- 更新日 : 2022年4月8日
個人型確定拠出年金 iDeCoの確定申告はどうやる?手順や書類の書き方

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは、60歳以降の方が受け取ることができる公的年金等の上乗せ制度であり20歳以上の個人が加入できます。
掛金を運営管理機関に払い込んで運用益を計上し、60歳になったところで掛金と運用益を「年金」や「一時金」という形で受け取る、というものです。
今回はiDeCoに関する確定申告書の書き方や、記載のもととなる書類、万が一確定申告を忘れてしまった場合の対処方法などについて解説します。
目次
iDeCo (個人型確定拠出年金) をやっている人は確定申告が必要?
iDeCoは「確定拠出年金法」に基づき、厚生労働省や金融庁が主体となって管理運営している公的制度で、税制面で各種の優遇措置が用意されています。
iDeCoについて、税務申告が関係するタイミングは以下の3つです。
- 掛金を支払ったとき
- 運用益を計上したとき
- 給付金・一時金を受け取ったとき
特に1.掛金を支払ったときは「年末調整」をしているかどうかで取り扱いが変わります。
確定申告が不要なケースと必要なケースの判断基準について解説していきましょう。
確定申告が不要なケース
1.掛金を支払ったとき
所得税を計算する際、iDeCoの掛金は「所得控除」の対象となります。
所得控除を受ける方法としては「年末調整での控除」と「確定申告での控除」の2つがあり、年末調整で所得控除を受けた場合は確定申告が不要となります。
給与所得があるサラリーマンは、収入のメインとなる主たる給与所得で「年末調整」をしなければなりません。(年末調整ができないケースについては後述します)
「年末調整」で受けることができる所得控除の1つに「保険料控除」というのがあります。
このうち、iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」に該当します。
iDeCoの掛金にかかる「払込証明書」を添付して、記載された金額を該当欄に記入すれば完了です。
2.運用益を計上したとき
運営管理機関が掛金を運用した結果、運用益が出るケースがあります。
税法では「もうけが出たら税金を払う」のが原則です。
しかしiDeCoの運用益については優遇措置として「運用益は全額非課税」となっています。つまり確定申告は不要となるわけです。
3.給付金・一時金を受け取ったとき
iDeCoの掛金及び運用益を受け取ったときの税法上の取り扱いは、受取方法によって異なります。
確定申告が不要になるケースを表にまとめてみました。
ケース | 受取の方法 | 確定申告 |
---|---|---|
「老年齢給付金」として受け取るケース | 一時金で受け取り | 原則として申告不要(例外あり) |
「障害給付金」として受け取るケース | 年金払い又は一時金で受け取り | 金額非課税となるため申告不要 |
「死亡一時金」として受け取るケース | 一時金で受け取り | 相続税の対象となるため申告不要 |
なお「老齢給付金」を「年金払い」で受け取る場合、受取金額やその他所得の有無に応じて確定申告の要否が変わってきます。
詳しくは以下のサイトを参照してください。
確定申告が必要なケース
1.掛金を支払ったとき
確定申告が必要になるのは次のようなケースです。
- 「年末調整」で所得控除を受けられなかった方
- 「年末調整」で所得控除を受けたがその他の理由により確定申告をする方
- 「年末調整」をしていない方
「収入金額が2,000万円を超えており年末調整ができなかった」
「退職により年末調整ができなかった」
「iDeCoの掛金払込証明書が間に合わなかった」
そもそも年末調整ができないケースや、証明書類を提出できなかったケースがこれに該当します。
「医療費控除を受けたい」
「住宅借入金控除を受けたいので初年度の申告をしたい」
「6ヵ所以上のふるさと納税をしている」
年末調整でiDeCoの所得控除を受けていても、医療費控除を受けるなどその他の理由があれば確定申告をすることもできます。
「個人事業主で毎年確定申告をしている」
「給与所得がないので年末調整をしていない」
個人事業主や給与所得がない方は「年末調整」ができませんので、所得控除を受けるためには確定申告が必要となります。
2.給付金・一時金を受け取ったとき
前述した通り「老齢給付金」を「年金払い」で受け取った場合、受取金額やその他所得の有無に応じて確定申告の要否が変わってきます。
詳しくは以下のサイトを参照してください。
iDeCo (個人型確定拠出年金) の確定申告に必要な書類
確定申告をしなければならない場合に必要となる書類をケース別にまとめてみます。
ケース | 用意する書類 |
---|---|
サラリーマンの方で年末調整ができなかった方 | 給与所得の源泉徴収票 iDeCoの「小規模企業共済等掛金払込証明書」 ※2ヵ所以上から給与を貰っている場合は全ての給与所得にかかる源泉徴収票が必要となります。 ※医療費控除を受ける場合や、住宅借入金等特別控除の初年度申告の場合は別途書類を用意する必要があります。 |
サラリーマンの方で年末調整をした方 | 給与所得の源泉徴収票 ※掛金の払込金額は年末調整をした源泉徴収票から転記します。 ※2ヵ所以上から給与を貰っている場合は全ての給与所得にかかる源泉徴収票が必要となります。 ※医療費控除を受ける場合や、住宅借入金等特別控除の初年度申告の場合は別途書類を用意する必要があります。 |
個人事業主の方 | 事業所得の収支内訳書・青色決算書 iDeCoの「小規模企業共済等掛金払込証明書」 ※医療費控除を受ける場合や、住宅借入金等特別控除の初年度申告の場合は別途書類を用意する必要があります。 |
なお、平成31年4月1日以降の申告手続きについては、添付書類の提出が一部省略されています。
しかし、年末調整をした場合を除き、iDeCoの「小規模企業共済等掛金払込証明書」については、添付が省略できませんので注意が必要です。
iDeCo (個人型確定拠出年金) の確定申告の手順・書き方
iDeCoの所得控除を受けるための、確定申告書の作成手順を簡単なフローにしてみました。
具体的な記載箇所を実際の確定申告書で図解してみます。
掛金払込証明書の確認
まずはiDeCoの掛金払込証明書の見方からです。
証明書には「9月までに(実際に)払い込まれた金額」と「10~12月に払い込まれる予定金額」が2段書きされています。
確定申告書にはその「合計金額」を記載することになります。
なお「10~12月に払い込まれる予定金額」については、念のためご自身で払い込まれているか通帳等で確認することをおすすめします。
確定申告書(A・B)第2表に記載
次に「合計金額」を確定申告書の第2表に記載します。
(図解は確定申告書Aを使用した場合です。)
「年末調整」をしていない場合は払込金額を「支払保険料等の計」「うち年末調整等以外」の両方に記載します。
「年末調整」をしている場合は源泉徴収票の「社会保険料等の金額」上段の内書きを「支払保険料等の計」に記載します。
確定申告書(A・B)第1表に転記
第2表に記載した金額の合計額を第1表に転記します。
転記したところで、その他の所得控除と合算し、各種所得金額の合計額から控除することになります。
iDeCo (個人型確定拠出年金) の確定申告を忘れてしまったら?
iDeCoの掛金は所得控除の対象です。
万が一、確定申告を忘れてしまっても「所得税を安くする手続きを忘れた」だけです。
所得税が増えるわけではありませんので当然ペナルティはありません。
しかし、掛金の申告を忘れた場合は、所得税を必要以上に納めていることになります。
所得控除の手続きを忘れた場合には「還付申告」という方法で還付を受けることができます。
還付申告は「iDeCoの掛金を支払った翌年の1月1日から5年間」の間に提出することができます。
これに対して、確定申告が必要なiDeCoの給付金・一時金を申告し忘れた場合には「所得税を安く納めてしまった」ことになります。
所得の計上漏れ等により、所得税が増える修正を行う場合には「修正申告」を行うことになります。
確定申告の期限後に修正申告をした場合、2.5%(又は8.8%)の延滞税がかかります。
さらに申告を忘れていることを税務署から指摘されて修正した場合、本来納めるべき所得税との差額や延滞税の他に10%(又は15%)の過少申告加算税がかかります。
間違いに気づいたときは自主的に、速やかに修正申告を行いましょう。
iDeCo (個人型確定拠出年金) を理解したうえで正しい税務申告を
iDeCoは税制上の優遇措置が数多くあるため運用する方が増加しており、利用者数は令和3年5月時点で200万人を超えました。始めることを検討されている方や、既に始めているがいまいち分からないという方は、まずはその仕組みについて理解を深め、正しい税務申告をするようにしましょう。
よくある質問
iDeCoに確定申告は必要?
掛金については年末調整で所得控除を受けた場合には不要です。詳しくはこちらをご覧ください。
iDeCoの確定申告に必要な書類は?
所得控除を受けるためには「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
iDeCoの確定申告を忘れてしまったら?
所得控除にはペナルティはありませんが、確定申告が必要な給付金・一時金を申告し忘れた場合にはペナルティがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。