- 更新日 : 2025年2月26日
個人事業主が年収を聞かれたらどう答える?確定申告書の見方や計算方法を解説
年収を聞かれたら、個人事業主はどう答えるべきか迷うことがあります。会社員とは異なり、売上から経費を差し引いた所得金額で判断する必要があるため、一概に答えにくいのが実情です。本記事では、個人事業主としての年収の概念を理解し、必要に応じた適切な対応ができるよう確定申告書の確認ポイントや年収の計算方法について解説します。
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目次
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個人事業主が年収を聞かれたらどう答える?
個人事業主が年収を聞かれる場面では、クレジットカードの申し込みやローン審査・取引先との商談などですが、その際の年収の定義は給与所得者と異なり、明確ではないことがあります。
個人事業主の場合、年収が売上高か、経費を差し引いた所得金額かで混乱することが多いです。年収を答える際には、適切な回答方法と計算方法を理解しておくことが重要です。これから、個人事業主が年収をどう算出し、報告すべきかについて詳しく見ていきます。
個人事業主の年収は所得金額等の合計
個人事業主の年収は、一般的に「確定申告書B」第一表の「所得金額等」の合計欄に記載されている金額を指します。この金額は、事業の売上高から必要経費を差し引いた所得金額であり、実質的な収入を示すものです。
ただし、青色申告者の場合は注意が必要です。「所得金額等」には、すでに青色申告特別控除額が控除されています。そのため、実際の年収を算出するには、青色申告特別控除額(65万円・55万円・10万円)を加算しなければなりません。
青色申告特別控除額は、「確定申告書B」第一表右下の「その他」項目に記載されています。年収を聞かれた際は、これらの点を踏まえて回答する必要があるでしょう。
年間売上高との違い
年間売上高は、商品の販売やサービス提供から得た総額であり、経費を差し引く前の金額です。しかし、売上高が高くても、必要経費が売上高を上回る場合、最終的には赤字になることもあります。
一方、個人事業主の年収として重要なのは「所得」であり、これは売上高から必要経費を差し引いた実際の稼ぎを指します。クレジットカードやローンの申し込み時には、この所得金額を年収として報告することが一般的です。
個人事業主の年収は確定申告書のどこを確認する?
まず、前年分の確定申告書Bの第1表を参照します。確定申告書Bの第1表には、「収入金額等」「所得金額等」「所得から差し引かれる金額」「税金の計算」「その他の欄の記入」などの項目があり、縦書き文字で色分けされています。そのうちの左側中央位置水色の「所得金額等」の項目に含まれる①が「事業所得」、⑫が「所得全体の合計」です。
青色申告者は、所得金額等の金額に特別控除の額を加算する
青色申告者の実際の年収を計算する際には、確定申告書に記載された「所得金額等」に「青色申告特別控除額」を加える必要があります。これは、青色申告特別控除の額がすでに差し引かれた後の金額が所得金額等に記載されているためです。
確定申告書第一表の右下の「その他」欄内に「青色申告特別控除額」(65万円・55万円・10万円のいずれか)が記載されています。この金額と、所得金額等の欄に記載された金額を合算することで、本来の年収が算出できます。
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個人事業主の年収の計算方法
個人事業主の年収は、税金や社会保険料を差し引く前の「税込年収」と、それらを差し引いた後の「手取り年収」に分けられます。ここでは、それぞれについて解説します。
税込年収
個人事業主の税込年収は、売上高から売上原価と必要経費を差し引いた金額です。
具体的には、以下のとおりです。
売上原価には商品仕入れや製造コストが含まれ、経費には通信費や従業員給与、事務所家賃などが含まれます。加えて、取引先から源泉徴収されている場合、その金額も売上に含めて計算しなければなりません。それらを考慮して正しく計算することが重要です。
手取り年収
個人事業主の手取り年収は、事業収入から経費と税金、社会保険料などを差し引いた、実際に自由に使えるお金のことです。
手取り年収を計算するには、まず年間の事業収入から必要経費を差し引いて所得を計算します。この所得に対して、所得税や住民税などの税金と、国民健康保険料や国民年金保険料といった社会保険料が課されます。これらの税金と社会保険料を所得から差し引いた残りが、手取り年収です。
手取り年収は、生活費や事業の運転資金など、自由に使えるお金となるため、個人事業主にとって重要な指標となります。
個人事業主の年収と会社員の年収はどう違う?
個人事業主と会社員の年収には大きな違いがあります。
まず、個人事業主の年収は、収入から必要経費を差し引いた後の金額です。経費には、事業に関連する費用が含まれ、税金はその後の所得額に基づいて計算されます。
対して、会社員の年収は、支給された給料と賞与の合計額で、社会保険料や税金が控除される前の総支給額です。また、会社員には経費を計上できないため、給与所得控除が適用されます。
申告の方法も、個人事業主は毎年、所得をもとに確定申告を行い、税金を納付します。一方、会社員は税金の計算を会社が代行し、年末調整で税額が調整されるため、通常は確定申告を行う必要はありません。
年収の確認方法も異なります。個人事業主は確定申告書や青色申告決算書を使い、会社員は源泉徴収票をもとに年収を確認します。
まとめると、下表のとおりです。
項目 | 個人事業主の年収 | 会社員の年収 |
---|---|---|
年収についての定義 | 収入から経費を差し引いた事業所得の金額 | 1年間に支給された給料と賞与の合計額 |
経費の取り扱い | 売上から必要経費を差し引いて年収を算出 | 経費を直接差し引くことはできない |
税金の計算方法 | 「経費を差し引いた金額」をもとに対して所得税が課される | 給与所得控除後の金額をもとに所得税が課される |
年収の確認方法 | 確定申告書などで確認 | 源泉徴収票で確認 |
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個人事業主が年収を聞かれるケース
個人事業主が年収を聞かれるケースは、主に以下のとおりです。
- 賃貸物件を契約する際
- クレジットカードを申し込む際
- 住宅ローンの審査時
- 給付金などの制度を利用する際
以下で、それぞれ見ていきましょう。
賃貸物件を契約する際
個人事業主が賃貸物件を契約する際、入居審査では家賃を支払い続ける能力が問われます。そのため、収入を証明できる書類が必要です。一般的には、納税証明書や確定申告書の写しが求められます。これらの書類を準備しておくことで、審査がスムーズに進むでしょう。
また、家賃の支払い能力については、月収の3分の1以内が適正範囲とされる場合が多いです。この基準に基づくと、年収が月額家賃の36倍以上であることが一つの目安となります。
クレジットカードを申し込む際
クレジットカードを申し込む際、個人事業主は年収の申告が求められます。
クレジットカード会社は、申告された年収をもとに審査を行います。ただし、年収の金額そのものよりも、収入の安定性を重視する傾向です。安定した収入があると判断されれば、カードの限度額設定にプラスの影響を与えます。
申し込み時に所得証明書類の提出は、通常は不要ですが、キャッシング枠の利用を希望する場合は提出を求められることがあります。ショッピング枠のみの利用であれば、所得証明書類の提出は不要です。
住宅ローンの審査時
住宅ローンの融資額は、個人事業主の年収に大きく左右されます。金融機関は、返済能力を判断するために、通常2〜3年分の所得を証明する書類の提出を求めてきます。
個人事業主の場合、所得証明として提出が必要となるのは、主に「確定申告書」と「納税証明書」の2種類です。
提出書類は金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
給付金などの制度を利用する際
給付金や各種制度を利用する際、個人事業主は年収を聞かれるケースがあります。奨学金や児童手当の審査では、収入額が重要な判断基準となるためです。
また、児童手当や保育園の保育料の決定時には、直接所得額を聞かれないことがあります。自治体が住民税の課税情報から所得額を把握できるのが理由です。そのため、確定申告は適切に行うようにしましょう。
まずは確定申告書を確認し、正確な年収額を把握しよう
個人事業主にとって、年収は売上高ではなく、経費を差し引いた所得金額のことを指します。確定申告書Bの「所得金額等」を確認し、青色申告の場合は特別控除額を加算することで、正確な年収を把握できます。
年収は、クレジットカードの申し込みやローン審査などさまざまな場面で必要となるため、まずは自分の確定申告書を確認し、正確な年収額を把握しておきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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