- 更新日 : 2025年1月27日
会社経営者は所得税の確定申告が必要
一般に法人は、所得に対し法人税が課税されます。また、法人の経営者は役員報酬を受ける給与所得者であると言えます。したがって、経営者個人に課税されるのは所得税です。では年末調整ではなく確定申告が必要となるのはいくらからなのでしょうか。
この記事では、会社の経営者の年末調整や確定申告について、節税方法も含めて解説します。
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目次
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会社経営者は確定申告が必要?
会社経営者個人は、一定の場合には所得税の確定申告が必要です。また、法人の経営者は、法人の所得については法人税の確定申告が必要です。しかし、経営者個人においては、所得税の確定申告の要不要の判断が必要となります。
確定申告とは
そもそも確定申告とは、納税義務者が一定の期間に得た所得や財産に対して、法律で定められた税金を自ら計算して税務署に申告する手続きのことを言います。したがって、所得税の確定申告だけでなく、法人税の確定申告のほかに消費税の確定申告もあります。
その上で、所得税の確定申告とは、個人の1年間の所得を計算して税金を確定させる手続きを言いますが、一般に「確定申告」と言うと所得税の確定申告を示すことが多いです。
確定申告と年末調整の違い
給与を支払う会社は、扶養控除等の申告書に基づき従業員から給与支払時に源泉徴収をします。年末調整とは、年間に源泉徴収した税額の年間合計額と、本来納めるべき税額を一致させる精算の手続きで、給与の支払者が行います。
これに対し、確定申告とは、年末調整の対象にならない所得や控除がある場合などに、納税者個人が自分で所得税額を計算し、申告する手続きです。
確定申告と年末調整の主な違いは次のとおりです。
比較項目 | 確定申告 | 年末調整 |
---|---|---|
対象者 | 事業所得や不動産所得などのある人 年末調整で精算できない人 | 役員を含む給与所得者 |
手続きする人 | 納税者個人 | 給与支払者(会社) |
時期 | 翌年の2月中旬から3月中旬 | その年の年末が多い |
目的 | 源泉徴収税と年税額との精算 | 所得税額の確定 |
社長の役員報酬は給与所得に該当
役員報酬は、役員が会社経営全般に係る重要な決定に責任を持つため、その責任に基づき支払う報酬が決定されます。
これに対し、従業員の給与は会社と従業員の雇用契約に基づき、その従業員が提供した労働やサービスに対して支払われるものです。つまり、役員報酬と従業員給与とは、同じ法人が支払うお金ですが意義は異なります。
一方、課税の観点からみると、法人の役員がその法人から得る役員報酬は、その役員個人の給与所得となります。したがって、従業員と同様に年末調整の対象となります。
しかし、役員報酬の金額などによっては年末調整の対象とならず確定申告が必要な場合、医療費控除などを適用したい場合など確定申告により還付される場合などがあります。
会社経営者の確定申告が必要な場合
役員報酬について、年末調整だけで問題がないこともありますが、確定申告が必要な場合は多々あります。次の2つの例などはその主たる例と言えます。
役員報酬はいくらから確定申告が必要?
年間に支払った報酬が2,000万円を超えるものは、年末調整の対象になりません。会社から一定の源泉徴収票が発行されるため、その内容をもとに確定申告が必要です。
参考:給与等の金額が2,000万円を超える者の源泉徴収票の記載要領|国税庁
同族会社の役員で確定申告が必要な場合は?
その会社が同族会社にあたるかは、法人税法の規定から判断します。例えば、オーナー社長の親族がその会社の株式の過半数を所有している場合などは同族会社です。
同族会社から給与だけでなく、貸付金の利子などを受け取る場合には20万円以下でも確定申告が必要であり、その役員の親族である場合も同じことが言えます。また、その同族会社から配当を受け取った場合には、総合課税の対象となります。
参考:法人税法(第2条10項ご参照)|e-Gov
No.1901 同族会社の役員で確定申告の必要な人|国税庁
No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)|国税庁
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会社経営者の確定申告のやり方
所得税の確定申告のやり方について、以下の事例に沿って概要を説明します。
(事例)役員報酬が2,000万円を超えたため、確定申告をする会社経営者。法人からは給与所得の源泉徴収票を受けている。
会社経営者の確定申告の必要書類
会社経営者の確定申告書の書き方
源泉徴収票から確定申告書の第一表、第二表に転記をします。給与収入が2,000万円を超えると源泉徴収票に給与所得控除後の金額等の記載がないため、自分で計算する必要があります。
源泉徴収票の支払金額が8,500,001円以上の場合は、給与所得控除額は上限の1,950,000円となります。(給与所得控除額の計算については後述)
給与から差し引かれた社会保険料などは、源泉徴収票に基づいて記載します。また、各種控除等については、下記の手引きを参照し、納税額を求め源泉徴収額と精算します。
参考:給与等の金額が2,000万円を超える者の源泉徴収票の記載要領|国税庁
なお、令和6年の定額減税については、原則として給与収入が2,000万円以下の場合が対象となるため、この事例の場合には定額減税を受けることはできません。
会社経営者の確定申告書の提出方法
電子申告の場合には、そのままパソコンやスマホから申告することができます。
書面で提出する場合には、税務署窓口に持参するか郵送します。郵送の場合の宛先は、所轄税務署または下記の業務センターとなりますが、原則として税務官庁に書類が到達した日が申告書の提出日となります。
参考:申告書の税務署への送付について|国税庁
【申告書の提出】|国税庁、税務署の内部事務のセンター化について|国税庁
会社経営者の確定申告書の提出期限
所得税の確定申告期間は、例年2月15日前後から3月15日前後となっています。令和6年分の所得税確定申告書の提出期限は、次のとおりです。
令和7年2月17日(月)から令和7年3月17日(月)まで |
会社経営者が確定申告しないとどうなる?
法人を設立したにも係わらず、法人税も所得税も確定申告をしないことは基本的に考えられません。しかし、例えば自身の所得税の確定申告を失念してしまった場合、源泉徴収税額の範囲内であれば特に問題はありませんが、他に申告すべき所得があった場合には無申告となります。
よくあるのは、確定申告の期限を過ぎてから対応するケースです。税務署からの調査通知の前に自主的に対応できた場合には、ペナルティとなる無申告加算税は納付すべき税金の5%となります。(別途延滞税が課されるときがあります。)しかし、税務調査への対応をすることになった場合には、過去に遡って調査し、その結果さらなる無申告加算税や延滞税が加算されることになります。
結果的には、経済的損失だけでなく、刑事罰や個人の信用低下など重大なリスクを伴います。個人の信用低下は結果として会社の取引に影響することも考えられます。申告期限を過ぎていても、できるだけ早く申告するようにしましょう。
参考:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
延滞税の計算方法|国税庁
会社経営者の確定申告で経費にできる費用
確定申告時には各種の所得を計算します。その中で「確定申告で経費にできる」とは、雑所得、不動産所得、譲渡所得などを計算する際に「それぞれの収入から差し引くことのできる必要経費」という意味です。
例えば、ある経営者は役員報酬以外に不動産所得があったとします。不動産所得は次のように計算します。
ここで必要経費として計上可能なものは、不動産の減価償却費や固定資産税、損害保険料、不動産に係る修繕費などです。同様に、株式等の譲渡所得や雑所得等にも、基本的にその収入を得るために直接要した支出など、経費にできるものがあります。
参考:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
会社経営者が確定申告するときの基礎知識
ここでは、次の2つのトピックを挙げて解説しましょう。
給与所得控除が最大195万円受けられる
先述のとおり、役員報酬は課税上、給与所得として扱われます。給与所得は、次のように算出します。
給与所得控除額は下記のとおり収入金額に応じて変わり、最高195万円まで適用することができます。
給与所得の源泉徴収票の支払金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 | |
1,625,001円から | 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から | 3,600,000円まで | 収入金額×30% + 80,000円 |
3,600,001円から | 6,600,000円まで | 収入金額×20% + 440,000円 |
6,600,001円から | 8,500,000円まで | 収入金額×10% + 1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
法人と個人の確定申告によって所得税を節税できる
個人事業主で事業をするのと、法人を設立して法人から給与を得るのとでは、所得にもよりますが、法人設立により節税できる場合もあります。
単純に所得税と法人税を比較したものが次のとおりです。法人化することにより法人税と所得税に分散して支払うメリットはあるでしょう。
比較項目 | 所得税 | 法人税 |
---|---|---|
税率 | 超過累進課税(最大45%) | 原則として中小企業は年800万円以下15% |
所得分散 | 難しい | 親族への給与分散が可能 |
経費計上 | 計上基準はやや厳しい | 柔軟性あり |
青色申告特別控除 | 最大65万円 | 青色申告による控除はないが、 青色申告による特典はあり |
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁所得税の税率|国税庁
No.5759 法人税の税率|国税庁
ただし、「節税」とは資金繰りの観点からの有利性を見たものであり、全般的に見ると、事業内容や業態によっては必ずしもよいことばかりではないこともあります。法人成りについては、事業の安定性、将来性なども考慮することが必要であり、数万円程度の節税のみの理由で実行するのはおすすめできません。
役員報酬が2,000万円を超えたら確定申告を!
役員報酬でも、2,000万円以下の場合には年末調整の対象となるため、他に申告すべき所得がない場合には確定申告は不要です。役員報酬が2,000万円になるかどうかは事前にわかっているため、確定申告の要不要は比較的早い時期にわかります。法人の役員として、自身の確定申告を忘れないようにしましょう。
また、会社に税理士がついているなら、個人分の申告について別件として相談してもよいでしょう。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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