• 更新日 : 2023年12月5日

個人事業主向けに国民健康保険を解説!加入方法から仕訳と勘定科目まで

サラリーマンから独立して個人事業主になった場合、これまで会社で加入していた健康保険から国民健康保険へ切り替える手続きが必要です。国民健康保険は地方自治体が運営し、 保険料の計算方法は住んでいる地域により異なります。

本記事では、国民健康保険の概要や個人事業主になった際に切り替える手続きについて説明します。また、仕訳をするときの勘定科目や、確定申告社会保険料控除をする場合について紹介するので参考にしてみてください。

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個人事業主になったら国民健康保険に加入しよう

国民はすべて公的な医療保険に加入する義務があります。会社に勤務しているときは社会保険に加入しますが、会社を辞めて個人事業主になった場合は国民健康保険に切り替えなければなりません。

ここでは、国民健康保険の概要や社会保険との違い、社会保険から切り替える場合について紹介します。

国民健康保険の概要

国民健康保険は居住する地方自治体が運営しており、社会保険に加入していないすべての国民が加入します。

国民健康保険の概要は、次の表の通りです。

年度4月1日〜翌年3月31日
運営都道府県と国民健康保険組合
被保険者都道府県の区域内に住所を有する者
(他の健康保険に加入する者を除く)
保険料納税者の前年所得や自治体によって異なる
上限額(厚生労働省の資料による
自治体によって異なる)
105万円(令和5年度)
年間納付額のお知らせ送付時期翌年1月〜2月上旬

参考:国民健康保険制度の概要国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について

個人事業主は、国民健康保険ではなく国民健康保険組合に加入することもできます。国民健康保険組合とは業種ごとに集まって作る健康保険です。特定の業種で個人事業主をする場合は、それぞれの業種の組合で運営する健康保険に加入するという選択肢もあります。

社会保険との違い

会社員の場合、健康保険は「全国健康保険協会」や「健康保険組合」が運営する社会保険に加入します。

社会保険と国民健康保険で大きく異なるポイントは、家族を扶養に入れられるかどうかです。社会保険の場合は配偶者や子供、親などの親族を扶養に入れることができ、被扶養者の数に関わらず健康保険料は同じです。国民健康保険は同居家族もそれぞれ国民健康保険に加入し、保険料を支払わなければなりません。

また、社会保険の保険料は被保険者の収入や年齢によって計算されますが、国民健康保険は世帯を単位として被保険者の人数や収入、年齢を元に計算します。運営する各自治体によって計算方法が異なり、支払う保険料は地域によって格差がある点が特徴です。

さらに、社会保険料は会社が半額負担するという点も、全額負担する国民健康保険との大きな違いとなります。

社会保険から切り替える場合

会社を辞めて個人事業主になった場合、社会保険の脱退手続きは会社が行います。国民健康保険への加入手続きは、個人事業主が自ら役所へ出向いて行わなければなりません。

医療保険には必ず加入していなければいけないため、社会保険の資格を喪失するとすぐに国民健康保険料が発生します。できるだけ早く手続きするようにしましょう。

社会保険の任意継続

会社を辞めてから2年間は、社会保険を任意継続できる制度があります。社会保険を喪失する1日前までに継続して2か月以上の被保険者期間がある場合に限り、社会保険の喪失日から20日以内に手続きを行えば、勤務していた会社が加入する健康保険組合に継続加入できます。なお、手続きの際には「任意継続被保険者資格取得申出書」の提出が必要です。

任意継続することで同居家族が扶養に入れるなどのメリットがありますが、勤めていたころは会社と折半だった保険料は全額負担しなければなりません。

国民健康保険に加入する場合と任意継続する場合のどちらが得かについては、人によって異なります。関係窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。

国民健康保険の加入に必要な書類

国民健康保険の加入手続きは、住んでいる地域の役所へ出向いて行います。手続きには次の書類が必要になるため、忘れずに持参しましょう。

  • 健康保険の資格喪失証明書
  • マイナンバーカードなどマイナンバーを確認できるもの
  • 本人の身元確認ができるもの

マイナンバーカードがあればマイナンバー確認と本人確認が同時にできるため、身元確認書類は必要ありません。健康保険の資格喪失証明書は職場の健康保険をやめたことを証明する書類で、退職証明書や離職票などでも代用できます。

保険料を口座振替する場合は、キャッシュカードまたは通帳と金融機関の届出印を持参してください。

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国民健康保険の加入に必要な手続き

国民健康保険の加入手続きは、​​退職日の翌日から原則として14日以内に行います。14日を過ぎても申請はできますが、保険料は社会保険の資格を喪失した日の翌日から発生しています。届出されなかった間の医療費は全額自己負担になる場合があるため注意しましょう。

【加入手続き】

  1. 役所の国民健康保険窓口に出向く
  2. 国民健康保険異動届に必要事項を記載する
  3. 必要書類と一緒に提出する
  4. 後日、保険証が簡易書留で送付される

保険証の交付を急ぐ場合、1点で確認できる本人確認書類を持参すれば窓口で交付できる場合もあります。事前に問い合わせてみるとよいでしょう。

なお、国民健康保険加入の手続きは郵送でもできます。必要書類のコピーと国民健康保険異動届(役所のサイトからダウンロードできる)を役所に送付します。個人情報を含む書類のため、特定記録郵便または簡易書留での郵送がおすすめです。詳細は、各自治体に問い合わせてみてください。

国民健康保険料はいくらかかる?

国民健康保険料の計算方法は、住んでいる地域によって異なります。そのため、同じ所得でも支払う保険料はかなり差が出る場合があるでしょう。

また、39歳までと40歳以上で保険料の内容が異なり、40歳以上では保険料の負担が増えることになります。ここでは、国民健康保険料の内容や計算方法について見てきましょう。

国民健康保険料の内容

国民健康保険料の内訳は、「医療分」と「後期高齢者支援金分」です。40歳以上になるとこれに「介護分」が加わります。40歳になる年は、誕生日の前日に「介護保険第2号被保険者」の資格に変わることになります。保険料には資格を得た月以降の介護分が加わるため、保険料を計算し直して変更通知が送られてきます。

医療分、後期高齢者支援金分、介護分それぞれにつき、各自治体の定めた算出方法で計算され、6〜7月ごろに保険料の通知が送られてくるという流れです。

保険料の計算方法

国民健康保険料の計算は各自治体で異なりますが、ここでは東京都港区を例にシミュレーションしてみましょう。

計算は世帯を単位として、被保険者の人数と所得金額をもとに計算されます。所得金額とは個人事業主の場合、前年の収入から必要経費を差し引いた金額です。

【医療分の計算】

港区の医療分の計算式は、以下の通りです。

所得割額(被保険者全員の賦課基準額×7.16%) + 均等割額(被保険者数×42,100円) = 年間医療分

 

賦課基準額とは所得から基礎控除額(43万円、所得金額が2,400万円以下の場合)差し引いた額です。最高限度額は65万円です。

一人世帯の個人事業主で所得が500万円のAさんを例に、計算してみましょう。

500万円-43万円=457万円
(457万円×7.16%)+(1人×42,100円)=369,312円

【後期高齢者支援金分の計算】

後期高齢者支援金分の計算式は、以下の通りです。

所得割額(被保険者全員の賦課基準額×2.41%)+均等割額(被保険者数×13,200円)=年間支援金分

 

最高限度額は20万円です。

上記と同じ例で計算してみましょう。
(457万円×2.28%)+(1人×13,200円)=117,396円

【介護分の計算】

介護分の計算式は、以下の通りです。

所得割額(介護保険第2号被保険者全員の賦課基準額×2.02%) + 均等割額(介護保険第2号被保険者数×16,600円) = 年間介護分

 

最高限度額は17万円です。
同じ例で計算した結果は、次のようになります。
(457万円×2.02%)+(1人×16,600円)=108,914円

港区在住のAさんの国民健康保険料は、39歳以下であれば486,708円、40歳以上であれば595,622円になります。

参考:国民健康保険の保険料(東京都港区)

社会保険料の控除について

個人事業主は1年の所得を確定申告して税金を納めますが、その年に支払った国民健康保険料は社会保険料として控除を申請できます。控除額が大きいほど、納税額が少なくなります。ここでは、控除や社会保険料控除の意味、社会保険料控除の計算方法について見ていきましょう。

控除とは

控除とは「一定の金額を差し引く」という意味で、所得税を減らせる控除は主に「所得控除」と「税額控除」に分けられます。

「所得控除」は課税対象となる所得金額から差し引くもので、「税額控除」は税金そのものから差し引くものです。国民健康保険料は社会保険料控除として所得控除の対象になり、その年の所得から全額を控除できます。

社会保険料控除とは

社会保険料控除に該当するのは、国民健康保険料のほかに国民年金保険料や厚生年金保険料、介護保険料、後期高齢者保険料などです。

控除できるものは1年間に支払った保険料または給与から差し引かれた保険料の全額で、同居する配偶者や扶養親族が負担すべき保険料を納税者が支払った場合にも、納税者本人の所得から控除できます。

社会保険料控除の計算方法

社会保険料控除は上限がなく、1年間に支払った社会保険料の全額を所得から差し引きます。社会保険料控除の対象になるのは、国民健康保険料のほか、介護保険料(40歳以上の場合)、国民年金などです。社会保険料控除の計算は、これら1年間に支払った分をすべて合計して算出します。
前年に支払った国民健康保険料や介護保険料の金額は、居住する地方自治体から翌年1月〜2月上旬ごろに送られる「年間納付額のお知らせ」で確認してください。年金の金額は日本年金機構から控除証明書が送られてきますので、そちらで確認しましょう。

国民健康保険料の仕訳と勘定科目

国民健康保険料は事業による支出ではなく、事業主本人のプライベートな支出です。そのため、国民健康保険料の支出を帳簿に記帳する必要はありません。事業に使用する口座から国民健康保険料が引き落とされているなど帳簿づけが必要な場合は、「事業主貸」の勘定科目で処理します。

2万円を口座引き落としされた場合の仕訳例は、次のようになります。

借方
貸方
事業主貸  20,000円
普通預金 20,000円

このほかにも年金や所得税、住民税などの税金は個人事業主の私的な支出に該当します。基本的に記帳は必要なく、事業用の口座から支出した場合は国民健康保険料と同じ処理をしてください。

国民健康保険の加入手続きは速やかに行いましょう

会社員を辞めて個人事業主になった場合は、速やかに国民健康保険加入の手続きが必要です。必要書類を揃え、居住する地域の役所で手続きを行いましょう。ただし、保険料の計算方法は自治体ごとに異なります。

また、国民健康保険料は事業の支出ではないため、経費にはなりません。仕訳の必要はありませんが、記帳する場合は「事業主貸」の勘定科目を使いましょう。

なお、国民健康保険料は確定申告で社会保険控除の対象になります。初めての確定申告でよくわからない方は、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

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よくある質問

個人事業主は国民健康保険に加入する必要がある?

「国民皆保険制度」により、国民はすべて医療保険に加入しなければなりません。会社に所属しない個人事業主は、自ら国民健康保険に加入する必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。

国民健康保険料の仕訳はどうすればいい?

国民健康保険料は事業の支出ではないため経費にできず、帳簿づけをする必要がありません。 事業用の銀行口座から納付した場合などは、「事業主貸」の勘定科目で処理してください。 詳しくはこちらをご覧ください。

控除について知りたい

控除には所得控除と税額控除があり、社会保険料控除は所得控除です。所得控除は確定申告の際に、所得から差し引いて納税額を減らします。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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