- 更新日 : 2023年8月29日
配偶者控除は廃止される?されない?現在の議論を整理しよう
【残り1週間です】2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
▽まずはこの記事から
初心者から経験者まで、毎年多く読まれている記事です。確定申告の必要性、やり方、簡単に済ます方法についてまるっと解説しています。
平成29年税制改正大綱にて、配偶者控除及び配偶者特別控除の改正が盛り込まれました。現在、配偶者控除は専業主婦、もしくはパート主婦世帯にとって大きな節税手段となっています(主婦の基礎控除と配偶者としての配偶者控除の二重控除)。
しかしこの配偶者控除について与党税制調査会等で見直しが議論され、平成29年税制改正大綱において、配偶者控除及び配偶者特別控除について一部見直される内容が出されました。
今後も配偶者控除のみならず所得控除の総合的な見直しは検討事項にあがっており、場合によって配偶者控除及び配偶者特別控除は廃止され、別の控除制度に切り替えられる可能性もあります。
ここでは現行法における配偶者控除及び配偶者特別控除とその問題、そして現在検討されている5つの案と配偶者控除及び配偶者特別控除についての平成29年税制改正大綱の概要について解説します。
目次
フォームに順番に入力するだけで、控除や還付金を受け取るための確定申告も簡単に。「マネーフォワード クラウド確定申告」は、医療費控除・社会保険料控除、ふるさと納税・住宅ローン控除…などの各種控除がある方にも、多くご利用いただいています。
スマホのほうが使いやすい方は、アプリからも確定申告が可能です。

現行法における「配偶者控除」
「配偶者控除」「配偶者特別控除」
現行法における配偶者控除は、対象となる配偶者を持つ納税者に対して所得税から一定の税額控除を適用する制度です。この制度が受けられる配偶者の条件は以下の4点全てを満たしている人を指します。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
(参考:配偶者控除|国税庁HP)
第一に婚姻届を提出して、法的に夫婦になっている必要があります。第二に納税義務者と同じ生計のもとで生活していなくてはなりません。逆に言えば同じ生計のもとで生活していれば、同居の必要はありません。
第三に配偶者自身の合計所得金額が38万円以下である必要があります。給与収入のみの場合は給与所得控除が65万円あるため、38万円+65万円=103万円以下となります。
第四に別途所得税から控除が受けられる青色申告者または白色申告者の事業専従者である場合は、配偶者控除を受けることはできません。
なお、年間の合計所得金額が38万円を超えた場合にも、合計所得金額に応じて控除が受けられるのが「配偶者特別控除」です。
なぜ見直しが検討されているのか?
配偶者控除の控除額は38万円となっており、専業主婦(夫)世帯やパート主婦(夫)世帯にとっては大きな節税効果が期待できます。しかしこの制度には大きく3つの問題点が指摘されています。
第一に配偶者控除は増加傾向にある共働き世帯ではなく、夫婦どちらかが主な収入源となっている「片働き世帯」を優遇する制度です。
これは本来働きに出ようとしていた人に「働かない方が得」という考え方を持たせるものであり、個人の労働の選択に歪みを生じさせている点に問題があります。
第二にパート主婦(夫)世帯は配偶者が基礎控除が受けられるにもかかわらず、納税者本人も配偶者控除を受けることが可能です。これは「二重の控除」と呼ばれ、共働き世帯や片働き世帯とのアンバランスが問題となっています。
第三に配偶者が「年間の合計所得金額が38万円以下」の条件に抵触しないように労働を抑制してしまうという問題です。税制上は配偶者特別控除により、38万円を超えても差が出ないように調整されているのですが、依然「38万円を超えると損をする」という心理的な壁は残っています。
これらの問題を解決するために、政府税制調査会では廃止も視野に入れた見直し議論を重ねているのです。
政府税制調査会で検討されている5つの案と平成29年税制改正大綱の概要
現在政府税制調査会で検討されている見直し案は以下の5つです。
2.所得制限+子育て支援拡充
3.「移転的基礎控除」+子育て支援拡充
4.「移転的基礎控除」+「税額控除化」+子育て支援拡充
5.新控除制度+子育て支援拡充
ひとつずつどのような案なのかを解説していきます。
配偶者控除の廃止+子育て支援拡充
第一の案は配偶者控除を廃止し、その一方で子育て世帯のための支援策を充実させるというものです。
この案の問題は「家族で助け合って子育てをする」という観点や「結婚して法的な配偶者になるメリット」という観点が抜け落ちていることと、片働き世帯やパート主婦(夫)世帯、子供のいない低所得世帯に対する負担増につながることです。
配偶者控除の廃止により、納税者本人の控除額が配偶者の収入で左右されることはなくなるものの、すべての問題がクリアできるわけではありません。
所得制限+子育て支援拡充
第二の案は配偶者控除の適用に、納税者本人の所得に応じた制限を設けたうえで、子育て支援策を充実させるというものです。この案では制限の対象となる高所得者層以外の、中低所得者層においては納税者本人の控除額が配偶者の収入で左右されるという問題が残ります。
また高所得者層に制限を設けるとすると、配偶者控除だけでなく扶養控除など他の制度についても同じような制限の検討が必要となってしまいます。
「移転的基礎控除」+子育て支援拡充
第三の案は「二重の控除」の問題を解消するためにいわゆる「移転的基礎控除」を導入したうえで、子育て支援策を充実させるというものです。
移転的基礎控除とは配偶者控除を廃止し、配偶者の所得計算で控除できなかった基礎控除分を、納税者本人の控除額に移転する仕組みを指します。
この方法ならば世帯単位での合計控除額はこれまで通り一定になりますし、配偶者が働けば働くほど移転的基礎控除額は減るものの、その分配偶者本人が基礎控除を受けられるようになるため、「二重の控除」問題は解消されます。
しかしこの案が採用された場合、これまで「二重の控除」の恩恵を受けてきた世帯のうち、子供いる世帯は子育て支援策の充実によりカバーできるとしても、子供のいない低所得世帯の負担増につながってしまいます。
「移転的基礎控除」+「税額控除化」+子育て支援拡充
第四の案は移転的基礎控除を導入するとともに、基礎控除を従来の税額計算のもととなる合計所得金額からの控除ではなく、税額そのものから控除する「税額控除」に切り替えたうえで、子育て支援策を充実させるというものです。
この方法ならば現行法の「二重の控除」問題や、配偶者の労働を抑制してしまうという問題を解消が可能です。しかし同時に扶養控除などの他の制度についても同様の検討が必要となってしまいます。
新控除制度+子育て支援拡充
第五の案は配偶者控除を廃止し、「夫婦世帯」に対する新たな控除制度を創設したうえで、子育て支援策を充実させるというものです。
この新たな控除制度は配偶者の収入とは無関係に適用されるものとし、世帯単位の税負担能力を考慮した調整を行います。また単身者世帯との税負担のバランスについても、所得税や個人住民税における他の控除制度と調整を行う必要があります。
ただしこの案が採用されると「結婚している人たちを優遇する税制」になってしまうため、税制の中立性が失われてしまうという問題が生じます。
平成29年税制改正大綱の概要
納税者の合計所得金額が1000万円を超える場合には、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用できないこととされます。
また、配偶者特別控除の対象となる配偶者については、従来合計所得金額が38万円超76万円未満とされていましたが、38万円超123万円以下とされます。なお、適用は平成30年分以降の予定です(税制改正大綱のため実際に施行される法律とは異なる可能性があります)。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
まとめ
現時点では「配偶者控除が廃止されるか否か」については、明確な答えを出すことができません。検討されている5つの案のうち、どの案に決定されるかも定かではなく、平成29年税制改正大綱でも配偶者控除・配偶者特別控除の一部改正にとどまっています。
とはいえすでに結婚している人や、これからしようとする人にとって重要な控除制度であることには変わりありません。今後の政府の動向を注意深く見守る必要があるでしょう。
はじめての確定申告もラクラク安心に済ませる方法
確定申告がはじめての方や、簿記の知識に不安がある方、確定申告書類の作成を効率よく行いたい方は、確定申告ソフトの使用がおすすめです。
個人事業主向け会計ソフトの「マネーフォワード クラウド確定申告」は、確定申告の必要書類が自動作成でき、Windows・Macはもちろん、専用アプリも提供しています。
①取引明細は自動で取得

銀行口座やカードを登録すると、取引明細を自動取得します。現金での支払いに関しても、家計簿のようなイメージで、日付や金額などを自分で入力することが可能です。
②仕訳の勘定科目を自動提案

自動取得した取引明細データや、受領後にアップロードした請求書・領収書などの情報をAIが判別し、仕訳を自動で入力します。学習すればするほど精度が上がり、日々の伝票入力が効率化されます。
③確定申告必要書類の自動作成機能

白色申告・青色申告の両方に対応しており、確定申告に必要な書類が自動で作成できます。また、マネーフォワード クラウド確定申告アプリで、スマホから直接の提出も可能です。印刷しての提出やe-Taxソフトでの提出にも対応しています。
追加料金なしで確定申告以外のサービスが使える
有料プラン(パーソナルミニ・パーソナル・パーソナルプラス)に登録すると、基本料金だけで請求書や契約のサービスを含む11サービスを利用することができます。日々の業務や作業をまとめて効率化しましょう。

合わせて読みたいおすすめ資料
マネーフォワード クラウド確定申告では、さまざまなお役立ち資料を用意しています。 無料登録するだけで資料がダウンロード可能なので、ぜひ読んでみてください。会社員の確定申告 丸わかりガイド

青色申告1から簡単ガイド

個人事業主が知っておくべき経費大辞典


マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
よくある質問
配偶者控除とは?
現行法における配偶者控除は、対象となる配偶者を持つ納税者に対して所得税から一定の税額控除を適用する制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
「二重の控除」とは?
パート主婦(夫)世帯は配偶者が基礎控除が受けられるにもかかわらず、納税者本人も配偶者控除を受けることが可能なことです。詳しくはこちらをご覧ください。
平成29年税制改正大綱の概要は?
納税者の合計所得金額が1000万円を超える場合には、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用できないこととされます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
配偶者控除の関連記事
新着記事
個人事業主は事業用口座を開設すべき?メリットや開設方法、注意点を解説
個人事業主は、事業用口座を開設することができます。事業用口座とは個人の事業用で、口座名義に屋号を入れるなどができる口座のことです。 この記事では、事業用口座の概要や事業用口座を開設するメリット・デメリット、開設するタイミング、開設方法などを…
詳しくみる個人事業主におすすめの店舗火災保険とは?保険料の相場や比較ポイントなど
店舗を構えて事業をしている個人事業主は、店舗火災保険に加入したほうがよいでしょう。なぜなら万が一、店舗が火災にあっても一定の補償を受けられるからです。 店舗火災保険は、保険会社によって保険料などが違います。今回は、店舗火災保険の保険料の相場…
詳しくみる個人事業主も社会保険適用拡大の対象!常時5人以上の個人事業所の対応を解説
社会保険の適用拡大により、個人事業主も社会保険加入が必要です。この記事を読めば、「個人事業主で社会保険が対象になる基準は?」「社会保険適用の事務手続きがわからない」という悩みを解決できます。本記事で、社会保険適用拡大の概要や、社会保険の仕組…
詳しくみる保険外交員はなぜ個人事業主?メリットや確定申告・経費についても解説
保険外交員とは、保険契約の勧誘や代理、契約後のサポートなどを行う職種です。本記事では、保険外交員の雇用形態をはじめ、個人事業主として働くメリットやデメリットについて解説します。 保険外交員にまつわるよくある質問と回答も取り上げるため、興味を…
詳しくみる個人事業主は圧縮記帳を使えない!国庫補助金等の総収入金額不算入について解説
圧縮記帳とは、課税の繰り延べをする会計処理のことを指します。税法で規定されており、企業が国からの補助金を利用して固定資産を取得した際に用います。そのため、個人事業主の場合には使えません。本記事では、圧縮記帳の概要や圧縮記帳を活用するメリット…
詳しくみる個人事業主の美容師とは?メリットや年収、経費や確定申告などを解説
個人事業主の美容師とは、法人を設立せずに独立して事業を営む美容師の方を指します。個人事業主として活躍していくためには、独立後の働き方や税務手続き、収入の安定性などを考慮する必要があります。本記事では、個人事業主の美容師の働き方や年収、メリッ…
詳しくみる