• 更新日 : 2023年3月10日

雑所得とは?税率や控除を理解して確定申告に備えよう

雑所得とは?税率や控除を理解して確定申告に備えよう

雑所得とは、どのようなものがあてはまるのでしょうか?
この記事では、雑所得となる所得について、経費の考え方や、確定申告所得控除、税率、そして住民税の考え方に至るまでご紹介します。

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雑所得とは

雑所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得給与所得退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得」をいいます。
すなわち、雑所得は所得区分において利子所得、配当所得等で示されるような積極的な意義を持っておらず、一般にこれら名称の付いたいずれにも該当しない所得の「受け皿」として説明されます。

しかしながら、雑所得は、下図のように個人所得における納税者の割合としては、給与所得、事業所得、不動産所得の次に多くの人が申告する所得です。
雑所得には公的年金等や副業による所得が含まれるため、金額的にはあまり多くなくても、申告者数では多い結果となるわけです。

【申告納税者数の所得者区分別構成割合】

【申告納税者数の所得者区分別構成割合】

出典
No.1500 雑所得|国税庁
申告納税者数の所得者区分別構成割合|国税庁

どんなものが雑所得になる?

所得区分は全部で10種類があり、以下の9種類に分類されない所得を雑所得といいます。

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得

それでは雑所得にはどのような種類があるのか、具体的な収入を例示しながら見ていきましょう。

FXでの収入

FXでの収入は雑所得となります。給与所得よりFXでの収入が多い方もいるかも知れませんが、給与収入よりFX収入のほうが多い場合、事業所得にしたほうが税金を安くできるのではと思いがちです。しかし、FXでの収入は雑所得として取り扱われることになります。

ネットショップでの収入

以前であれば、ECサイトを構築するためにさまざまな手続きをしなければなりませんでした。しかし、現在ではより気軽にネットショップを個人で開設することが可能になっています。

「BASE」や「STORES」などは、特定商取引法に基づくショップ開設が3分以内で誰でも簡単に行えます。また、ハンドメイド専用ショップとして、「minne」や「Creema」などがあります。これらは出品という形態をとるため、特定商取引法における事業者名や販売責任者名、住所、連絡先などを開示する必要がなく、ネットショップによる販売収入を得やすくなっています。

サラリーマンが副業でネットショップを運営している場合など、他に本業の収入がある場合には、ネットショップで得た収入については雑所得として取り扱われます。

年金収入

雑所得は2つに大別され、公的年金等に関するものか、それ以外のものかに分けられます。

国民年金や厚生年金、確定給付企業年金などは公的年金となります。保険会社等から受け取る個人年金は雑所得の中の「その他」で確定申告を行います。ただし、満期保険金は「一時所得」となりますので、雑所得に含めないようにしましょう。

印税・講演料

書籍に関する印税や、セミナー講師等による講演料については、他に本業があれば、これらは雑所得として取り扱われます。

なお、印税や講演料の支払元から支払調書を受け取っているケースもあると思われます。自身で収入金額をしっかりと把握し、先方との認識合わせのために支払調書の記載金額も念のため確認しておきましょう。

非営業用貸金の利子

貸金業者のような営業用貸金に対する利子は事業所得となるのに対し、個人的な貸金に対する利子は雑所得とします。たとえば、友人に貸した100万円に対して、10万円の利子も一緒に返済してもらったような場合をいいます。

その他

これまでに例示した5つの雑所得以外にも、

  • 国税通則法58条1項に規定する「還付加算金」
  • 事業所得以外の動産の貸付けによる所得

などがあります。

雑所得と事業所得の違いは?

副業のうち、アルバイトによる収入などは正社員と同じく、所得区分は給与所得となります。マンション経営による賃貸収入は不動産所得として、株式や債権の譲渡による利益は「株式等の譲渡所得等」として申告することとなります。副収入が雑所得か事業所得になるかについては、税法上明確な基準は設けられていません。実態を総合的に勘案し判断されます。

雑所得と税額の計算方法

雑所得の計算方法については、3つのパターンがあります。
以下3パターンのどの雑所得についても、給与所得など他の所得と「総所得金額」として合算ののち、所得控除を差し引き、税額合計を計算します。さらに税額控除がある場合には、控除額を差し引き、納付税額を決定します。
雑所得と税額の計算方法

<公的年金等>

公的年金等の雑所得 = 収入金額  -  公的年金等控除額

<業務に係るもの>(副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの)

業務に係る雑所得 = 総収入金額  -  必要経費

<上記以外>(公的年金等でも業務でもないもの)

その他の雑所得 = 総収入金額  - 必要経費

所得金額が求まり、税額の計算をするときは次の税率表を参照します。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで0.050円
1,950,000円 から 3,299,000円まで0.197,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで0.2427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで0.23636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで0.331,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで0.42,796,000円
40,000,000円 以上0.454,796,000円

出典:No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

雑所得で認められる経費

雑所得の計算においては、公的年金等以外は、【収入 ー 必要経費】で雑所得を求めます。
この場合、必要経費として認められるのはどのような経費でしょうか?

基本的には、事業所得や不動産所得との差はなく、次のものが必要経費として認められます。

  • その総収入金額を得るために直接要した費用の額
  • その年に生じた販売費一般管理費その他業務上の費用の額

また、必要経費として算入が認められる時期ですが、減価償却などを除いた「その年において債務の確定した金額」が必要経費となる金額とされます。

ここで、債務の確定とは次の3要件すべてを満たすものを言います。

    その年の12月31日までに

  • 債務が成立していること
  • その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
  • 金額が合理的に算定できること

例えば、雑所得のための交際費、地代、家賃、水道光熱費などは家事にもかかわりがある費用は、「家事関連費」と呼ばれます。

これらのうち、必要経費となるものは、その業務に直接必要であり、明らかに区分できる場合に限ります。したがって、自家用車をたまに雑所得のために利用する場合の車両関連費用については必要経費とはなりません。

例えば、ガソリン代を必要経費とする場合は、業務に使った距離、仕様日数などを継続して計測しており、按分計算をしたときに、はじめて必要経費としての計上が可能となります。

また、債務確定の考え方における「具体的な給付をすべき原因となる事実」とは、注文したモノやサービスが実際に届いたり、受けたりした事実があることをいいます。その上で、誰に、いつ、いくら支払うかが明確な費用のみが必要経費となります。

出典:No.2210 やさしい必要経費の知識|所得税|国税庁

雑所得があった場合は確定申告も必要?

雑所得が発生した場合には、必ずしも確定申告が必要というわけではありません。
雑所得においても、公的年金等とそれ以外では考え方が異なるので分けて説明します。

公的年金等

公的年金等の場合には、「公的年金等に係る確定申告不要制度」があります。

公的年金等の受給者で、「公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下」である場合には確定申告の必要はありません。

ただし、納付額がある場合には確定申告により還付されます。
図に表すと次のようになります。

雑所得 納付額

出典
公的年金等を受給されている方へ|国税庁
年金受給者の皆様へ

公的年金等以外

原則として、「年末調整を受けた給与所得」以外の所得が20万円以下の場合には、確定申告は不要です。しかし、給与所得はなく、雑所得のみの個人事業主やフリーランスについては年末調整がありませんので、20万円以下であっても雑所得の計算ルールにしたがって確定申告をしなければなりません。

また、給与所得がある場合でも、例えば医療費控除を受けたいときは確定申告します。その際、たとえ20万円以下であっても雑所得の申告もしなければなりません。
図に表すと次のようになります。

雑所得 確定申告

雑所得が20万以下なら住民税申告は不要?

確定申告をした人は、その情報が市区町村に連携されるため、改めて住民税の申告をする必要はありません。

その他、住民税の申告をする必要のないのは次のようなケースです。

    1. 前年の所得が給与所得のみで、勤務先から給与支払報告書の提出があった人
    2. 前年の雑所得が公的年金等のみで、年金支払者から公的年金等支払報告書の提出があった人
    3. 前年の雑所得が住民税の課税以下(年収が約100万円以下、市区町村で異なる)の人

上記の3の場合などは住民税申告の義務はありませんが、非課税証明書が必要な場合などは、市役所などで住民税の申告が必要となる場合があります。

したがって、雑所得だけの人は所得に関係なく、確定申告をすることで住民税の申告もしていることになります。

副業を始めたらまずは雑所得で申告

サラリーマンが副業を始める場合、最初から事業所得というのは難しい選択だと思います。
まずは、雑所得として収入や必要経費をしっかり把握して、所得金額を求めましょう。
事業所得や不動産所得となると、記帳が求められハードルが上がります。

事業所得も雑所得も基本的な計算方法は同じですので、雑所得を事業所得への助走期間と見立てて、将来的な対応ができるように帳簿や納税について知識を蓄積しておきましょう。確定申告についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

よくある質問

雑所得とは?

「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得」をいいます。詳しくはこちらをご覧ください。

ネットショップでの収入は雑所得になる?

サラリーマンが副業でネットショップを運営している場合など、他に本業の収入がある場合には、ネットショップで得た収入については雑所得として取り扱われます。詳しくはこちらをご覧ください。

雑所得の計算方法は?

公的年金の場合、「公的年金等の雑所得=収入金額- 公的年金等控除額」で計算します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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