- 更新日 : 2023年2月20日
妊婦の確定申告|医療費控除で妊娠・出産費用が返ってくる?

妊娠と出産においては、妊娠中、出産と病院などに行く機会が増えます。
支払った費用を節税に繋げることはできるのでしょうか?
この記事では、確定申告における医療費控除制度と妊娠・出産に係る医療費について解説します。
目次
妊娠・出産費用は医療費控除の対象となる?
自分または生計を一にする配偶者などのために支払った医療費については、所得控除の適用を受けることができます。妊娠及び出産は病気ではありませんが、原則として、妊娠と診断されてから支払った定期検診などの費用や通院費用は医療費控除の対象になります。
ただし、加入している健康保険組合などから「出産育児一時金」「家族出産育児一時金」または「出産費」「配偶者出産費」などが支給されます。
医療費控除の条件としては、これら支給された額は医療費控除の額を計算する際に医療費から差し引いて計算することになりますが、金額的に大きいので要注意です。
そもそも医療費控除とは
医療費控除とは、自分自身やその家族を含む「生計を一にする配偶者その他の親族」のために使った医療費に適用される所得控除制度で、所得の合計金額から控除が受けられるというものです。
会社に勤めていて毎年年末調整を受けている人の多くは、基本的に確定申告は必要ありません。しかし医療費控除に関しては年末調整では所得税額に反映されないため、自分自身で確定申告をする必要があります。
医療費控除について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご参照ください。
医療費控除の対象になる妊娠・出産の費用は?
妊娠・出産に係る医療費について医療費控除の対象となるものについて、主なものを表にまとめてみました。
支払った費用の具体例 | 備考 |
---|---|
妊娠と診断されてからの健診・検査費用 | 出産後の検診の費用も、健康診断の対価にすぎないものを除いて対象となる |
通院費用 | 領収書がない場合には説明できるようにしておく |
出産で入院する際のタクシー代 | 公共交通機関が利用できないときに限る |
入院中の食事代 | 入院費用の一部として支払うものに限る |
助産師による分娩の介助 | |
妊婦、新生児の保健指導や産後ケアの費用 | |
不妊症の治療費、人工授精の費用 | 医師による診療等の対価として支払われるものに限る |
医療費控除の対象にならない妊娠・出産の費用は?
妊娠・出産に係る医療費について医療費控除の対象とならないものについて、主なものを表にまとめてみました。
支払った費用の具体例 | 備考 |
---|---|
実家に帰省するための交通費など | 実家で出産するための費用は対象外 |
入院のための寝巻や洗面用具など | 身の回り品については対象外 |
入院中の食事代(出前など) | 病院以外の出前や外食は対象外 |
無痛分娩講座の受講費用 | 医師による診療等の対価として支払われるものではないため、対象外 |
乳量を増やすための母乳マッサージ | 基本は対象外。 乳腺炎治療など医療目的では控除が認められる場合もある |
医師や看護師に対するお礼 | |
差額ベッドの料金 | 本人や家族の都合の個室など |
なお、出生前診断など胎児への遺伝的検査は医療費控除の対象外です。検査で胎児に異常の可能性が認められたとしても、必ずしも治療につながるとは限らないからです。
分娩費用、入院費用など出産に伴う出費は家計を大きく圧迫するため、家族にとってはぜひとも利用したい制度と言えるでしょう。
入院費用についての詳細は、こちらの記事をご参照ください。
医療費控除でどのくらいの金額が返ってくるのか
医療費控除は一体いくらくらいの節税になるのでしょうか。控除額の計算は次の計算式を使って行います。
この場合の「1年」とは1月1日から12月31日を指します。したがって、もし出産が年をまたぐ場合は1年毎に確定申告をする必要があります。
医療費控除の計算例
いずれの例も所得の合計額が200万円以上であるとします。
出産にかかった費用65万円・出産育児一時金42万円
出産に65万円かかったが、一時金が42万円支給されたので実質負担は23万円です。この場合、医療控除額は以下のように求められます。
医療費控除額 =(65万円 – 42万円)– 10万円 = 13万円
出産費用70万円 / 出産育児一時金42万円 / 高額療養費10万円 / 医療保険10万円
帝王切開で出産して70万円かかったが、帝王切開は健康保険の高額療養費のため、一時金42万円に加え、10万円が支給されました。また、加入していた医療保険がおり、10万円が支給されたとすると、実質負担額は8万円です。
70万円 – (42万円 + 10万円 + 10万円)= 8万円
この場合、実質負担額が10万円を下回るため、医療費控除対象外となります。
乙さんの方が出産費用が高かったにもかかわらず保険がおりたため、医療費控除の対象外になってしまったことがわかります。
妊娠・出産費用で医療費控除を受ける方法
では、具体的に妊娠・出産でかかった費用について医療費控除を受ける際の手続きを見ていきましょう。なお、ここでは妊娠・出産費用を取り上げるのみですが、合わせて他の病気やケガなどの医療費についても同年に発生すればすべて足し合わせて医療費控除を申請します。
医療費控除を受けるために必要な書類
医療費控除を受けるためには、次の3つの書類を用意する必要があります。
① 確定申告書(転記用に源泉徴収票を準備)
② 医療費控除の明細書【内訳書】
③ 医療費の領収書 等
①には収入金額や所得金額を書く欄の他に「医療費控除」の欄が設けられています。源泉徴収票から給与収入や所得金額を転記します。
確定申告書に記入する医療費控除の金額の根拠となる書類が②と③です。
確定申告時に医療費の領収書の添付または提示は不要ですが、確定申告書には②を添付します。③は確定申告期限から5年間税務署から領収書の提示または提出を求められる場合があるので、大切に保管しておきましょう。
確定申告について不安な方は、こちらの記事もご参照ください。
「保険金などで補てんされる金額」に要注意!
医療費控除の計算において、「保険金などで補てんされる金額」には健康保険組合、共済組合などから支給される出産育児一時金や家族出産育児金などが含まれます。
医療費控除の対象となるのは、これらの金額を医療費の総額から差し引いた金額です。この金額が10万円以下だと対象外となります。費用が高くても、上の乙さんのように、医療費控除の対象外になってしまうケースもあるので確認しましょう。
なお、確定申告書を提出するまでに保険金などで補てんされる金額が確定していない場合は、補てんされる金額の「見込額」を支払った医療費から差し引いて計算します。
妊娠・出産をする際は確定申告を行い、適切に医療費控除を受けましょう
妊娠や出産には、いろいろと心配がつきものですが予めかかった費用が取り戻せる制度を確認しておくと落ち着くものです。給与所得者の場合、医療費控除は翌年の1月1日から5年間は遡って申告することができます。
新しい家族が増えて、確定申告時期を逃したとしてもその後でも間に合いますが、領収書や一時金の証拠などはしっかり残しておきましょう。
よくある質問
妊娠・出産費用額は医療費控除の対象になる?
原則として、妊娠と診断されてから支払った定期検診などの費用や通院費用は医療費控除の対象になります。詳しくはこちらをご覧ください。
妊娠・出産費用で医療費控除の対象とならないものにはどんなものがある?
実家に帰省するための交通費、入院のための寝巻や洗面用具など、入院中の食事代(出前など)、乳量を増やすための母乳マッサージ、医師や看護師に対するお礼、差額ベッドの料金などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。