• 更新日 : 2024年2月20日

確定申告と一般口座の関係をわかりやすく解説

確定申告と一般口座の関係をわかりやすく解説

株式等の取引をする場合は「一般口座」と「特定口座」のいずれかで取引をします。証券会社が管理する特定口座ではなく一般口座を利用している方は、ご自身で確定申告をしなければなりません。

株式等の譲渡益があった場合、基本的に確定申告が必要ですが、一定の条件で不要になる場合もあります。

一般口座での株式の所得、損失によって確定申告を行うかどうかは、その仕組みを理解してから判断するとよいでしょう。

そこで今回は、確定申告と一般口座の関係性と仕組み、申告の際の申告書の書き方などについて紹介します。また、あわせて確定申告を忘れた場合の対応についてもみていきましょう。

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一般口座とは

「一般口座」とは、証券会社が管理している特定口座やNISA口座とは異なり、投資家本人が損失の計算をして確定申告を行う口座です。株式などの譲渡で利益を得た際に発生する「譲渡益課税」は、他の所得と分離して税額を計算する「申告分離課税」の対象となります。なお、株式等の譲渡益には上場株式等の譲渡益と一般株式等の譲渡益があります。

その年1年間の譲渡損益を計算した結果、損失が出た場合には確定申告は不要です。株式などの譲渡損益の仕組みの一つに、上場株式等の譲渡損失で損益通算をしてもその年に控除しきれない金額がある場合に、翌年以降の3年間に繰越控除ができる「譲渡損失の繰越控除制度」があります。

ただし、この制度を利用するためには、確定申告をしなければなりません。また、制度利用時だけでなく損失が出続けている間は、毎年申告が必要です。

一般口座の株取引で利益が出たら確定申告が必要

一般口座で株式などの取引をしている場合は、自身で利益や損失、税額の計算をします。株式等の譲渡で利益を得た際には分離課税の対象となるため、確定申告が必要とお伝えしましたが、ここでは具体的な計算を見ていきましょう。損益の計算をする前に「取引報告書」を集めておきましょう。

特定口座の場合は、年間での株式などの取引をまとめた報告書がもらえます。しかし、一般口座の場合には、株取引ごとの報告書を自分でまとめて計算しなくてはいけません。計算式は、以下のとおりです。

譲渡収入金額 - (取得価額 + 譲渡手数料 + 負債利子 + 消費税 + その他の経費)

 

なお負債利子とは、譲渡した株式の取得のための借入金などの利子で、その年中の所有期間に発生するものに限られます。一般口座では「特定口座年間取引報告書」は発行してもらえません。そのため、株取引ごとに発行される「取引報告書」をまとめて、ご自分で収支を計算したうえで確定申告を行うことになります。計算結果がプラスなら利益を得ている、マイナスなら損失がある状態です。

確定申告を忘れてしまったら?

「確定申告を忘れてしまっていた」「譲渡益の計算をしておらず、確定申告の対象になると知らなかった」という場合に、申告期限を過ぎると発生するものが「無申告加算税」です。

無申告加算税の税率は、原則、本来の税額が50万円以下の部分には15%の加算、50万円を超えた部分には20%の加算となります。また、税務調査の前に自主的に申告納付した場合でも5%となります。

確定申告の際に納める税金とは別に、延滞した分の延滞税が加算されます。さらに、税務署の指摘や調査を受けてなお確定申告をしない場合には、無申告加算税に加えて「重加算税」が最高50%上乗せされるため注意が必要です。よって、確定申告が必要だとわかった際には、できる限り早めに申告しましょう。

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確定申告書の書き方

確定申告書の書き方

株式等の譲渡益が発生している場合には、その旨を確定申告書に記載しなければなりません。所得以外の収入があった場合や、フリーランスや個人事業主が確定申告を行う際にも使用します。

上の図は、一例として給与所得者が年末調整が終わった後、株式等の取引の譲渡益について分離課税による確定申告をする場合の組み合わせです。

※確定申告書には、確定申告A、Bなどの区分がありましたが、現在は「確定申告書」に一本化されています。

確定申告書用紙は国税庁や市区町村の担当窓口で受け取れます。また、Webサイトからのダウンロードも可能ですし、用紙に記載しないWebでの申告も可能です。書き方がわからずつまずかないためにも、確定申告書の正しい書き方を知っておきましょう。以下、給与所得のある人が株式等の取引で譲渡益がでた場合(一般口座)の申告の流れを見ていきましょう。

確定申告書 第一表

「確定申告書 第一表」は、自身の名前や住所などの基本情報、所得や納税する金額を記載します。重要なことは、この申告が「分離課税」であることを明らかにすることです。

確定申告書第一表の上部に、この申告が分離であることを表示する欄がありますので、「分離」に〇をしておきましょう。

確定申告書 第一表

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁所得税及び復興特別所得税の確定申告書を加工して作成

収入等の金額は、源泉徴収票青色申告決算書などを参考にします。株式等の譲渡益については第三表において先ほど紹介した取引報告書をもとに計算するため、手元に準備してから取り掛かりましょう。記入が必要な欄の概要は、以下のとおりです。
確定申告書第一表は、大まかに言うと次の5つの部分にわかれており、それぞれ該当する部分を埋めていきます。分離課税の申告時には一旦、第一表の所得から差し引かれる金額までを記載したのち、第三表を記載し、第一表に戻って税額を確定します。

<確定申告書第一表の記載概要>

確定申告書第一表の区分
記載内容
収入金額等
源泉徴収票の支払金額を記入する。
所得金額
収入金額から必要経費を差し引いた金額。給与の場合には、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を記入する。
所得から差し引かれる金額
各種所得控除の金額を記入する。生命保険料や医療費の控除等を受けている場合は添付書類が必要です。
税金の計算
所得税額 = 課税所得 × 税率 - 控除額(下記の速算表参照)
その他
還付の場合には、還付先を記入する。

<所得税の速算表>

課税される所得金額
税率
控除額
1,000~1,949,000円
5%
0円
1,950,000~3,299,000円
10%
97,500円
3,300,000~6,949,000円
20%
427,500円
6,950,000~8,999,000円
23%
636,000円
9,0000,000~17,999,000円
33%
1,536,000円
18,000,000~39,999,000円
40%
2,796,000円
40,000,000円以上
45%
4,796,000円

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

確定申告書 第二表

「確定申告書 第二表」には、第一表の内訳を記載します。また、医療控除や社会保険料控除などの所得から引かれる金額も記載事項です。

給与等の収入だけでなく、総合課税の対象となる譲渡所得や一時所得がある場合には、「総合課税譲渡所得、一時所得に関する事項」に収入、経費、差引金額を記入しましょう。一般的な記入の流れは、以下のとおりです。

<確定申告書第二表の記載概要>

確定申告書第二表の区分
記載内容
所得の内訳
給与等で得た1年間の収入金額の明細を記載します。
各種所得控除等
源泉徴収票と同じ場合には特に転記の必要はありません。
本人に関する事項
雑損控除に関する事項
寄附金控除に関する事項
該当する場合には記載します。
総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項
例えばゴルフ会員権の譲渡益、一過性の収入などがあった場合に記載します。
配偶者や親族に関する事項
事業専従者に関する事項
該当する場合には記載します。
住民税・事業税に関する事項
給与から天引きして住民税を支払うときは、住民税の欄に「特別徴収」、それ以外は「自分で納付」に〇をします。

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書1面、2面

申告書第一表(この時点では税金の額は未記入で問題ありません)、第二表が記入できたらここから株式等の譲渡益について記載します。まず、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を作成します。この書類は、上場株式等の取引によって発生した収入を記載するものです。

収入金額は、証券会社からの取引報告書を確認して記入します。記入する欄とその流れは、以下のとおりです。先に2面を書いた後に、1面を記載します。

<株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の記載概要>一般口座の場合

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
記載内容
(2面)特定口座以外で譲渡した株式等の明細
取引報告書を参考にしながら、上場株式等と一般株式等に区分し、同一銘柄ごとの取引を記載します。
取得費については、購入時の売買契約書や取引報告書を参照します。
(1面)所得金額の計算
2面で記載した
左側に一般株式等の収入金額、取得費、手数料の各合計値を、
右側に上場株式等の収入金額、取得費、手数料の各合計値を記載して、譲渡益を求めます。

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の記載概要

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書を加工して作成

申告書 第三表

「申告書 第三表」は、分離課税用の確定申告書です。株の譲渡益が発生した場合には、給与などとは別計算で課税を行います。上記の株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(以下、明細書と略します)の記入が済んだら、その内容をもとに第三表に転記しましょう。記入する欄とその流れは、以下のとおりです。

<確定申告書第三表の記載概要>

確定申告書第三表の区分
記載内容
収入金額等
明細書1面の収入金額から転記します。
所得金額等
明細書1面の所得金額から転記します。※
税金の計算
総合課税の合計額
申告書第一表の所得金額等の合計額を転記します。
所得から差し引かれる金額
申告書第一表の所得控除の合計額を転記します。
課税される所得金額
総合課税の所得金額と、※に対応する所得金額(明細書の「繰越控除後の所得金額」から転記)を記入し、合計を求めます。(この合計額は申告書第一表の税額に転記します。)

このように、分離課税用の確定申告の書類は多岐にわたります。何から書き始めたらよいかわからず放置してしまうと、申告の期限が過ぎてしまう可能性があるでしょう。

また、源泉徴収書や取引報告書といった添付書類が手元にないと、正確な金額が記入できない欄があります。事前に申告書と必要書類が揃った段階で記入していくのをおすすめします。

一般口座の株取引で損失が出た場合は?

株取引等の譲渡損益を計算した際に損失が出てしまった場合には、基本的に確定申告をする必要はありません。しかし、確定申告すれば損失分を他の利益や配当分と相殺でき、所得税を減らせる「損益通算」が可能です。

また、全ての取引を損失通算しても、損失が出てしまう場合には「譲渡損失の繰越控除」という制度が利用できます。損失によって控除しきれなかった分を、その年から最長3年間繰り越して控除できるものです。ただし、損益通算と繰越控除ができるのは、上場株式等に係る譲渡損失についてのみです。

また、前述のように申告の際「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を添付してください。

損失分を控除できるため便利な制度ですが、デメリットもあります。控除を受ける3年間は、毎年確定申告が必要です。株の売却をしなかった場合も申告は必須のため、注意しましょう。

株式等の譲渡益の確定申告が不要なケース

前述のとおり、確定申告が不要なのは株取引による譲渡損が出ているケースです。基本的に譲渡益が発生している場合は、確定申告が必要となります。

ただし、年間を通して譲渡益と配当金を合わせた金額が20万円以下の場合で確定申告不要となる人には条件があります。条件は以下のとおりです。

  • 所得金額の合計額が、所得控除の合計額より少ない
  • 1ヶ所から給与の支払いを受けている人で、年収が2,000万円以下
  • 公的年金等の収入金額が400万円以下 など

このほかにも、源泉徴収ありの特定口座を使って譲渡益が発生した場合は、申告が不要です。特定口座であっても「源泉徴収なし」の場合は、確定申告の対象となります。

確定申告と一般口座の関係を正しく理解しよう

一般口座を使用して株式等の譲渡損益がある場合、利益や損失の有無にかかわらず確定申告が必要かどうか判断する必要があります。確定申告は、複雑な書類の記入方法や、利用できる制度を理解しておくと便利です。今回紹介した内容以外に、確定申告で気になることや詳しく知りたいことがあれば、下記のページを参考にしてみてください。

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よくある質問

一般口座の株取引で利益が出たら確定申告は必要?

一般口座で株取引を行っている場合には、自身で取引の損益や税額を計算し、確定申告の必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告を忘れてしまったらどうなる?

確定申告を忘れた場合は早めに確定申告が必要であり、確定申告が遅くなると納める税金とは別に、無申告加算税を納めなければならないケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

株式の譲渡益の確定申告が不要になるケースは?

年間を通して株式等の譲渡益が生じる場合は原則、確定申告が必要です。ただし、「源泉徴収ありの特定口座を利用している」もしくは「年間を通して株式等の譲渡損が出ている」場合は確定申告を必要としません。詳しくはこちらをご覧ください。


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