- 更新日 : 2023年6月9日
公務員が副業をする際の注意点を解説。できる仕事や範囲を確認しよう
公務員の副業・兼業には、信用・職務専念・守秘義務の観点から制限があり、許可がなければ原則できないのが現状です。しかし、家業の手伝いや小規模な農業などの一部の仕事については、条件の範囲内であれば例外的に認められます。今回は、公務員の副業に関する制限や認められる範囲・仕事のほか、公務員の副業解禁の流れについても解説します。
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目次
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公務員の副業を禁止するルールについて
副業を解禁する企業は増えていますが、実は国家公務員や地方公務員の副業には制限があります。公務員は、国家公務員法や地方公務員法によって、一部の例外を除いて副業ができないと定められている点に注意が必要です。
ここでは、国家公務員や地方公務員がなぜ副業できないのか、その理由を根拠となる法律とともに見ていきましょう。
国家公務員が副業できない理由
国家公務員は、国家公務員法第96条第1項により
「国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」
とされています。
引用:e-Gov法令検索 昭和二十二年法律第百二十号 国家公務員法
国家公務員は国や国民のために働き、その職務を全うする必要があるため、副業で報酬を得る行為は慎まなければなりません。
そして、守るべき服務規律として、副業・兼業に関して以下のように定められています。
- 私企業からの隔離(国家公務員法第103条)
- ほかの事業または事務の関与制限(国家公務員法第104条)
営利企業の役員等になる場合は人事院からの承認を、営利企業以外での副業を行う場合は内閣総理大臣および所轄庁の長からの承認を得ることが必要です。承認を得られるケースは少なく、基本的に副業はできないと言えます。副業の禁止は報酬の有無を問わず規定されており、営利企業の役員兼業については、名義のみでも禁止です。
さらに、国家公務員が副業できない理由として、副業禁止を裏付ける3つの原則についても理解しましょう。国家公務員法(第99〜101条)では、以下の3つ(以下、副業禁止の三原則と呼ぶ)が定められています。
- 信用失墜行為の禁止
- 職務専念の義務
- 守秘義務
この原則に従うと、「国家公務員としての信用や職務専念、守秘義務の観点から、国家公務員の副業が規制されている」と解釈できます。
参考:e-Gov法令検索 昭和二十二年法律第百二十号 国家公務員法
地方公務員が副業できない理由
地方公務員も、市民のために働く奉仕者としての役割を担っています。そのため、国家公務員と同様に、基本的には副業ができません。その根拠は地方公務員法であり、第38条には営利企業等の従事制限が定められています。
さらに、地方公務員法第33〜35条では信用失墜行為の禁止や職務専念、守秘義務についての定めがあり、国家公務員法と同様に副業禁止の三原則が盛り込まれているのはポイントです。
このように、地方公務員の副業も規制されています。
参考:e-Gov法令検索 昭和二十五年法律第二百六十一号 地方公務員法
例外的にできる公務員の副業
公務員は基本的に副業ができませんが、実は例外的に公務員でも副業が認められるケースもあります。
以下の仕事については、公務員としての仕事に支障をきたさなければ、認められる可能性が高いです。ただし、いずれも事前に勤務先に相談してから始めるようにしましょう。
- 家業の手伝い
- 小規模の農業
- 不動産の賃貸
- 執筆・講演
- 株やFXなどの投資
- ポイ活やアンケートモニター
ただし、いずれも事前に勤務先に相談してから始めてください。
ここでは、例外的にできる公務員の副業について解説します。
家業の手伝い
農業や屋台など、家族が営む事業の手伝いについては、公務員であっても認められる可能性が高いです。
ただし、公務員としての立場を考え、副業禁止の三原則を徹底しなければなりません。たとえば、家業の手伝いが忙しくて本業に集中できなくなれば、職務専念の義務を全うしていないとみなされ、禁止される可能性があります。
副業禁止の三原則を守ることを前提に、念のため勤務先に相談したうえで、家業の手伝いを始めましょう。
小規模の農業
自給自足目的の小規模な農業であれば、公務員ができる副業として認められます。認められるのは、育てた作物を自身で消費する場合のみです。収穫した作物を他人に売って収益を得る行為は、営利目的に該当するため原則できません。
さらに、農地の規模によっては許可が必要になることもあるため、必ず勤務先や自治体に確認してください。
不動産の賃貸
家賃収入を得る目的で行う不動産の賃貸は、公務員でも認められます。ただし「人事院規則14‐8(営利企業の役員等との兼業)」によると、運用について以下の条件がつくため注意が必要です。
- 家賃収入は年間500万円未満
- 5棟10室未満の規模で行う必要がある
- 賃貸に係る不動産が劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽集会、遊技等のための設備を設けたものでないこと
- 賃貸に係る建物が旅館、ホテル等特定の業務の用に供するものでないこと
また、本業に専念できるよう、管理業務は自身で行わず、管理会社などの第三者に委託する必要があります。
ただし、相続や生前贈与などで受け継いだ土地や建物が条件を満たしていない場合は、申請すれば不動産投資を認めてもらえる可能性があります。
なお、不動産を売却して利益を得ることを目的にした不動産投資は、不動産投資の範囲を越えるとみなされ、認められない可能性が高いです。
参考:人事院 人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
執筆・講演
講演や執筆活動も、公務員としての仕事に支障が出ない範囲であれば認められます。営利目的でなければ、謝礼を受け取っても問題ありません。
ただし、執筆した作品を販売して印税を受け取ることは、原則禁止されています。印税については、出版契約に基づいて執筆者に支払われるため、公務員の副業で禁じられた報酬に該当するためです。
株やFXなどの投資
株式やFX、暗号資産などの投資は、条件の範囲内であれば営利目的にならず、公務員でも認められます。投資は、自己資産を形成する1つの手段であるためです。ただし、業務によって知り得た機密情報をもとに投資判断を行ったり、業務時間中に投資を行ったりしてはいけません。
さらに、投資で利益が出た場合は、条件に応じて確定申告が必要です。確定申告を怠ると、申告漏れのペナルティとして延滞税や無申告加算税を課されることがあるため注意しましょう。
ポイ活やアンケートモニター
ポイ活やアンケートモニターは、営利活動ではなく節約と捉えられるため、公務員が制限されている副業には該当しません。公務員の業務に支障をきたすこともないため、公務員でも取り組めます。もちろん、副業禁止の三原則を守ることは前提条件です。
一方、アフィリエイトやせどりは、営利目的とみなされるため原則認められません。ポイ活やアンケートモニターと同様に、隙間時間で取り組みやすい人気の副業ですが、公務員はできないと理解しておきましょう。
副業解禁は公務員には無関係なのか?
一部の自治体では、公務員の副業も解禁されています。たとえば、神戸市は職員のNPO団体での活動を認めています。奈良県生駒市も、公益性が認められる地域貢献活動について、副業を解禁している自治体です。一部の自治体では解禁の動きはありますが、いまだに一般的とはいえません。
2018年6月15日には「未来投資戦略2018」の中で「国家公務員については、公益的活動等を行うための兼業に関し、円滑な制度運用を図るための環境整備を進める」という方針が定められました。政府が国家公務員の副業を、公益的活動に限って認める方向へ調整に入ったことがわかります。
公益的活動とは、社会福祉を目的とした福祉サービスのことです。子育て世帯をサポートするイベントの開催や、地域の高齢者と交流する場の設定などが挙げられます。ただし、公益的活動によって利益を得ることは、認められていません。
今後、公益的活動に限り、公務員の副業を認める自治体が増えることが予想されます。しかし「公益的活動であればどのような副業も許される」というわけではないため、必ずルールを確認しましょう。
公務員の副業は制限やルールを守ってやろう
公務員の副業は、国家公務員法や地方公務員法によって、一部の例外を除いて禁止されています。公務員は、国や国民のために働く奉仕者であり、その職務を全うする必要があるため、営利目的で副業をすることは認められていません。しかし、一部の仕事については、副業禁止の三原則を前提に認められることがあります。ルールを確認し、勤務先に相談をしたうえで、ルールの範囲内でできる副業に取り組みましょう。
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