- 更新日 : 2022年12月5日
控除とは何か、意味や種類まで徹底解説!

医療費控除や基礎控除、所得控除、配偶者控除、寡婦控除、勤労学生控除などさまざまな控除がありますが、そもそも控除とはどのような意味の言葉なのでしょうか。控除を理解し使いこなすことは、節税にとっても不可欠なポイントです。控除の意味や種類、手続きについて見ていきましょう。
控除とは?意味や目的も解説!
控除とは、差し引くことを意味する言葉です。控除が適用されると、課税対象額が減ったり、税金そのものが減ったりします。
例えば、所得税について考えてみましょう。所得税は課税となる収入に対して発生する税金ですが、どんな小さな収入に対しても所得税が発生することになると、利益を得ても実際に手にできるのはわずかになり、収入が少ない人は生活が厳しくなるかもしれません。
また、所得税以外でも、住民税、法人税、相続税、贈与税等多くの税金がそれぞれの税金の計算をする場合に「控除」という考え方を取り入れています。
国は控除の目的として、最低生活費を保証することを挙げています。所得から控除を差し引くことで、収入が少ない場合でも一定の生活費が残りやすくなります。
また、控除には納税者間の税負担を公平にする目的もあります。それぞれの納税者が受ける利益に比例した税の負担であるべきで、経済力が同程度の人には等しい負担を求め、経済力のより大きい人にはより大きな負担が求められるべきです。この考え方は税の三原則である「公平」「中立」「簡素」のうちの、「公平の原則」にあたります。控除制度はこの考え方の一環と言えます。所得税では、配偶者の所得が少ない場合や子どもがいる場合、ひとり親の場合などについてはそれぞれに控除が定められ、所得税額が減るように調整されます。
控除の種類は?
控除は、大きく「所得控除」と「税額控除」の2つにわけられます。
所得控除とは課税対象となる所得金額を減らせる制度です。所得控除額が多ければ多いほど課税所得額が減り、課税所得額が一定以上減るときは適用される所得税率も下がり、結果として所得税も減ります。
一方、税額控除は税額そのものを減らせる制度です。所得税を計算した後で税額控除を適用し、税額そのものが減額されます。
例えば、所得税において所得に対して50万円の所得控除が適用される場合には、課税所得額が50万円減ることになります。適用される所得税率が20%とすれば、10万円(復興特別所得税は除く)の所得税の節税効果を得られるでしょう。
一方、50万円の税額控除が適用される場合は、所得税のうち50万円の納付義務がなくなります。所得税が50万円以上であれば、50万円の節税効果を得られることになるでしょう。
税額控除が多いことで税金は大幅に減りますが、所得控除が多いことでも課税所得額が減ったり適用される所得税率が下がったりすることがあるので、節税効果は期待できます。いずれも自動的に適用されるとは限らないので、後述しますが正しく申告して節税が適用されるようにしましょう。
以下では所得税に特化して、所得控除と税額控除について見ていきましょう。
所得控除の種類
まず、課税所得額を減らす所得控除について見ていきましょう。収入から必要経費(給与所得者は給与所得控除)を除き、さらに所得控除を差し引くと、課税所得額を計算できます。
所得控除には、14種類(雑損控除、医療費控除、寄付金控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寡婦・ひとり親控除、障害者控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除)があり、それぞれ自動的には適用されないため年末調整や確定申告で申告することが必要です(※)。
所得控除については、以下の記事で詳しく解説しています。種類ごとの対象者や計算方法も説明しているので、ぜひご覧になり参考にしてください。
なお、一人の納税者について所得控除はいずれも重複可能なので、該当する控除があれば漏らさずに申告するようにしましょう。しかし、配偶者控除と配偶者特別控除、寡婦控除とひとり親控除は重複適用ができないので注意が必要です。配偶者特別控除については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
所得控除はいずれも条件が合えば利用できる控除制度です。一例を挙げますと、所得控除のうち最も基本的な所得控除が基礎控除です。納税者本人の総所得金額に応じて次の控除額を適用することができます。
【基礎控除】
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
ここで注意したいのは、給与所得者の場合はこの「総所得金額」からはすでに「給与所得控除」が差し引かれていることです。また、個人事業主の場合は、すでに「必要経費」や「青色申告特別控除」が差し引かれています。
給与所得控除は給与収入のある人が対象ですが、基礎控除は「全ての納税者」が対象であるという点で異なります。したがって、先述した15種類の所得控除は、「給与所得控除」、「必要経費や青色申告特別控除」などが既に差し引かれた所得額から差し引かれるものとなります。
なお、基礎控除について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
※社会保険料などの給料から天引きされる支払いに関する控除に関しては、手続きをしなくても適用されます。
税額控除の種類
税額控除は税金が減る制度です。所得控除とは異なり、適用される所得税率に関わらず一律の節税効果が得られます。課税所得額に所得税率をかけて求めた所得税額から税額控除を差し引き、実際に納税する所得税額を求めます。
所得税の税額控除には、住宅ローン控除や配当控除、外国税額控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除など多くの種類があり、それぞれ適切に手続きをすることで適用が可能です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
控除を受けるためには?
所得控除、税額控除に関わらず、いずれも控除を受けるためには手続きが必要です。手続きは主に「年末調整」または「確定申告」によって行います。控除の種類によっては確定申告しか利用できないものもあるので注意しましょう。給与所得者と個人事業主に分けて、控除の適用に必要な手続きについて解説します。
給与所得者の場合
給与所得者は、まずはその年分の控除を勤務先の年末調整で手続きします。所得控除に関しては、医療費控除と寄付金控除、雑損控除などを除き、年末調整で手続きが可能です。年末調整で手続きを行うときは、各控除の証明書類が必要になります。
例えば、配偶者控除について申告するときは、配偶者の給与明細などを参考にして手続きを行わなくてはなりません。また、保険料控除なども、保険会社から送付された控除証明書の提出が求められます。スムーズに年末調整を行うためにも、必要書類は事前にまとめておきましょう。
年末調整をし忘れた控除がある場合は、その年分の確定申告で手続きを行います。その際も各控除が適用されることを示す証明書類が必要なので、忘れずに添付または保管するようにしましょう。
また、医療費控除と寄付金控除、雑損控除などについては、年末調整で手続きができません。忘れずに確定申告で手続きをするようにしましょう。
税額控除のひとつ、住宅ローン控除については、最初の年(住宅ローンの返済が始まった年の分。翌年に行う確定申告)のみ、確定申告が必要です。確定申告を行うと税務署から2年目以降の手続き用の申告書が送付されるので、その申告書を使って2年目以降は年末調整で手続きを行うようにしましょう。
なお、住宅ローンが始まった年の翌年は、1年目の住宅ローン控除の手続きとして確定申告を行い、2年目の手続きとして年末調整を行います。よって、最初の年には注意しましょう。
個人事業主の場合
自営業者や個人事業主は年末調整がないので、すべての控除に関して確定申告で手続きを行います。確定申告は年末調整とは異なり、その年分の控除を翌年に手続きするので、必要な証明書類などは紛失しないように大切に管理しましょう。万が一、紛失した場合は、発行した場所(保険料控除であれば保険会社)に問い合わせると再発行できることがあります。
また、控除の手続きを忘れてしまうことがあるかもしれません。その場合は、本来手続きをする年から5年以内であれば、確定申告することで還付を受けられることがあります。忘れずに手続きをするようにしましょう。
控除の意味と種類を理解して節税しよう
控除を利用することで、節税効果が期待できます。所得控除の手続きをすることで課税所得税額が減り、場合によっては適用される所得税率も下がり、節税につながるでしょう。また、税額控除は控除額の分だけ税金が減ることがあるので、よりダイレクトな節税効果を得られます。ほとんどの控除は自動的には適用されないので、年末調整や確定申告などで正しく手続きを行うようにしましょう。
給与所得者は年末調整でも控除の手続きができますが、医療費控除や寄付金控除のように、別途確定申告が必要な控除制度もあります。また、住宅ローン控除に関しては、最初は確定申告が必要ですが、2回目以降は年末調整での手続きが可能です。控除制度ごとの手続き方法を把握し、正しく手続きをするようにしましょう。控除の種類については次の記事で詳しく説明されています。ぜひ参考にしてください。
よくある質問
控除の意味と目的は?
控除とは差し引くことで、適用されると課税所得額や税額そのものが減る。控除には最低生活費を保証し、世帯間の不公平をなくす目的がある。詳しくはこちらをご覧ください。
控除の2つの種類とは?
控除には所得控除と税額控除がある。所得控除が適用されると課税所得額が減り、税額控除が適用されると税額そのものが減る。詳しくはこちらをご覧ください。
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