- 更新日 : 2023年9月12日
株で損したら確定申告すべき! 損益通算と繰越控除で“節税”する方法

株の取引で損失が出た場合は原則、確定申告は不要です。しかし、株の取引で損失が出た場合であったとしても、確定申告をしたほうが良いケースもあります。そこで、ここでは株の取引で損失が出た場合で確定申告したほうが良いケースや必要書類について解説します。
目次
株式投資で確定申告が必要なケース
株式投資で確定申告が必要なケースは原則、利益が出ているケースです。株式投資で利益が出れば税金が課されるため、確定申告が必要です。
ただし、株の取引を行う方法には「一般口座」「特定口座(源泉徴収なし)」「特定口座(源泉徴収あり)」の3つがあります。このうち「特定口座(源泉徴収あり)」は確定申告不要です(理由は後述)。
そのため、株式投資で確定申告が必要なケースとは、「一般口座」「特定口座(源泉徴収なし)」で株の取引をしており、利益が出ているケースです。
株式投資で確定申告が不要なケース
株式投資で確定申告が不要なケースは原則、損失が出ているケースです。損失が出ている場合は、税金を納税する必要がないので、確定申告は不要です。
また、利益が出ている場合でも、「特定口座(源泉徴収あり)」で株取引をしている場合は、証券会社があらかじめ所得税などを源泉徴収し納税しているため、確定申告は不要です。
株にかかる税金
口座による確定申告の有無が分かりましたが、具体的にどのような税金を申告するのでしょうか。株式投資には、「譲渡益にかかる課税(譲渡益課税)」と「配当金等にかかる課税」の2種類の税金がかかります。それぞれの税率を見てみましょう。
譲渡益にかかる税と税率
株を売却して利益が出たら、「源泉徴収ありの特定口座」の方は金融機関に源泉徴収され、「源泉徴収なしの特定口座」の方は確定申告をして税金を納めることになります。譲渡で得た所得に対し、次の税率分を申告・納税しなければなりません。
<上場株式の場合>
譲渡で得た所得 × 20.315%
※税率20.315%の内訳(所得税15%、住民税5%、所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税0.315%)
<一般株式(非上場)の場合>
譲渡で得た所得 × 20.315%
※税率20.315%の内訳(所得税15%、住民税5%、所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税0.315%)
株式等の譲渡所得金額の計算方法や確定申告に必要な書類は、次のリンク先で紹介しています。
配当金等にかかる税と税率
株の利子や配当金にも課税されます。配当金が支払われる際に、「源泉徴収ありの特定口座」かどうかに関わらず金融機関に源泉徴収されます。
<上場株式の場合>
株式の利子等・配当等の所得 × 20.315%
※税率20.315%の内訳(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)
<一般株式の場合>
配当等の所得 × 20.42%
※税率20.42%の内訳(所得税および復興特別所得税20.42%、住民税なし)
株で損した人は、確定申告で「節税」できる
やっと本題ですが、株で儲けた人だけでなく、損した人も確定申告するべき理由は何なのでしょうか。
実は、上場株式を売却して損した場合、利益と損失を相殺できる「損益通算」と、株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」という特例があります。
この特例は確定申告をすることで適用され、しかも“節税”することができるのです。ただし、一般株式(非上場株式)は適用外なので注意しましょう。
利益と相殺できる「損益通算」
損益通算とは、上場株式の譲渡損失を、その年の利子・配当所得と相殺することができる制度です。
例えば、2018年の年間の損益が、<譲渡損失200万円><利子・配当所得10万円>とします。年間を通したら190万円の損失となります。
【2018年の年間の損益】
譲渡損失 :-200万円
利子・配当所得 :+10万円
<-200万円> + <+10万円> = -190万円
まずは<利子・配当所得10万円>の利益があるため、この10万円に税率20.315%を掛けた20,315円が源泉徴収されます。
ですが、年間を通して190万円の損失となっているため、10万円の利益が相殺され、源泉徴収された20,315円が還付されます。これが損益通算による“節税”です。
複数の口座で「損益通算」できる
複数の証券会社の口座を運用している投資家の方も多いと思いますが、損益通算は複数の口座間でも適用できます。
例えば、A証券会社の口座で利子・配当所得が100万円あった一方、B証券会社の口座で100万円の譲渡損失が出たとします。この場合、2つの口座間で損益通算を行うことで、A証券会社の口座で出た利子・配当所得に対して源泉徴収された税金は還付されます。
利子・配当所得:+100万円⇒源泉徴収される額は203,150円【B証券会社の上場株式】
譲渡損失:-100万円
AとBの口座間で損益通算し、A証券会社の利益に対する源泉徴収203,150円が還付される
株の損失を3年間繰り越せる「繰越控除」
繰越控除とは、譲渡損失を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことができる制度です。つまり、譲渡損失を翌3年間いっぱいは利益と相殺できるのです。
例えば、先ほどの<損益通算して年間損失190万円>の事例の場合、翌3年間は190万円超の利益をあげてからやっと課税がかされるようになります。
繰越控除の注意点
株で損をしたら、泣き寝入りする前に損益通算と繰越控除を利用したいところです。ただし、繰越控除は繰り越す年と翌3年間は毎年確定申告をしなければなりません。その間は株式を売却しなかった年も確定申告が必要になるので、忘れず申告をしましょう。
株式投資の確定申告をする際の必要書類
株式投資の確定申告をする際の必要書類は、次の通りです。
1.提出書類
- 申告書 第一表、第二表、第三表(分離課税用)
- 株式等に係る譲渡所得者の金額の計算明細書
- 「令和○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」
このうち、確定申告書付表は、譲渡損失の損益通算または繰越控除をする場合に必要となります。
2.確定申告書作成のために必要な書類
株で損失が出たときも確定申告の検討を
株で損をした場合は原則、確定申告は不要です。しかし、確定申告をして、利益と損失を相殺できる「損益通算」や株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」の特例を使うことで、節税ができるケースもあります。
まずは自分が、確定申告をしたほうが良いのかを正しく判断することが、重要となるでしょう。確定申告について詳しく知りたい方は、ぜひ、つぎのページもご参照ください。
はじめての確定申告もラクラク安心に済ませる方法
確定申告がはじめての方や、簿記の知識に不安がある方、確定申告書類の作成を効率よく行いたい方は、確定申告ソフトの使用がおすすめです。
個人事業主向け会計ソフトの「マネーフォワード クラウド確定申告」は、確定申告の必要書類が自動作成でき、Windows・Macはもちろん、専用アプリも提供しています。
①取引明細は自動で取得

銀行口座やカードを登録すると、取引明細を自動取得します。現金での支払いに関しても、家計簿のようなイメージで、日付や金額などを自分で入力することが可能です。
②仕訳の勘定科目を自動提案

自動取得した取引明細データや、受領後にアップロードした請求書・領収書などの情報をAIが判別し、仕訳を自動で入力します。学習すればするほど精度が上がり、日々の伝票入力が効率化されます。
③確定申告必要書類の自動作成機能

白色申告・青色申告の両方に対応しており、確定申告に必要な書類が自動で作成できます。また、マネーフォワード クラウド確定申告アプリで、スマホから直接の提出も可能です。印刷しての提出やe-Taxソフトでの提出にも対応しています。

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
よくある質問
株式投資で確定申告が必要なケースは?
「一般口座」「特定口座(源泉徴収なし)」で株の取引をしており、利益が出ているケースです。詳しくはこちらをご覧ください。
株式投資の確定申告で必要な書類は?
原則、確定申告書B 第一表、第二表、第三表(分離課税用)と株式等に係る譲渡所得者の金額の計算明細書です。詳しくはこちらをご覧ください。
株で損をしたら節税できる?
翌年に株で利益を出した場合など、節税できるケースも多くあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
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