- 更新日 : 2025年1月7日
個人事業主の借入は難しい?借入前の確認事項や審査に通るコツを解説
2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
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個人事業主は資金繰りを考えて事業を運営する必要があります。計画的であれ、緊急時であれ、場合によっては外部からの借入を考えることはありますが、借入を検討する際にどんなことに注意すればよいのでしょうか?
この記事では、個人事業主やフリーランスが融資や借入を考える際の確認事項や審査に通るコツについて解説します。
目次
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個人事業主の借入は難しい?
一般に、個人事業主の借入は会社員等に比べて難しいと言われます。その理由として、次のことが挙げられます。
借入と融資との違い
「借入」と「融資」はどちらも他者からお金を借りることですが、用語の使われ方によって意味が異なる場合があります。
借入とは、お金を借りること全般を言い、借入先は特に限定しません。これに対し融資とは、主として金融機関からのお金の貸し出しを指します。したがって、借入には必ずしも審査は必要ありませんが、融資の際には審査があり、詳細な契約が必要です。
個人事業主が借入前に確認すべきこと
個人事業主が借入を決めるにあたっては、返済完了までを1つのプロジェクトとして捉えることが大切です。個人事業主が借入を計画する際の確認事項を挙げていきましょう。
借入の目的を明確にする
当たり前のようですが、なぜ資金が必要なのかを明確にすることが重要です。設備投資、運転資金、広告費など具体的な用途を挙げると、必要な金額や最適な借入先が見えてきます。目的が明確であれば、説得力のある説明が可能となります。
開業届を提出する
個人事業主として借入をする場合には、開業届の提出が必須です。開業届を提出し、個人事業主として独立して事業をしていることを示すことによって、借入先は事業資金であることがわかります。
資金調達先を比較する
借入先の選択肢としては、銀行や信用金庫、政府系金融機関など多くが考えられます。それぞれ融資条件等が異なるため、事業の状況に合った調達先を慎重に選びましょう。
事業計画書を準備する
事業計画書は、借入の審査において不可欠な書類です。事業の将来性や収益性を具体的に説明するものであり、事業内容、ターゲット市場、収支計画、返済計画を詳細に明記します。説得性のある事業計画書は金融機関からの信頼を得やすいと言えます。
借入による返済負担を考慮する
返済計画が事業の資金繰りを大きく圧迫しないかを慎重に検討する必要があります。無理な返済計画は事業運営を困難にするため、返済シミュレーション等を活用して無理なく返済できる計画を立てましょう。
借入に伴うリスクを把握する
返済期間において、経済状況の変化や事業計画未達による減収なども想定されます。想定されるリスクを事前に認識し、回避策や緊急対応策を用意しておくことが重要です。
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個人事業主が利用できる主な借入先
個人事業主が利用できる主な借入先について概要を見ていきましょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関で、個人事業主向けにも低金利の融資を提供しています。融資内容によっては、担保や保証人が不要な場合もあり、営業実績の乏しい創業間もない個人事業主向けの融資もあります。
地方自治体による融資(制度融資)
各地方自治体でも個人事業主向けに地域密着型の支援として、様々な「制度融資」を用意しています。それぞれの自治体が金融機関と連携して提供する融資制度が多く、低い金利で融資を受けられる場合もあります。
銀行
民間の銀行は、個人事業主に対して多様な融資商品を提供しています。信用力が高い場合や資金繰りが安定している場合には、個人事業主でも大口融資が可能となることもあります。
ただし、審査基準は一般に厳しく、担保や保証人を求められることが一般的です。また、都市銀行などに比べるとネット銀行は審査が柔軟で、融資までのスピードが速い傾向にあります。
信用金庫・信用組合
地域密着型の金融機関としての信用金庫や信用組合も、個人事業主への融資を行っています。銀行に比べてやや審査が柔軟であり、利用しやすい傾向があります。また、担当者が親身になって相談に乗ってくれるケースが多いのも特徴です。
助成金
助成金は、雇用促進等を目的として国や地方自治体が支給する資金です。借入ではなく、返済義務がない「給付」であることが大きなメリットです。ただし、申請要件が厳しいことや、書類作成および審査に時間がかかる場合があります。
補助金
補助金も返済不要ですが、助成金と比べて利用目的が「特定の事業分野や目的」に限定されるものが多いと言えます。例えば、IT導入補助金や省力化補助金などがありますが、競争率は高く、採択されるためには事業に合致した高レベルの事業計画書を作成する必要があります。なお、補助金は資金支払後に請求することにより支払われる「後払い」方式です。
クレジットカード会社
クレジットカード会社では、事業者向けのカードによってキャッシングや分割払いによって資金提供を行います。審査は比較的簡易で、資金調達までの時間が短いのがメリットです。反面、金利が高いため長期的な借入には不向きと言えます。
銀行以外の金融機関(ノンバンク)
ノンバンクとは、消費者金融やリース会社、事業者ローン提供会社等を指します。借入時の審査は速く、担保や保証人が不要な場合もあります。ただし、金利が高い傾向にあるため、返済負担を考えると借入にあたっては慎重な判断が必要です。
【目的別】個人事業主に適した借入方法
個人事業主の借入のタイミングによって、どのような借入方法が適しているのかを大まかに見ていきましょう。なお、自治体等による制度融資は地域性があるためここでは除外しています。
開業資金・設備費用
開業時においては、日本政策金融公庫や助成金・補助金を検討するのがおすすめです。
おすすめの借入先 | おすすめの理由 |
---|---|
日本政策金融公庫 | 開業時においては担保や実績が少ないため、開業支援のための低金利融資や無担保・無保証人の融資制度を提供している日本政策金融公庫の利用が便利です。 |
助成金や補助金 | 助成金や補助金は、開業時の資金負担を軽減する有効な手段と言えます。ただし、申請から受給まで時間がかかります。 |
運転資金
運転資金の借入時においては、民間の銀行や信用金庫・信用組合がおすすめです。
おすすめの借入先 | おすすめの理由 |
---|---|
銀行 | 開業資金より延滞リスクが低いとされる運転資金においては、返済の見通しも立ちやすいため、様々な融資を提供しています。 事業の収支計画や安定した収益が見込まれる場合には、比較的低金利での資金調達が可能となる場合もあります。 |
信用金庫・信用組合 | 地域密着型の金融機関として小規模な事業者への支援に力を入れているため、柔軟な対応が期待できます。 また、地元の経済基盤を支える目的があるため、地域内において、知名度、信用度が高い場合には優遇されやすいと言えます。 |
事業の拡大時
拡大の規模にもよりますが、返済に長期計画が必要な場合は日本政策金融公庫や銀行を検討しましょう。
おすすめの借入先 | おすすめの理由 |
---|---|
日本政策金融公庫 | 個人事業主向けの事業拡大に向けた様々な支援融資を行っているため、資金計画に柔軟性を持たせることができます。 |
銀行 | 拡大計画が具体的で利益が見込まれる場合、銀行からの融資が向いています。特に設備投資や新規事業拡大には、長期融資を受けられる銀行のメリットが大きいです。 |
緊急に資金が必要な時
緊急時には、できれば顔見知りの担当者がいる信用金庫・信用組合、銀行などがおすすめです。
おすすめの借入先 | おすすめの理由 |
---|---|
信用金庫・信用組合 | 緊急時には、地元での取引実績や信頼が大きな武器になります。信用金庫・信用組合は迅速な対応が可能で、事業主の状況に応じた柔軟な融資を受けやすいと言えます。 |
銀行 | 銀行でも、緊急の資金需要に対応する短期融資の仕組みがあります。信用状況に応じて審査が厳しくなる場合もあるため、ネット銀行などの利用もおすすめします。 |
一時的な資金不足
一時的な資金不足には信用金庫・信用組合や日本政策金融公庫などのプランが考えられます。
おすすめの借入先 | おすすめの理由 |
---|---|
信用金庫・信用組合 | 短期的な運転資金の補填であれば、信用金庫・信用組合の融資が便利です。特に、既存の取引関係がある場合、迅速な融資を受けられる可能性が高くなります。 |
日本政策金融公庫 | 社会的環境の変化などにより一時的に業況が悪化した場合に対応する経営環境変化対応資金などを提供しており、低金利かつ柔軟な条件で資金調達が可能です。 |
個人事業主が借入の審査に通るポイント
借入時の審査の対策として、次のようなことを心得ておきましょう。
借入資金の用途を明確にしておく
なぜ、そのタイミングで資金の借入が必要なのかを明瞭に説明できるようにしましょう。借入金の用途が多方面に分かれていたり、現実の事業と大きくかけ離れていたりする場合には借入が難しいと言えます。
実現性のある事業計画書を準備する
借入金の用途や返済計画について、具体的に事業計画書へ落とし込みましょう。売上の見込みや経費計画を明確にして、借入金が具体的にどのように影響するかを説明できる計画書を提示すると信頼を得やすくなります。
自己資金が多いか
自己資金の割合が多いほど審査に有利になります。必要額の一部を自己資金で賄えることを示すと、信頼性が高まるため、借入に伴う金融機関のリスクの低さをアピールできます。
税金・社会保険料の滞納がないか
各種税金や社会保険料の未納は、審査において大きなマイナスとなります。確定申告時には適切に納付を行い、未納がないことを証明する書類を用意して信頼性を高めましょう。
借入金の返済が無理なくできるか
金融機関は収入の安定性を重視します。過去2〜3年分の売上の増加や安定性を示しつつ、今後の現実的な収入を計画書において示しましょう。可能であれば契約書や継続的な取引先のリストも用意しておくと効果的です。
個人事業主の経営が赤字でも借入はできる?
個人事業主の経営が赤字となる場合には、借入が非常に難しくなります。金融機関は、基本的に資金の貸付や決済を業務としています。貸付は計画通りに返済されることを前提とし、基本的に黒字経営が求められるため、審査が通りにくくなるのです。
しかしながら、赤字でも借り入れることができる先もあります。日本政策金融公庫では、赤字でも借入できますが、金利が高くなる傾向にあります。例えば、次の場合には金利の上乗せがあります。
資金調達の方法として、借入ではなくクラウドファンディングなどもありますが、いずれにせよ漫然と赤字を出している状況での資金集めは難しいと言えます。赤字の原因と改善計画を明らかにし、一策を講じた事業計画書が必要となるでしょう。
個人事業主が借入をした場合の勘定科目は?
個人事業主が借入をした場合の仕訳例を紹介します。
例)個人事業主が11月始めに50万円の借入をしました。
金利は3%、返済は20回とし、元利均等で返済する契約としました。
【借入時】
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
普通預金 | 488,800円 | 借入金 | 500,000円 | ●●銀行より借入 |
租税公課 | 200円 | |||
支払手数料 | 11,000円 |
借入時の手数料(印紙代や手数料)がある場合には、それぞれが差し引かれた残額が入金されます。
【返済時】
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
借入金 | 24,412円 | 普通預金 | 25,662円 | ●●銀行に返済 |
支払利息 | 1,250円 |
個人事業主の場合、事業上の借入金の利息は経費となります。支払利息などは金融機関から提示される返済明細表で確認します。
【初年度終了後の確定申告時】
この例の場合は、借入年の11月に始まり全20回返済を行うため、返済期間が次のようになります。
- 返済初年度:2カ月
- 返済2年度:12カ月
- 返済3年度:6カ月
返済初年度の確定申告では、借入金を1年基準によって最後の6カ月分を振り替えます。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
借入金 | 152,615円 | 長期借入金 | 152,615円 | 借入金長期へ振替 |
借入目的を明確にし、現実的な事業計画を!
個人事業主は、プライベートにおいても借入が必要な場合があります。事業では計画どおりに返済していても、プライベートの返済が滞っていては審査への影響が考えられます。プライベートにおける返済と合わせて借入可能額について検討しましょう。
事業においては環境の変化等により、借入の必要性を予測できないこともあります。借入目的を明らかにし、目的に見合った具体的で現実的な事業計画を丁寧に作りこむことが借入の基本と言えるでしょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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