• 更新日 : 2023年12月25日

贈与税を非課税にできる制度「住宅取得等資金の贈与の特例」を有効活用しよう

「住宅取得等資金の贈与の特例」は一定の要件を満たすことで住宅取得等資金の贈与税の一定額を非課税にできる制度です。

これをうまく利用すると贈与税の大幅な節約ができます。ここではこの制度がどのようなものなのかを解説するとともに、非課税にするための要件や非課税にできる限度額についても解説します。

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贈与税を非課税にできる「住宅取得等資金の贈与の特例」とは

「住宅取得等資金の贈与の特例」は平成27年1月1日から令和5年12月31日までの期間に、父母や祖父母などの直系尊属から子や孫などへ贈与された住宅取得等資金について、一定額を非課税にするという制度です。

この場合の住宅取得等資金を贈与する側を「贈与者」、贈与される側を「受贈者」と呼びます。

住宅取得等資金とは子や孫が自分で住むための家屋の新築、取得、増改築等に使う目的のお金です。そのため賃貸物件として第三者に貸し出す目的で住宅を取得した場合などは住宅取得等資金には含まれません。

贈与税を非課税にするための受贈者の要件

住宅取得等資金の贈与の特例を利用して贈与税を非課税にするためには、まず受贈者が要件を満たしていなければなりません。その要件は以下の9点です。

  1. 贈与を受けたときに日本国内に住所がある。
  2. 贈与を受けたのが贈与者の直系卑属(子や孫など)である。
  3. 贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上(令和4年4月1日以降は18歳以上)である。
  4. 贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下である。
  5. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を自分で住むための家屋の新築、取得、増改築等に使う。
  6. 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に住むか、3月15日以後速やかに住み始めることが確実であると見込まれる。
  7. 受贈者の配偶者や親族などの一定の特別な関係にある人から家屋を取得していない。
  8. 受贈者の配偶者や親族などの一定の特別な関係にある人との請負契約により新築もしくは増改築等したものではない。
  9. 平成21年から令和3年分以前の年分において、「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがない。

なお1については、一定の場合には、贈与を受けたときに日本国内に住所がなくても適用を受けることができます。

贈与税を非課税にするための家屋の新築、取得、増改築等の要件

次に家屋の新築、取得、増改築等の要件について見ておきましょう。

新築または取得した場合の要件

  1. その家屋の登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下である。かつその床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住用に使われる。
  2. 家屋がつぎのいずれかに該当する
    (1)新築家屋
    (2)使用されたことのある家屋で、昭和57年1月1日以降に建築されている
    (3)使用されたことのある家屋で「耐震基準適合証明書」等により耐震基準を満たすことが証明できる
    (4)(2)、(3)に該当しない、使用されたことのある家屋で取得までに耐震改修を行うことができ、贈与の申告期限までに耐震基準を満たすことを証明できる

増改築等をした場合の要件

  1. 増改築後の家屋の登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下である。かつその床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住用に使われる。
  2. 増改築等の工事が、自己が所有・居住している家屋について行われたものであり、増改築等に該当する工事を行っている。
  3. 増改築等工事証明書など、一定の証明書がある

これらの要件を満たしたうえで、贈与税の申告期間内に必要書類を提出した場合にのみ、住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けることができます。

住宅の種類
非課税限度額
耐震住宅、省エネ住宅、バリアフリー住宅
1,000万円
その他の住宅
500万円

参考:「令和4年度税制改正の大綱」|財務省

住宅取得資金の贈与の特例を受ける方法は?

通常であれば年間110万円を超える贈与を受けた場合は、贈与税が課税されますが、「住宅取得資金贈与の特例」が適用されると一定金額以内であれば非課税になり、贈与税額を節税することができます。住宅取得資金贈与の特例を受ける手順は以下のとおりです。

  1. 購入する住宅を決める
  2. 贈与を受ける
  3. 住宅を取得する
  4. 確定申告を行う
  5. 贈与税の申告を行う

それぞれの手順について、詳しく見ていきましょう。

1.購入する住宅を決める

まずは住宅の予算と購入する住宅を決めます。耐震住宅や省エネ住宅、バリアフリー住宅であれば非課税限度額の上限が増えるので、贈与される金額が多いときは検討してみましょう。

2.贈与を受ける

住宅を決定した後に、直系尊属から贈与を受けます。なお、贈与を受けるのは2023年12月31日(※)までです。贈与を受けるタイミングによっては特例が適用されないこともあるので注意しましょう。

また、特例は、夫婦それぞれが利用することができます。住宅を共有名義にすることで、夫が受けた贈与と妻が受けた贈与がそれぞれ適用限度額まで非課税になるため、非課税額を2倍にすることが可能です。

※住宅取得資金贈与の特例が適用される期間や非課税限度額は変更される可能性があります。制度利用を検討する前に、国税庁ホームページで最新情報を確認してください。

3.住宅を取得する

贈与を受けてから住宅を取得します。ただし、住宅を取得できる期限があるので注意しましょう。特例を利用して非課税額を増やす場合は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得しなくてはいけません。

4.所得税の確定申告を行う

住宅ローン控除の適用を受ける場合などには、所得税の確定申告が必要です。住宅ローンの利用が始まった年の翌年に行います。

なお、住宅ローン控除は適用を受けている限り、毎年手続きが必要です。ただし、勤務先で年末調整を実施している場合は、2年目以降は年末調整で手続きができます。年末調整をしない場合は、2年目以降も確定申告で住宅ローン控除の手続きを行いましょう。

5.贈与税の申告を行う

贈与税の申告を行います。贈与した資金を使って住宅を取得した年の翌年の2月1日~3月15日に贈与税の申告と納税を行いましょう。住宅取得資金贈与の特例を受けて贈与税がかからない場合も、必ず申告が必要です。

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省エネ等住宅なら住宅取得資金贈与の非課税額が高くなる!

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省エネ等住宅とは

住宅取得等資金の贈与の特例における「省エネ等住宅」は、以下のいずれかの要件を満たす家屋を指します。

  1. 省エネルギー性の高い住宅(断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4)
  2. 耐震性の高い住宅(耐震等級2以上又は免震建築物)
  3. バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)

省エネ等住宅を申請するために必要な書類

省エネ等住宅として住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けるためには、贈与税の申告書に次のいずれかの書類を添付し、その事実を証明しなくてはなりません。

  1. 住宅性能証明書
  2. 建設住宅性能評価書の写し
  3. 長期優良住宅建築等計画の認定通知書等の写しおよび住宅用家屋証明書(その写し)または認定長期優良住宅建築証明書
  4. 低炭素建築物新築等計画認定通知書等の写しおよび住宅用家屋証明書(その写し)または認定低炭素住宅建築証明書

これらの証明書などの発行については、国土交通省か地方整備局に問い合わせれば説明してもらえます。なお建築後使用されたことのある家屋の場合、取得の前後2年以内に各種証明のための調査を終えているか評価されたものに限られます。

住宅取得資金の贈与の特例を受けるときの注意点は?

住宅取得資金贈与の特例は、大幅な節税につながる制度です。例えば、省エネ住宅を建てる際に祖父から1,000万円の贈与を受けたときは、本来であれば177万円(課税対象額890万円、税率30%、控除額90万円で算出)の贈与税が課せられます。しかし、特例を適用することで全額を非課税にすることが可能です。

特例を利用するときには、いくつか注意するポイントがあります。特に注意したいポイントとしては、次の2点が挙げられるでしょう。

  • 住宅取得資金贈与の非課税枠を超える贈与については相続時精算課税制度を利用できる
  • 贈与を受けたときによって受贈者の対象年齢が変わる

それぞれについて詳しく解説します。

住宅取得資金贈与の非課税枠を超える贈与については相続時精算課税制度を利用できる

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親あるいは祖父母から財産を受け取った成人である子あるいは孫が利用できる制度です。この制度の適用を選択すると、2,500万円までの贈与が贈与税の課税対象とならず、相続税の課税対象として相続財産に加算されます。

贈与を受けた金額が住宅取得資金贈与の特例の非課税額よりも多く、贈与税の課税対象額が生じるときは、特例の適用と相続時精算課税制度の併用も検討してみましょう。

贈与を受けたときによって受贈者の対象年齢が変わる

住宅取得資金贈与の特例は、受贈者が成人であることが条件になります。制度が誕生したときは成人年齢が20歳以上でした。しかし、令和4年4月1日以降は成人年齢が変わったため、贈与を受けられるのは18歳以上となる点に注意しましょう。

なお、年齢は「贈与を受けたとき」を基準とします。そのため、贈与税の手続きをするときの基準で成人であっても、令和4年3月31日以前の贈与に関して受贈者は20歳以上であることが必要です。

要件を確認した上で、住宅取得資金の贈与の特例を活用しましょう

住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けるためには、受贈者と家屋の新築、取得、増改築等の要件を確実に満たす必要があります。

また「省エネ等住宅」の該当可否や、契約締結日によっては、非課税限度額も大幅に変わります。事前にしっかりと確認して、有効活用しましょう。

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よくある質問

住宅取得等資金の贈与の特例が適用される贈与者と受贈者の条件とは?

贈与者は受贈者の直系尊属であること、なおかつ贈与を受けた時点で20歳以上(令和4年4月1日以降は18歳以上)であることが条件となります。詳しくはこちらをご覧ください。

住宅取得等資金の贈与の特例が適用されて非課税になる金額は?

省エネ住宅と耐震住宅、バリアフリー住宅は1,000万円まで、その他の住宅は500万円まで(令和4年1月1日~令和5年12月31日)が非課税です。年度により金額が変わるので最新情報を確認しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

住宅取得等資金の贈与の特例が適用されるために必要な手続きは?

贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅を取得することが必要です。また、贈与税が発生しない場合であっても、翌年に贈与税の申告を行うことが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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