• 更新日 : 2025年2月26日

個人事業主の定額減税には確定申告が必要!やり方や所得税なしの場合、調整給付金についても解説

2024年には、インフレ対策として定額減税が実施されています。定額減税を受けるために必要な手続きを知りたい個人事業主も多いのではないでしょうか。

個人事業主が定額減税を受けるためには、確定申告が必要です。今回の記事では、個人事業主が定額減税を受けるためのやり方や、所得税を引ききれない場合の調整給付金などについて、わかりやすく解説します。

そもそも定額減税とは

2024年6月から導入された定額減税について、個人事業主の方向けに仕組みや目的、対象となる範囲について見ていきましょう。

定額減税の制度の目的

定額減税は、急激な物価上昇に対する家計の救済を目的として定められました。コロナ禍の自粛ムードによるデフレから一転して訪れた大幅な物価上昇があります。物価が上昇する一方で賃金の上昇は物価に比べると緩やかであり、結果として家計収支を圧迫することになりました。

家計が圧迫されることで停滞していた消費活動を活性化させるため、政府は物価高にも耐えうる所得増加を目指しさまざまな施策を打ち出しています。その中の1つとして、定額減税が始まりました。

家計改善の施策として記憶に新しいのはコロナ禍で行われた「特別定額給付金(1人一律10万円を支給)」のような給付型支援です。しかし、今回の定額減税は給付型とは異なります。

定額減税は、急激な物価高に賃金上昇が追いついていないなか、税制面で家計を救済するために創設されました。そのため一定額を給付するのではなく、所得税を減税して、可処分所得(自由に使えるお金)を増やすことを目的としているのです。

定額減税の対象となる税金と減税金額

定額減税の対象となる税金と、1人当たりの減税金額は以下のとおりです。

Point1人当たりの減税額

所得税3万円、住民税1万円、合計4万円が減税されます。ただし、税額が上記の定額減税額に満たない場合、その税額が控除限度額となります。

定額減税の対象者

定額減税はすべての個人事業主が対象になるわけではありません。所得税と住民税でそれぞれ適用対象の条件が定められています。

Check所得税の減税対象者
  • 日本国内に居住している
  • 2024年の所得税を納税する
  • 2024年の合計所得金額が1,805万円以下である

住民税は前年度の所得に基づいて計算されることから、2023年度の合計所得金額が1,805万円以下であることが条件となるため注意してください。

Check住民税の減税対象者
  • 日本国内に居住している
  • 2024年度の住民税所得割を納税する
    • ※均等割のみ課税される納税者は対象外
    • ※2024年度の住民税所得割とは、2023年の所得に対して課される住民税所得割のことを指します
  • 2023年の合計所得金額が1,805万円以下である

少しわかりにくいかもしれませんが、基本的には日本国内に住んでおり所得税・住民税を納める方が対象です。

なお、所得とは収入から必要経費を控除した金額で、確定申告書では「所得金額等」の欄に記載される金額です(収入金額等ではありません)。

定額減税の扶養家族の範囲

定額減税は、納税者本人だけでなく同一生計配偶者や扶養親族も対象になります。所得税の場合、実際に控除される税額の計算方法は下記の通りです。

減税額=3万円(本人分)+3万円×(同一生計配偶者・扶養親族の人数)

同一生計配偶者や扶養親族は、あまり聞きなれない言葉かもしれません。具体的には次のような方をいいます。

Q.同一生計配偶者となる条件とは?
  • 納税者と生計を一にする配偶者である
  • 合計所得金額が48万円以下である
  • 国内に居住している
Q.扶養親族とは?
  • 配偶者以外の親族 ※民法に定める親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)
  • 納税者と生計を一にしている
  • 合計所得金額が48万円以下である
  • 国内に居住している

所得税・住民税における扶養控除では16歳未満(年少扶養)が対象となりません。しかし、定額減税の計算では16歳未満の扶養親族も対象になります。

個人事業主の定額減税額シミュレーション

定額減税される額は、同一生計配偶者や扶養親族の数によって異なります。個人事業主の定額減税額シミュレーションを具体例で見てみましょう。

例)本人と妻(同一生計配偶者)、子供1人の3人家族の場合(定額減税の条件は満たすものとする)

【定額減税額】 

  • 所得税
    3万円(本人分)+3万円×2人=9万円
  • 住民税
    1万円(本人分)+1万円×2人=3万円
  • 合計
    所得税9万円+住民税3万円=12万円

例)本人と妻(同一生計配偶者)、子供2人の4人家族の場合 (定額減税の条件は満たすものとする)

【定額減税額】 

  • 所得税
    3万円(本人分)+3万円×3人=12万円
  • 住民税
    1万円(本人分)+1万円×3人=4万円
  • 合計
    所得税12万円+住民税4万円=16万円

個人事業主が定額減税を受けるには確定申告が必要です

会社員など給与所得者の場合は、勤務先が定額減税の手続きをしてくれるため、特に納税者本人が行う手続きはありません。

では、個人事業主はどうなるのでしょうか。個人事業主の場合は会社員のように他者が手続きをしてくれることはありません。そのため、自分で確定申告を行い定額減税の手続きをすることになります。

なお、マネーフォワード クラウド確定申告は定額減税に対応しています。必要な情報を入力するだけで、控除額が自動算出されるようになっています。

【所得税】個人事業主が定額減税を受けるやり方は?

定額減税を受けるためには、どのような手続きが必要になるか気になっている個人事業主の方も多いでしょう。具体的な手続きの方法について、詳しく紹介していきます。

確定申告で差し引かれる

個人事業主の定額減税は、確定申告の際に控除されます。

確定申告は1年間に得た所得について、翌年の「2月16日から3月15日の期間内(土日祝日の場合は翌開庁日)」に税務署に申告して納税する手続きです。つまり個人事業主は、翌年に行う確定申告の納付の際に控除が受けられます。

会社員などの給与所得者が2024年6月の源泉所得税から順次控除されるのに対し、個人事業主の控除はタイミングがずれてしまう点に注意しましょう。

確定申告書第一表の書き方

確定申告書第一表の記載項目は以下の2つです。

㊹欄:人数欄には控除の対象となる人数を記入し、その人数に3万円を乗じた額を記載します。
㊺欄:㊸欄で求めた所得税額から㊹欄(定額減税額)の金額を差し引きして求めます。

2項目の追加により、㊹欄以降は前年の確定申告書とは項目名と番号がずれて、確定申告により納付すべき税額は53番目となりますので要注意です。

確定申告書第一表の変更点

出典:確定申告書等の様式・手引き等|国税庁、「令和6年分の確定申告書」を加工して作成

確定申告書第二表の書き方

第二表の下半分のところに「配偶者や親族に関する事項(⑳~㉓、㉞、㊴、㊹)欄」がありますが、定額減税の対象となる配偶者や扶養親族については、一番右端の「その他」欄に「2」を記入します。

確定申告書第二表の変更点

出典:確定申告書等の様式・手引き等|国税庁、「令和6年分の確定申告書」を加工して作成

確定申告については以下の記事でくわしく解説しているので、参考にしてください。

予定納税を行う場合は予定納税から差し引かれる

予定納税とは前年分の所得金額や税額をもとにして計算した金額(予定納税基準額)が15万円を超える場合に、所得税の一部をあらかじめ前納する制度のことです。

予定納税は、第1期(7月)と第2期(11月)の年2回があり、それぞれ年間の予定納税額の3分の1ずつを払い、残りは、翌年3月の確定申告時に精算されます。

予定納税を行う個人事業主の場合、定額減税は、第1期の予定納税から控除されて、控除しきれない場合は残額を第2期の予定納税から控除します。

予定納税で扶養家族がいる場合は減額申請は必要

予定納税を行っている場合で、同一生計配偶者や扶養親族がいる場合は、自身で「予定納税額の減額申請手続き」をする必要があります。

申請手続きは国税庁のHPから必要書類を取得して、期限までに税務署に提出します。

参考:A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁

【住民税】個人事業主が定額減税を受けるやり方は?

個人事業主の場合、住民税の定額減税はとくに手続きは必要ありません。所得税に続いて、住民税の定額減税について紹介します。

住民税は2024年6月から控除される

個人事業主が住民税の定額減税を受ける場合、手続きは不要です。住民税は毎年6月、8月、10月、翌年1月と年4回にわけて納付します。

住民税の定額減税は住所地の市区町村が計算を行うため、2024年6月から始まる納付は控除額が差し引かれた状態で納付書が届きます。

したがって納付書通りの金額を納税すれば問題ありません。なお、第1期の6月分で控除しきれない場合は、第2期・第3期と繰り越されます。

赤字や所得税なしの個人事業主の定額減税について

所得税は年間の所得に対して課税される税金のため、所得がなければ課税されません。

事業を行っている場合も同様に、年間の事業所得が赤字であれば所得税が発生しません。しかし、定額減税では所得税や住民税が発生しない場合でも、救済措置を受けられます。

 2023年度の住民税非課税世帯は7万円の給付

今回の定額減税は所得税・住民税からの控除のため、そもそも事業が赤字などで税金を納付していなければ控除できません。そもそも定額減税はインフレに対する家計支援が目的のため、所得のない世帯こそ支援が必要です。

2023年度の住民税非課税世帯に対しては、1世帯あたり7万円の給付が救済措置として支給されます。救済措置の対象となる住民税非課税世帯とは、収入が一定の金額を下回るため住民税が課税されない世帯のことです。住民税には所得割と均等割があり、両方非課税になる場合と所得割のみ非課税になるケースがあります。

7万円給付の対象となる住民税非課税世帯とは、所得割・均等割ともに非課税となる世帯のことです。対象となる世帯には2023年の夏以降に、インフレ対策として1世帯あたり3万円が支給されているため、合わせると10万円の給付となります。

 2023年度の住民税均等割のみ課税世帯は10万円の給付

均等割のみ課税される世帯の場合は、1世帯あたり10万円の給付が受けられます。均等割のみ課税されるかどうかは所得水準や自治体によっても違います。一例として東京都の場合を、見てみましょう。

住民税非課税世帯となるケース
  • 生活保護を受けている
  • 前年の合計所得金額が45万円以下
  • 障がい者・未成年者・寡婦・ひとり親で前年所得が135万円以下
均等割のみ課税世帯となるケース
  • 前年の合計所得金額が下記の金額以下
    • 35万円×(本人・扶養親族・同一生計配偶者の合計人数)+42万円

上記のどちらか該当するかは、自治体によって条件が異なります。どちらの世帯に該当するか確認したい場合は、市区町村の窓口で確認するとよいでしょう。

 2024年度に非課税世帯や均等割のみ課税世帯になった場合も10万円の給付

また2024年度の住民税において、新たに非課税となった世帯や均等割のみ課税されることになった世帯に対しても10万円が給付されます。

さらに2023年の課税状況に基づいて、定額減税しきれないと見込まれる方に対しては、市区町村から差額が給付されます。

18歳以下の子供は1人あたり5万円の給付

上記の救済措置を受けられる世帯で子供がいる場合は「子ども加算」を受けられます。子ども加算の金額は18歳以下の子供1人につき、5万円です。

たとえば、住民税均等割のみ課税されている世帯で18歳以下の子供が2人いる場合は、20万円(10万円+5万円×2人)の給付を受けられます。

所得税を引ききれない場合の調整給付金について

所得税や住民税の金額よりも定額減税の金額が大きい場合は、定額減税額を使い切れないため、十分な効果を得ることができません。

例えば、定額減税の金額が12万円なのに、納める税額が8万円の場合は、12万円-8万円=4万円の定額減税額が使い切れず残ってしまいます。このままでは、定額減税を全額受けられる人とそうでない人に不平等が生じてしまうため、残った定額減税額は納税地の市区町村から給付されます。これが「調整給付金」です。

実際の調整給付金の金額は、次の計算式で求められます。

Point調整給付金の金額の計算
  1. 所得税の定額減税可能額 - 令和6年分推計所得税額(令和5年分所得税額に基づき算定)
  2. 個人住民税所得割の定額減税可能額 - 令和6年度分個人住民税所得割額
  3. 1.+ 2. = 調整給付額(1万円単位に切り上げ)

調整給付金の金額は納税地の市区町村が計算してくれるため、自分で計算する必要はありません。対象者には、支給のお知らせや確認書などが送付されます。確認書が届いたら確認の上返送します(手続きは自治体によって異なります)。

専従者やパート・アルバイトの一部対象者にも給付される

専従者は配偶者控除や扶養控除の対象にならないため、今回の定額減税の恩恵を受けられないという問題がありました。その救済措置として、所得税・住民税が発生しない専従者に限り、2025年に調整給付金が支給されることになりました。

また、パート・アルバイトのうち所得金額が48万円を超える方で、給与から徴収される源泉所得税が少なく定額減税を満額まで受けられなかった方についても、調整給付金という形で差額が給付されることになります。

事業主としての手続きは不要

先にも述べましたが、個人事業主の方の定額減税の手続きは確定申告で行います。確定申告は住民税の申告を兼ねていますので、確定申告の結果、定額減税を満額まで受けられなかった場合、市区町村が差額を計算し調整給付金として給付してくれます。改めて自身で給付手続きをする必要はありません。

複数の所得がある個人事業主の定額減税について

複数の所得がある場合は原則、本業の所得で定額減税が行われます。例えば、会社員で副業をしている場合は、会社員の給与所得で定額減税を受けることになります。また、事業所得と不動産所得があるなど、どちらが本業でどちらが副業か区分できない場合は、確定申告で計算した納税額から定額減税が行われます。

個人事業主の定額減税はいつからいつまで?

定額減税は所得税・住民税ともに1回のみしか受けられません。具体的にいつからいつまで受けられるか確認していきましょう。

所得税は2024年分の所得税を支払うまで

定額減税の控除の対象となる所得税は、2024年分の所得税を支払うまでです。個人事業主の場合、2024年の所得税は2025年の2〜3月の確定申告で納付するため、実際に控除される時期は確定申告のタイミングです。しかし予定納税を行っている場合は、確定申告を待たず早めに控除が受けられます。

予定納税は2回にわけて行われますが、1回目の納税の際から控除が受けられます。予定納税を行っている場合で、同一生計配偶者や扶養親族がいる場合は「予定納税額の減額申請手続き」が必要です。

住民税は2024年6月から

住民税の場合は、2024年6月から支払う税額が控除の対象です。住民税は毎年4回、6月・8月・10月・翌年1月と納付するため、第1期の6月分から控除されます。控除を受ける手続きはとくに必要なく、控除された後の金額の納付書が届きます。自宅に届いた納付書を使って納税をすれば、住民税の控除を受けられます。

個人事業主は定額減税を受けるために忘れずに確定申告しましょう

急激なインフラ対策の1つとして、2024年に定額減税が実施されることになりました。長引くコロナ禍で続いたデフレを抜け、2022年から2023年は大幅な物価上昇が続きました。しかし物価の上昇ほど給与はあがらず、家計を圧迫している状況です。

そこで定額減税が導入され、1人当たり所得税3万円・住民税1万円が控除されるようになりました。個人事業主が定額減税を受けられるのは原則として確定申告のタイミングになります。そのため、実際に控除されるのは2025年2〜3月になりますが、予定納税を行う場合は第1期から控除可能です。ただし、給与所得者のように何もしなくても控除されるわけではないため、確定申告の際に忘れずに定額減税を適用しましょう。

また、所得税を引ききれない場合や複数の所得がある場合などは、定額減税の手続きが通常と異なることがあるので注意が必要です。

個人事業主の場合、定額減税の有無に関わらず申告要件に該当すれば必ず確定申告をしなければなりません。申告手続きをする際、確定申告書の第一表に定額減税を記入する欄があるため忘れずに記入するようにしましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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