• 更新日 : 2024年12月27日

個人事業主でも源泉徴収は必要?源泉徴収票の作成方法や注意点を解説!

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2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ

▽提出期限

2025年2月17日(月)~ 2025年3月17日(月)

※上記は2024年/令和6年分の申告を行う期間です(参考記事はこちら

初心者から経験者まで、毎年多く読まれている記事です。確定申告の必要性、やり方、簡単に済ます方法についてまるっと解説しています。

源泉徴収は原則として給与や報酬を支払う者が行います。では、従業員を雇用せずに給与を支払っていない個人事業主の場合は、源泉徴収が必要になるのでしょうか。

本記事では、従業員のいない個人事業主でも源泉徴収が必要なケースや源泉徴収票の作成方法について解説します。源泉徴収制度をよく理解し、従業員を雇用するときに備えておきましょう。

個人事業主でも源泉徴収は必要?

個人事業主でも、従業員を雇用して給与を支払っている場合は源泉徴収が必要です。

源泉徴収制度とはそもそも、給与支払者が給与や報酬から所得税等を差し引いて支払うことをいいます。源泉徴収制度により源泉徴収された所得税および復興特別所得税は、最終的に年末調整確定申告によって精算されます。所得税では原則として、自分でその年の所得金額と税額を計算して申告・納付を行う「申告納税制度」が採用されていますが、給与や報酬を受け取る人の負担を軽減する目的で源泉徴収制度が導入されています。

個人事業主の源泉徴収における要否の判断方法

源泉徴収が必要になるケースは、業種ではなく業務内容によって決まるほか、報酬の支払いを受ける人が個人か法人かでも源泉徴収の要否は異なります。ここでは、個人事業主が支払いを受ける場合について解説します。

従業員のいない個人事業主でも源泉徴収が必要な場合

従業員のいない個人事業主でも以下のようなケースでは、源泉徴収が必要になります。

  1. 原稿料や講演料など
  2. 弁護士、公人会計士、司法書士等に支払う報酬等
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロ野球選手、プロサッカーの選手、モデルや外交員などに支払う報酬
  5. 映画、芸能(音楽、舞踊、漫才等)、TV放送等の出演等の報酬等および芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬等
  6. バンケットホステスやバー・キャバレーのホステスに支払う報酬等
  7. プロ野球選手の契約金など、役務の提供契約により一時に支払う契約金
  8. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

さらに、上記を詳細に見ると、源泉徴収すべきケースは少なくありません。例えば、1の原稿料や講演料についてだけでも以下のような多くのケースがあります。

  • 原稿料の報酬
  • 押絵の報酬
  • 写真の報酬
  • 作曲の報酬
  • レコード等の吹込み報酬
  • デザインの報酬
  • 放送謝金
  • 著作権使用料
  • 著作隣接権の使用料
  • 工業所有権等の使用料
  • 講演の報酬・料金
  • 技芸、スポーツ、知識等の教授・指導料
  • 脚本の報酬・料金
  • 脚色の報酬・料金
  • 翻訳の報酬・料金
  • 通訳の報酬・料金
  • 校正の報酬・料金
  • 書籍の装丁の報酬・料金
  • 速記の報酬・料金
  • 版下の報酬・料金
  • 投資助言業務に係る報酬・料金

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁令和6年版 源泉徴収のあらまし|国税庁、「報酬・料金等の源泉徴収事務」(P166-p170ご参照)

個人事業主で源泉徴収しなくてよい場合

個人事業主は、従業員に対するものを除き、上記以外の報酬や料金等に源泉徴収は必要ありません。

例えば、法人に対して支払う料金等には源泉徴収が不要です。また、士業でも行政書士については原則として徴収の義務はありません。これらは、所得税法に規定されていないからです。

参考:所得税法(第204条第1項ご参照)|e-Gov 法令検索

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個人事業主が源泉徴収義務者になる基準は?

源泉徴収義務者とは、所得税および復興特別所得税を差し引いて、国に納める義務がある人のことをいいます。会社や個人事業主が人を雇って給与や報酬を支払う場合は、支払いのたびに源泉徴収を行うことが義務付けられるため、源泉徴収義務者になります。源泉徴収義務者となる場合は「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要があります。

個人事業主が源泉徴収義務者になる場合

原則として、個人事業主が源泉徴収をしなければならないのは次の「Aに該当する場合」および「AかつBに該当する場合」です。

A. 従業員を雇用する場合
従業員とは、雇用関係にある従業員のことです。外注業者のような雇用関係にない場合には源泉徴収は発生しません。

B. 一定の報酬等を支払う場合
上記「原稿料や講演料」を始め、8項目のいずれかに当てはまるときは源泉徴収をしなければなりません。

なお、従業員の給与によっては源泉税が発生しないケースもありますが、源泉徴収義務者は、年末調整終了後に各受給者の「給与所得の源泉徴収票」を交付し、後述する「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を税務署に提出します。

個人事業主が源泉徴収義務者にならない場合

個人事業主が源泉徴収義務者にならない場合とは、上記AにもBにも該当しないほか、Bだけに該当する場合などです。「給与所得の源泉徴収義務を有する個人以外の個人」つまり、個人事業主で従業員をもたない人は、弁護士報酬などの報酬・料金等については(上記6のホステス等の場合を除き)源泉徴収は不要なため、源泉徴収義務者にはなりません。

ただし例外的に、常時2人以下の家事使用人のみ(いわゆるお手伝い)に対し給与の支払いをする場合には、給与について源泉徴収は不要とされています。

参考:所得税法(第204条の2第2項ご参照) | e-Gov

個人事業主の源泉徴収票の作成方法

ここからは、国税庁よりダウンロードできる「給与所得の源泉徴収票」を用いて、個人事業主が源泉徴収票を作成する方法について解説します。源泉徴収票はあくまで給与を支払う人が作成するものですが、従業員を雇用したときのために知っておきましょう。なお、受給者交付用の源泉徴収票にはマイナンバーおよび法人番号が必要ありません。

源泉徴収票の作成にあたって必要な情報は、主に8つの項目で構成されています。

  1. 支払額(給与の総支給額)
  2. 給与所得控除後の金額
  3. 所得控除後の額の合計額
  4. 源泉徴収税額
  5. 控除対象配偶者の有無等
  6. 控除対象扶養親族の数
  7. 社会保険料等の金額
  8. 生命保険料の控除額

給与所得の源泉徴収票

引用:F1-1 給与所得の源泉徴収票(同合計表)|国税庁

※受給者交付用の源泉徴収票にはマイナンバーおよび法人番号は記載しません。

①支払額(給与の総支給額)

会社や事業主から支払われる給与の総支給額を記入します。

②給与所得控除後の金額

支払額から給与所得控除を差し引いた額を記入します。給与所得控除額は、以下の表をもとに計算します。

令和2年分以降 給与所得控除

引用:No.1410 給与所得控除|国税庁

③所得控除後の額の合計額

給与所得控除後の金額から、扶養控除配偶者控除社会保険料控除等を差し引いた額を記入します。主な所得控除には以下のようなものがあります。

④源泉徴収税額

源泉徴収税額を計算する場合は、国税庁が発行している「給与所得の源泉徴収税額表(月額)」または「給与所得の源泉徴収税額表(日額)」を使用します。給与ソフトを利用の場合には自動計算されます。

「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」と「甲(扶養家族等の数)」の合致する箇所の税額を源泉徴収税額として国に納めます。なお、乙欄は2か所以上から給与を受け取っている人など、左記に当てはまらない人に支払う場合に適用します。

令和6年分 源泉徴収税額表

引用:令和6年分 源泉徴収税額表|国税庁

⑤控除対象配偶者の有無等

控除の対象となる配偶者の有無について記入します。他の企業で配偶者の収入額によって配偶者特別控除が適用される場合は「配偶者特別控除」に金額を記入します。なお、「従有」とは、他の企業で配偶者控除が適用されている場合に記入する箇所です。

⑥控除対象扶養親族の数

16歳以上の「扶養対象親族」または19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」など、配偶者以外の控除対象扶養親族がいる場合は記入します。なお「従人」も「従有」と同様に、他の企業で扶養控除が適用されている場合は記入します。

⑦社会保険料等の金額

給与から支払っている健康保険料や厚生年金保険料、小規模企業共済の掛金などの合計金額を記入します。

⑧生命保険料の控除額

民間の保険会社で加入している「生命保険」や「個人年金保険」などの保険料を記入します。

源泉徴収金額の計算方法

例えば、個人事業主が講演料や弁護士報酬を支払う際に源泉徴収を行う所得税および復興特別所得税の支払金額は、以下のように計算します。

支払金額源泉徴収税額
100万円以下支払金額 × 10.21%
100万円超(支払金額 - 100万円)× 20.42% + 102.100円

なお、原則、消費税を含めた額を源泉徴収の対象としますが、請求書等で報酬額と消費税の額が明確に区分されている場合には、消費税を除いた金額を源泉徴収の対象としてよいとされています。

インボイス(適格請求書)においては消費税が明確に区分されているため消費税以外を源泉税として差し支えないと言えます。

参考:弁護士や税理士等に支払う報酬・料金|国税庁

例1)講演料として20万円支払ったときの源泉徴収額
20万円 × 10.21% = 20,420円

例2)弁護士報酬として200万円支払ったときの源泉徴収額
100万 × 10.21% = 102,100円
(200万 − 100万) × 20.42% = 204,200円
102,100 円+ 204,200円 = 306,300円

源泉徴収した税金を納付する方法

原稿料や講演料などから源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、e-Taxを利用して納付する方法や「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」や「報酬・料金等の所得税徴収高計算書の様式及び記載要領」を使用して納付する方法があります。

【弁護士、税理士、司法書士等の報酬用】

別紙3 給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般用)の様式及び記載要領

【上記以外の報酬・料金等の場合】
https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/wp-content/uploads/2024/12/image1.png

引用:源泉所得税の納付書兼所得税徴収高計算書の様式について|国税庁

書類の記載方法については国税庁のホームページ「納付書の記載のしかた」をご確認ください。

源泉徴収した税金の納付期限は翌月10日まで

源泉徴収した税金は、報酬・料金等を支払った翌月10日までに、金融機関または税務署の窓口で納付します。なお、納付期限である日が休日である場合は、その休日明けの日が納付期限になります。納付期限に遅れてしまうと「延滞税」や「不納付加算税」などの負担が生じる可能性があるため、遅れないように注意しましょう。なお、従業員数が10人未満の場合は、源泉徴収した所得税を半年分まとめて納めることができる特例もあります。

個人事業主が源泉徴収する際の注意点

個人事業主が源泉徴収する際は、源泉徴収の税率に復興特別所得税が含まれている点に注意が必要です。源泉徴収の税率は所得税および復興特別所得税を合算した税率として、報酬が100万円以下の場合は10.21%、200万円超の場合は20.42%を徴収します。

このうち0.21%または0.42%は復興特別所得税として、平成25年から令和19年までの間に生じる所得について徴収することになります。業務の委託先からの請求書がわかりにくい場合には、よく確かめてから源泉税を徴収しましょう。

個人事業主でも源泉徴収のことを知っておこう

源泉徴収とは、所得税および復興特別所得税を給与や報酬から差し引いて支払うことをいいます。従業員を雇用していない個人事業主は、外注先に報酬を支払う場合でも源泉徴収を行う必要はありません。

しかし、源泉徴収の義務がない個人事業主でも請求書を作成する際や、税金の還付申告を行う際には、源泉徴収の知識が必要になります。これから従業員を雇用する場合に備えて、源泉徴収のことを知っておくといいのではないでしょうか。

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よくある質問

個人事業主でも源泉徴収は必要ですか?

個人事業主でも、報酬や業務内容によっては源泉徴収が必要になります。原稿料や講演料、広告や商品のデザイン料などに該当する場合は、報酬の支払者が源泉徴収を差し引いた報酬を支払う義務があります。詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主が源泉徴収義務者になる基準はありますか?

個人事業主が源泉徴収義務者となる基準は、従業員を雇用して給与を支払う場合です。開業届を提出している個人事業主は、源泉徴収義務者となるために書類を提出する必要はありません。詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主が源泉徴収で注意することはありますか?

請求書を発行する際は源泉徴収と消費税を別で記載することや、源泉徴収により税金を払いすぎている場合は還付申告が必要な点に注意しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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