- 更新日 : 2023年12月6日
総合課税とは?申告分離課税との違いや所得税の計算方法を解説!
所得税は、所得の種類によって個別に計算を行った後、各種所得を合算して総所得金額等を求め、総所得金額等をもとに所得税を計算する総合課税がベースです。この記事では、総合課税は具体的に何かということから、計算方法、申告分離課税との違い、確定申告の仕方まで解説していきます。
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目次
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総合課税とは?
総合課税とは、納税者の所得を合算し、課税所得を計算する仕組みのことです。具体的には、不動産所得や配当所得、給与所得など、所得税の対象となる所得のうち、分離課税の対象となる所得を除いた所得の合算にかかる課税のことです。
総合課税の対象となる所得は?
所得は、その性質などによって10種類に分類されます。このうち、総合課税の対象になる所得は、以下に該当する所得です。
事業所得(ほとんどが対象、一部対象外)
事業所得は、商業や工業、農業など個人が事業で得た所得のことです。個人事業主の事業による所得は、事業所得に分類されます。基本的に事業所得は総合課税ですが、事業規模での株式譲渡による所得や先物取引による所得は総合課税に含みません。
不動産所得(すべて対象)
不動産所得とは、建物や土地及び土地に関する権利、船舶などの貸付から生じる所得のことです。マンション投資などの不動産投資を行っている場合の所得は、不動産所得に分類されます。不動産所得に関しては、すべて総合課税の対象です。
給与所得(すべて対象)
給与所得は、会社員が、会社から労務の対価として受け取る、給与や賞与などの所得をいいます。給与所得は、すべてが総合課税の対象です。
利子所得(一部が対象)
利子所得とは、預貯金の利子などによる所得をいいます。基本的は源泉分離課税であり、総合課税の対象にはなりませんが、国外で支払われる預貯金などの利子や、同族会社が発行した私募債に対する利子などは、総合課税に含みます。
配当所得(一部が対象・選択)
配当所得は、株主などが受け取る法人からの剰余金の配当、公社債投資信託等を除く投資信託の分配金などによる所得のことです。原則として、配当所得は総合課税の対象となります。ただし、上場株式等の配当などは必ずしも総合課税に含める必要はなく、申告分離課税の選択もできます。また、上場株式の配当など一部の配当所得は、源泉徴収による確定申告不要制度を選択することも可能です。
譲渡所得(一部が対象)
譲渡所得は、資産を譲渡したときの所得をいいます。総合課税の対象になるのは、ゴルフ会員権の譲渡や金地金などの譲渡所得ですが、営利を目的として金地金の売買をしている場合には、事業所得や雑所得として総合課税の対象となります。なお、土地や建物、株式、借地権の譲渡は譲渡所得に含まれ、総合課税の対象にはなりません。
一時所得(ほとんどが対象、一部対象外)
一時所得は、自分で掛け金を負担した生命保険の一時金や懸賞・福引きの賞金品など、事業による収益や労務・譲渡の対価に含まれない、一時的に得た所得のことです。多くは総合課税に分類されますが、保険期間5年以下の一時払い養老保険金など、一部は総合課税に含みません。
雑所得(ほとんどが対象、一部対象外)
雑所得は、ほかのどの所得にも分類されない所得をいいます。公的年金による所得や原稿料、講演料など、多くは総合課税の対象になりますが、株式等の譲渡や先物取引に関連する所得は総合課税に含みません。
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申告分離課税との違いは?
所得の課税方法は、総合課税以外に、申告分離課税、源泉分離課税があります。このうち、総合課税と申告分離課税は、確定申告が必要であることが共通点として挙げられます。
総合課税は前述したように、対象の所得すべてを合算して所得税を求めます。一方、申告分離課税は、総合課税のようにほかの所得と合算することはありません。ほかの所得と分離して所得税を計算するため、申告分離課税といわれています。
申告分離課税に該当するのは、建物や土地、株式、借地権の譲渡所得、山林所得、退職所得などです。上場株式等の配当金については、総合課税と申告不要制度との選択ができます。
申告分離課税については、以下の記事で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。
参考:申告分離課税制度|国税庁
源泉分離課税との違い
源泉分離課税は、ほかの所得と分離する所得のうち、所得を支払う者が、納税者に代わって税金を徴収し納める課税方式をいいます。源泉分離課税に該当するものはいくつかありますが、代表的なのは預貯金の利子です。
預貯金の利子は、利子を支払う金融機関が、利用者に支払う際に所得税と住民税分を徴収し、残りの利子を利用者に支払っています。徴収分は金融機関が代わりに納税するため、預貯金の利用者は利子分の税金を申告する必要はありません。
総合課税と源泉分離課税の違いは、確定申告の有無と所得合算の有無です。総合課税は確定申告が必要で所得を合算しますが、源泉分離課税は所得を分離して計算し、確定申告を必要としません。
【総合課税】所得税の計算方法は?
引用:基本的な仕組み|財務省
このうち、総合課税に分類される所得については、以下の手順で納税すべき所得税額を計算します。
- 各種所得における収入額や必要経費などを洗い出し、収入の種類ごとに所得金額を算出する
- 損益通算によって総合課税に分類される「合計所得金額等」を算出する
(損失の損益通算は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得のみ認められます) - 純損失の繰越控除があれば合計所得額から控除し「総所得金額等」を算出する
- 総所得金額等から所得控除を行い「課税総所得金額等」を算出する
- 課税総所得金額等に税率を乗じて所得税額を算出する
- 税額控除があれば所得税額から差し引く
(計算例)
給与収入600万円、副業による収入150万円、副業の経費86万円の会社員。所得控除は基礎控除の48万円のみ、繰越控除と税額控除はないものとする。
- 所得金額の算出
給与所得 600万円(収入)-164万円(給与所得控除)=436万円
雑所得 150万円(収入)-86万円(経費)=64万円
参考:No.1410 給与所得控除|国税庁
- 合計所得金額等の計算436万円(給与所得)+64万円(雑所得)=500万円
- 総所得金額等の計算
500万円(合計所得金額等)-0円(繰越控除)=500万円
- 課税総所得金額等の計算 500万円(総所得金額等)-48万円(基礎控除)=452万円
- 所得税額の計算
452万円(課税総所得金額等)×20%(税率)-42.75万円=47.65万円
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
- 納税すべき税額の計算
476,500円-0円(税額控除)=476,500円
※上記の計算では復興特別所得税を考慮していません。
総合課税の確定申告書の書き方は?
前項の計算方法で取り上げた計算例をもとに、確定申告書の書き方を見ていきましょう。
(計算例:再掲)
給与収入600万円、副業による収入150万円、副業の経費86万円の会社員。所得控除は基礎控除の48万円のみ、繰越控除と税額控除はないものとする。
1.各所得の収入金額等を記入する
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「所得税確定申告書」を加工して作成
2.各所得の所得金額等と合計額を記入する
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
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3.所得から差し引かれる金額を記入する
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
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4.税金の計算部分を記入する
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「所得税確定申告書」を加工して作成
課税される所得金額は、所得金額の合計から、所得から差し引かれる金額を控除した額です。復興特別所得税額は1円未満の端数切り捨て、申告納税額は100円未満の端数切り捨てで計算します。
注:一般には、給与収入は源泉徴収されているのが基本です。ここでは、所得税の計算の流れを追うために、便宜上源泉徴収されなかったこととします。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「所得税確定申告書」を加工して作成
総合課税は所得を合算して課税、申告分離課税は所得を分離して課税する方法
所得税は、その年分に生じた所得を10種類に区分し、さらに「総合課税」と「申告分離課税」に分類します。総合課税は複数の所得をまとめて税額を計算する課税方式です。所得が多くなればなるほど税率が上がる累進課税方式を採用している一方、ほかの所得の損失を別の所得から控除する「損益通算」ができる特徴があります。
一方の申告分離課税は、ほかの所得とは通算せず、所得ごとに分離して課税されます。所得の種類ごとに税率が異なるのが特徴です。
所得税の計算は非常に複雑です。まずは多くの人が関わる総合課税の対象と計算から学んでいくとよいでしょう。
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もっと読むよくある質問
総合課税とは?
総合課税とは、納税者の所得を合算し所得税を計算する課税方式のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
総合課税と申告分離課税の違いは?
総合課税は所得を合算しますが、分離課税はほかの所得と分離して所得税の計算を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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