- 更新日 : 2022年12月19日
譲渡損失とは?不動産売却時の繰越控除や特例の適用方法について解説!

譲渡損失とは、株式や投資信託、不動産などの資産を売却したときに生じる損失のことです。売却して得た金額よりも購入の際に支払った金額が多いと譲渡損失が生じます。なお売却して得た金額とは、売却価格から手数料などを差し引いた金額です。
譲渡損失が生じたときは、確定申告をすることで損益通算や繰越控除などを利用できるようになります。いずれも課税所得額を減らすことができ、所得税や住民税などの税金の節約につながります。
マイホームを買い換えたときや住宅ローンが残っているマイホームを売却したときも、譲渡損失が生じたときは損益通算や繰越控除の特例を利用可能です。損益通算や繰越控除についてわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
譲渡損失とは?
「譲渡損失」とは、資産を売却したときに生じる損失のことです。反対に利益が生じるときは「譲渡益」と呼び、譲渡損失と合わせて「譲渡損益」と呼ぶこともあります。譲渡損失は、キャピタルロスとも呼ばれます。
なお、譲渡益は課税対象となるため、必要に応じて確定申告を行い、所得税や住民税を納付しなくてはいけません。一方で譲渡損失は課税対象とはならないので、確定申告や納税は不要です。しかし、譲渡損失を確定申告することで他の譲渡益と通算して課税額を減らしたり、翌年以降の譲渡益から控除したりできることがあります。
不動産売却で利益が生じると譲渡所得税と住民税がかかる
不動産売却で利益が生じると、譲渡益に対して所得税と住民税が課せられます。不動産売却による税金は、不動産を所有していた期間によって税率が変わる点に注意しましょう。
長期(売却した年の1月1日時点で所有期間5年超)のときは、所得税は15%、住民税は5%の税率で計算します。一方で短期(売却した年の1月1日時点で所有期間5年以下)のときは、所得税は30%、住民税は9%の税率です。いずれも所得税に対して、2.1%の割合で復興特別所得税が発生するので、合わせて納付します。
不動産売却で譲渡損失が生じると税金の軽減措置が受けられる
その年の1月1日時点で5年を超えて所有するマイホームを売って譲渡損失が生じたときは、税金の軽減措置が受けられることがあります。
住宅ローンを組んでマイホームを買い換える場合は、売ったマイホームの譲渡損失の金額について損益通算及び繰越控除ができるので、節税を実現することが可能です。買い換えないときも、住宅ローンの残高が残っているマイホームを売却して損失が生じた場合は、譲渡損失の金額について損益通算及び繰越控除ができます。
いずれも確定申告をすることで税金の軽減措置が適用されるので、適切に手続きをするようにしましょう。
譲渡損失の繰越控除とは?
繰越控除とは、損益通算で控除しきれない損失を翌年以降の所得から差し引くことです。譲渡益は所得税と復興特別所得税、住民税の対象なので、損失が発生した翌年以降に繰越控除を実施することでこれらの節税につながります。
不動産売却で生じた損失において繰越控除を利用できる特例としては、次の2つが挙げられます。
- マイホーム買い換え時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- マイホーム売却時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
それぞれの特例について、詳しく見ていきましょう。
マイホーム買い換え時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを買い換える場合は、売ったマイホームの譲渡損失の金額について損益通算及び繰越控除の特例が適用できることがあります。特例が適用されると、譲渡損失を給与所得や事業所得などの他の所得と損益通算でき、課税所得額を減らして所得税や住民税の減額が可能です。
また、損益通算することで課税所得額がなくなった場合は、残りの譲渡損失を翌年以降に繰り越すことができます。繰越控除は最大3年間適用されます。
なお、マイホームの売却と買い換えは同時に実施する必要はありません。売却の前年から翌年までの3年間であれば、いつ買い換えても特例適用が可能です。
また、今住んでいるマイホームだけでなく、以前に住んでいたマイホームについても、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することで、特例の適用が可能になります。ただし、旧居宅の売主と買主が親子や夫婦など特別の関係にある場合は、この特例は利用できません。
マイホーム売却時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
住宅ローンの残高が残っているマイホームを売却し、損失が生じたときは、特例が適用されて譲渡損失の金額について損益通算及び繰越控除できることがあります。この控除もマイホーム買い換え時の特例と同じく、旧居宅の売主と買主が、親子や夫婦など特別の関係にある場合は利用できないので注意しましょう。
特例が適用されると、マイホームの売却によって生じた譲渡損失を給与所得や事業所得などの他の所得と損益通算することが可能です。
また、損益通算しても譲渡損失が残ったときは、翌年以降に繰り越して課税対象額を減らすことができます。
なお、繰越控除は最大3年間です。3年後に譲渡損失が残ったときは、翌年以降に繰り越すことはできません。
譲渡損失の繰越控除の特例を受けるには確定申告が必要!
譲渡損失があり、繰越控除と損益通算の特例を受けるためには、確定申告が必要です。確定申告をしなかったときは、特例適用の条件を満たす場合でも特例は適用されません。確定申告は、譲渡損失が発生した翌年に実施します。忘れずに手続きをし、損益通算や繰越控除が適用されるようにしましょう。
確定申告手続きの流れ
マイホームの売却や買い換えの際の損益通算・繰越控除の特例を利用するときは、売却した翌年に確定申告を行うことが必要です。
以下の流れで手続きを行いましょう。
確定申告の手続きは、税務署の窓口以外にも、郵送やオンライン(e-Tax)で実施することが可能です。また確定申告が受理されて、過払いの税金があることがわかった場合には、1か月〜1か月半後に還付金が指定した口座に入金されます。e-Taxを利用した場合には、2週間〜3週間で還付金を受け取ることができます。
確定申告の必要書類
マイホームの売却や買い換えの際の譲渡損失の特例を受けるためには、確定申告の際に以下の書類が必要です。
- 住民票
- 登記事項証明書(写し)
- 売買契約書(写し)
- マイホームの買い換え特例の場合は買い換えた資産を証明する書類
- 住民ローンが残っているマイホームの売却特例の場合は譲渡資産の住宅
- ローンの残高証明書(売買契約日の前日のもの)
確定申告の提出方法・期限
確定申告の期限内に書類を作成して、e-Taxか郵送、窓口(税務署)で提出します。
なお、確定申告の時期は例年2月中旬〜3月中旬頃までですが、土日と重なるなどの理由で開始日や最終日が変わることもあるので注意が必要です。提出する前に国税庁ホームページで時期を確認しておきましょう。
参考:申告と納税|国税庁
譲渡損失の繰越控除は住宅ローン控除と併用できる?
マイホームの買い換え特例や住宅ローンが残っているマイホームの売却特例は、住宅ローン控除と併用することが可能です。譲渡損失の損益通算や繰越控除をしつつ、住宅ローン控除によって所得税や住民税の還付を受けられることがあります。
ただし、譲渡損失の損益通算や繰越控除の特例を利用することで、所得税や住民税が減額され、住宅ローン控除で還付される金額が減る可能性があります。また、特例により課税所得額がなくなると、住宅ローン控除が適用されても還付金がなくなる点にも注意が必要です。
住宅ローン控除についてより詳しく知りたい方は、次の記事をご参照ください。
不動産だけでなく上場株式等の譲渡損失も繰越控除が可能
正しく確定申告することで、上場株式や投資信託の譲渡損失に対しても、損益通算や繰越控除を適用することができます。また、源泉徴収ありの特定口座を利用して株式や投資信託を運用・売買している場合には、確定申告しなくても特定口座内で損益通算を実施することが可能です。また、譲渡損失のある取引が実行された場合には、源泉徴収された税金のうち、過払い分が還付されます。
しかし、源泉徴収ありの特定口座を2つ以上開設している場合には、それぞれの口座で生じた譲渡損失や譲渡益を自動的に通算することはできません。確定申告を正しく実施することで、複数口座間での損益通算と繰越控除が適用されるようにしましょう。
株式等の譲渡損失の繰越控除についてより詳しく知りたい方は、次の記事をご参照ください。
譲渡損失の繰越控除の特例利用時は確定申告を忘れずに!
繰越控除や損益通算を適用することで、譲渡損失があるときは節税できることがあります。しかし、譲渡損失があっても確定申告をしないときは、繰越控除や損益通算は適用されません。例えば上場株式や投資信託の運用・投資により譲渡損失が生じたときは、忘れずに確定申告を実施し、適切に節税するようにしましょう。
また、住宅ローンが残っているマイホームを売却するときや、マイホームを買い換えるときに譲渡損失が生じたときも、確定申告を行うことで特例が適用されます。給与所得や事業所得などの所得から譲渡損失分を損益通算・繰越控除できるため、大幅な節税につながることもあります。いずれも確定申告の手続きをしないと適用されないので、忘れずに申告しましょう。
よくある質問
譲渡損失とは?
不動産や株式、投資信託などの資産を売却し、生じた損失のことです。売却時に得た金額よりも取得時に支払った金額が多いときに生じます。詳しくはこちらをご覧ください。
損益通算とは?
利益と損失を相殺することです。異なる口座間でも損益通算することができます。譲渡損失があるときに損益通算をすると、課税所得額が減り、所得税と住民税を節税することが可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
繰越控除とは?
繰越控除とは、損益通算しても譲渡損失が残っているときに利用できる制度です。翌年以降に譲渡損失を繰り越して、利益と相殺し、翌年以降の課税所得額を減らすことができます。詳しくはこちらをご覧ください。
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