• 更新日 : 2022年12月5日

個人事業主の所得税はいくら?税金の計算方法や節税対策を解説!

個人事業主の所得税はいくら?税金の計算方法や節税対策を解説!

個人事業主になり、ある程度の所得が得られるようになると税金を支払う必要が出てきます。しかし、どの程度の金額を支払うことになるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

個人事業主が支払う税金には住民税や消費税などもありますが、まずは所得税にスポットを当てて、税額の計算方法について解説していきます。気になる節税についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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個人事業主にかかる所得税はいくら?

個人事業主の所得税についてご紹介します。

所得税額はその年の1月~12月の所得額によって異なる

所得税とは1年間(1月~12月)の所得に対して課税される税金です。所得に課税されるものには住民税もあります。所得税と住民税の違いを確認しておきましょう。

※納付方法は個人事業主のものをご紹介しています。給与から税金が差し引かれる会社員・公務員とは異なりますのでご注意ください。

所得税
住民税
税金の種類国税地方税
課税対象となる所得その年の所得に対して課税前年の所得に対して課税
課税方法と納付方法
  • 給与から差し引いて源泉徴収
  • 源泉徴収されない所得税については確定申告書の提出期限までに自身で申告納付
    確定申告書に基づき税額を計算、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分割して納付も可(普通徴収

    所得税額を計算する際の基準となる「課税所得」は売上や収入とは違います。課税所得の計算方法は以下の通りです。

    課税所得 = 収入(売上高など) - 必要経費 - 各種所得控除

    所得税率は累進課税制度で定められている

    所得税額を計算する際は、課税所得金額に所得税率を乗じ、その金額から税額控除があればその額を引いて計算します。所得税は累進課税となっていますが、累進課税にも「単純累進課税」と「超過累進課税」の2種類があるので覚えておきましょう。

    単純累進課税
    課税所得が一定の金額となった際、所得全体に対して高い税率がかけられる

    超過累進課税
    課税所得が一定の金額となった際、超過部分に高い税率がかけられる

    日本では超過累進課税制度が採用されています。ただ、所得ごとにそれぞれの税率を使って計算すると税額の算出までが複雑になるため、「速算表」を使って計算できるようにしています。

    以下の表は所得税額の速算表です。この表に当てはめて計算すると、自分の所得ではどのくらいの所得税がかかるかを計算できます。

    課税される所得額
    税率
    控除額
    1,000円~194万円9,000円5%0円
    195万円~329万9,000円10%9万7,500円
    330万円~694万9,000円20%42万7,500円
    695万円~899万9,000円23%63万6,000円
    900万円~1,799万9,000円33%153万6,000円
    1,800万円~3,999万9,000円40%279万6,000円
    4,000万円以上45%479万6,000円

    ※課税所得は、1,000円未満の端数金額を切り捨ててから税率を乗じて計算します。

    課税所得が600万円の場合、所得税額の計算は以下のようになります。
    600万円×20%-42万7,500円=77万2,500円

    所得税額は77万2,500円です。実際には令和19年分まで、所得税と復興特別所得税(原則として所得税額の2.1%、100円未満切捨)を併せて申告納付することとなりますので、78万8,700円です。

    個人事業主の所得税額はどのように決まる?

    個人事業主の所得税額がどのように決まるかについて詳しく解説します。

    確定申告後に所得税の納税額が決定する

    所得税は、その年の所得に対して課税されます。納税額を算出するためには、その年の所得を確認しなければなりません。それには確定申告で所得金額を算出する必要があります。よって、所得税の納税額が決定するのは確定申告時となるのです。

    所得の全てが課税対象となるわけではない

    1年間の所得から所得税額を計算するとご紹介しましたが、全ての所得が課税対象となるわけではありません。課税対象になる所得とならない所得について確認しましょう。

    【課税対象の所得】
    所得税法では、所得の種類を以下の10種類に区分しています。所得税は個人が得た全ての所得に対して課税されるのが原則です。

    個人事業主が事業で得た所得は「事業所得」などに分類されます。また、投資で得た配当や不動産などで所得があった場合も所得税の対象となりますので、確定申告が必要です。

    ※配当については「確定申告不要制度」を選択している場合であれば源泉徴収されて課税関係は完了するため、確定申告は不要です。

    【所得税の非課税所得】
    課税対象の所得であっても、条件によっては非課税所得となります。一部抜粋してご紹介します。(所得税以外の税金がかかるものも含まれます。)

    所得名
    非課税の内容
    利子・配当所得関係
    • 障害者等の少額預金の利子
    • 勤労者財産形成年金貯蓄等の利子等
    • 非課税口座内、未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当等(NISA・つみたてNISAなど)
    • 納税準備預金の利子
    • など
    給与所得・公的年金関係
    • 傷病者や遺族などの受け取る年金
    • 文化功労者年金法の規定による年金等
    など
    譲渡(山林)所得関係
    • 生活に通常必要な動産の譲渡による所得
    • 非課税口座内、未成年者口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等
    • 国や地方公共団体等に財産を寄附した場合の譲渡所得等
    など
    その他
    • 学資金及び扶養義務を履行するために給付される金品
    • 相続、遺贈または個人からの贈与により取得するもの
    • 心身に加えられた損害または突発的な事故により資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料等
    など

    出典:No.2011 課税される所得と非課税所得|国税庁より抜粋

    個人事業主の所得税額の計算方法

    個人事業主の所得税額の計算方法についてご紹介します。

    1月~12月の年間収入額を計算する

    まずはその年の1月~12月の収入額(売上のみで代金を受領していないものも含む)を計算します。前年度の収入額ではないため気をつけてください。

    例えば、2023年のの確定申告時に所得税を支払う場合は、2022年1月~2022年12月の収入を合計する必要があります。

    収入額から経費や所得控除を差し引く

    合計した収入額から必要経費や所得控除を差し引きます。仕事関連で使った費用が必要経費です。もれなく差し引けるように日頃から領収書やレシートをまとめ、会計帳簿をつけておきましょう。たとえ、白色申告の場合であっても、事業所得等である場合は収入や必要経費を記載した法定帳簿が求められます。

    所得控除として差し引けるものは以下の項目です。

    項目
    控除を受けられる条件
    雑損控除災害等、盗難、横領で住宅や家財、棚卸商品や事業用固定資産に一定の損害を受けた場合
    医療費控除一定額以上の医療費等を支払った場合
    セルフメディケーション税制一定額以上の医療費等を支払った場合
    (薬局で購入する当制度の対象となる一定の医薬品等)
    ※控除を受けるには「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行っていることなどが条件です。また、医療費控除との併用は不可です。
    社会保険料控除健康保険料や年金等の支払いがある場合
    小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済法による独立行政法人中小企業基盤整備機構との共済契約の掛金、確定拠出年金法の企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金、心身障害者扶養共済制度に係る掛金の支払いがある場合
    生命保険料控除新(旧)生命保険料や介護医療保険料、新(旧)個人年金保険料の支払いがある場合
    地震保険料控除地震保険料や旧長期損害保険料の支払いがある場合
    寄附金控除国や地方公共団体等への寄附金やふるさと納税、特定の政治献金等がある場合
    寡婦控除寡婦である場合
    勤労学生控除勤労学生である場合
    障害者控除本人、同一生計配偶者、扶養親族が一定の障害者である場合
    配偶者控除本人の合計所得金額が1,000万円以下で、控除対象配偶者の合計所得金額が48万円以下で一定の場合
    配偶者特別控除本人の合計所得金額が1,000万円以下で配偶者の合計所得金額が48万円超133万円未満の場合
    扶養控除控除対象扶養親族となる人がいる場合
    基礎控除合計所得金額に応じて受けられる

    納税者の合計所得金額
    控除額
    2,400万円以下48万円
    2,400万円超2,450万円以下32万円
    2,450万円超2,500万円以下16万円
    2,500万円超0円
    ひとり親控除ひとり親である場合

    課税所得額を算出して税額を計算する

    前述の通り、その年の収入から必要経費、各種控除を差し引くと課税所得額が算出されます。課税所得額に所得税率を乗じると所得税額の計算ができます。税率と計算例については前述した「所得税額の速算表」をご確認ください。

    所得税の納付を行う

    所得税の税額が算出できたら、その金額を納付します。主な納付方法は以下の通りなどです。振替納税とダイレクト納付はあらかじめ手続きが必要です。

    • 預金口座からの振替で納付する
    • e-Taxで納付する(ダイレクト納付)
    • クレジットカードで納付する
    • QRコードまたはバーコードを使い、コンビニから納付する(納付額が30万円超の場合は利用不可)
    • 金融機関、税務署の窓口で現金納付する(インターネットバンキングでも可)

    所得税の納付期限は確定申告期間の最終日です(振替納税を除く)。納付期限が土日祝日等の場合は翌日が期限となります。

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    個人事業主におすすめする所得税の節税対策

    青色申告による最大65万円控除

    個人事業主は確定申告の方法を次の3通りから選択できます。特徴とともに確認しましょう。

    白色申告青色申告
    (10万円控除)
    青色申告
    (最大65万円控除)
    事前申請不要
    対象者青色申告を選択した人以外不動産所得・事業所得・山林所得があり、青色申告の承認を受けている人
    記帳方法簡易な方法簡易簿記複式簿記
    確定申告時の提出書類確定申告書
    収支内訳書
    確定申告書
    青色申告決算書
    貸借対照表の作成義務なし)
    確定申告書
    青色申告決算書
    作成する帳簿簡易的な帳簿現金出納帳
    売掛帳
    買掛帳
    固定資産税台帳
    経費帳
    総勘定元帳
    仕訳帳

    (補助簿)
    現金出納帳
    売掛帳
    買掛帳
    固定資産税台帳

    これら3つの中で最も節税効果が高いのは控除額が最大65万円もある「青色申告」です。節税をしたいのであれば「最大65万円の控除がある青色申告」を選択してください。

    ただし、65万円の控除を受けるためには、e-Taxで確定申告をするか、電子帳簿保存を行うかを選択する必要があります。そうでない場合の控除額は55万円です。

    家事按分を利用した必要経費の活用

    自宅を仕事場としていて、プライベートで使っている車や携帯電話を事業でも使っているという個人事業主であれば必要経費について「家事按分」が利用できます。家賃や光熱費、通信費などのうち、事業のために使った割合分を経費として申告できます。

    例えば、自家用車を事業のためにも使っているのであれば、ガソリン代や駐車場代等に事業割合をかけて経費にすることが可能です。

    とはいえ、何でも家事按分して経費にできるわけではありません。自家用車で客先に赴いた記録など事業に使ったという客観的な資料も残しておく必要があります。

    生命保険や個人年金などの控除

    生命保険、介護医療保険、個人年金保険に加入している場合は控除を忘れずに行いましょう。控除額は次の通りです。

    【新契約(2012年1月1日以後に契約したもの)の控除額】

    年間支払保険料
    控除額
    2万円以下支払保険料全額
    2万円超4万円以下支払保険料×1/2+1万円
    4万円超8万円以下支払保険料×1/4+2万円
    8万円超一律4万円

    新契約に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料をそれぞれ上記の表に当てはめて控除額を算出します。

    【旧契約(2011年12月31日以前に契約したもの)の控除額】

    年間支払保険料
    控除額
    2万5,000円以下支払保険料全額
    2万5,000円超5万円以下支払保険料×1/2+1万2,500円
    5万円超10万円以下支払保険料×1/4+2万5,000円
    10万円超一律5万円

    旧契約に基づく旧生命保険料(第三分野保険を含む)と旧個人年金保険料をそれぞれ上記の表に当てはめて控除額を算出します。

    医療費控除、セルフメディケーション税制の活用

    その年の医療費を多く支払ったという方は医療費控除・セルフメディケーション税制が使えるかどうかも確認してください。それぞれの内容は次の通りです。

    【医療費控除】
    医療費控除額は次の式で計算できます。

    (1年間で支払った医療費の合計額-保険金等の金額)-10万円※
    ※所得金額が200万円までの場合は所得金額×5%

    医療費控除の最高額は200万円です。

    【セルフメディケーション税制】
    セルフメディケーション税制とは、12,000円以上の対象となる医薬品を購入した場合など、その購入費用について所得から控除が受けられるという制度です。医療費控除との併用はできません。適用時には、セルフメディケーション税制の明細書の添付が必要です。

    次の条件を満たしている場合などに利用できます。

    • 薬局などでセルフメディケーション対象医薬品を購入した
    • 購入時のレシートがある
    • 購入額が世帯合計で年間12,000円以上
    • 申告対象の年に予防接種や健康診断受診などの健康のための一定の取組を行った
    • 医療費控除を受けていない

    控除額の計算方法は以下の通りです。

    対象医薬品の購入金額 - 12,000円

    ※控除の上限は8万8,000円

    iDeCoの活用

    任意で加入できる個人型確定拠出年金「iDeCo」の掛金は全額小規模企業共済等掛金控除としての対象となります。そのため、節税対策として利用できます。

    ただし、iDeCoは老後の資金作りのための投資であり、原則60歳までは資金の引き出しができません。その点には気をつけておきましょう。

    個人事業主の所得税を節税しよう

    所得税はその年の所得にかかる税金です。所得は経費や控除額を収入から差し引いて計算することができます。

    個人事業主の場合、自身で確定申告を行うこともあり、経費・各種控除は自分で把握しておかなければなりません。節税したいと考えるのであれば、どの費用が必要経費になるのか、どの控除が使えるのかをしっかりと把握しておきましょう。

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    よくある質問

    課税所得の計算方法を知りたいです。

    課税所得は1年間の収入から経費や各種所得控除を差し引いて計算します。詳しくはこちらをご覧ください。

    医療費控除とセルフメディケーション税制は併用可能?

    併用は不可です。詳しくはこちらをご覧ください。

    家事按分とは?

    プライベートでも利用する家賃や光熱費、通信費などのうち、事業のために使った割合分を経費として申告できるというものです。詳しくはこちらをご覧ください。


    ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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