- 更新日 : 2021年9月29日
復興特別所得税の税率や計算方法、納付方法とは?
日本では、2011年3月11日に起きた東日本大震災に対する復興支援を目的とし、2013年より復興特別税の納付が全所得者に義務付けられています。
個人の所得から納税する復興特別所得税は2013年から2037年までが施行期間となっています。一方、法人が対象になっている「復興特別法人税」は2012年から2014年の3年間の予定でしたが、2014年に前倒しで廃止になりました。
ここではこの「復興特別税」について説明するとともに、その存在意義について考えていきたいと思います。
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目次
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復興特別税とは何か
まずは復興特別所得税が創設された経緯や概要、使い道について解説します。
復興特別税の成り立ち
復興特別税は今も各地に大きな爪跡を残す東日本大震災を受けて検討され始めました。震災発生から半年と少し経った11月の末には参議院本会議で「復興財源確保法」「地方財確法」が可決され、成立しています。
これに基づき、2012年の1月には特別法人税に関する政令・省令が公布され、2013年1月1日から、復興特別税の課税が導入されています。
復興特別税の概要
復興特別税は復興特別法人税と復興特別所得税からなります。復興特別法人税は通常の法人税額に10%をかけた金額から、利子などに課された復興特別所得税などの税額控除を引いた数字です。2014年度で廃止されています。廃止の理由としては「代替財源の確保の目途がたった」「消費増税による消費縮小への対応」が挙げられています。
対して復興特別所得税は、通常の所得税額に2.1%を掛けた金額です。会社員など源泉徴収票を貰える立場の人の場合は、源泉徴収税額に最初から算入されています。2037年までこの税金は続く見通しで、今のところ廃止の議論はなされていません。
復興特別税の使途
復興特別税の使途は、もちろん東日本大震災からの復興のための財源です。
「東日本大震災復興特別会計歳出暫定予算予定額各目明細書」を見てみると各省庁の管轄で、復興のために必要な経費が計上されています。例えば「金融機能安定確保に必要な経費」や「廃棄物・リサイクル対策の推進に必要な経費」などです。他にも復興庁のサイトを見ると、現在行っている取り組みや制度についての説明が詳細に載っています。
参考:
東日本大震災復興特別会計歳出暫定予算予定額各目明細書
復興庁
復興特別税の対象
上述したように、復興特別税は法人の所得に課税される復興特別法人税と、個人の所得税に課税される復興特別所得税があります。また、住民税にも復興特別税が課されています。
復興特別法人税
復興特別法人税は基本的には全ての法人の所得に対して課税されます。
これには設立前の会社や町内会、政党要件を満たさない政治団体やマンションの管理組合といった収益事業を行う人格のない社団なども含まれています。
ただし、赤字の企業は、法人税を免除されています。復興特別法人税はあくまで「法人税×10%」が原則なので、「0×10%」をしても0円ですから、復興特別法人税は課せられないことになります。
復興特別所得税
復興特別所得税は所得税の源泉徴収義務者に対して平等に課税されます。
ただしOECD加盟国間で定められた租税条約に基づいた、所得税法及び租税特別措置法という国税に関する特例を定めた法律により、「限度税率」が適用されている場合は、課税対象からは外されます。
また所得税額が0円の個人も、復興特別法人税の時と同様、かけるべき源泉徴収税額が存在しないため、課税対象外となります。例えば、基礎控除+給与所得控除=103万円以内の年収の人です。
住民税
復興特別税は住民税にもわずかですが課税されています。
加算されるのは住民税の均等割額の部分。均等割額というのは所得の多い少ないにかかわらず、当該自治体に住所を置く人が一律に支払わなければならない住民税額で、標準税率において市町村民税3,000円、道府県民税1,000円と定められています。これに対してそれぞれ市町村民税と道府県民税にそれぞれ500円ずつ、計1,000円の復興特別税が課されています。期間は2014年から2023年までの10年間です。
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復興特別所得税の税率及び計算方法
ここでは、復興特別所得税の税率と計算方法について解説します。
復興特別所得税の税率
復興特別所得税の税率は「所得税額×2.1%」です。後述しますが、先に所得税額を計算し、求めた所得税額に2.1%を乗じて、復興特別所得税を計算します。
復興特別所得税の計算方法
復興特別税の負担額は一体どれくらいなのでしょうか。
住民税に関しては前述の通り一律で「500円×2=1,000円」の負担がかかってきます。問題は復興特別所得税です。そもそもその源泉徴収税額はどのように計算されるのでしょうか。下表は現在の所得税の税率の一覧です。計算する際には課税所得金額に、税率を掛けます。
課税される所得金額 | 税率(%) | 控除額(円) |
---|---|---|
1,000円から194.9万円まで | 5% | 0円 |
195万円から 329.9万円まで | 10% | 97,500円 |
330万円から 694.9万円まで | 20% | 427,500円 |
695万円から 899.9万円まで | 23% | 636,000円 |
900万円から 1,799.9万円まで | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円から 3,999.9万円まで | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、都内在住の年収500万円(給与所得の金額が346万円)の独身者(男性)の場合を考えてみましょう。
彼の各種控除額はざっと計算して以下の通りです。
給与所得の金額 – 控除額 = 課税所得金額課税額
346万円–108万円=238万円
課税所得金額課税額 × 所得税率(表より)= 所得税額
238万円×10%-9万7,500円=14万500円
所得税額 × 復興特別所得税率 = 復興特別所得税額
14万500円×2.1%=2,950円
所得税額の2.1%は2,950円です。これが上記例の場合の復興特別所得税額です。源泉徴収票が手元にある人は、「源泉徴収税額」の金額を1.021で割って、その数字を源泉徴収税額から差し引くと計算できます。
復興特別所得税の納付方法と納付期限
ここからは、復興特別所得税の納付方法と納付期限について見ていきましょう。
復興特別所得税の納付方法
復興特別所得税は、所得税と一緒に納めることになります。そのため、会社員の場合は、所得税と一緒に復興特別所得税も毎月の給料から源泉徴収されます。個人事業主の場合は、確定申告で納める所得税と復興特別所得税の金額を計算し、同じ納付書(振替納税の場合は口座引き落とし)でまとめて納付します。
復興特別所得税の納付期限
では、復興特別所得税をいつまでに納付しないといけないのかについて見ていきましょう。
復興特別所得税の納付期限は、所得税と同じです。会社員の場合、勤務先が毎月の給料から源泉徴収した所得税と復興特別所得税を原則、翌月10日までに国に納めます(納期特例の場合は、7月10日と1月10日の2回に分けてそれぞれ半年分を納付)。
個人事業主の場合は原則、確定申告の期限である3月15日までに、所得税と復興特別所得税を国に納めます。
確定申告における復興特別所得税の記入例
復興特別所得税の金額は、確定申告書に記入する必要があります。記入箇所は確定申告書第一表の「復興特別所得税額」欄です。
①再差引所得税額
所得金額に所得税率を乗じ、税額控除などを差し引いた後の納付する所得税の金額を記載する欄です。
②復興特別所得税額
再差引所得税額に2.1%を乗じて、復興特別所得税額を計算します。
③所得税及び復興特別所得税の額
再差引所得税額と復興特別所得税額を合算した金額を記載します。
復興特別所得税の使途は見守るべき
復興特別税の使途は復興財源であるべきです。しかし、平成25年度(2013年度)以降の使用用途としては「復興」の概念から外れていると言われる声が度々上がっています。以下の項目への繰入などがその一例です。
- 国立国会図書館事務に必要な経費
- 沖縄教育振興事業費
- 沖縄道路整備事業費社会資本整備事業特別会計
また復興特別法人税は前述の理由で2014年度に廃止されています。その一方で、個人に課せられる復興特別所得税はそのまま残っています。自分たちの払った税金がいったいどこにどのように使われているのか、私たちは国民として常に注意深く見守る必要があります。
復興特別税の計算と納付を忘れずに
復興特別所得税は、所得税と一緒に国に納付する必要があります。会社員の場合は給料から源泉徴収されるため忘れることはありませんが、個人事業主など確定申告をする場合は、自分で計算する必要があります。忘れずに計算を行い納付しましょう。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
もっと読むよくある質問
復興特別税はなぜできたの?
復興特別税は今も各地に大きな爪跡を残す東日本大震災を受けて検討され始めました。震災発生から半年と少し経った11月の末には参議院本会議で「復興財源確保法」「地方財確法」が可決され、成立しています。詳しくはこちらをご覧ください。
復興特別法人税とは?
復興特別法人税は基本的には全ての法人の所得に対して課税されます。これには設立前の会社や町内会、政党要件を満たさない政治団体やマンションの管理組合といった収益事業を行う人格のない社団なども含まれています。詳しくはこちらをご覧ください。
復興特別所得税とは?
復興特別所得税は所得税の源泉徴収義務者に対して平等に課税されます。また復興特別税は住民税にもわずかですが課税されています。詳しくはこちらをご覧ください。
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