- 更新日 : 2022年11月28日
確定申告で個人事業主の借金返済は必要経費にできる?

個人事業主が確定申告する際に、借金返済を必要経費に算入できれば所得から控除され、税額軽減につながる可能性があります。ただし借入金(元金)は経費に含めることができず、返済時の利息のみ対象となる点に注意しましょう。
また個人事業主の借金返済利息を経費に含められるかどうかは、プライベートの借入か事業用の借入かどうかもポイントです。本記事では、確定申告で個人事業主が借金返済を必要経費にできる範囲や、仕訳・処理方法について詳しく解説します。
目次
確定申告で個人事業主の借金返済は必要経費にできる?
事業所得を計算する際、「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用」や、「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用」を必要経費に算入可能です。
ただし、借金返済の場合、借入金であるか、利息であるかによって経費算入の扱いは異なります。所得から控除できる額や税額にも関係するため、借金返済のどの部分を必要経費に算入できるか把握しておきましょう。
個人事業主の借入金は事業用でも経費にできない
まず、個人事業主が必要経費にできるのは、所得を得るために使用した費用や業務上の費用です。休日に使用する車のマイカーローンのように、プライベートの借金返済はそもそも必要経費へ算入できません。また、店舗物件を購入するケースのように、事業のために融資を受けた場合でも個人事業主の借入金は経費に算入できません。
借入金の返済が経費に該当しない理由として、借入金自体は金融機関に返すものであって、売上につながる費用とはいえない点、借入金の返済まで計上すると必要経費が二重計上されてしまう点が挙げられます。
そのため、借金をして設備投資した場合は、借入金ではなく機械や不動産などを購入した際にかかる費用が必要経費の対象です。
借入金の利息は経費にできる
一方、借金のうち利息を支払った部分については、必要経費として計上できます。売上につなげるため、設備投資や運転資金としてお金を借りた際にかかった「費用」として認められる点が主な理由です。
ただし、店舗物件を購入する場合のように、あくまで事業用の借金の利息返済のみが必要経費として計上できます。そのため、自宅の住宅ローンの支払利息は対象外です。店舗兼住宅のための借入の場合は、年間の支払利息を店舗の面積で按分した金額が必要経費に計上されます。
借金の利息を経費にできるなら融資を検討したいという方は、まず金融機関に相談してみましょう。個人事業主が融資を受けられる機関には、メガバンクや地方銀行、信用金庫・組合、日本政策金融公庫などがあります。
確定申告で給与所得者の借金返済は必要経費にできる?
給与所得者であっても、給与の収入金額が2,000万円を超える方、給与所得や退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える方、2か所以上から給与の支払を受けている方は確定申告が必要です。
しかし、給与所得者は借金の借入金だけでなく、利息返済分も必要経費として計上することはできません。給与所得から必要経費を差し引くことができない分、所得税法で定められた給与所得額の控除が可能です。
控除額は、給与の収入金額に応じて異なります。給与収入金額が400万円の場合、給与所得から控除できる金額は124万円です。
また、給与所得者であっても副業で不動産所得を得ている方は、不動産投資時の借金の返済利息を必要経費に計上できます。
参考:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
参考:No.3264 借入金の利子が取得費になるとき|国税庁
確定申告における借入金の仕訳・処理方法は?
個人事業主が確定申告する際の仕訳では、借入時と借入金返済時の処理が必要です。それぞれの仕訳・処理方法を解説します。
借入時の仕訳・処理方法
銀行から借入する際、金額に応じて印紙代が必要です。また、金融機関や融資の種類によって、信用保証料や銀行手数料がかかる場合もあります。
仕訳に使う主な勘定科目は、(普通)預金・租税公課・支払手数料(銀行手数料かかる場合)・前払費用(保証料かかる場合)・借入金です。
300万円借りる際に印紙代2千円、保証料2万円が発生する場合、以下のように仕訳・処理します。
借入金の返済時の仕訳・処理方法
借入金を返済する際には、借入金・支払利息・(普通)預金の勘定科目を用いて仕訳します。
借入金元金分5万円と利息2千円が普通預金口座から引き落とされた場合の仕訳・処理は以下の通りです。
返済金額5万円が負債として計上されている「借入金」が減額される一方、支払利息2千円は「支払利息」として経費に計上します。この処理により、借入金返済分を含めず、利息支払分のみを必要経費に計上することが可能です。
住宅ローン借入があれば減税できるケースも!
プライベートの借入にあたるため、自宅の住宅ローンは借入金も返済利息も必要経費の対象外です。しかし、住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)の制度を活用すれば、ローン残高に応じて減税になる可能性があります。
住宅ローン減税とは、住宅を購入する際にローンを組んだ場合に、ローンの年末残高の1%(令和4年1月1日から令和5年12月31日の間に居住した場合には0.7%)をその年の所得税の額から差し引く減税措置のことです。
適用開始したタイミングにより、控除できる期間が異なります(2021年1月1日〜2022年12月31日は13年間)。控除の適用を受けるためには、合計所得金額や床面積などの要件を満たさなければなりません。また、控除対象となる借入金残高の上限が年分によって異なる点にも注意が必要です。床面積の半分超が事業に使用されている場合、適用の対象外です。
参考:No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
確定申告で経費にできるのは借金返済の利息のみ!
個人事業主が確定申告する際、借金で必要経費にできるのは、支払利息のみです。借入返済時に、借方で借入金と支払利息を別々に仕訳することで、利息支払分のみの金額を必要経費に計上できます。
ただし、支払利息であっても、自宅の住宅ローンのようにプライベートに関するものは必要経費として計上できません。その分、住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)の制度を利用すれば、残高に応じて減税になる可能性があります。
よくある質問
確定申告時に、個人事業主の借金返済は必要経費にできる?
事業用の借入金であっても元金は必要経費にできませんが、支払利息であれば可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
給与所得者の場合は、借金返済を必要経費にできる?
給与所得者は事業に関係のない借入になるため、元金だけでなく支払利息も必要経費にはできません。詳しくはこちらをご覧ください。
事業用資金の返済利息以外に、借入が減税につながる制度はある?
住宅ローンの借入があり、各要件を満たしていれば、住宅ローン減税という制度を適用できます。詳しくはこちらをご覧ください。
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