• 作成日 : 2022年8月26日

不動産所得がある人は青色申告をするべき?メリットと条件を解説!

不動産所得がある人は青色申告をするべき?メリットと条件を解説!

不動産所得がある人は青色申告をすることができます。
ただ、事業規模(おおむね5棟10室以上)という条件を満たさない場合は、青色申告特別控除の額が最大65万円(又は55万円)から10万円に減ってしまいます。本記事では青色申告とは、青色申告のメリット、会社員が副業で青色申告する際の注意点などを解説していきます。

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そもそも青色申告とは?

青色申告とは、所得税の確定申告の方法の1つです。
主に事業者や個人事業主が一定の記帳方法で記帳を行い、記帳に基づいて申告することで「青色申告特別控除」などの税制優遇が受けられます。

そもそも確定申告とは、納税義務者が1年間の税金を申告する手続きのことになります。1月1日から12月31日の間に給与所得者で副業の所得が20万円超の場合や、医療費控除を受けたい場合、または個人事業主・事業者などが原則翌年2月16日から3月15日までに申告の手続きを行います。

申告方法には青色申告と白色申告があり、白色申告は記帳が簡易で青色申告のように事前の届け出が不要というメリットがあります。一方で、青色申告のように特別控除などの税制上の特典が受けられません。

青色申告は最大65万円が控除されるといった税制上のメリットがありますが、白色申告より記帳方法が複雑で作成が難しく、提出書類も増えてしまいます。加えて、一定の期間内に開業届と「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

期間内に開業届と青色申告承認申請書を提出しないと、自動的に白色申告になります。

青色申告と白色申告に関しては、概要・メリット・デメリットをよく理解したうえで選択する必要がありますので、詳しくは下記の記事をチェックしてみましょう。

不動産所得のある人が青色申告するための条件は?

国税庁の「はじめてみませんか?青色申告」では、青色申告をするための条件として「事業所得・不動産所得・山林所得がある人」と記載されています。
土地や建物の貸付、地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸付、船舶や航空機の貸付による所得のうち事業所得・譲渡所得に該当しないものは「不動産所得」とみなされ、青色申告を行うことが可能です。

ただし、不動産貸付業を営む方に関しては、取り扱いが特別で青色申告の大きなメリットである「青色申告特別控除」に一定の要件があります。不動産貸付が事業的規模(独立家屋はおおむね5棟、マンション・アパート等は10室以上)である場合には最大65万円(又は55万円)の控除を受けられますが、事業的規模に満たない場合は特別控除額が最大10万円となります。

会計処理で「現金主義」を選ぶ場合も特別控除は10万円が上限です。
現金主義は、現金の受け取りや支払いがなされた時点で会計処理をするルールで処理の確実性が高いというメリットがあります。不動産所得の金額の合計が300万円以下の場合は、現金主義を選ぶことが可能で「所得税の青色申告承認申請書(兼)現金主義の所得計算による旨の届出書」を提出します。

不動産所得が事業的規模に満たない場合は、特別控除が最大10万円となってしまいますが、青色申告には特別控除以外にもメリットが存在します。

不動産所得のある人が青色申告するメリットは?

不動産所得のある人は青色申告をすることで、①最大65万円(又は55万円)の青色申告特別控除を受けられる、②赤字を翌年以降3年繰越せる、③貸倒損失の一部を経費として計上できる、④専従者給与控除を受けられるという主に4つのメリットがあります。

最大65万円の青色申告特別控除が受けられる

青色申告では最大65万円の特別控除を受けることができます。
特別控除には65万円・55万円・10万円があり、それぞれ以下の要件を満たす必要があります。

控除額
65万円
55万円
10万円
要件
(1)不動産所得・事業所得がある

(2)所得に関する取引を複式簿記で記帳している

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表損益計算書を確定申告書に添付し控除を受ける金額を記載、期限内に提出する

(4)下記ア・イのうちいずれかを満たしている
ア.申告する年の事業に関わる仕訳帳総勘定元帳を電子帳簿として保存している

イ.申告する年の所得税の確定申告書、貸借対照表・損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用している
(1)不動産所得・事業所得がある

(2)所得に関する取引を複式簿記で記帳している

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付し控除を受ける金額を記載、期限内に提出する
65万円又は55万円控除に該当しない
不動産所得の場合の要件事業的規模(5棟10室以上)である
会計処理が現金主義ではない

3年以内の赤字分を繰越せる

空室が多い、修繕費が多いなど不動産所得で赤字(損失)がある際に、損益通算を行っても控除しきれない部分の金額(純損失)が生じた場合には、損失額を翌年以降3年間にわたり繰越して、各年分の所得金額から控除する「純損失の繰越し」が可能となります。

前の年も青色申告をしている方は赤字が生じた年の前年に繰戻して、前年分の所得税の還付を受ける「純損失の繰戻し」もできます。純損失の繰戻しは、赤字が生じた年の確定申告書を提出期限までに提出する必要がありますので注意しましょう。

貸倒損失が経費計上可能

不動産所得・事業所得などがある青色申告者が、事業によって生じた売掛金・貸付金などの金銭債権について、12月31日時点における貸倒れによる損失の見込額として、金銭債権合計額のうち5.5%以下の額を必要経費(貸倒引当金勘定)として算入できます。

金銭債権のうち、貸倒れ・貸倒れに類似する一定の事由による損失の見込額については、それぞれの事由に応じた限度額までを、貸倒引当金勘定に繰入れることができます(個別評価による貸倒引当金の繰入れ)。

個別評価による貸倒引当金の繰入れをする際には、必要経費に算入された金額の計算の基礎となった金銭債権は一括評価を行う帳簿価額の合計額から控除されます。

また、事由が生じていることを証明する書類・担保権の実行、弁済の見込みがある場合には金額を明らかにする書類などの保存が必要となります。

専従者給与控除を受けられる

青色申告者と生計を共にしている配偶者・親族のうち、年齢が15歳以上で、青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与を必要経費として算入することができます。

事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出し、届出書に記載する金額の範囲内であり、また専従者の労働に対する金額として適正であることも要件となります。

なお、青色事業専従者として給与を支払われている人は配偶者控除扶養控除の対象外となりますので注意しましょう。

4つのメリットに関して、詳細は以下の記事をご参照ください。

会社員の副業でも青色申告は可能?

会社員の副業でも不動産所得がある方は青色申告を行うことは可能です。しかし、不動産事業を行うことで、本業を辞めたときに失業手当がもらえなくなってしまいますので注意が必要です。

会社を辞める際の注意点

青色申告をするためには開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。副業で事業を行っていれば個人事業主となり、本業で失業した際にたとえ雇用保険に加入していても失業手当(雇用保険の基本手当)を受給できません。
失業手当は主に再就職を目指す方の生活保障・就労促進を目的としていますので、個人事業主として事業を営んでいる方は対象外となります。

本業の会社を辞める前に事業を廃止することで、雇用保険を受給できる要件を満たせる可能性があります。

不動産所得の青色申告する際のポイントは?

不動産所得がある方が青色申告をする際のポイントは、事前に管轄の税務署に開業届・青色申告承認申請書を提出する、不動産貸付が事業規模であるかを確認することです。

事前に開業届・青色申告承認申請書を提出する

青色申告を希望する方は、事前に開業届と青色申告承認申請書を管轄の税務署に提出しなければいけません。郵送も可能です。
開業届は事業開始日から1か月以内、青色申告承認申請は基本的に承認を受ける年の3月15日までとなっています。1月16日以後に開業した際には、開業の日から2か月以内と定められています。
開業届・青色申告承認書が無事に受領された際に税務署から連絡がある訳ではなく、提出した月の翌月末までに処分の通知が無い場合は承認されたものとみなされます。

配偶者や親族を「青色事業専従者」として支払った給与を必要経費に算入する場合には「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出します。
必要経費として算入する年の3月15日まで(1月16日以後開業した際・新たに事業専従者を有することになったときは2か月以内)に提出が必要です。

不動産貸付が事業規模かどうかを確認する

不動産貸付が5棟10室以上の「事業規模」であるかを確認しましょう。
事業規模に満たない場合には、青色申告特別控除が最大10万円となり事業規模のケースより節税の効果が低くなってしまいます。
ただ、青色申告を行うことで10万円の特別控除は受けられ、純損失の繰越し・専従者給与控除などは適用されます。

青色申告で不動産所得のメリットを得よう!

青色申告とは何か、不動産所得がある人の青色申告ができる条件、青色申告のメリットとサラリーマンの青色申告、青色申告を行う際のポイントを解説しました。青色申告には特別控除が受けられる、赤字を3年間繰越せる、専従者の給与を経費として計上できるなどのメリットがあります。中でも最大65万円の特別控除によって税金の負担が軽減されることに魅力を感じる方は多いのではないでしょうか。

一方で、不動産貸付が事業規模でない方は特別控除が最大10万円となります。会社員は本業を辞めたときに失業手当がもらえないというデメリットもあります。自身が青色申告をした場合のメリット・デメリットを十分に考慮し検討しましょう。

よくある質問

不動産所得は青色申告できる?

事前に開業届と青色申告承認申請書を提出することで青色申告が可能です。詳しくはこちらをご覧ください。

青色申告で最大65万円(又は55万円)の特別控除が受けられる不動産所得の事業規模は?

独立家屋はおおむね5棟、マンション・アパート等は10室以上です。詳しくはこちらをご覧ください。

不動産所得がある人が青色申告を行う方法は?

開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出し、翌年2月16日~3月15日に申告します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:河野雅人(公認会計士・税理士)

東京都新宿区に事務所を構え活動中。大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。年間約10件、セミナーや研修会等の講師としても活躍している。趣味はスポーツ観戦。

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