• 作成日 : 2021年11月12日

赤字でも確定申告すべき5つの理由

赤字でも確定申告すべき5つの理由

2022年提出確定申告まとめ 【随時更新】

・提出期限
 

2022年2月16日(水)〜2022年3月15日(火)

令和元年分及び令和2年分の確定申告期限については、新型コロナウィルスの影響により、期限が延期されました。そのため、国税庁の今後の動きでは令和3年分の確定申告期限も変動の可能性があります。『2022年の確定申告期間はいつからいつまで?』こちらも参考にしてください。

・注意すべき変更点

詳しい変更点については『2022年(令和4年)提出の確定申告変更点は?前年の変更も丁寧に解説』をご覧ください。

なお、初めて確定申告をされる方、また確定申告の必要があるか分からない方は『確定申告のやり方と流れを全くわからない人向けに解説』こちらをお読みください。

個人事業が赤字であれば、所得はゼロになり、納付すべき所得税も発生しません。したがって、所得税の確定申告の必要なくなります。しかし、事業が赤字でも確定申告をしたほうがよいこともあります。今回は、事業が赤字あっても確定申告したほうがよいケースと赤字のときの確定申告書の書き方について解説します。

個人事業主が赤字でも確定申告すべき理由

個人事業主の場合、所得税の確定申告が必要なのは、納付すべき所得税がある人になります。所得税は、個人の所得(収入から必要経費を差し引いた額)をもとに所得税を計算するため、事業が赤字でほかに収入がないときは所得はゼロになり、納めるべき所得税は発生しません。つまり、確定申告は不要ということになります。

しかし、赤字で確定申告が不要な場合であっても、確定申告をしたほうがよい人もいます。ここでは、青色申告白色申告に共通するケースを想定し、確定進行が不要な場合でも確定申告をしたほうがよい理由についてご紹介していきます。

理由1.株取引で損失があれば繰越控除できる

個人事業が赤字でも、確定申告をしたほうがよい1つ目の理由は、株取引で損失がある場合、または過去数年以内に株取引による損失がある場合です。所得税の計算上、上場株式等については、譲渡損失の損益通算と繰越控除が認められています。

譲渡損失の損益通算とは、上場株式等の譲渡損失を、上場株式等の配当にかかわる配当所得や利子所得と損益通算すること。例えば、上場株式等の譲渡損失が10万円で、上場株式等にかかわる配当所得が30万円のときは、損益通算により、配当所得を20万円に減額できるということです。

譲渡損失の繰越控除とは、損益通算でも控除しきれない損失があるとき、翌年以後3年間まで損失を繰越控除できることをいいます。損失のある場合は確定申告の義務はありませんが、確定申告により損失を繰り越すことにより、利益が出た年に控除できるので節税対策にもなります。

(繰越控除の例)

  • 2020年に70万円の上場株式等の譲渡損失があった。
  • 2020年以降は上場株式等の譲渡は行っていない。

2020年の上場株式等の配当所得30万円→損益通算により配当所得0円
2021年の上場株式等の配当所得20万円→2020年の譲渡損失の繰越額40万円
                  繰越控除により20万円を差し引き配当所得0円
2022年の上場株式等の配当所得30万円→2020年の譲渡損失の繰越額20万円
                  繰越控除により20万円を差し引き配当所得10万円

ちなみに、上場株式等とは、上場されている株式、ETF、J-REIT、公募株式投資信託、国債や公募公社債などのうち特定公社債などをいいます。株取引でなくても、上場株式等の範囲であれば、上場株式等の配当所得や利子所得との損益通算や繰越控除が可能です。(※一般株式等に該当する非上場株式、大口株主などは対象外です。)

上記のような、上場株式等の損益通算や繰越控除を行うには、確定申告が条件になっています。将来の資産形成などを目的に、証券口座を開いて株取引や投資信託を行っている方は、上場株式などの取引で損失があれば確定申告により所得税を減額できますので、制度を活用しましょう。

理由2.源泉徴収分の還付を受けられることがある

報酬の種類によっては、支払者が源泉徴収を行わなければならないものもあります。例えば、公認会計士や弁護士などの特定の資格を有する人への報酬額、原稿料や講演料などが源泉徴収の対象です。

源泉徴収は、報酬の支払者が、報酬から源泉徴収分を天引きして、支払者が納税義務者に代わって納付しますので、所得税の先払いになります。

しかし、事業が赤字でほかに収入がなければ、本来、所得税は発生しないはずです。事業に関連して、原稿執筆や講演を行った場合などで源泉徴収を受けているときは、確定申告をすることによって、先払いしていた源泉徴収分の還付を受けることができます。また、源泉徴収分の還付以外にも、期中に予納額があれば還付されます

ただし、源泉徴収があっても、事業所得などの総合課税の所得とは切り離して源泉徴収を行う源泉分離課税のもの(預金の利子など)は、還付の対象外になるので注意しましょう。

赤字で確定申告しなかったらどうなる?

ここからは赤字で確定申告をしなかったときのデメリットから、個人事業主が赤字でも確定申告すべき理由を解説します。

理由3.所得を証明できない

赤字でも確定申告をしたほうがよい3つ目の理由は、所得の証明になるためです。確定申告の際に、控えを添付して受付印をもらうことで確定申告書の控えが取得でき、種々の根拠資料に利用できます。仮に、受付印のある控えをなくしても、税務署に開示請求することで、納税証明書を受け取ることができ、納税証明書の中で所得金額を証明することができます。

一方、確定申告をしないということは、確定申告書の控えがないということ。所得を証明する書類を自作することも可能ですが、公的機関で受け付けられた記録がないため、客観的に所得を証明できません。所得を証明できないことで、事業融資や住宅ローンの審査で不利になってしまうこともあります。

理由4.国民健康保険料の算定に影響が出る

赤字でも確定申告をしたほうがよい4つ目の理由は、国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性があるためです。

国民健康保険料は、所得に応じて計算する所得割と、加入者全員が負担する均等割があります。このうち、均等割については、総所得金額が基準以下であれば均等割の減額を受けられます。しかし、減額判定は、世帯主と国保加入者の所得が判明しないと行えません。

確定申告をしないことで、国民健康保険料の軽減が受けられないなど、算定で不利になってしまいます。また、国民健康保険に加入している人は、住民税の申告が必要です。確定申告をしていればその情報は住民税へと受け継がれますが、所得税の確定申告をしなくても、住民税の申告だけをする場合もあります。

理由5.非課税証明書を受け取れない

赤字でも確定申告をしたほうがよい5つ目の理由は、非課税証明書を受け取れないためです。

非課税証明書とは、地方自治体が発行する、住民税が非課税であることを証明する書類のこと。保育園の入園などで必要な書類です。

非課税証明書に関連する住民税は、住民税の申告書、または所得税の確定申告をもとに計算するため、計算のもとになる書類がなければ発行できません。

赤字になった場合の申告書の書き方

赤字のときの確定申告は、通常の確定申告と同じように「確定申告書B 第一表」、「確定申告書B 第二表」の提出が必要です。事業所得者なら、白色申告者は収支内訳書、青色申告者は青色申告決算書の提出もしなければなりません。

以下、赤字のときの確定申告書の書き方についてポイントを絞って解説していきます。

確定申告書1

事業所得者である個人事業主が赤字を確定申告するときは、収入金額等と所得金額等の「事業」の欄にそれぞれ金額を記入していきます。事業所得は赤字ですので、マイナスの金額の頭に△を付けて、△100,000などのように記入します。

確定申告書2

講演料など事業に関連して源泉徴収額(48番)があるときは、納め過ぎた分の所得税が戻ってくるので、還付される額を赤枠の52に番に記入します。

確定申告書3

税金の計算で「還付される税金」があるときは、赤枠の部分に還付金の入金先である金融機関の口座情報を記入します。

以上は、事業所得以外に収入がなく、損失申告もしないときの確定申告の手順です。青色申告者が、翌年以後も繰越控除を受けたいときは、「確定申告書 第四表(損失申告用)」の記入と提出が必要です。上場株式等の譲渡損失など特別な損失を申告するときは、「確定申告書の第一表」や「第二表」とは別に、定められた書類を作成します。

個人事業主の確定申告は青色申告がおすすめ

個人事業主が確定申告をするなら、青色申告をおすすめします。青色申告を選択すれば、本記事で紹介した赤字でも確定申告をすべき5つの理由に加え、純損失の繰越、または繰戻ができるためです。

純損失の繰越は、損益通算を行ってもなお純損失が残るとき、翌年以後3年間にわたり純損失の繰越が行えることです。繰越を選択する代わりに、前年も青色申告をしていれば、純損失の繰戻によって前年の所得税の還付を受けることができます。

赤字の繰越控除については、以下の記事で詳細を説明しています。

ほかにも、青色申告特別控除や青色事業専従者給与など、青色申告には白色申告にはないメリットがいくつもあります。青色申告と白色申告の違いについては、以下の記事で詳細を説明していますので、こちらもご覧ください。

赤字でも確定申告をするメリットのほうが大きい

個人事業が赤字であれば、確定申告は必要ありません。しかし、確定申告の利点、または確定申告をしないことによる欠点を考えると、必要はなくても確定申告をしたほうがメリットは大きいといえます。事業を行っているなら、確定申告は赤字でもするべきと考えて、準備を進めておきましょう。

確定申告のやり方や流れは以下の記事で詳しく説明していますので、こちらもご覧ください。

よくある質問

赤字でも確定申告はすべき?

上場株式等で譲渡損失があるとき、原稿料や講演料を受け取ったときに源泉徴収を受けているとき、は確定申告をしたほうがよいです。詳しくはこちらをご覧ください。

赤字で確定申告しなかったらどうなる?

所得を証明できない、国民健康保険料の算定に影響がある、非課税証明書を受け取れない、といったデメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / CFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。