• 更新日 : 2022年9月29日

確定申告における減価償却費の取り扱いや計算方法

確定申告における減価償却費の取り扱いや計算方法

事業所得や不動産所得などの確定申告において、固定資産を保有する場合は、青色申告白色申告にかかわらず、減価償却費の計算をすることになります。
ここでは、個人の確定申告にフォーカスをあて、減価償却費の仕訳や計算方法について、特例も交えて解説します。

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減価償却とは

減価償却とは、期間や使用により経済的な価値が減少していく固定資産を取得した際に、取得価額をその耐用年数の期間に渡り、必要経費として計上していく会計の手続きのことを指します。

「期間や使用により経済的な価値が減少していく固定資産」のことを減価償却資産と呼び、これら資産の使用可能期間にわたって、取得価額を分割して必要経費としていくべきものとされています。

耐用年数は、基本的に減価償却資産の耐用年数等に関する省令により資産の種類別に定められていて、それを法定耐用年数と呼びます。

減価償却の計算方法

減価償却には、定額法、定率法、生産高比例法などの計算法があります。

所得税法において減価償却費としては、原則として定額法を採用しています。機械装置、車両運搬具、工具器具備品などは、定率法での償却も認められています。

また、次のように取得時期によって選択できる減価償却方法に制限があります。

平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産:「旧定額法」「旧定率法」
平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産:「定額法」「定率法」
平成10年4月1日以後に取得した建物:「旧定額法」「定額法」
平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備など:「定額法」

 

これらのうち、ここでは「定額法」「定率法」、そして「生産高比例法」について、それぞれの計算法の特徴をみていきたいと思います。

定額法

定額法とは、固定資産の耐用期間、毎期均等な額を減価償却費として計上する方法です。

(定額法)減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

 

定額法の仕訳例

7月に新たに50万円の接客用応接セット(備品)を取得し、すぐに事業用に使用したとします。耐用年数は、下記のとおり5年(定額法の償却率0.2)を適用します。本年中の償却期間は、7月から12月までの6ヶ月間となります。

この場合の減価償却費は、50万円×0.2×6ヶ月/12ヶ月=5万円 となります。

仕訳については、間接法と直接法がありますが、ここでは減価償却費によって、直接固定資産の金額を減らす直接法を使って説明します。

借方
貸方
摘要
減価償却費
50,000円
備品
50,000円
減価償却費計上

主な減価償却資産の耐用年数(器具・備品)
引用:主な減価償却資産の耐用年数(器具・備品)(その1)|国税庁

減価償却資産の償却率表
引用:減価償却資産の償却率表|国税庁

定率法

定率法とは、固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に対して、耐用年数に応じた一定率を掛けた金額を減価償却費として計上する方法です。

(定率法)減価償却費 = 期首未償却残高×定率法の償却率

 

定率法では、初めの年ほど償却額が多く、年とともに償却費は減少します。そして、定率法の償却率により計算した償却額が「償却保証額」より少なくなった年分以後は、毎年同額の減価償却費となります。

なお、新たに事業を開始して定率法で減価償却の計算を行いたい場合は、「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を確定申告書の提出期限までに提出する必要があります。

定率法の仕訳例

7月に、新たに50万円の接客用応接セット(備品)を取得し、すぐに事業用として使用したとします。この会社では、従来「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」により、備品について定率法を採用することとしていました。

耐用年数は、下記のとおり5年(定率法の償却率0.5)を適用します。本年中の償却期間は、7月から12月までの6ヶ月間となります。

減価償却資産の償却率表
引用:減価償却資産の償却率表|国税庁

定率法の場合の減価償却費は、50万円×0.5×6ヶ月/12ヶ月=12.5万円 となります。

直接法による仕訳は、次のようになります。

借方
貸方
摘要
減価償却費
125,000円
備品
125,000円
減価償却費計上

生産高比例法

生産高比例法とは、固定資産の耐用期間中、毎期その固定資産を使って、生産や用役に提供した度合に比例した金額を、減価償却費として計上する方法です。例えば、鉱山用の設備などについて採用されます。対象となる固定資産の価値が、その利用に比して減少することが適用の前提となっています。

(生産高比例法)減価償却費 = 取得価額 × 当初利用量(※)/ 見積り総利用量(※)

 

※時間などでも可

生産高比例法の仕訳例

鉱物の採掘にあたり、採掘機を500万円で購入しました。採掘予定総量は5,000トンとします。

年間1,200トン採掘した場合の生産高比例法による減価償却費は、500万円×1,200トン/5,000トン=125万円 となります。

直接法による仕訳は次のとおりです。

借方
貸方
摘要
減価償却費
1,250,000円
機械
1,250,000円
減価償却費計上

所得税と法人税における減価償却の計算方法の違い

所得税と法人税の減価償却計算方法では、以下の2点で違いがあります。

  • 法定償却方法
  • 計上が強制か任意か

それぞれの内容を見ていきましょう。

法定償却方法の違い

法定の償却方法では、原則として所得税(個人事業主)は定額法で計算します。機械装置、車両運搬具、工具器具備品は定率法での償却も認められていますが、手続きが必要です。

定率法を選択したい場合、個人事業を開始したときに選択するか、途中で変更することができます。それぞれ以下のように手続きをします。

  • 事業を開始したとき:「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を事業主になった年の確定申告書の提出期限までに提出する
  • 途中で変更する場合:「所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を変更しようとする年の3月15日までに提出する

法人税の法定の償却方法は定率法ですが、2016年(平成28年)4月以降に取得した建物、建物付属設備、構築物は定額法で償却します。

法人税を定率法から定額法に選択もしくは変更したい場合、それぞれ以下のように手続きをします。

  • 法人を設立したとき:「減価償却資産の償却方法の届出書」を設立した年の確定申告書の提出期限までに提出する
  • 途中で変更する場合:「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を変更しようとする年の事業年度の開始前日までに提出する

任意性の違い

所得税と法人税は、任意性が異なります。所得税の減価償却は強制であり、法人税は任意です。所得税の場合、減価償却費として算出された金額はその年の経費に計上しなければなりません。一方、法人税はいくら計上するかは任意で、計上しないことも可能です。

青色申告の少額減価償却資産の特例

青色申告者は、少額減価償却資産については取得価額の全額を、その年分の必要経費に算入することができる特例があります。

この特例は、租税特別措置法(時限立法)で規定され、正式名は「中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」と長い名称です。

適用対象者

中小企業者に該当する個人であり、青色申告者であること(中小企業者とは、常時使用する従業員の数が1,000人以下の方をいいます)です。

適用対象資産

取得価額が30万円未満の減価償却資産に対して適用されます。

限度額

年間合計300万円までを、必要経費として一括計上することができます(10万円未満のものについては、もとより必要経費として一括計上できるため、限度額計算上は含みません)。

必要書類

確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付する必要があります。

ただし、決算書の「減価償却費の計算」欄に措置法第28条の2第1項の規定を適用していること等を記載し、かつ、減価償却資産の明細を別途保管している場合にはこの明細書の提出は省略できます。

青色申告の減価償却の注意点

減価償却の取り扱いの際の注意点を何点かみていきたいと思います。

1. 年度途中に購入した固定資産の計算方法

まず、減価償却が必要となるものを年度の途中で購入した場合は月数按分されます。この場合、1年分の償却費の計算後、事業供用日から年末までの月数を按分計算します。

2. 固定資産を事業と家事の両方で使っている場合の計算方法

個人事業主の方の場合には、固定資産を事業、家事で併用しているケースもあるかと思います。家事利用との合理的な按分ができるもののみ、事業用の部分が必要経費の対象となります。

例えば、車を事業、家事の両方で使用しているケースであれば、車を使っている全体の中から事業で使っている部分を算出します。事業で使っている割合が25%だとすると、資産全体の25%が減価償却の対象となります。

この場合、25%という割合が客観的に明らかになるように、距離や行先、用途を記した走行記録表などで管理する必要があります。

耐用年数について

固定資産の耐用年数については、国税庁のサイトなどで確認できます。
以下、令和2年分の国税庁のサイトより、主な固定資産の耐用年数を掲載しておきます。

主な固定資産の耐用年数(器具・備品)

引用:主な減価償却資産の耐用年数(器具・備品)(その1)|国税庁

減価償却資産の中で、最もよく取得するのが器具や備品でしょう。詳細は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表を参照し、該当するものを適用します。一般には、器具及び備品は事業に使用される小規模な資産として区分され、製造業における製造ラインとしての設備などの機械装置とは分けて考えます。

主な固定資産の耐用年数(車両・運搬具)

車両は、排気量で分けられるものもあります。車両については、取得にかかる「自動車環境性能割」などの税金は、原則として取得価額となりますが、費用処理も認められます。

主な固定資産の耐用年数(機械・装置)

比較的大型の機械・装置は、購入にあたって種々の付随費用(購入手数料、運送費、試運転費用など)がかかります。これらは、原則として取得価額に含まれます。

引用:耐用年数表|国税庁

減価償却のしくみを理解し、定期的な固定資産管理を!

固定資産は、購入時や廃棄時のエビデンスを含め、定期的に現物管理を含めた固定資産管理をし、固定資産台帳を常に最新のものにしておきましょう。

減価償却に間違いがあると、修正申告になってしまう場合もあります。決算においては特に新規取得資産について、計上日や耐用年数を再確認し、固定資産の帳簿価額を確定させましょう。

よくある質問

減価償却とは?

期間や使用により経済的な価値が減少していく固定資産を取得した際に、取得価額をその耐用年数の期間に渡り、必要経費として計上していく会計処理の方法のことを指します。詳しくはこちらをご覧ください。

減価償却の計算方法は?

減価償却には、定額法、定率法、生産高比例法などの計算法があります。詳しくはこちらをご覧ください。

青色申告の減価償却の注意点は?

年度途中に購入した固定資産の計算方法や、固定資産を事業と家事の両方で使っている場合の計算方法に注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / CFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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