- 更新日 : 2022年6月16日
確定申告書を解説!控除や税額の計算方法まで理解しよう

確定申告を行う場合、多くの人は「確定申告書B」という書類を使用することになります。
今回はそんな確定申告書Bの記載内容をもとに、納めるべき税金を計算する方法について解説します。
目次
確定申告書Bとは
確定申告書には複数の種類がありますが、自分がどの様式に該当するのかわからないときや自信がないときは、確定申告書Bを選択しましょう。
確定申告書Aは、給与所得、配当所得、一時所得、雑所得を申告する場合に使用可能な、簡易的な様式です。これら以外の所得を申告する場合には確定申告書Bを用いる必要があります。
確定申告書Bは確定申告書Aの内容を包括している点が特徴です。給与所得、配当所得、一時所得、雑所得のみの申告を申告する場合に確定申告書Aの代わりに確定申告書Bを使用しても問題はありません。
また、青色申告と白色申告どちらの場合であっても、確定申告書Bを選択しておけば間違いありません。青色申告は不動産所得、事業所得、山林所得のある事業者であるため確定申告書Bになりますが、雑所得や一時所得のみの白色申告の場合は確定申告書Aを使用することもできます。
確定申告書Bの書き方
ここからは確定申告書Bの書き方について、項目ごとに解説していきます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などを活用して入力していきましょう。
出典:令和3年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き 確定申告書B用|国税庁
「令和 年分所得税及び復興特別所得税の申告書B」を加工して作成
収入金額等の項目
収入金額とは、事業では売上、サラリーマンであれば給与に該当するものです。つまり、必要経費や保険料、源泉徴収額などが差し引かれる前の金額を、収入金額と呼びます。
ここからは上図赤枠1の「収入金額等」の入力方法について確認していきましょう。
- 給与(カ欄)には、申請をする人が受け取ったすべての給与収入を記入します。アルバイトを掛け持ちしていた場合や、夏は海の家、冬はスキー場で働くなど、複数個所からの給与収入がある場合には、すべての給与収入を合算した金額を記入しましょう。
- 雑の項目のその他(ケ欄)は、雑所得の収入のうち公的年金等でないものが該当します。具体的にはFXによる収入やアフィリエイト収入、ブログなどによる広告収入などが対象です。YouTuberなどネット収入で生計を立てているような場合は、事業収入になることも考えられますが、一般的なネット収入は雑所得の収入として申告して問題ないでしょう。
- 資産を売却したときに得た収入は、譲渡収入として申告します。総合譲渡の短期(コ欄)には所有期間が5年以内の場合で、長期(サ欄)には所有期間が5年を超える場合がそれぞれ該当します。
- 一時(シ欄)の項目は、競馬や競輪の払戻金や生命保険料の一時金が該当します。
所得金額等の項目
所得金額とは、収入金額から必要経費を差し引いたものです。計算方法は収入の種類によって異なります。
以下では、図の赤枠2である「所得金額等」の項目について確認していきましょう。
給与(6欄)の区分に記載する内容
給与収入金額(カ欄)を1,920,500円に設定し、以降計算していきます。
「1,920,500円」を下記表[A]に当てはめて計算を行います。
この場合の計算方法は「1,920,500÷4=480,125円」です。
ここから千円未満の端数切捨てで480,000円とし、
「480,000×2.8-80,000=1,264,000円」となります。
「総合譲渡・一時(11欄)」について
「総合譲渡・一時(11欄)」の計算式は、以下の通りです。
コ:短期譲渡が600,000円、サ:長期譲渡が1,100,000円、シ:一時所得が1,440,000円の場合、「600,000+{(1,100,000+1,440,000)×1/2}=1,870,000円」となります。
所得から差し引かれる金額の項目
「所得から差し引かれる金額」の項目では、所得金額における各種控除の合計額を計算します。図の赤枠3の箇所を確認していきましょう。
雑損控除
雑損控除とは、申請をする人が盗難や災害の被害を受けた場合に受けられる控除です。具体的には自然災害などにより自宅が損壊した場合が該当します。
医療費控除
医療費控除とは、10万円を超える医療費(所得金額が200万円未満の場合、総所得所得等の5%を超える医療費)を支払ったときに適用できる控除です。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、申告をする人がその年分に支払ったすべての国民健康保険料や国民年金保険料の金額、給与から天引きされた社会保険料等の金額を記入することで、控除対象にできるものです。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、中小企業基盤整備機構の共済掛金や確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金などが控除対象です。確定申告書に記入する以外に、支払った掛金の証明書の添付や提示が必要となります。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、一定の生命保険料や介護医療保険料、また個人年金保険料を支払った場合に一定の控除を受けられるものです。
地震保険料控除
地震保険料控除では、損害保険契約に係る地震保険料を支払った場合に一定の控除を受けられます。
寄附金控除
ふるさと納税や認定NPO法人への寄附金をしたのであれば、寄附金控除として申告できます。
寡婦、ひとり親控除
ひとり親控除は令和2年に新設された、ひとり親が申告できる控除です。ひとり親に該当しない、扶養親族のいる場合に受けられる控除が寡婦控除になります。
勤労学生、障害者控除
勤労学生控除と障害者控除の金額を合算します。勤労学生控除は申告するあなた自身が該当していれば、申告することが可能です。障害者控除は申告者以外にも配偶者や扶養親族が該当すれば申告できます。
配偶者(特別)控除
配偶者の年収が103万円以下であれば、配偶者控除を受けられます。また、配偶者の年収が103万円を超える場合には、配偶者特別控除を受けることが可能です。ただし、平成30年分以後は、配偶者の年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であることが要件になります。
なお、平成30年分以後の配偶者(特別)控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、適用できません。
参考:
No.1191 配偶者控除|国税庁
No.1195 配偶者特別控除|国税庁
扶養控除
扶養控除とは、申告をする人が扶養している親族のうち、その年の12月31日時点で16歳以上の人がいた場合に受けられる控除です。
基礎控除
基礎控除とは、合計所得金額2,500万円以下の場合に受けられる控除です。控除額は2,400万円以下で48万円、2,400万円超2,450万円以下で32万円、2,450万円超2,500万円以下で16万円となっています。
税額の計算
税額の計算では、所得金額等の合計から所得控除の合計額を差し引いた金額をベースに、課税される税額を計算できます。図の赤枠4である「税金の計算」の項目を入力していきましょう。
30欄 課税される所得金額の計算方法
30欄の課税される所得金額は、合計所得金額12欄から所得から差し引かれる合計金額29欄を引いたものになります。
「又は第三表」というのは、分離課税の所得や山林所得、退職所得がある場合に使用する分離課税用の確定申告書のことを呼びます。
31欄 上の30に対する税額の計算方法
31欄の計算方法は、30欄の課税される所得金額を、税額の計算表に当てはめて計算します。この場合、以下の計算式より3,899,430円を導きます。
16,471,000円×0.33-1,536,000=3,899,430円
33欄の具体例
33欄は、事業収入がある青色申告者が、租税特別措置法第10条から第10条の6に規定する税額控除の適用を受ける場合に受けられる控除です。主に試験研究に関する特別控除となり、試験研究を行なうために要した人件費や原材料費、外部委託費が対象となります。
33欄左の空欄に投資税額等と記入し、区分には1を記入しましょう。
納税金額の計算方法
それでは実際に納める税金の額を計算してみましょう。
(1) これまで課税される所得金額30を元に、それに対する税額31を求めました。
16,471,000円×0.33-1,536,000=3,899,430円
(2)31の税額から32から40の項目をすべて差し引いたものを41とします。
3,899,430円-25,000円-88,200円-332,000円=3,454,230円
(3) 41から災害減免額42があれば差し引き、43とします。
(4) 43の再差引所得税額に2.1%を掛けたものを44の復興特別所得税額として記入します。
3,454,230円×0.021=72,538円(小数点以下は切り捨て)
(5) 45所得税及び復興特別所得税の額は43+44で求めることができます。
3,454,230円+72,538円=3,526,768円
(6) 48の所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額は、あなたが給与所得などで既に納めた源泉徴収税額を記入します。
給与における源泉徴収票を元に記入します。源泉徴収税額が複数あれば合算した金額を記入します。ここでは518,022円だったことがわかります。
(7) 45の3,526,768円から46〜47、48の金額を差し引いたものを49欄に記入します。
3,526,768円-518,022円=3,008,746円≒3,008,700円(100円未満切り捨て)
(8) 49の金額から50の金額を差し引いて、プラスの金額であれば51に記入します。
マイナスの金額であれば52に記入しましょう。
延納の届け出
確定申告の際に支払う税金の半分は2か月半程度、先延ばしすることが可能です。どうしても全額支払うことが厳しい場合には、図の赤枠5にあたる「延納の届け出」に記入しましょう。
延納の届け出を書く必要がある場合
納める税金を一括で支払うことが原則ですが、事情により納付できないことも考えられます。その場合に税金の延納という制度を利用して、分割払いにすることができます。
本来納めるべき税額の半分以上を翌年3月15日までに納付すれば、残額の納付をその年5月31日まで延長することが可能です。
延納するための特別な申請書や申込書は不要で、確定申告書に必要事項を記入すれば自動で延納ができます。
延納の届出に関する金額の計算方法
延税の届出を行う場合は、以下の方法で金額を計算しましょう。
- 申告期限までに納付する金額は、本来の納付金額51欄の3,008,700円の1/2以上が必要となります。
- 3,008,700円の1/2以上つまり1,504,350円以上を納付することが延納の必須条件となります。この条件に合ったものにするため、ここでは1,504,700円を納めるとして、62欄に記入します。これを3月15日までに納付します。
- 残額の1,504,000円は63欄に記入します。これを5月31日までに納付します。
確定申告ソフトを利用すれば計算が簡単に!
確定申告書の各項目と記入すべき金額さえ理解できれば、あとは計算式に従って記入するだけです。とはいえ、各項目の金額をひとつひとつ合計する作業は手間がかかるものです。計算しようと何度も電卓を叩くよりも、確定申告ソフトを使用することで効率よく作業を進めていきましょう。
よくある質問
確定申告書Bとは?
確定申告書Aが給与所得、配当所得、一時所得、雑所得を申告する場合に使用するもので、それ以外の所得を申告する場合に確定申告書Bを使います。詳しくはこちらをご覧ください。
迷ったらどちらの確定申告書を使えばいい?
確定申告書Bを使用することをおすすめします。詳しくはこちらをご覧ください。
納める税金を一括で支払うことができない場合は?
税金の延納という制度を利用して、分割払いにすることができます。詳しくはこちらをご覧ください。
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