• 更新日 : 2024年1月22日

簡易課税の消費税申告のやり方を個人事業主向けに解説!

消費税の申告にあたっては、税額の計算方法として、原則である一般課税のほかに簡易課税制度が置かれています。簡易課税と一般課税では何が異なるのでしょうか。個人事業主向けに、簡易課税制度による消費税申告の計算や申告の方法を解説します。

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簡易課税制度とは?

消費税には、簡易課税制度があります。簡易課税制度は、中小事業者の消費税申告にかかわる事務負担に配慮する目的で創設された制度です。

原則的な方法である一般課税は売上に係る消費税、仕入れに係る消費税を厳密に計算する必要があります。簡易課税は、消費税の納付額を簡易的に計算できる点が一般課税と異なります。

一般課税と原則課税の違い

一般課税は、消費税を厳密に計算して納付すべき消費税額を算出する課税の方法です。原則課税や本則課税といわれることもあります。したがって、一般課税と原則課税は同じ意味で違いはありません。

免税事業者と課税事業者の違い

免税事業者は、消費税の申告や納付が免除される事業者のことです。原則として、基準期間や特定期間の課税売上が1,000万円以下の事業者をいいます(特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額によることもできます)。

個人事業主の場合、基準期間は前々年の1月1日から12月31日までの期間、特定期間は前年の1月1日から6月30日までの期間です。

課税事業者は、免税事業者以外の事業者で消費税が課税される事業者のことをいいます。免税事業者は、任意で課税事業者になることを選択できます。

簡易課税とインボイス制度の関係

インボイス制度により、課税事業者が仕入れ税額控除を受けるためには適格請求書が要件となりました。簡易課税制度では、原則的な方法で仕入れ税額控除を計算しません。そのため、簡易課税制度を利用する事業者が適格請求書を受け取ったかどうかは消費税の計算に影響しないことになります。

しかし、取引先が一般課税により消費税を計算しているときは、適格請求書発行事業者の登録と適格請求書の発行を求められることがあります。

簡易課税で納付する消費税の計算方法

簡易課税制度では、以下の計算式により消費税額を計算します。

納付すべき消費税額 = 売上に係る消費税額 - (売上に係る消費税額×みなし仕入れ率)

 

一般課税では、仕入れ税額控除の部分は仕入れに係る消費税額を厳密に計算して算出します。簡易課税では、売上に係る消費税額を代わりに使うため、仕入れに係る消費税の計算は必要ありません。

計算で使用するみなし仕入れ率は事業区分ごとに定められた割合のことです。以下の表のように6つの事業区分ごとにみなし仕入れ率が定められています。

該当する事業みなし仕入れ率
第1種事業卸売業90%
第2種事業小売業など80%
第3種事業農業・林業・漁業、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業70%
第4種事業ほかに該当しない事業60%
第5種事業運輸通信業、金融・保険業、サービス業50%
第6種事業不動産業40%

出典:「No.6509 簡易課税制度の事業区分|国税庁」をもとに作成

(計算例)
売上に係る消費税100万円のサービス業を営むA社の場合

納付すべき消費税額=100万円-(100万円×50%)=50万円

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簡易課税の場合の消費税申告のやり方

簡易課税の消費税申告のやり方について3つの方法を紹介します。

①確定申告書等作成コーナーで作成

確定申告書等作成コーナー」トップの「作成開始」をクリックすると申告書等の作成が始まります。

提出方式を、「マイナンバーカード方式」、「ID・パスワード方式」、「印刷して提出」から選択して、「消費税」を選択します。

以下の画像は、消費税及び地方消費税の申告書の作成画面の後に表示される画面です。簡易課税の場合、「簡易課税制度を選択していますか?」の質問に対して「はい」を選択してガイドに従って作成を進めていきます。

確定申告書作成コーナー

出典:【消費税及び地⽅消費税の申告書を作成する場合の画⾯の流れ】|国税庁

確定申告書作成コーナーを利用するメリットは、質問形式や枠内に記入する方式でどこに入力すればよいか明確なことです。ガイドに従って作成できます。デメリットは入力の手間が係ることです。

②確定申告ソフトで作成

消費税申告書の作成に対応している確定申告ソフトでも簡易課税に対応した申告書を作成できます。

たとえば、マネーフォワード クラウド確定申告では、基本情報の課税方式を変更するだけで簡易課税への対応が可能です。仕訳データの取得により自動で消費税が計算されます。

マネーフォワード クラウド確定申告では、作成した申告書のPDFファイルでの出力、e-Tax用ファイルの出力の両方に対応しています。作成した申告書をe-Taxで提出することが可能です。

確定申告ソフトを利用するメリットは、e-Taxに対応したソフトであれば、作成した申告書をそのまま送信できることです。ただし、e-Taxに対応していない確定申告ソフト、消費税申告書の作成に対応していないソフトもあります。利用前の確認が必要です。

③手書きで作成

消費税の申告書は手書きでも作成できます。国税庁の「消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等」から申告書のダウンロードが可能です。手元にないときは、印刷をしてすぐに記入できるようにしておきます。

また、簡易課税で手書きならば、先に「課税売上高計算表」を作成しておく必要があります。

手書きのメリットは、慣れているとほかの方法より早く作成できる可能性があることです。デメリットは、必要な付表を自分で用意する必要があることと、誤って記載したときは書き直す必要があることです。

簡易課税の消費税申告で必要な書類・書き方

簡易課税を選択した場合の必要書類や申告書の書き方について解説します。

必要書類

簡易課税を選択した事業者が必ず提出しなければならないのは、簡易課税用の「申告書第一表」と「申告書第二表」です。通常は申告書に加え、付表4-3と付表5-3を作成して添付します。

旧税率(3%、4%、6.3%)適用の取引があるときは、付表4-3と5-3に代えて、付表4-1、付表4-2、付表5-1、付表5-2を作成して添付します。

簡易課税の選択

課税事業者が何ら手続きを行わないときは、自動的に一般課税が適用されます。簡易課税を選択したいときは、管轄の税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を前年度中までに提出しなければなりません。

なお、簡易課税制度を選択できる事業者は、基準期間の課税売上高5,000万円以下の事業者に限られます。大企業のような規模の大きい事業者への適用はありません。

また、消費税簡易課税制度選択届出書を提出すると、課税期間の初日から2年を経過する日まで不適用届を提出できないことにも注意しましょう。

簡易課税の消費税申告書の書き方

まず、以下の「付表4-3」を作成します。

簡易課税の消費税申告書の書き方

① 課税標準額

①-1の額から1,000円未満の端数を切り捨てた額を記入します。

①-1 課税資産の譲渡等の対価の額

6.24%適用のものは課税売上高×100/108、7.8%適用のものは課税売上高×100/110をして算出します。

② 消費税額

①の額に7.8%または6.24%を掛けた額を記載します。

③ 貸倒れ回収に係る消費税額

貸倒れ処理を行った債権を回収したときに記載が必要な項目です。

④ 控除対象仕入れ税額

付表5-3を用いて計算した額を記入します。

⑤ 返還等対価に係る税額

課税売上に対して返品や値引きがあるときに消費税額を記載します。

⑥ 貸倒れに係る税額

課税売上に対する売掛金などで貸倒れになった消費税額分を記載します。

⑦ 控除税額小計

④~⑥の合計額です。

⑧ 控除不足還付税額と⑩控除不足還付税額

⑦-②-③の額を記入します。

⑨ 差引税額と⑪差引税額

②+③-⑦の額を記入します。

⑫ 還付額

⑩×22/78の額を記載します。

⑬ 納税額

⑪×22/78の額を記載します。

付表5-3は、付表4-3に記載する控除対象仕入れ税額を計算するための書類です。

簡易課税の消費税申告書の書き方

出典:消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等|国税庁

各項目、以下のように記入していきます。

① 課税標準額に対する消費税額

付表4-3の②を転記

② 貸倒れ回収に係る消費税額

付表4-3の③を転記

③ 売上対価の返還等に係る消費税額

付表4-3の⑤を転記

④ 控除対象仕入れ税額の計算の基礎となる消費税額

①+②-③の額を記載。

⑤ ④×みなし仕入れ率

1種類の事業のみの場合には、④の金額にそれぞれのみなし仕入れ率を乗じた金額を記載します。

合計Cの額を付表4-3に転記します。

⑥~㊲

複数の事業を行っておりみなし仕入れ率が複数適用されるときに記入。

「ハ 上記の計算式区分から選択した控除対象仕入れ税額」の合計Cの額を付表4-3に転記します。

消費税の申告書第一表と第二表は転記するだけです。

まず、以下の表のように付表4-3から転記する形で申告書第二表を作成します。

付表4-3

引用:申告書(第一表及び第二表)の記入|国税庁

次に、以下の表のように付表4-3と申告書第二表から転記して申告書第一表を完成させます。

付表4-3

引用:申告書(第一表及び第二表)の記入|国税庁

簡易課税の消費税申告はいつからいつまで?

消費税申告は、個人事業主の場合、1月1日から12月31日までの1年間分が計算対象になります。そのため、申告ができるのは翌年の1月1日以降です。申告期限は例年3月31日で、土日祝をはさむときは次の平日が申告期限になります(令和5年分は令和6年4月1日(月曜日)が申告期限)。

申告期限までに簡易課税の申告を済ませよう

簡易課税制度は、消費税の課税事業者で、簡易課税制度を選択している基準期間の課税売上高5,000万円以下の事業者が選択できる制度です。簡易課税制度で申告するときは、付表4-3と5-3の作成、申告書第一表と第二表の作成が必要になります。申告期限に間に合うよう申告の準備と作成を進めていきましょう。

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