- 更新日 : 2024年11月14日
青色申告で扶養控除が受けられない場合
「青色申告」とは、個人事業主など事業所得がある人、山林所得もしくは不動産所得がある人が、所得金額と税額を正確に計算して納税するための手続きです。
青色申告制度を利用すると、さまざまな特典を受けられます。
ただし、納税者(青色申告者)が青色事業専従者給与を支払っている場合には、扶養控除が受けられません。
ここでは、青色申告において扶養控除が受けられないケースについて説明します。
なお、マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が確定申告する際に知っておきたい基礎知識や、確定申告の準備、確定申告書の作成方法・提出方法などを分かりやすくまとめた「青色申告1から簡単ガイド」を無料で用意しております。
チェックリスト付きなので、情報収集だけでなく、書類作成・申告手続きを行う時にもお使いいただけます。
この記事を読む方におすすめ
税理士監修で、40ページ以上の情報がギュッと詰まったお得な1冊となっていますので、毎年使える保存版としてご活用ください。
日々の取引入力、青色申告の書類作成、申告作業まで、1つで完結するのが「マネーフォワード クラウド確定申告」。電子申告機能を使えば、最大65万円の特別控除を受けられ、大きな節税に。
家計簿感覚で簡単に使えるので、初めての方にも多くご使用いただいています。

扶養控除とは何か
納税者は、所得税法上の「控除対象扶養親族」を持っている場合に、一定の所得控除を受けることができます。
これが「扶養控除」と呼ばれるものです。扶養控除の対象となる扶養親族とは、年齢が16歳以上(年末時点)で、下記の条件に該当する人のことです。
・都道府県知事より養育を委任された児童(例えば里子など)、市町村長養護を委任された老人であること
・納税者と生計が同一であること
・年間の合計所得金額が38万円以下であること (2020年分以降、扶養家族の年間所得が48万円以下の場合)
(参照:No.1080 扶養控除|所得|国税庁)
ただし、これらの人々が生計を同一とする納税者と一緒に事業を行っている場合、納税者から給与を支払われることがあります。
例えば、父の経営している会社で自分の子どもがアルバイトをするなどして、父が子どもに給与を払うケースなどです。
このときに支払った給与が「青色事業専従者給与」に該当すると、納税者が青色申告をしても扶養控除を受けられませんが、かわりに必要経費として計上できる場合があります。
青色事業専従者と青色事業専従者給与
「青色事業専従者」とは、下記の条件に該当する人のことです。
・年末時点で年齢が15歳以上であること
・年間6カ月以上(一定の場合には、事業に従事することができる期間の2分の1以上)、納税者(青色申告者)の営む事業に従事していること
(参照:No.2075 専従者給与と専従者控除|所得税|国税庁)
そして、青色事業専従者に支払われる給与を「青色事業専従者給与」といいます。
ただし、青色申告において「青色事業専従者給与」として認められ、必要経費として計上するためには、しかるべき手続きが必要です。
納税者が事業専従者に支払った給与を、税務的に「青色事業専従者給与」として扱ってもらうには、まず「青色事業専従者給与に関する届出書」を、提出期限までに納税地の所轄税務署に提出しなくてはなりません。(届出書は、国税庁のサイト「青色事業専従者給与に関する届出手続き」のページからダウンロードすることもできます。)
その提出期限とは、青色申告をする年の3月15日までです。
ただし、同年の1月16日以降に開業した人、新しく専従者が増えた人は、その開業日、または専従者が働き始めた日から2カ月以内に提出すればいいと定められています。
この届出書には、青色事業専従者の氏名、職務の内容・従事の程度、給与や賞与の金額、支給期などを記載します。
(参照:No.2075 専従者給与と専従者控除|所得税|国税庁)
このときの給与の額は、専従者の労務の期間や性質、ほかの使用人などの給与、事業の種類や規模、収益の状況などを踏まえて相当であると認められる範囲でなくてはいけません。
過剰とされる部分については、必要経費にすることは難しくなります。
そして、納税者がこうして事前に提出した届出書に記入している金額の範囲内で支払ったときのみ、その給与額が必要経費として認められます。
より詳しくは「専従者控除について」からご確認いただけます。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
青色事業専従者と扶養控除、節税効果が高いのはどちらか
それでは、青色事業専従者と扶養控除では、節税効果が高いのはどちらかを考えてみましょう。
例えば、子どもに仕事を手伝ってもらったとき、子どもを青色事業専従者にすると、扶養控除38万円を受けることはできなくなります。
この場合、子どもに年間で支払う額を38万円よりも多くなるようにしないと、結果的に扶養控除を受けていたほうが得になってしまいます。
青色事業専従者で節税効果を高めたいと考えるときには、以下のようなことに気を付けましょう。
・年間の給与を38万円以上にすること(2020年分以降、扶養家族の年間所得が48万円以上にすること)
・給与額に応じて、青色申告者及び青色事業専従者が支払うべき所得税を計算すること
・青色事業専従者給与を必要経費として計上することによる、節税効果を計算すること
ケースで見る税額の違い
例えば、所得が1,000万円である青色申告者のケースを考えてみます。
申告者が青色事業専従者給与を一切払っていない場合の所得税額は、以下のとおりとなります。なお、所得税率、税額控除の額は、所得額に応じて変わります。
一方で、事業を手伝ってくれている子どもに400万円の青色事業専従者給与を払っている場合の所得税額は、以下のとおりです。
さらに、子どもの所得に対する税金は、以下のとおりです。
つまり、申告者と青色事業専従者の所得税を合わせても82万7,000円で、青色事業専従者給与を支払わない場合と比較すると、68万6,200円も節税することができます。
(※) 基礎控除は2020年分以降、所得2,400万円以下で控除額48万円。また扶養控除は2020年分以降、扶養家族の年間所得が48万円以下の場合に対象。
まとめ
このように、納税者(青色申告者)が青色事業専従者給与を支払っている場合には、その給与を受け取っている親族は扶養控除の対象にはなりません。
しかし、事前に税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出するなど、しかるべき手続きを取れば、扶養控除を受けられなくとも、適正な金額を必要経費として算入することができます。
青色申告で扶養控除するかを検討するときには、十分に注意しましょう。
なお、青色申告については以下の記事でくわしく解説しています。
関連記事:

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
よくある質問
扶養控除とは?
納税者は、所得税法上の「控除対象扶養親族」を持っている場合に、一定の所得控除を受けることができます。これを扶養控除といいます。詳しくはこちらをご覧ください。
「青色事業専従者」に該当する条件は?
「納税者(青色申告者)と生計が同一であること」や「年末時点で年齢が15歳以上であること」などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
青色事業専従者と扶養控除、節税効果が高いのはどちらか?
ケースによって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
扶養控除の関連記事
新着記事
個人事業主は事業用口座を開設すべき?メリットや開設方法、注意点を解説
個人事業主は、事業用口座を開設することができます。事業用口座とは個人の事業用で、口座名義に屋号を入れるなどができる口座のことです。 この記事では、事業用口座の概要や事業用口座を開設するメリット・デメリット、開設するタイミング、開設方法などを…
詳しくみる個人事業主におすすめの店舗火災保険とは?保険料の相場や比較ポイントなど
店舗を構えて事業をしている個人事業主は、店舗火災保険に加入したほうがよいでしょう。なぜなら万が一、店舗が火災にあっても一定の補償を受けられるからです。 店舗火災保険は、保険会社によって保険料などが違います。今回は、店舗火災保険の保険料の相場…
詳しくみる個人事業主も社会保険適用拡大の対象!常時5人以上の個人事業所の対応を解説
社会保険の適用拡大により、個人事業主も社会保険加入が必要です。この記事を読めば、「個人事業主で社会保険が対象になる基準は?」「社会保険適用の事務手続きがわからない」という悩みを解決できます。本記事で、社会保険適用拡大の概要や、社会保険の仕組…
詳しくみる保険外交員はなぜ個人事業主?メリットや確定申告・経費についても解説
保険外交員とは、保険契約の勧誘や代理、契約後のサポートなどを行う職種です。本記事では、保険外交員の雇用形態をはじめ、個人事業主として働くメリットやデメリットについて解説します。 保険外交員にまつわるよくある質問と回答も取り上げるため、興味を…
詳しくみる個人事業主は圧縮記帳を使えない!国庫補助金等の総収入金額不算入について解説
圧縮記帳とは、課税の繰り延べをする会計処理のことを指します。税法で規定されており、企業が国からの補助金を利用して固定資産を取得した際に用います。そのため、個人事業主の場合には使えません。本記事では、圧縮記帳の概要や圧縮記帳を活用するメリット…
詳しくみる個人事業主の美容師とは?メリットや年収、経費や確定申告などを解説
個人事業主の美容師とは、法人を設立せずに独立して事業を営む美容師の方を指します。個人事業主として活躍していくためには、独立後の働き方や税務手続き、収入の安定性などを考慮する必要があります。本記事では、個人事業主の美容師の働き方や年収、メリッ…
詳しくみる