- 更新日 : 2024年11月21日
消費税申告とは?やり方・計算を個人事業主向けに解説!
消費税申告とは、個人事業主の場合は各年(1月1日から12月31日までの1年)、法人の場合は各事業年度に納めるべき消費税を管轄の税務署に申告することです。この記事では、消費税申告の対象者や計算方法、個人事業主向けの確定申告のやり方や作成方法などを詳しく解説していきます。
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目次
消費税申告とは?
消費税申告とは、納付すべき消費税を所轄の税務署長に申告することです。原則として年1回の確定申告時に、「消費税及び地方消費税の確定申告書」を提出して申告します。
消費税申告はいつからいつまで?
個人事業主の場合、消費税の申告は1月1日から12月31日までの1年分を翌年の3月31日までに行う必要があります。法人は、原則として決算日(課税期間終了の日)から2カ月以内に申告する必要があります。
消費税申告は原則として確定申告時の年1回ではありますが、確定消費税額(確定申告書に記載の納付すべき消費税額)が48万円を超えるときは中間申告もしなければなりません。消費税の中間申告の回数は、以下のように確定消費税額によって異なります。
確定消費税額 | 48万円以下 | 48万円超400万円以下 | 400万円超4,800万円以下 | 4,800万円超 |
---|---|---|---|---|
申告回数 | 確定申告1回 | 確定申告1回 中間申告1回 | 確定申告1回 中間申告3回 | 確定申告1回 中間申告11回 |
中間納付税額 | なし | 確定消費税額の12分の6 | 確定消費税額の12分の3 | 確定消費税額の12分の1 |
中間申告に代えて、仮決算を行うことで算出された消費税の申告および納付をすることも認められます。
インボイス制度の導入によって消費税の確定申告に何か影響はある?
インボイス制度により、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録した場合は、これまで免税事業者であったとしても消費税申告が義務付けられるようになりました。
インボイス制度はこれまで消費税の課税事業者として消費税申告を行ってきた個人事業主や法人にも影響があります。インボイス制度以降、消費税を計算するときは、原則として適格請求書発行事業者が発行した適格請求書でないと仕入れ税額控除を受けられなくなったためです。
仕入れ税額控除とは、課税仕入れ等に係る消費税額などのことをいいます。消費税の課税事業者が免税事業者と取引をする場合は、仕入れ税額控除の計算に影響が生じる可能性があります。
消費税申告の対象者|課税事業者と免税事業者
消費税申告は、義務付けられている事業者と不要な事業者があります。どのような事業者が消費税申告の対象になるのか、課税事業者と免税事業者の違いにも触れながら解説していきます。
課税事業者と免税事業者がある
消費税には、課税事業者と免税事業者があります。課税事業者とは、消費税の課税対象になる事業者のことです。原則として、課税事業者に該当するかは、基準期間または特定期間の課税売上高で判断します。
基準期間とは、個人事業主の場合は申告年度の2年前の1月1日から12月31日までの1年間のことです。法人の場合は、法人決算年度の2期前の事業年度のことをいいます。
特定期間は、個人の場合は申告年度の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は前事業年度の開始日から6カ月経過するまでの期間のことです。
基準期間または特定期間のいずれかの課税売上げが1,000万円を超えるときは課税事業者、1,000万円を超えないときは原則として免税事業者になります(特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額によることもできます)。
免税事業者とは、消費税の申告や納税義務が免除される事業者のことです。
消費税申告の対象者
以下に該当する場合、消費税申告の対象者になります。
- 課税事業者に該当する場合
- 適格請求書発行事業者として登録している場合
- 消費税課税事業者選択届出書を提出している場合
まず、免税事業者にあたらない課税事業者に該当するときは消費税申告の対象者になります。
また、免税事業者になれる場合であっても、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)に登録しているとき、任意で消費税課税事業者選択届出書を所轄の税務署に提出しているときは消費税の申告と納付が必要です。
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消費税の計算方法
消費税の計算は、原則(一般課税)のほかに、簡易課税の特例があります。また、インボイス制度への移行にともない、期間限定で2割特例も創設されました。条件に該当する事業者については一般課税や簡易課税のほかに2割特例も選択できます。
原則(一般課税)
原則的な計算(一般課税)では、以下の計算式により納付すべき消費税額を計算します。
まず、消費税の計算対象になるのは課税売上げと課税仕入れの部分です。原則的な方法では、売上げを課税取引と非課税取引に、仕入れを課税取引と非課税取引、不課税取引などに区分しなければなりません。
また、令和6年度の現行法では消費税は標準税率の10%と軽減税率の8%の2つが存在しています。標準税率と軽減税率の区分も必要です。
なお、適格請求書が適用される以前は、免税事業者からの仕入れであっても課税仕入れについては仕入れ税額控除の対象となっていました。しかし、インボイス制度で仕入れ税額控除の要件に適格請求書発行事業者から発行された適格請求書であることが追加されたことで仕入れ税額控除に変化がありました。
免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度開始以後10年を係て段階的に控除額が減少していきます。2023年10月から2026年9月30日までは80%控除できます。2026年10月から2029年9月までは50%控除、2029年10月以降の免税事業者からの課税仕入れは全額が控除できなくなります。
簡易課税
簡易課税では、以下の計算式により納付すべき消費税額を計算します。
みなし仕入れ率とは、以下の表の該当する事業に対応した仕入れ率のことです。一般課税と比べて簡易な計算で仕入れ税額控除(売上げに係る消費税額×みなし仕入れ率の部分)を計算できます。
該当する事業 | みなし仕入れ率 | |
---|---|---|
第1種事業 | 卸売業 | 90% |
第2種事業 | 小売業など | 80% |
第3種事業 | 農業・林業・漁業、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業 | 70% |
第4種事業 | ほかに該当しない事業 | 60% |
第5種事業 | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業 | 50% |
第6種事業 | 不動産業 | 40% |
出典:「No.6509 簡易課税制度の事業区分|国税庁」をもとに作成
2割特例(2023年10月から2026年9月まで)
インボイス制度が始まったことで、免税事業者から適格請求書発行事業者に登録した事業者の経過措置として2割特例が設けられました。
2割特例は、(個人で令和3年度の課税売上高が1,100万円、令和4年度の課税売上高が900万円の人は、令和6年1月1日現在においては免税事業者に戻りますが)令和6年1月にインボイス発行事業者の登録を受けると、令和6年分の消費税申告において適用される制度です。
一般課税、簡易課税に代えて2割特例により消費税額を計算できます。計算式は以下のとおりです。
個人事業主の消費税の確定申告のやり方
個人事業主の消費税の確定申告のやり方について3つの方法とメリット・デメリットを紹介します。
①確定申告書等作成コーナーで作成
パソコンがある場合は、国税庁の提供する「確定申告書等作成コーナー」で消費税の申告書の作成ができます。
確定申告書等作成コーナーは申告書の作成が初めての方も申告できるようにガイドが付いたシステムです。質問に沿って回答したり、必要な数字を入力したりすることで消費税申告書を作成できます。
メリットは、ガイドに沿って入力するだけで作成できることです。確定申告書等作成コーナーで作成した申告書は電子申告できます。作成方法に行き詰まったときは、チャットボットに質問することも可能です。
デメリットは、一つ一つ質問に回答したり入力をしたりが必要なため手間が係ることです。
②確定申告ソフトで作成
消費税の申告に対応した確定申告ソフトでも申告書の作成が可能です。マネーフォワード クラウド確定申告は消費税申告に対応しており、PDFでの出力とe-Taxファイルへの出力のどちらにも対応しています。
確定申告ソフトの利用のメリットは、所得税の申告書を作成した流れで消費税の申告書を作成できることです。所得税の計算にかかわる仕訳データを取得することで、マネーフォワード クラウド確定申告では自動で消費税の計算結果が返されます(ただし、税区分や仕入税額控除の割合等を一つ一つの仕訳において正しく入力しておく必要があります)。
デメリットは、消費税申告対応のソフトが限られることです。消費税申告書作成まで完結したいときは導入前に対応しているか確認しておく必要があります。
なお、消費税の申告書作成のみに対応したソフトではシステム上から申告書を送信できません。e-Taxソフトを利用するなどして所轄の税務署長に申告書を提出する処理を要します。
③手書きで作成
消費税申告書の作成方法は、手書きやパソコン入力などの指定がありません。手書きで作成するときは、「消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等」から、申告に必要な申告書第一表と第二表、付表をダウンロードして印刷します。
印刷した消費税申告書の必要事項に手書きで記入して、所轄税務署の窓口、あるいは郵送で提出します。
手書きのメリットは、パソコンに使い慣れていない人によっては作成しやすい可能性があることです。デメリットは、パソコン入力では発生しない書き損じが生じやすいことです。
個人事業主の消費税の確定申告の必要書類
消費税の申告に必要な書類は、一般課税か簡易課税か、2割特例を適用するかで違いがあります。
【一般課税の場合】
- 申告書第一表(一般用)
- 申告書第二表(一般用)
- 付表1-3(税率別消費税額計算表 兼 地方消費税の課税標準となる消費税額計算表)
- 付表2-3(課税売上げ割合・控除対象仕入れ税額等の計算表)
【簡易課税の場合】
- 申告書第一表(簡易課税用)
- 申告書第二表(簡易課税用)
- 付表4-3(税率別消費税額計算表 兼 地方消費税の課税標準となる消費税額計算表)
- 付表5-3(控除対象仕入れ税額等の計算表)
【2割特例の場合】
- 申告書第一表(一般用または簡易課税用)
- 申告書第二表
- 付表6(税率別消費税額計算表〔小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する課税期間用〕)
なお、上記に加え、申告内容によってはほかの付表の添付が必要になることがあります。
個人事業主の消費税の確定申告の書き方
ここでは、一般課税と簡易課税に分けて消費税申告書の書き方を解説します。
一般課税の場合
一般課税では、以下の付表2-3から作成していきます。
① 課税売上高(税抜)
税率6.24%と税率7.8%に区分して税抜の課税売上高を記入します。
② 免税売上額
消費税が免税となる売上高(輸出免税分)を記入します。
③ 非課税資産の輸出等の金額、海外支店等へ移送した資産の価額
対象の金額がある場合に記入します。
④ 課税資産の譲渡等の対価の額
⑤ 課税資産の譲渡等の対価の額
①+②+③の額。
⑥ 非課税売上額
非課税売上高を記入します。
⑦ 資産の譲渡等の対価の額
⑤+⑥の額。
⑧ 課税売上げ割合
④÷⑦の額。
⑨ 課税仕入れ等に係る支払対価の額(税込)
課税仕入れから返品などのあった額を控除した金額を記載します。
⑩ 課税仕入れ等に係る消費税額
⑨に対する消費税額を記入します。
⑨×6.24/108 および ⑨×7.8/110(1円未満切捨)
⑪ 「適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れ等に係る経過措置の適用を受ける課税仕入れ等に係る支払対価の額(税込)
適格請求書発行事業者でない事業者からの対応分で経過措置の対象となる金額を記入します。
⑫ 「適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れ等に係る経過措置により課税仕入れ等に係る消費税額とみなされる額
⑪に対応する消費税額を記入します。
⑪×6.24/108×80% および ⑪×7.8/110×80%
⑬~⑯
対応する消費税額があるときに記入します。
⑰ 課税仕入れの税額の合計額
⑩+⑫+⑭+⑮±⑯の額
⑱ 課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上げ割合が 95%以上の場合
条件に該当するときに記入する項目です。
⑲~㉒ 「課税売上高が5億円超または課税売上げ割合が 95%未満の場合
⑱以外に該当するときに記入します。
㉓~㉕
対応する調整額があるときに記入します。
㉖ 控除対象仕入れ税額
⑱、㉑または㉒の金額)±㉓±㉔+㉕がプラスのときに記入します。
㉗ 控除課題調整税額
㉖の計算式がマイナスのときに記入します。
㉘ 貸倒れ回収に係る消費税額
償却債権取立益のうち、消費税分を回収したときに記入します。
次に、付表1-3を作成します。
① 課税標準額
①-1の額から1,000円未満の端数を切り捨てた額を記入します。
①-1 課税資産の譲渡等の対価の額
7.8%適用のものは課税売上高×100/110
6.24%適用のものは課税売上高×100/108
② 消費税額
①の額に6.24%または7.8%を掛けた額です。
③ 控除課題調整税額
付表2-3㉗と㉘の金額を転記
④ 控除対象仕入れ税額
付表2-3㉖から転記。
⑤ 返還等対価に係る税額
課税売上げに対し返品や値引きなどがある場合に消費税額を記載します。
⑤-1 売上げの返還等対価に係る税額
課税売上げに対して返品や値引きなどがある場合に消費税額を記載します。
⑤-2 特定課税仕入れの返還等対価に係る税額
特定課税仕入れについて値引きなどがある場合に消費税額を記載します。
⑥ 貸倒れに係る税額
課税売上げに対する売掛金などで貸倒れになった消費税額分を記載します。
⑦ 控除税額小計
④~⑥の合計額。
⑧ 控除不足還付税額と⑩控除不足還付税額
⑦-②-③の額。
⑨ 差引税額と⑪差引税額
②+③-⑦の額。
⑫ 還付額
⑩×22/78の額。
⑬ 納税額
⑪×22/78の額。
次に、申告書第二表を作成していきます。
以下の表のように付表1-3から転記して作成します。
最後に、第二表の記載内容をもとに申告書第一表を完成させます。
以下の表に沿って、付表1-3、2-3、申告書第二表をもとに作成します。
簡易課税の場合
簡易課税の場合、先に付表4-3と付表5-3の作成が必要です。
① 課税標準額
①-1の額から1,000円未満の端数を切り捨てた額を記入します。
①-1 課税資産の譲渡等の対価の額
7.8%適用のものは課税売上高×100/110
6.24%適用のものは課税売上高×100/108
② 消費税額
②の額に7.8%または6.24%を掛けた額です。
③ 貸倒れ回収に係る消費税額
貸倒れ処理を行った債権を回収したときに記載します。
④控除対象仕入れ税額
付表5-3から転記します。
⑤ 返還等対価に係る税額
課税売上げに対し返品や値引きがあるときに消費税額を記載します。
⑥ 貸倒れに係る税額
課税売上げに対する売掛金などで貸倒れになった消費税額分を記載します。
⑦ 控除税額小計
④~⑥の合計額。
⑧ 控除不足還付税額と⑩控除不足還付税額
⑦-②-③の額。
⑨ 差引税額と⑪差引税額
②+③-⑦の額。
⑫ 還付額
⑩×22/78の額。
⑬ 納税額
⑪×22/78の額。
以下、付表5-3は、付表4-3に転記する控除対象仕入れ税額にかかわる計算表です。
各項目、以下のように記入していきます。
① 課税標準額に対する消費税額
付表4-3の②を転記。
② 貸倒れ回収に係る消費税額
付表4-3の③を転記。
③ 売上げ対価の返還等に係る消費税額
付表4-3の⑤を転記。
④ 控除対象仕入れ税額の計算の基礎となる消費税額
①+②-③の額を記載。
⑤ ④×みなし仕入れ率
④の金額にそれぞれのみなし仕入率を乗じた金額を記載します。
合計Cの額を付表4-3に転記します。
⑥~㊲
複数の事業を行っておりみなし仕入れ率が複数適用されるときに記入。
「ハ 上記の計算式区分から選択した控除対象仕入れ税額」の合計Cの額を付表4-3に転記します。
付表4-3と付表5-3を作成できたら、申告書第一表と第二表は転記するだけです。
まず、以下の申告書第二表を作成します。
以下、国税庁より記載方法を示した表です。付表4-3から転記する形で作成できます。
次に、以下の申告書第一表を完成させます。
記載方法は以下のとおり、付表4-3と申告書第二表から転記して作成します。
消費税や消費税申告のよくある疑問
消費税や消費税申告にまつわる、よくある疑問について解説していきます。
課税売上げ1,000万円以下の場合、消費税の確定申告は必要?
基本的に、課税売上げ1,000万円以下の事業者は免税事業者に該当するため消費税の申告や納税を要しません。ただし、特定期間といって、個人事業主の場合は前年の1月1日から6月30日までの期間の課税売上げが1,000万円を超えるときは免税事業者ではなくなります。なお、特定期間における判定は、課税売上高に代えて給与等の支払額の合計を基準に判定することも認められます。
また、インボイス制度の開始で適格請求書発行事業者に登録する場合は消費税の申告が課されることになりました。課税売上げ1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けるときは消費税の申告が義務付けられます。
確定申告の売上げに消費税は含む?含まない?
消費税の経理処理には、売上げや仕入れの額に消費税を含む税込経理方式、消費税額を区分して処理する税抜経理方式があります。税込経理方式か、税抜経理方式かは任意で選択できます。
ただし、2以上の所得が生じる事業を行っているなど特定の場合を除き、一貫した経理方式のほうが分かりやすいでしょう。
したがって、税込経理方式を採用していれば売上げに消費税が含まれ、税抜経理方式を採用していれば売上げに消費税が含まれないことになります。
申告書の書き方を知って正しく消費税申告しよう
消費税申告は、一般課税か簡易課税かで必要な書類が異なります。また、申告書の書き方も異なります。いずれの場合も、会計ソフトなどで作成した仕訳データが必要です。申告書作成の手間を軽減するためにも、消費税の申告書作成までできる確定申告ソフトや会計ソフトの
マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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