• 作成日 : 2022年2月4日

財産債務調書制度とは?対象者や記載事項をわかりやすく解説!

財産債務調書制度とは?対象者や記載事項をわかりやすく解説!

税務署が納税者に提出を求める資料の中に「法定調書」というものがあります。給与の支払い内容を報告する「源泉徴収票」や、不動産使用料や報酬の支払内容を報告する「支払調書」など数多くの法定調書がありますが、そのうちの1つが「財産債務調書」です。今回は「財産債務調書」の概要について解説していきます。

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財産債務調書制度とは?

「財産債務調書制度」とは確定申告をする必要がある方、または一定要件に該当する還付申告を行う方を対象として、確定申告書とは別に財産債務に関する調書の提出を求める制度のことです。

提出義務があるのは総所得金額の高い、いわゆる「富裕層」の方たちです。富裕層が所有する財産にかかる所得税や相続税等が適正に課税されているかを税務署が確認するための資料であるといえます。

「財産債務調書制度」が導入される以前は、特定の所得金額合計が2,000万円を超える場合に「財産及び債務の明細書」を確定申告書に添付する必要がありました。しかし実務上、当該明細書の提出を怠ったとしても税務当局に指摘される可能性は低く、記載内容についても正確性、網羅性を厳格に求めるものではありませんでした。

このような経緯から、平成27年の税制改正でこの明細書の添付が廃止され、代わりに「財産債務調書」の提出が求められることになったのです。

確定申告で財産債務調書の提出が必要な人は?

「財産債務調書」の提出を求められるのは以下に挙げる全ての要件に該当する方です。

確定申告書を提出する必要がある方または一定の還付申告書を提出する方

  1. 確定申告書を提出する必要がある方
  2. 給与収入が2,000万円超、もしくは不動産所得や事業所得など給与所得以外の所得がある場合で要件に該当すれば「財産債務調書」を提出しなければなりません。

  3. 一定の還付申告書を提出する方
  4. 還付申告のうち、所得税の合計額が「配当控除」及び「年末調整で適用を受けた住宅借入金等特別控除」の合計額を超える場合に限り、要件に該当すれば「財産債務調書」を提出する必要があります。

特定の所得金額の合計が2,000万円を超える方

退職所得を除いたその年分の総所得金額が2,000万円を超える場合、要件に該当すれば「財産債務調書」を提出しなければなりません。

所有する財産の合計額が3億円以上または国外転出特例対象財産の合計額が1億円以上の方

その年の「12月31日現在」で所有する財産の合計額が「3億円以上」または国外転出特例対象財産の合計額が「1億円以上」の場合で、要件に該当すれば「財産債務調書」を提出しなければなりません。

なお、国外転出特例対象財産とは所得税法第60条の2に規定する以下のようなものを指します。

  1. 有価証券
  2. 未決済信用取引
  3. 未決済デリバティブ取引に係る権利

なお、「財産債務調書」のほか、国外に5,000万円を超える国外財産を所有する方は別途「国外財産調書」と「合計表」を提出しなければなりません。国外財産調書の提出をする方で財産債務調書の提出義務もある場合には、いずれの調書も提出しなければなりませんので注意してください。

参考:No.7457 財産債務調書の提出義務|国税庁

財産債務調書に記載する財産の価額の算出方法は?

「財産債務調書」を作成するうえでポイントとなるのが、調書に記載する財産価額の算出方法です。

「財産債務調書」では、記載する金額について以下のとおり定めています。

12月31日における「それぞれの財産に係る時価または時価に準ずる価額として見積価額、それぞれの債務に係る金額」を記入してください。

引用:財産債務調書(様式及び記載要領)|国税庁

現金や預金のように「額面金額=財産の時価」であればそのままの金額を記載するだけです。しかし、土地や建物、有価証券といったように時価評価額があるものについて、どのような算出方法を用いるかが問題となります。

「時価」とは簡単にいうと、不特定多数間で行われる実際の売買価額や取引価額のことを指します。また、「見積価額」というのは取引業者が売買するにあたって評価する売買価額です。仮に財産を所有する当事者が評価額を決定したとすれば、その評価額にはどうしても恣意が入る可能性があります。しかし、公平な立場にある第三者が行った評価額であれば恣意性が排除された適正な評価額であるという考えに基づいています。

実務的には、相続税や贈与税の申告で財産評価を行う際に用いる「財産評価基本通達」で行う「時価評価」と同じ算出方法を行うことになります。

財産債務調書の書き方は?

構成としては財産債務を種類別に詳細に記載する「調書」と、調書の内容を合計して転記する「合計表」の2種類からなります。

財産債務調書(合計表)の記載例

まずは合計表の基となる「財産債務調書」の作成から始めます。
財産債務調書(同合計表)とは、記載例

出典:財産債務調書(同合計表)|国税庁
「財産債務調書(様式及び記載要領)(OCR帳票)」を加工して作成

上図の赤枠内に該当する財産や債務を「時価評価」あるいは「見積価額」で記載していきます。記載する財産や債務に漏れがないか十分注意してください。

財産債務調書合計表、記載例、書き方

出典:財産債務調書(同合計表)|国税庁
「財産債務調書合計表(OCR帳票)」 を加工して作成

「財産債務調書」の作成が終ったら、次に「合計表」に転記していきます。調書に記載した財産債務を区分ごとに、合計表の該当する箇所に転記していきます。

国外財産調書を提出する場合の記載例

「国外財産調書」も財産債務調書と同様に、構成としては財産を種類別に、詳細に記載する「調書」と、調書の内容を合計して転記する「合計表」の2種類からなります。まずは「国外財産調書」の作成から始めます。

財産債務調書制度、国外財産調書とは、書き方、記載例

出典:国外財産調書(同合計表)|国税庁
「国外財産調書(様式及び記載要領)(OCR)」を加工して作成

上図の赤枠内に、該当する財産を「時価評価」あるいは「見積価額」で記載していきます。記載する財産に漏れがないか十分注意してください。

国外財産調書(同合計表)、財産債務調書制度、転記

出典:国外財産調書(同合計表)|国税庁
「国外財産調書合計表(OCR帳票)」 を加工して作成

「国外財産調書」の作成が終ったら、次に「合計表」に転記していきます。調書に記載した財産を区分ごとに、合計表の該当する箇所に転記していきます。

財産債務調書の提出期限は?

「財産債務調書」および「国外財産調書」の提出期限はその年分の翌年の「3月15日」までとなっています。

従前の「財産及び債務の明細書」は、確定申告書に添付する方法で提出が求められていました。しかし「財産債務調書制度」では、確定申告書とは別に提出が求められる制度となっています。いずれの調書も提出し忘れがないように注意しましょう。

財産債務調書を提出しないとどうなる?

「財産債務調書制度」では、調書の提出があった場合の特例措置が用意されています。逆に調書を提出しない、あるいは調書の内容を仮装隠蔽した場合にはペナルティが課されることになります。
参考:No.7457 財産債務調書の提出義務|国税庁

過少申告加算税の軽減措置

調書を提出していれば、財産債務調書に記載がある財産にかかる申告で内容不備等を理由に過少申告加算税無申告加算税が課された場合、「5%」軽減されるという特例措置があります。

調書を期限内に提出していなかった場合や記載内容に漏れがある場合

調書を提出していない場合、あるいは記載内容に仮装隠蔽等の不備がある場合には、当該財産にかかる申告で過少申告加算税・無申告加算税が課されると加算税がさらに「5%」加重されるというペナルティがあります。

相続対策のためにも、財産債務調書を忘れずに作成しましょう

「財産債務調書」の作成は一般の方にはあまり馴染みのない作業ですから、なかなか難しい部分ではあります。特に「財産評価」を行うためには通達を読み解かなければなりませんので大変な作業です。しかし、調書の提出を怠って、将来起こりうる相続税の申告の際に加算税を上乗せされるようなことは避けなければなりません。「財産債務調書」の提出は忘れずに行いましょう。

よくある質問

「財産債務調書」とは何ですか?

その年分の12月31日時点における財産債務の金額を税務署に報告するための調書です。詳しくはこちらをご覧ください。

「財産債務調書」に記載する金額は?

「時価」または「見積価額」を算出して記載します。 詳しくはこちらをご覧ください。

「財産債務調書」を提出しないとどうなりますか?

当該財産にかかる申告で過少申告加算税等を課された際にさらに5%加重されます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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