廃止した日から10日以内 | ハローワーク |
雇用保険被保険者資格喪失届 | 被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内 | ハローワーク |
雇用保険被保険者離職証明書 | ハローワーク |
個人事業主の事業の再構築に関わる補助金の例
事業再構築補助金:事業再構築の費用の一部を補助
事業再構築補助金は、ポストコロナに対応した新分野展開、業態転換、業種転換などの大規模な「事業再構築」に挑戦する中小企業等を支援する補助金制度です。
補助金の上限額は従業員の人数によって変動します。従業員30人の場合、上限額は3,000万円で、システム構築費・技術導入費・広告宣伝費・研修費などの経費が対象です。
口頭審査では、事業計画書を基に、事業の適格性・優位性・実現可能性・継続可能性などの観点で厳格に審査されます。
参考:事業再構築補助金 第13回公募の概要|経済産業省 中小企業庁
県独自の事業再構築チャレンジ補助金
過去に、県独自で実施している「和歌山県事業再構築チャレンジ補助金」や「千葉県事業再構築チャレンジ支援補助金」という補助金制度がありました。
内容は、新型コロナウイルス感染症や物価高騰などの影響を受けた中小企業者に対し、省エネルギーの促進や再生可能エネルギーの活用資金を交付するというものです。
現在は終了している事業ですが、今後再開する可能性もあるため自治体の情報もこまめにチェックしておきましょう。
参考:和歌山県の「事業再構築補助金」(中小企業庁)採択事例ご紹介|和歌山県
個人事業主が廃業したら確定申告はどうなる?
個人事業主は廃業しても、その年の課税所得金額が出る場合は確定申告が必要です。確定申告の期限は通常と変わりません。1月1日から廃業日までの売上と経費を算出し、翌年2月16日から3月15日までに申告しましょう。
また、廃業後にかかった備品などの処分費や廃業手続きのために移動した交通費などは、必要経費と計上できると所得税法第63条で定められています。廃業準備にかかった経費は適切に計上しましょう。
参考:法第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》関係|国税庁
個人事業主の廃業には給付金制度を利用しよう
個人事業主が廃業した場合は、事業承継・M&A補助金や、日本政策金融公庫や信用保証協会からの融資に申請できます。制度ごとに対象要件や対象経費、申請期限などが異なるので、検討している制度があれば違いを把握しておきましょう。
また、廃業に関する書類についても整理しなければなりません。提出期限の違いに注意し、税務署やハローワークなどの定められた機関に提出しましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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