- 更新日 : 2025年1月17日
確定申告と地代家賃 – 収支内訳書の書き方から自宅の家賃を経費にする方法まで
2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
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初心者から経験者まで、毎年多く読まれている記事です。確定申告の必要性、やり方、簡単に済ます方法についてまるっと解説しています。
事業所得の確定申告で用意する「収入内訳書」(白色申告の場合)、「青色申告決算書」(青色申告の場合)にはいずれも、経費の項目に「地代家賃」というものがあります。地代家賃とは、事業で使用する土地や建物の賃料に関連する項目です。この記事では、地代家賃になる費用とならない費用、消費税の区分、自宅と事務所を兼用している場合の取り扱い、収入内訳書など地代家賃の内訳の書き方まで、個人事業主が疑問に思いやすい部分を解説します。
目次
地代家賃は確定申告で経費にできる?
「地代家賃」とは、借りている土地と建物の賃料のことです。事業で使用している土地または建物の賃借料を支払ったときの費用項目になります。
事業に関わる土地や建物の賃借料などがあれば、地代家賃として事業所得計算上の経費となります。つまり、個人事業主の確定申告において地代家賃は経費にできるということです。
事業を営んでいる場合は所得税の確定申告を行います。事業所得の場合、白色申告なら「収支内訳書」、青色申告なら「青色申告決算書」を確定申告書に添付して提出しなければなりません。収支内訳書と青色申告決算書はいずれも、年間(ある年の1月1日から12月31日までの1年間)の事業収入と事業経費の内訳を明らかにし、事業所得を計算するための書類です。この事業経費の中に「地代家賃」という項目が含まれています。
地代家賃にできる費用
地代家賃として経費計上できるのは事業に直接必要となるもののうち、以下のようなものです。
- 地代
- 事務所やオフィス、店舗の家賃
- 事務所や店舗などの管理費、共益費
- 賃貸契約時の礼金や返還されない敷金(少額の場合)
- 事務所などの更新料(少額の場合)
- 駐車場代(月極)
- 倉庫の賃借料
■地代
地代とは、土地を借りているときの賃借料のことです。土地だけを借り、新たに建物を建設して営業する場合などに発生します。
■事務所やオフィスの家賃、店舗の家賃
事業者の所有する土地に建物を建てて営業するのではなく、既存のビルや店舗を借りて営業する場合に発生します。通常、土地の利用料を含め「家賃」とすることが多いでしょう。
最近では、レンタルオフィスを利用するケースもありますが、この場合も賃借料や家賃などとしても問題ありません。
■事務所や店舗などの管理費、共益費
事務所、店舗などの管理費とは、清掃をはじめ物件を管理するために発生した費用のことです。共益費とは、複数のテナントが入るビルの一室を借りる場合などに発生する、共用部分(廊下やエレベーターなど)の設備を維持管理するための費用です。事業で使用している事務所などにかかる管理費や共益費は、建物を借りて利用するために必要な費用ということで、地代家賃に含めます。
■賃貸契約時の礼金や返還されない敷金(少額の場合)
礼金とは慣習上、貸主に払うお礼のようなものです。敷金とは退出時に精算される担保金のことをいいます。いずれも賃貸契約を結んだ際、一時的にかかる費用です。礼金と返還されない敷金については、20万円未満であれば地代家賃に含めて処理できます。ただし、敷金を経費として処理した場合は、敷金が戻ってきたときには雑収入などで処理します。
■事務所などの更新料(少額の場合)
更新料は賃貸契約を更新するときに支払うもので、契約によって更新料の有無が決められます。更新料支払いの効果は更新された契約期間にわたるものなので、更新料が20万円以上の場合は長期前払費用などで資産計上しますが、少額であれば地代家賃に含めて処理することも可能です。
■駐車場代(月極)
継続して借りている駐車場の賃借料は、地代家賃で処理します。ただし、コインパーキングのような一時的に発生する駐車場料金などは、仕事上の移動に関するものですので「旅費交通費」に含みます。
■倉庫の賃借料
倉庫の賃借料は建物の賃借料に分類されますので、地代家賃で処理します。
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地代家賃にできない費用
土地や建物の賃借に関わる費用のうち、地代家賃で処理しないものは以下のとおりです。
- 敷金
- 礼金
- 更新料
- 仲介手数料
■敷金
引き払いの際に返還される敷金については、支払時に資産科目である「敷金」や「差入保証金」で処理します。返還されない敷金の処理は、以下の礼金や更新料の処理と同様です。なお、敷金は金額に関係なく「差入保証金」などの資産勘定で処理する方法もあります。
■礼金、更新料
礼金や更新料は支払い後、長期にわたり影響すると考えられる項目です。20万円未満のものについては地代家賃にできますが、20万円以上の場合は繰延資産として、「長期前払費用」などの勘定科目を使って処理します。
■仲介手数料
仲介手数料は契約を仲介した不動会社に支払う料金で、「支払手数料」として処理します。
以上のように、土地や建物の賃貸借契約時に発生する費用であっても、一時的に必要となる費用は基本的に地代家賃に含みません。また、地代家賃に計上できる支出であっても、生計を一にする配偶者や親族に対する土地や建物の賃借料は経費にできませんので注意しましょう。
地代家賃の消費税区分
消費税は、商品やサービスの消費に対して課される税金です。免税事業者であれば消費税の区分を気にする必要はありませんが、課税事業者は消費税区分について把握しておく必要があります。
一般的に課税事業者とされるのは、前々年度の課税売上が1,000万円以上の事業者、および「適格請求書(インボイス)登録事業者」です。
地代家賃に含まれる費用には消費税が課されるものと課されないものがありますので、押さえておきましょう。
課税対象となるもの
地代家賃に区分される費用のうち、消費税の課税対象は以下のとおりです。
- 事業用建物の家賃(管理費や共益費を含む)
- 事業用建物の権利金、敷金、更新料のうち返還されないもの
- 1ヶ月未満の貸付による土地の賃借料
- 施設の利用をともなう土地の賃借料
住宅用の建物の家賃は、貸付期間1ヶ月以上のものであれば非課税ですが、事業用建物の家賃については期間に関わらず消費税の課税対象になります。また、事業用の建物を借りるときの契約や更新に関わる敷金などのうち、返還されないものも課税対象です(敷金や更新料などが少額の場合で、地代家賃として処理したときに関係してきます)。
ほかに消費税が課されるのは、通常非課税である土地の賃貸借が1ヶ月未満だった場合や、借りた土地を駐車場などにして利用した場合(施設の利用をともなう土地の利用に該当)です。
課税対象とならないもの
地代家賃に区分される費用のうち、消費税が課されないのは以下のような費用です。
- 土地の賃借料
- 住宅用建物の家賃(管理費や共益費を含む)
- 住宅用建物の更新料など
土地の賃借料は事業用であっても非課税となるため、1ヶ月未満の賃貸借でなければ消費税は課されません。また、契約書などに住宅用の記載がある場合などは、建物の家賃をはじめ、関連する更新料や返還されない少額の敷金なども非課税になります。
個人事業主の自宅の家賃は経費にできるのか?
個人事業主の自宅の家賃は、通常は経費にできません。それは、個人が住む目的で借りている物件の家賃であって、事業には関連がないためです。
しかし、状況によっては個人事業主の自宅の家賃も経費にできます。たとえば、自宅の一部を事務所として使用している場合です。この場合は、自宅のうち事業で使用している部分について経費にできます。
按分と計算方法
個人事業主が自宅を事業でも使用している場合、負担している家賃を経費にできますが、全額ではありません。すべてを経費にすると、プライベートで使用している分が過剰に経費として計上されてしまいます。
そこで、私用部分と事業部分を分けるために行われるのが家事按分です。家事按分とは、私用でも事業でも使用している費用を合理的に配分することをいいます。
家事按分の方法はさまざまですが、自宅の家賃の場合は、床面積など使用している部分の面積を用いて按分計算をするのが一般的です。
(床面積を使った家事按分の計算例)
家賃月10万円、床面積200平方メートルの自宅のうち、もっぱら事業用に使用しているのは床面積50平方メートルの部分である。
10万円(月の家賃)×12ヶ月=120万円
50平方メートル÷200平方メートル×100=25%(事業で使用している比率)
120万円×25%=30万円(事業の経費として計上できる年間の家賃)
仕訳例
地代家賃の按分計算は費用に計上する都度行っても良いですが、その分、処理が増えてしまいます。自宅の家賃のように家事按分の比率が一定であるものは、費用支払時には地代家賃に計上し、決算時に振替えるほうがわかりやすいでしょう。
以下は、支払時に費用処理し、決算時に私用分をまとめて振替えた場合の仕訳例です。
(例)自宅の家賃1ヶ月分10万円を現金で支払った(自宅には仕事用の作業場がある)。
(単位:円)
ここでは一旦、経費に計上する会計処理を行いますので、私用と事業の比率を考えず、すべて費用である「地代家賃」で処理します。
(例)決算時に、すべて経費で処理していた自宅の家賃のうち私用分を振替えた。なお、経費に計上した年間の家賃は120万円で、事業で使用した比率は25%とする。
(単位:円)
上の例は決算時の仕訳です。
120万円 - 120万円 × 25% = 90万円
過大に計上した地代家賃分を「事業主貸」に振替えます。借方には個人事業主の個人的な支出を表す「事業主貸」の勘定科目を使います。
地代家賃の内訳の書き方
地代家賃は、確定申告を行う際に内訳を示す必要がある科目です。白色申告なら収支内訳書、青色申告なら青色申告決算書に、地代家賃の内訳を記入しましょう。
収支内訳書は2枚中2枚目、青色申告決算書は4枚中2枚目に、それぞれ地代家賃の内訳を書く部分があります。以下の画像の赤枠で示す部分です。
【収支内訳書 2/2枚目】
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
【青色申告決算書 2/4枚目】
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
■支払先の住所・氏名
通常は、物件を貸しているオーナーの住所と氏名を記入します。
■賃借物件
「土地」「建物」など賃借物件の種類を記入します。
■本年中の賃借料・権利金等
収支内訳書も青色申告決算書も記載欄は、「権・更」と「賃」の2段に分かれています。「権・更」はそれぞれ権利金と更新料を表します。年度中に該当の支払いがある場合、丸を付けて額を記入します。「賃」は年度中に支払いが確定した賃借料のことで、対象物件に関わる賃借料全額を記入します。
■左の賃借料のうち必要経費算入額
自宅兼事務所として使用している場合などに記入する必要がある項目です。按分計算を行い、必要経費に算入した額を記入します。
地代家賃は正しく処理しよう
地代家賃は、土地や建物を借りたときの賃借料などを表す勘定科目です。自宅兼事務所として建物を使用している場合は、按分計算が必要なので注意しましょう。また、確定申告時に提出する収支内訳書や青色申告決算書の項目である、地代家賃の内訳を正しく記入するには、家賃や按分計算で経費に算入した額の集計が必要です。確定申告ソフトを利用すると簡単に集計できますので、活用をおすすめします。
確定申告については以下の記事で詳細を解説していますので、参考にしてください。
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もっと読むよくある質問
地代家賃として経費にできる項目は?
地代、事務所や店舗の家賃・管理費・共益費、駐車場代、倉庫の賃借料などです。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主の自宅の家賃は経費にできる?
通常は経費にできませんが、自宅の一部を作業場や事務所として事業で利用している場合は、その部分を経費にできます。詳しくはこちらをご覧ください。
地代家賃の内訳の書き方は?
白色申告なら収支内訳書、青色申告なら青色申告決算書に、地代家賃の内訳(支払先や賃借料など)を記入する項目があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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