- 更新日 : 2022年10月21日
2023年(令和4年分)の確定申告の変更点を徹底解説まとめ

2023年の確定申告について、どのような変更点があるのか気になるところです。この記事では、所得税の計算書である確定申告書上の変更点や税額控除である住宅ローン控除における変更点など主な留意点などを解説します。
さらに、久しぶりに確定申告をされる方向けに、前年までの変更点や電子申告、電子帳簿などの改正点、注意点についてもおさらいとして説明します。確定申告までに不安を取り除いておきましょう。
目次
2023年に提出する確定申告書類の変更点は?
2023年に提出する確定申告書は、従来に比べフォーマットが少し変わっています。従来までは確定申告書A用と確定申告書B用に分かれていましたが、2023年からは書式が一本化されることも大きな変化と言えます。
確定申告書Aが廃止
2023年に提出する令和4年分の確定申告から、確定申告書Aの書式が廃止されます。昨年度までの申告においては、確定申告書Aがあり、確定申告書Bの簡易版のような位置づけでした。
サラリーマンで医療費控除などの適用を受ける人や、給与と年金がある人など向けに確定申告書Aという書式がありましたが、2023年からは1本化されます。したがって、提出の際はAとBの区別はなくなり「確定申告書」とのみ表示されます。
サラリーマンで、今までずっと確定申告書Aを利用していた人が確定申告書Bを使うと、項目が多く煩雑に感じられるかもしれませんが、基本的に違いはありません。
書式一本化の理由は特に述べられていませんが、デジタル時代に複数のフォーマットを持っておくよりも、簡素化したほうがよいという考えの表れかと思われます。
第一表に「修正申告」欄が追加
修正申告とは、確定申告期限後に本来納付すべき税額よりも少ない税額で申告してしまった場合に修正して申告することを言います。今回の変更では、申告書第一表に「修正申告」欄が設けられ、修正申告書(別表)第五表は廃止されます。
従来は修正申告の場合、申告書は原則として「第一表」と「第五表」(別表)の提出が必要でした。修正申告時には第五表に修正前の所得や税額、そして修正による増加する税額などを記載し、第一表には修正後の所得や税額を記載するというものでした。
従来の申告書の別表第五表には一度提出した申告書と同一のことを記載する部分が多かったこともあり、上記と同様、簡素化の表れでしょう。
出典:(左の図)申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁、令和 年分所得税及び復興特別所得税の申告書B、(右の図)所得税の確定申告|国税庁、令和4年分の所得税等の確定申告書 (案)を加筆して作成
上記、申告書Aと第五表が廃止されることにより申告書の種類は次のようになります。
収支内訳書が「雑所得(業務)」の申告に対応
個人事業主の場合、白色申告においては「収支内訳書」を確定申告書に添付して提出します。収支内訳書は事業所得や不動産所得などで必要とされてきましたが、これに加えて2023年の申告から一定の雑所得についても収支内訳書の提出が必要となります。
雑所得には、次の種類があります。
- 公的年金等
- 業務にかかるもの(副業の収入などで、営利を目的とした継続的なもの)
- 上記以外
このうち、2つ目の業務にかかる雑所得について「前々年度の売上高が1,000万円を超えていた場合」に収支内訳書の提出が求められるようになりました。具体的な改正内容については、後述の「雑所得の計算に関する規定の明確化」で説明しています。
雑所得について、上記にあてはまる人は下記の欄の「雑(業務)」に丸をつけて提出しなければなりません。それ以外の個人事業主などは、「営業等」に丸をつけます。
出典:(上の図)申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁、令和 年分収支内訳書(一般用)|国税庁、(下の図)所得税の確定申告|国税庁、令和4年分の所得税等の確定申告書 (案)|国税庁を加筆して作成
2023年の税制改正に伴う確定申告の変更点は?
次に制度として、2023年の税制改正によって変更された部分を見ていきましょう。税制改正によって、所得税だけでも多くの改正点がありますが、その中でも理解しておきたい3点を取り上げます。
住宅ローン控除の適用期限・借入限度額等の見直し
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームを取得(リフォームも含む)等した場合において、一定の要件のもとに住宅ローンの年末残高を基に居住した年分以降の所得税額から一定の控除(住宅借入金等特別控除)を受けられるというものです。正式名称は、「住宅借入金等特別控除」または「特定増改築等住宅借入金等特別控除」と言います。
対象となる人は年内に住宅ローンを組み、一定のマイホームの取得やリフォームをして、そのマイホームに住む人となります。所得制限は2,000万円です。
この制度は、所得控除とは異なり「税額控除」であり、所得税額からの直接減額となるため、節税効果の高い制度となります。
主な変更点は以下の3点です。
- 住宅ローン控除の適用期限を4年延長し、2025年12月31日までに入居した人を対象とする
- 2050年カーボンニュートラル*の実現に向けた措置として、省エネ性能の高い住宅の取得を促す
- 控除率を改正前の1%から0.7%とする
※2020年10月、わが国は2050年までに温室効果ガスの排出と吸収を均衡させて、全体としてゼロにする宣言をしました。「カーボン」とは、二酸化炭素に限らずメタンガスなども含む「温室効果ガス」のことをいい、「ニュートラル」とは、排出量と吸収量の合計をゼロ(中立)にするという意味です。
今回の改正では、残念ながら控除率は下がってしまい、所得税額から控除される控除額は次のとおりとなります。
さらに、住宅ローン控除の適用対象者の所得要件が改正前の3,000万円以下から2,000万円以下と厳しくなっていますが、所得が1,000万円以下の人の床面積要件が緩和されるなどの見直しもあります。
居住用財産の買換え等に関する特例等の見直し
マイホームの買換えにあたっての特例が見直しをされました。この特例の正式名は、「特定の居住用財産の買替及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」と言います。
マイホームを売却してその代わりのマイホームを買い換えた場合、一定の要件のもとに売却益の繰り延べができるというものです。利益の繰り延べというのは、非課税となるものではなく、買い換えたマイホームを将来売却するときまで課税を待ってくれるという意味です。
対象となる人は年内にマイホームを買い換えた際、買い換えたマイホームの価額のほうが安かったため、売却益が出た人です。
主な変更点は以下の2点です。
- 特例の適用期限を2年延長し、2023年12月31日までとする
- 買い換えた新築のマイホームが一定の省エネルギー基準に適合していること
この特例は売却にあたって利益のある人を対象としていますが、他に損失のある人についての規定の見直しもなされています。これらは、先の住宅ローン控除も含めて租税特別措置法という時限立法に規定されるものです。
参考:令和4年度税制改正の解説|財務省、租税特別措置法等(所得税関係)の改正|財務省
社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除に関する確定申告手続きの見直し
今回の改正では、手続き面における変更点もあります。年末調整や確定申告において、添付すべき「書面」を「電子データ」で提供できるようになりました。
もともと、年末調整や確定申告において下記の所得控除や税額控除を適用するためには、それぞれの証明書や根拠資料を添付又は提出時に提示する必要がありました。
【所得控除】
【税額控除】
- 住宅ローン控除 (電子データ可)
これらのうち、すでに生命保険料控除をはじめとするいくつかの控除については、電子データでの提出が可能です。今回の改正により、さらに社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除も電子データでの提出が可能となりました。
対象となる人は、社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除を適用する人で、控除証明書の発行者から電子データで証明を受けた人です。
参考:令和4年度 税制改正の解説|財務省、所得税法等の改正|財務省
2022年までの確定申告の変更点もおさらい!
サラリーマンなどは、基本的な所得税の精算は年末調整で行うため、医療費控除などを適用するときや副業の所得が20万円を超えたときなどに確定申告をします。したがって、毎年確定申告をしないケースが多いのではないでしょうか?
そのような方のために、2022年以前における確定申告からの変更点で主だったものを解説します。
確定申告書の押印が不要に
2022年(令和3年分)確定申告から、手続きの簡素化による業務効率化や電子申告の普及により、税務関係書類の押印義務が原則としてなくなりました。税務関係書類とは、確定申告書や収支内訳書、青色申告決算書などの書類や届出書などを指します。次のように確定申告書などの氏名欄の右側に㊞(押印欄)がなくなりました。
(上から確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書)
出典:(上の図)所得税の確定申告|国税庁、令和4年分の所得税等の確定申告書 (案)、(中の図)申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁、令和 年分所得税青色申告決算書(一般用)、(下の図)申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁、令和 年分収支内訳書(一般用)を加筆して作成
ふるさと納税の添付書類の簡素化
2022年の令和3年分確定申告から、ふるさと納税における手続きが簡素化されました。
従来は、ふるさと納税による所得控除を受けるためには、それぞれの自治体から送付される寄附金受領証明書の添付が必要でした。2022年の令和3年分確定申告から、これに加えて「ふるなび」「さとふる」等ふるさと納税の指定業者サイトで行った寄付については、各指定業者のサイトからダウンロードする「寄附金控除に関する証明書」で証明できるようになりました。
寄付のたびに各自治体からの「寄附金受領証明書」待ちや紛失の心配がなくなって手続きが楽になりました。
参考:ふるさと納税に係る寄附金控除に関する証明書等について|国税庁
子育てに関する助成等の非課税措置
2022年の令和3年分確定申告から一定の子育てに関する費用の助成が非課税となりました。
従来は、国や自治体などから子育て支援に関する助成金等を受けた場合は、原則として「雑所得」になり、確定申告をする必要がありました。これら保育を主とする国などからの助成金は、「子育て支援」の観点より、所得税、住民税ともに非課税となりました。
雑所得の計算に関する規定の明確化
2021年の令和2年分確定申告から雑所得の計算区分が3区分となりました。令和2年分以降の確定申告書を見ると、収入欄も所得欄も雑所得は3区分になっていることがわかります。
この改正に対応し、2年後の2023年の令和4年分の確定申告から、先述の「収支内訳書が「雑所得(業務)」の申告に対応」でお伝えしたように、業務である雑所得の収支内訳書が必要となりました。
令和元年分以前の確定申告書の雑所得までは次の2つの区分でした。
- 公的年金等
- 上記以外
しかしながら、副業収入などを得る人が増えたことなどにより、公的年金以外の雑収入を「業務に係る雑所得」と「その他の雑所得」に区分することになりました。
この背景には、インターネットを利用した原稿収入や不用品販売、食料品配達など一般の人がモノやスキルなどを提供する新しい経済の動き(シェアリングエコノミー)が生まれたことがあります。また、暗号資産やFXなどの取引に係る所得区分も雑所得とされます。
個人が比較的着手しやすい業態が増えた一方で、それが必ずしも課税されていないことがあったための対応策と言えます。
出典:(左の図)確定申告書(令和2年分以前用)|国税庁、確定申告書B(令和元年分以降用)、(右の図)確定申告書(令和2年分以前用)|国税庁、確定申告書B(令和2年分以降用)を加筆して作成
退職所得の課税方法の改正
2022年の令和3年分確定申告から、勤続年数5年以下かつ退職金が300万円を超える部分には退職所得の計算上、1/2の適用ができないことになりました。
もともと退職所得は、次のように計算して所得税の税率を掛けるしくみとなっていました。
従来、役員に対する退職金で、かつ、勤続年数が5年以下の場合には、所得を1/2にすることができないとされていた制度が改正により拡大されることとなりました。
したがって、勤続5年以下の退職所得の計算方法は300万円を境に次のようになりました。
■300万円以下の場合
■300万円超の場合
もともと、退職所得とは勤務する会社への長年の貢献に対し、退職者への給料の後払いという性格があるため退職所得控除や1/2の制度がありましたが、短期で多くの退職金を得る場合には増税となりました。
参考:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
e-Taxまたは電子帳簿保存による65万円の青色申告特別控除の適用
2021年の令和2年分確定申告から青色申告特別控除の要件が改正されました。
青色申告特別控除として最高額65万円の適用を受けるためには、e-Taxによる申告(電子申告)もしくは電子帳簿保存を行うことがこれまでの要件に加わりました。
すなわち、65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには次の2要件が必要となります。
- 55万円の控除を受けるための要件
複式簿記による記帳を行い、貸借対照表と損益計算書を添付した確定申告書を期限内に提出すること - 上記に上乗せ10万円の控除を受けるための要件
次のいずれかを利用すること- e-Taxを利用して確定申告及び決算書のデータを送信する
- 電子帳簿保存を利用する
ここで注意したいのは、次の電子帳簿保存制度にも関連しますが、上乗せの10万円控除のための「電子帳簿保存の利用」とは、税務署に届け出を提出して電子帳簿保存をする方法でなければなりません。
2022年1月から事前承認の不要な電子帳簿保存も始まりましたが、55万円にさらに上乗せ10万円の控除を得るためには、e-Taxにしろ、電子帳簿保存にしろ、最初に税務署への届け出が必要です。
参考:パンフレット・手引|国税庁、e-Tax又は電子帳簿保存を行うと65万円の青色申告控除が受けられます(令和3年10月)|国税庁
電子帳簿保存制度の改正
2022年1月から電子帳簿保存法が改正されました。
電子帳簿保存法では、電子データによる保存は大きく次の3種類に区分されています。
- 電子帳簿等保存
- スキャナ保存
- 電子取引
大きな改正点は、電子帳簿等保存においては税務署長の事前承認が原則として廃止されたことです。また、スキャナ保存に関する要件も緩和されました。この電子帳簿保存とスキャナ保存については、従来の紙による保存でも問題ありませんが、電子取引についての取扱いには要注意です。
電子取引については、所得税・法人税の書類帳簿義務のある人全員が対応すべきものです。例えば、電子メールを通じた請求書、WEB上からダウンロードする領収書など、紙を利用しないで取引が完結する取引においては、それぞれの電子データを保存する必要があります。
なお、2022年1月から2023年12月末までは猶予期間とされ、電子取引においてもプリントアウトによる紙の保存も認められます。しかし、2024年1月からは保存要件に従った電子データの保存が必要となります。
参考:令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて|国税庁、電子帳簿保存法が改正されました|国税庁、パンフレット・手引|国税庁、電子取引データの保存方法をご確認ください(令和3年12月改訂)|国税庁
2023年の確定申告の期限はいつからいつまで?
コロナ禍における確定申告では、確定申告期限についても弾力的な対応がなされました。2023年の確定申告期限については、今後の国税庁からの情報にご注意ください。
確定申告書類の提出期限
2023年2月15日から始まる原則的な確定申告の提出期限は、3月15日です。混雑を避けるためにも、できればe-Taxを利用した電子申告がおすすめです。ただし、還付申告は5年間可能なので、申告期限後でも問題ありません。
所得税の納付期限
所得税の納付期限は、2023年3月15日です。申告書を提出しただけで納付しないままの場合、延滞税がつきますのでご注意ください。
振替納税を選択した方は、2023年4月中旬とのことなので、預金残高の確認を忘れないようにしましょう。
確定申告の変更点を把握してからとりかかろう!
確定申告における変更点は、国税庁サイトやパンフレットなどでアナウンスはされますが、変更点のうち自分自身の申告が関係するかどうかは、本人でないとわかりません。
標準的なパンフレットとしては、毎年年末ぐらいになると国税庁が発行する年度別の「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」が挙げられます。その年に必要なことはひととおり記載されていますが、不明な部分は早めに解決しておきましょう。
よくある質問
2023年に提出する確定申告書類の変更点は?
書類の変更点として、確定申告書Aの廃止、確定申告書第一表に「修正申告欄」の追加(第五表の廃止)、収支内訳書に業務に係る雑所得かどうかのチェック欄の追加などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
2023年の税制改正に伴う確定申告の変更点は?
税制改正に伴う変更点として、住宅ローン控除の見直し、居住用財産の買い換え等に関する特例等の見直し、添付資料の電子データ提出範囲拡大(社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除)などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。