• 更新日 : 2024年9月25日

申告納税額とは?納税する方法や申告納税が必要な人を解説

申告納税額という言葉は聞いたことがあっても、実はよく知らないという方も多いのではないでしょうか。とくに会社勤めをしていると、税金について触れる機会はそれほど多くないかもしれません。

納税者自らが申告して納税する金額が、申告納税額です。本記事では申告納税額について、納税方法などを含めて詳しく紹介します。

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申告納税額とは?

申告納税額とは、納税者自らが所得税などの税額計算を行い、申告して納める税額のことを指します。決められた金額の税金を払うのではなく、税金を納める人が自分で納税額を計算して申告する制度が、申告納税制度です。申告納税制度は、所得税や法人税など多くの税金に採用されています。

申告納税制度は納税者自らが税法を正しく理解して、税法に従って申告と納税を行うという民主的な考えに基づいています。一方で固定資産税や不動産取得税のように、国や地方自治体が税額を計算して納税者に通知する制度が、賦課課税制度です。

申告納税制度では税金の種類ごとに期限が決められており、たとえば所得税であれば翌年の2月16日~3月15日の間に申告しなければなりません。(年度によって多少の誤差はあります)申告期限を過ぎてしまうと、「加算税」や「延滞税」が課される場合があるため、注意が必要です。

所得税では会社員の給料のように、税金が源泉徴収されている場合があります。また予定納税のように前払いで税額を納めている場合もあるでしょう。このような場合は、前払いで納めた納税額との差額分が申告納税額になります。

申告納税額を納税する方法

申告納税額の納付方法には、さまざまな方法があります。税金といえば口座振替のイメージが強いかもしれませんが、現金で納付したい方もいるでしょう。とはいえ、普段仕事をしている方であれば、窓口での納付が難しいなどの制約もあります。ここではそれぞれの納付方法の特徴について、紹介します。

税務署や金融機関の窓口で現金納付をする方法

税務署や金融機関の窓口で、納付書を使って現金で払う方法です。税金の納付方法としては、最もオーソドックスな支払い方法といえるでしょう。税金を払うために必要な納付書は税務署から送られてくるか、無い場合は税務署や金融機関の窓口に備えてあります。窓口で現金納付する特徴は、以下の通りです。

【メリット】

  • 手数料がかからない

【デメリット】

  • 営業時間内しか支払えない
  • 窓口まで行かなければいけない

窓口での現金納付は手数料がかからない点はメリットですが、わざわざ税務署や金融機関まで行かなければいけません。また税務署や金融機関の営業時間は平日の日中のため、普段仕事をしている人は時間を捻出する必要があります。

さらに金融機関では高額な現金取引の場合は、本人確認などを厳格に求められる場合もあります。このように土日や夜間では納付できないことや、手間がかかる点は現金納付のデメリットです。

コンビニで支払いをする方法

税金はコンビニでも支払いできます。国税庁ホームページで提供している以下のサイトからQRコードを印刷し、コンビニに持参することで納付できます。すべてのコンビニで対応しているわけではありませんが、多くのコンビニで利用が可能です。

コンビニ納付の特徴は、以下の通りです。

【メリット】

  • 手数料がかからない
  • 買い物のついでに納付できる

【デメリット】

  • クレジットカードや電子マネーは使えない
  • 30万円までしか納付できない

手数料がかからず買い物のついでに納付できるのがコンビニ納付のメリットです。デメリットとしてはクレジットカードや電子マネーが使えないことと、納付できる金額が30万円までと上限がある点です。

参考:国税庁 G-2-6 コンビニ納付(QRコード)

クレジットカードで納付をする方法

税金の納付方法は現金だけではありません。日常の買い物とおなじようにさまざまな支払い方法に対応しており、カード払いも可能です。カードで支払うためには、Webで下記「国税クレジットカードお支払いサイト」にアクセスして、支払いに関する情報を入力します。

最近ではキャッシュレス決済が普及しており、現金をあまり使わない人も少なくありません。そのため多くの人にとっては利便性の高い支払い方法といえるでしょう。

こちらの納税方法の特徴は以下の通りです。

【メリット】

  • 自宅でいつでも手続きできる
  • 分割やリボ払いも可能

【デメリット】

  • 決済手数料がかかる
  • 領収証書が発行されない

インターネット環境が整っていれば、自宅でいつでも手続きできます。また分割・リボ払いも可能です。しかし所定の決済手数料がかかることと、領収証書が発行されない点には注意しましょう。

参考:国税クレジットカードお支払いサイト

自動振替を利用して納付する方法

納税者本人名義の口座を登録して、口座からの自動振替で納付する方法です。自動振替を利用するためにはe-Taxで口座振替依頼書を提出するか、税務署もしくは金融機関へ専用の依頼書を提出する必要があります。

これまで紹介してきた納付方法と違って、口座振替は自動的に引き落とされます。そのためうっかり納税を忘れるという可能性が少ない納税方法といえるでしょう。自動振替の特徴は、以下の通りです。

【メリット】

  • 手数料がかからない
  • ほかの納付方法に比べると納付期日に余裕がある
  • 一度手続きすれば翌年以降も利用できる

【デメリット】

  • 口座を登録する手続きが必要
  • 残高不足だと延滞税が発生する

手数料もかからず、一度手続きをすれば翌年以降も自動振替できる点がメリットです。また振替納税はほかの支払い方法に比べると、振替日が遅いため期日に余裕があります。しかし口座残高不足で振替できない場合、延滞税などが課される点には注意しましょう。

各種料金支払いサービス「ペイジー」で納付する方法

料金支払いサービス「Pay-easy(ペイジー)」を使って納付する方法です。Pay-easyとは税金などの支払いを、パソコンやスマホ、ATMなどで支払えるサービスです。Pay-easyを使えば、わざわざ金融機関や窓口に行く必要がありません。

【メリット】

  • 手数料がかからない
  • 自宅で納付手続きができる

【デメリット】

  • 事前の手続きが必要
  • e-Taxに慣れていないと使いにくい

手数料もかからずいつでも自宅で手続きできますが、事前にインターネットバンキングなどの環境を整える必要があります。またe-Taxで納付情報データを登録する必要があるなど、慣れていないと使いにくい点には注意が必要です。

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申告納税が必要な人

申告納税は法人税など多くの税金に採用されていますが、一番身近なのが所得税でしょう。所得税において、確定申告による申告納税が必要な人を紹介していきます。

給与所得者

給与所得のみであれば、毎月の給与から所得税は源泉徴収されています。さらに年末調整で精算されるため、確定申告は必要ありません。しかし給与所得者であっても、下記に該当する方は確定申告が必要です。

  • 給与収入が2,000万円を超える場合
  • 給与以外の所得が20万円を超える場合
  • 同族会社から貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払いを受けた場合

退職所得者

退職所得があった場合、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば確定申告は必要ありません。退職所得は長年の勤務に対する報酬という事情を考慮して、給与などの所得と比べると控除が大きく受けられます。

退職金を受け取るときまでに、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、ほかの給与と同様に所得税が源泉徴収されてしまいます。このような場合は確定申告することで税金の還付が受けられるため、確定申告をしたほうがよいでしょう。

事業所得者

自営業やフリーランスで仕事をしており、事業所得が発生している人は基本的には確定申告が必要です。ただし事業所得が基礎控除の48万円を下回る場合は、所得税が発生しないため確定申告は必要ありません。

事業所得は、次の計算式で算出します。

事業所得=収入-経費

ただし事業所得が赤字の場合は、確定申告をしたほうがよい場合もあります。個人事業主青色申告をしている場合の赤字は、確定申告することで3年間繰越が可能です。翌年以降の黒字から赤字を差し引けるため、所得税を抑える効果があります。

また不動産所得などほかの所得がある場合は、確定申告することで損益通算ができます。事業所得の赤字分をほかの所得の黒字と相殺できるため、所得税を抑えることが可能です。

事業所得者は年間の売上と経費など所得証明が必要となる場合に備え、所得税が発生しなかったとしても、できれば確定申告をしておきましょう。

不動産所得者

不動産収入がある場合も、確定申告が必要です。事業所得と同様に収入ではなく、収入から経費を引いた所得が黒字である場合に申告が必要になります。最近では会社員の副業で、不動産投資を行う人も増えています。

給与収入がある場合は、不動産所得が20万円を超えた場合に確定申告が必要になる点には注意しましょう。

株式の売却者

株式を売却して所得を得た場合も、確定申告が必要です。給与所得者であれば、売却によって得た利益が20万円を超える場合は、原則確定申告が必要です。しかし株式を売却した際に、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、確定申告は必要ありません。

特定口座は金融商品の取引にかかる申告・納税を簡単にするための口座で、源泉徴収ありにしておけば税金は売却時に源泉徴収されます。特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば確定申告する必要はありませんが、確定申告したほうがよい場合もあります。

上場株式を売却して損失が出ている場合、確定申告することでほかの銘柄の売却益と損益通算(相殺)が可能です。さらに譲渡損失がある場合は、上場株式の利子・配当との損益通算もできます。損益通算を行うためには、特定口座であっても確定申告をしなければなりません。

また株式の譲渡損失が出た場合、確定申告をすることで3年間繰越することが可能です。翌年以降の譲渡所得と相殺できるため、税金を抑える効果があります。

配当所得者

株式などの配当を受け取った場合、上場か非上場かによって、以下のように確定申告の有無が違います。

上場株式からの配当源泉徴収されるため確定申告不要
非上場株式からの配当原則必要、ただし10万円以下の場合は不要

非上場株式からの配当の場合は、源泉徴収されていても確定申告が必要です。また前述した株式の譲渡所得と、配当所得を損益通算させる場合は確定申告をしなければなりません。さらに確定申告をしなくてもよい場合でも、確定申告すれば配当控除を受けられます。

譲渡所得者

譲渡所得が発生した場合も、確定申告が必要です。譲渡所得とは不動産やゴルフの会員権・船舶車両・骨董品・金地金などの保有する資産を売却して得た所得を呼びます。給与所得者の場合は前述のように所得が20万円を超える場合に、確定申告をしなければなりません。

譲渡所得の中でも不動産の譲渡は高額になることもあり、さまざまな特例が設けられています。確定申告が不要な場合でも、下記のような特例を利用するためには確定申告が必要です。不動産の譲渡所得に利用できる、主な特例を紹介します。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例マイホームを売却した際の譲渡所得から、3,000万円を控除できる
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例相続で引き継いだ不動産を売却した場合、相続税の一定額を取得費に加算できる
マイホームを売ったときの軽減税率の特例10年以上保有しているマイホームを売却した場合、軽減税率が適用できる

上記の特例は一部です。特例の詳細や全容は、国税庁のHPを参照してください。上記のような特例を利用する場合は、確定申告が必要です。

参考:国税庁 No.3223 譲渡所得の特別控除の種類

山林所得者

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままの山林を譲渡したりした場合の所得を指します。ただし所有期間が5年未満の場合は、雑所得もしくは事業所得に該当します。また山林ごと売却する場合は、山林所得ではなく譲渡所得になるため注意しましょう。

山林所得は収入から経費を差し引き、さらに50万円の特別控除を引いて計算します。山林所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。

一時所得者

一時所得とは、具体的には下記のような所得を指します。

  • 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
  • 競馬や競輪などの払戻金
  • 懸賞や福引などの賞金
  • 遺失物取得者の報労金等
  • 法人からの贈与

一時所得は収入から経費がある場合は経費を引いて、さらに特別控除の50万円を引いても所得が発生する場合に確定申告が必要です。一時所得の特別控除の50万円は生じた取引ごとではなく、一時所得全体に対する控除である点には注意しましょう。

雑所得者

FX・暗号資産での収入や、副業などで得た講演料や原稿料、年金収入のほか非営業用の貸金の利子などは雑所得に分類されます。雑所得が発生した人は原則確定申告が必要です。しかし公的年金受給者には「公的年金にかかる確定申告不要制度」があり、公的年金等の収入合計額が400万円以下で、個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金などが20万円以下であれば確定申告は必要ありません。

ただし収入が公的年金だけの場合でも、医療費控除生命保険料控除を利用する場合には確定申告が必要になります。また給与所得者で雑所得が20万円以下の場合も、確定申告は不要です。副業など業務にかかる雑所得は、事業所得などと同様に収入からかかった経費を差し引いて算出します。

申告納税を正しく理解して納税しよう

申告納税額とは納税者自らが所得を申告して計算した税額のことです。所得税など多くの税金では申告納税制度を採用しており、期限までに正しく納税しなければ延滞税などが課されてしまいます。申告納税制度に対し、固定資産税のように税額が通知される税金を賦課課税と呼びます。

所得税の場合は確定申告を行って、納税しなければなりません。今回紹介している納税義務のある方は、納税方法を参考にして正しく納税しましょう。

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