• 作成日 : 2021年11月30日

確定申告書の第三表|分離課税の所得の申告について解説

確定申告書の第三表|分離課税の所得の申告について解説

所得税は、それぞれの所得を合算して所得税を課す総合課税が原則です。ただし総合課税が適当でないとして、総合課税とは別に課税される所得もあります。

確定申告書第三表は、総合課税とは別に計算する、分離課税の対象になる所得を申告するための書類です。この記事では、確定申告書の第三表の概要や記載する所得、書き方について解説します。

確定申告書の第三表とは?

確定申告書の第三表は、分離課税の対象である所得を申告するための申告書です。分離課税の対象である所得を申告する人は、確定申告書の第一表と第二表に加え、第三表も提出しなければなりません。

確定申告書の様式について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

第三表記入の対象となるのは分離課税

分離課税とは、他の所得と分けて税額を計算することです。

所得税はそれぞれの所得を合算して所得税を計算する総合課税が原則ですが、所得によっては他の所得と分けて所得税を計算するものもあります。このような所得を分離課税といいます。

第三表に記入するのは分離課税のうち、確定申告が必要な申告分離課税の対象である所得です。税金が控除された金額が入金される銀行預金の利息など、源泉分離課税の対象である所得は分離課税の対象ではありません。

記入する必要がある所得

確定申告書第三表の対象となる所得は、以下の表のとおりです。

対象になる所得の種類
概要
譲渡所得(一部)土地や建物を売却したときの譲渡所得、株式等を売却したときの譲渡所得
配当所得(一部)上場株式等の配当所得
雑所得(一部)先物取引やFX(外国為替証拠金取引)
山林所得取得後5年超の山林を立木のまま譲渡、または伐採して譲渡したときの所得
(※山ごと譲渡するときは土地の部分は譲渡所得)
退職所得退職所得の受給に関する申告書を提出していない退職所得

譲渡所得(一部)

譲渡所得のうち土地や建物、株式の譲渡は分離課税に分類されます。土地や建物の譲渡については長期譲渡と短期譲渡に分かれ、確定申告書ではさらに一般分、軽減分(長期譲渡は特定分も)に分けて記載します。

長期譲渡とは、譲渡をした年の1月1日時点で所有期間が5年を超える土地や建物の譲渡のことで、短期譲渡は長期譲渡に該当しない(所有期間が5年以下)ものです。長期譲渡と短期譲渡では、適用される税率が異なります。

土地や建物の譲渡は適用する特例などで税率が異なるため、さらに一般分、軽減分、特定分に分けます。特定分と軽減分は、該当する特例を適用したいときに記載します。

株式の譲渡については、一般株式等と上場株式等に分けて所得税を計算します。上場株式等とは、市場で売買される上場株式や上場投資信託、REIT、公債、地方債、外国債券、社債などのことです。一般株式等は上場株式等に該当しないもので、非上場の株式などが該当します。

上場株式等と一般株式等の税率は同じですが、上場株式等は配当所得との損益通算や繰越控除が認められているため、確定申告では分けて申告します。なお、上場株式等については特定口座の源泉徴収制度を利用することで、確定申告不要を選択することもできます。

配当所得(一部)

上場株式等の配当所得は、証券会社からの配当金支払時に税額分が源泉徴収されます。そのため、源泉徴収が行われた配当所得に関しては、確定申告をしないという選択ができます。

ただし、源泉徴収が行われた上場株式等の配当所得についても確定申告は可能です。原則的に配当所得は総合課税の対象ですが、上場株式等の配当所得に限っては申告分離課税を選択できます。第三表に記載するのは、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得です。

雑所得(一部)

商品先物取引や金融商品先物取引、カバードワラント、FX(外国為替証拠金取引)による差金決済などでの所得は、すべて「先物取引に係る雑所得等」に該当し、申告分離課税の対象です。該当する取引を行って利益を得た場合は、確定申告が必要です。

山林所得

山林所得とは、取得から5年を超える山林を立木のまま譲渡したり、伐採して譲渡したりする場合の所得のことです。取得から5年以内の山林は、事業所得や雑所得に該当します。

山林所得は他の所得と分離して、5分5乗方式といわれる計算方法で算出します。山林所得を特別な計算方式で計算するのは、一般的に山林は取得から売却までが長期にわたるためです。5分5乗方式により、税負担の軽減が図られています。

退職所得

退職時に勤務先から支払われる退職金は、退職所得に分類されます。退職所得は長年の勤務に対して支払われるものであり、総合課税では税負担が重くなるため分離課税の対象となります。また、通常は勤務先での源泉徴収で課税関係が終了するケースが多いです。

しかし、勤務先に退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合は、一律課税(20.42%)での源泉徴収が行われるため、確定申告によって精算する必要があります。

第三表の具体例

確定申告書第三表について、ブロックごとに書き方の具体例を見ていきます。

特例適用条文

確定申告 特例適用条文 第三文

第三表の右上にある「特例適用条文」は、軽減税率などの特例を適用して分離課税の確定申告を行う場合に記載する項目です。例えば、措法31条の3(マイホーム譲渡時の長期譲渡所得の軽減税率の特例)や、措法41条の5(マイホーム買換え時の譲渡損失、損益通算、繰越控除の特例)などを記載します。適用する特例がない場合は、記載する必要はありません。

収入金額

確定申告 収入金額

収入金額の各項目に該当するものがあれば、その額を記入します。例えば、土地や建物の譲渡の場合、収入額は仲介手数料や減価償却後の取得価格などを差し引く前の、売却時の収入額を記入します。

所得金額

確定申告 所得金額

第三表の「収入金額」の下には、「所得金額」の枠があります。所得金額とは、実際の利益額のことです。株式等の譲渡の場合は、譲渡価格から取得価格や手数料を差し引いた額を記載します。建物や不動産の譲渡で特別控除を適用する場合は、さらに特別控除を差し引いた額を所得金額とします。

税金の計算(課税される所得金額)

確定申告 税金の計算

12番と29番は、確定申告書Bの第一表から転記する部分です。税金の計算の12番には総合課税の所得金額の合計額、29番には所得から差し引かれる金額の合計額(所得控除の合計額)を記入します。

課税される所得金額の75番には12番から29番を差し引いた額を記入し、以降は対応分の番号の所得金額を1,000円未満切り捨てで記入します。なお、総所得金額が所得控除を下回る場合(計算上75番がマイナスになる場合)は、以下の順序で所得控除を行います。

所得控除の順序

  1. 総所得金額
  2. 上場株式等の配当所得
  3. 土地等にかかる事業所得など
  4. 短期譲渡所得
  5. 長期譲渡所得
  6. 一般株式等の譲渡所得
  7. 上場株式等の譲渡所得
  8. 先物取引の雑所得
  9. 山林所得
  10. 退職所得

税金の計算(税額)

確定申告 税金の計算

税額の欄には、課税される所得金額ごとに税率を乗じて税額を計算し、対応分を記載します。91番は税額の合計で、確定申告書B第一表の31番に転記します。

その他

確定申告 その他

その他の欄は、本年分に差し引く繰越損失がある場合や、翌年以後に繰り越す損失がある場合に記入します。株式売買や先物取引、FXを行っていて、譲渡損失が発生した場合に記入する項目です。
確定申告 「分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」「上場株式等の譲渡所得等に関する事項」「退職所得に関する事項」
「分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」「上場株式等の譲渡所得等に関する事項」「退職所得に関する事項」は、該当する所得がある場合に記入します。

第三表の書き方・作成方法

第三表の作成方法の手順を説明します。

手順1.計算明細書を作成する

確定申告書の第三表の提出にあたっては、申告する所得の内容に合わせて、特定の計算明細書を添付して提出しなければならないケースが多いです。計算明細書とは、第三表に記入しなければならない所得金額の計算の内訳を詳細に記入した書類のことです。

第三表の作成を始める前に、まずは提出が必要な計算明細書を作成しましょう。例えば、FXによる所得を申告する場合は「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を作成します。確定申告書に添付する計算明細書の種類は、ケース別にかなり細かく分かれているため、以下の国税庁のサイトでどのようなものがあるかを確認しておくとよいでしょう。

【参考】明細書・計算明細書等(令和2年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁

手順2.第三表の収入金額を所得金額に記入する

計算明細書を作成したら、第三表の収入金額・所得金額の対応する部分に、計算明細書の金額を転記します。

手順3.確定申告書第一表の一部を記載する

第三表には、確定申告書第一表からの転記が必要な箇所があります。転記できるようにするために、先に確定申告書第一表の収入金額等、所得金額等、所得から差し引かれる金額の欄を埋めましょう。給与所得者の場合は、会社から配布される源泉徴収票を見ながら記入するだけなので、あまり時間はかかりません。

手順4.確定申告書第一表から転記する

確定申告書第一表の一部を作成したら、所得金額等の合計額と所得から差し引かれる金額の合計額を、第三表の「税金の計算」の対応する部分に転記します。

手順5.課税される所得金額を記入する

第三表に記載した内容をベースに、対応する所得で課税される所得金額を1,000円未満切り捨てで記入します。

手順6.税額を記入する

課税される所得金額を記入したら、所得ごとの税率を用いてそれぞれの税額を計算し、記入します。対応する事項や対応する所得があれば、その他やその他の下の各事項に記入しましょう。

第三表の理解を深め、正しく確定申告を行いましょう!

確定申告書の第三表は土地や建物の譲渡、株式の譲渡(特定口座の源泉徴収ありの口座内の取引のみであれば不要)など、申告分離課税の対象である所得がある場合に提出が必要になる申告書です。確定申告の際に困らないように、まずは「どのような所得がある場合に必要になるか」「どのような記載項目があるか」だけでも押さえておきましょう。

よくある質問

確定申告書の第三表とは?

確定申告書の第三表は、申告分離課税の対象となる所得を申告するための書類です。詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告書の第三表に記入する所得は?

土地や建物の譲渡所得、株式の譲渡所得、先物取引やFXによる所得、山林所得などです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:萱谷 有香(税理士)

叶税理士法人 東京事務所代表。不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら収益物件について税務と投資面で多くの知識を得られたことを活かし、自らも不動産投資を手掛ける。
大手管理会社、ハウスメーカーや賃貸フェアなどで講演実績があり、記事執筆も行う。
不動産投資の規模を拡大していくために、なくてはならない金融機関からの融資についても積極的に紹介やアドバイスを行う。
金融機関から融資を引きやすい、または金利交渉しやすい決算書の作成を得意とする。
物件購入前、物件保有中、物件売却時、相続時、どの時点で相談を受けても必ず投資家にプラスになるアドバイスを心掛けている。
著書に『減価償却節税バイブル』(技術評論社)がある。

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