- 更新日 : 2023年11月7日
配当所得で損益通算をするための基礎知識
2025年(令和7年)提出 確定申告まとめ
▽まずはこの記事から
初心者から経験者まで、毎年多く読まれている記事です。確定申告の必要性、やり方、簡単に済ます方法についてまるっと解説しています。
株や投資信託を保有している方なら、配当金を受け取ることがあるでしょう。
配当金にかかる税金を支払っていることに気付かない方もいらっしゃるかもしれませんが、配当は「配当所得」とされ、税金がかかっています。漫然と配当を受け取っているだけだと、知らないうちに「高額納税」をしていることになるかもしれません。
配当所得にかかる税金の支払い方法は3通りあり、ここではそれぞれの特徴と方法について解説します。
「マネーフォワード クラウド確定申告」なら日々の取引入力→申告書の作成→申告作業が、オンラインで完結します。取引明細の自動取得と仕訳の自動作成に対応しており、手入力を減らしてカンタンに書類を作成。そのままスマホから提出することもできます。
PC(Windows/Mac)だけでなく、スマホアプリからも確定申告が可能です。
配当所得とは?
配当所得とは、株や投資信託によって受け取る分配金、つまり配当により生じる所得のことです。
主に、以下の2つが挙げられます。
株式による配当所得
法人から受け取る利益の配当、剰余金の分配により生じる所得で、利益の配当、剰余金の分配であれば上場・非上場は問いません。ただし、「公益法人・人格のない社団等」は配当を分配する法人としては認められていません。
投資信託(公社債投資信託は除く)による配当所得
投資信託の分配金から生じる所得で、「配当所得」にあたるのは普通分配金の分のみです。特別分配金は性質上元本の払戻しともいえるため、非課税となっています。
また、除外される「公社債投資信託」とはどんなものかというと、国債・社債等が運用対象で、株式を一切組み入れていないものをいいます。投資信託の種類は「目論見書」「運用報告書」等に記載されていますのでご確認ください。
配当所得の計算式
通常、配当所得には収入金額すべてが計上されます。しかし、借入金の利子に関しては、「控除」として収入から差し引くことができます。
配当所得の金額=収入金額-借入金の利子
ここでいう借入金とは、「その株式等の元本を取得するためにした借金」に限られます。住宅購入や教育ローンがあっても利子を差し引くことはできません。
配当所得の税金支払い方法
各自が一番良い方法を選んで納税できるのが配当所得の利点です。税金を支払う方法は3通りあります。
もっとも一般的な方法は「源泉徴収」で、ほかにも「総合課税」と「申告分離課税」があります。「源泉徴収」以外の方法を選ぶ場合は、確定申告時に支払い方法を選択しなければなりません。
1:源泉徴収
通常、配当金からは所得税等が源泉徴収されています。はじめから税金を差し引いた額を受け取ることになりますので、配当を受け取った時点で納税は完了しています。申告不要というメリットはありますが、税率は高めになる可能性もあります。
源泉徴収選択の注意点としては、上場株式の大口株主(発行済株式総数の3%以上を保有)や1銘柄の配当が「少額配当」を超える場合等は申告が必要となり、源泉徴収で納税を終わらせることはできません。
・上場株式等の配当金の場合 20.315%(国税15.315%、地方税5%)
・上場株式等以外の配当等の場合 20.42%(国税20.42%、地方税なし)
「少額配当」であるか否かの計算式について説明しましょう。
1銘柄について1回に支払いを受けるべき金額が、次の計算式で導き出される金額以下であるものをいいます。
「10万円×配当計算期間の月数(最高12ヶ月)÷12」
(1)12ヶ月株式を保有し、配当は年1回の場合、10万円×12ヶ月÷12=10万円となり、1回の配当支払い額が10万円以下なら「少額配当」となり、申告不要が選択できます。
(2)12ヶ月株式を保有し、中間配当がある株式の配当の場合、10万円×6ヶ月÷12=5万円となり、1回の配当支払い額が5万円以下なら「少額配当」となり、申告不要が選択できます。
2:総合課税による配当控除
原則として、配当所得は受取と同時に課税関係が終了する分離課税です。分離課税は総合課税と異なり、他の所得と合算されません。しかし、配当控除を利用すれば、他の所得と合算することによって税率が下がる可能性があります。ただし、確定申告が必要です。
配当控除を受けるためには、「他の所得」と「配当所得」を合算します。配当控除を計算する際には、配当所得以外の総合課税所得を合計した金額を元に計算を行います。配当所得以外の総合課税所得が1000万円を超えるかどうかで配当控除額が異なります。(以下、合算した配当所得以外の所得を「課税総所得額」と呼びます。)
例を見てみましょう。
所得が1000万円以下の場合、以下のような計算になります。
(1)剰余金の配当等に係る配当所得に関しては配当所得金額の10%が所得控除の金額
(2)証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得(特定株式投資信託の収益の分配に係る配当所得を除きます。以下同じ。)5%
※証券投資信託の収益分配金のうち、特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建証券投資信託の配当所得については、2.5%となります。
(1)+(2)が配当控除の金額
課税総所得額が1000万円超の場合は、以下のような計算になります。
(1)剰余金の配当等に係る配当所得に関しては配当所得金額の5%
(2)証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得2.5%
※証券投資信託の収益分配金のうち、特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建証券投資信託の配当所得については、1.25%となります。
(3)課税総所得金額が1000万円以下の配当所得配当所得の金額 -(課税総所得金額-1,000万円)は10%(又は5%、2.5%)
(4)配当所得から(3)の配当所得を除いた部分に関しては5%(又は2.5%、1.25%)
(5) (3)+(4)が配当控除の金額
3:申告分離課税
「申告分離課税」とは「総合課税」と対をなす課税所得グループで、税の計算を行なう際、このグループの壁をこえて合算することはなく、独立して税率がかかる所得です。
しかし、同じ申告分離課税の代表である「株式等に係る譲渡所得」は、配当所得と合算できます。
ここでいう「合算」は損も含んでおり、株式の譲渡損と配当額を相殺することができるということです。これを「損益通算」と呼びます。
■「配当所得」と「株式等の譲渡所得」の損益通算例
損益通算の流れは以下のとおりです。
2.株式の譲渡損が10万円以上
3.1と2を損益通算して確定申告
4.損益通算により1の利益は相殺されるため、すでに源泉徴収されていた税金が戻ってくる
また、損益通算を行う場合に注意しなければいけないことを記述しておきます。
配当控除と申告分離課税を併用することはできません。また、NISA(非課税口座)で譲渡損があったとしても、申告分離課税として損益通算することはできません。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
最後に
「総合所得」の場合も「申告分離課税」の場合も、一度は源泉徴収されますが、確定申告により払い過ぎた税金が戻ってくるというところがポイントです。
確定申告は手間がかかって面倒臭い気がするかもしれませんが、証券会社に請求すれば、株式・配当関係に関する金額を記した書類が送られてきます。最初の一歩としては最適な方法です!
株で損していた方は、「申告分離課税」にチャレンジしてみてください。
関連記事
・配当控除と配当金に係る税金の計算方法
・売却損がある人の確定申告
・分離課税は確定申告したほうが得?
はじめての確定申告もラクラク安心に済ませる方法
確定申告がはじめての方や、簿記の知識に不安がある方、確定申告書類の作成を効率よく行いたい方は、確定申告ソフトの使用がおすすめです。
個人事業主向け会計ソフトの「マネーフォワード クラウド確定申告」は、確定申告の必要書類が自動作成でき、Windows・Macはもちろん、専用アプリも提供しています。
①取引明細は自動で取得
銀行口座やカードを登録すると、取引明細を自動取得します。現金での支払いに関しても、家計簿のようなイメージで、日付や金額などを自分で入力することが可能です。
②仕訳の勘定科目を自動提案
自動取得した取引明細データや、受領後にアップロードした請求書・領収書などの情報をAIが判別し、仕訳を自動で入力します。学習すればするほど精度が上がり、日々の伝票入力が効率化されます。
③確定申告必要書類の自動作成機能
白色申告・青色申告の両方に対応しており、確定申告に必要な書類が自動で作成できます。また、マネーフォワード クラウド確定申告アプリで、スマホから直接の提出も可能です。印刷しての提出やe-Taxソフトでの提出にも対応しています。
追加料金なしで確定申告以外のサービスが使える
有料プラン(パーソナルミニ・パーソナル・パーソナルプラス)に登録すると、基本料金だけで請求書や契約のサービスを含む11サービスを利用することができます。日々の業務や作業をまとめて効率化しましょう。
合わせて読みたいおすすめ資料
マネーフォワード クラウド確定申告では、さまざまなお役立ち資料を用意しています。 無料登録するだけで資料がダウンロード可能なので、ぜひ読んでみてください。会社員の確定申告 丸わかりガイド
青色申告1から簡単ガイド
個人事業主が知っておくべき経費大辞典
マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
もっと読む※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
投資の確定申告の関連記事
新着記事
個人事業主は労働基準法が適用される?労働時間のルールや判断基準を解説
労働基準法は、労働者を守る法律です。原則として、個人事業主には労働基準法が適用されませんが、例外として適用されることもあります。個人事業主に労働基準法が適用される場合の判断基準や適用される場合の個人事業主の権利、個人事業主を保護する法律につ…
詳しくみる個人事業主は賃貸物件を借りられる?審査に通過するポイントも解説
個人事業主は、賃貸物件を借りるのが難しいといわれることがあります。実際に審査で落ちることもありますが、なぜ個人事業主は賃貸物件を借りるのが困難なのでしょうか。個人事業主が賃貸物件を借りるために押さえておくべきポイントや必要書類、事務所を開設…
詳しくみる個人事業主は消費者金融で融資を受けられる?デメリットや注意点も解説
個人事業主は、ビジネスローンやカードローンなどの消費者金融の融資を利用できます。ただし、融資を受けるには審査を通過する必要があるため、必ず借りられる訳ではありません。個人事業主が消費者金融で融資を受けるメリットやデメリットについて紹介します…
詳しくみる個人事業主がAmazonビジネスを利用するメリットは?必要書類や登録手順も解説
Amazonビジネスは、法人や個人事業主の購入者向けに拡充されたサービスです。個人のアカウントとは、ビジネスに特化している点で違いがあります。個人事業主がAmazonビジネスを利用するメリットは何か、登録時の必要書類や登録の手順もあわせて紹…
詳しくみる個人事業主が軽バンリースをするメリットは?黒ナンバーや審査についても解説
個人事業主が事業用に車を取得する方法として、カーリースを利用する方法もあります。自動車を購入するのではなく、カーリースを利用することにはどのようなメリットがあるのでしょう。個人事業主が軽バンをリースするメリットやデメリット、カーリース利用時…
詳しくみる個人事業主が妻を従業員として雇う手続きは?節税メリットや注意点も解説
個人事業主が妻を従業員として雇う場合、給与について問題になる可能性があります。妻を雇う場合、個人事業主の確定申告にどのような影響があるのでしょうか。個人事業主が妻を雇う場合の手続きや給与をいくらまで経費にできるのか、生計を一にしない家族の取…
詳しくみる