• 更新日 : 2025年9月19日

個人事業主が法人化を検討する目安は?所得・売上・タイミングを解説

個人事業主として事業が成長してくると、「いつ法人化すべきか?」という判断に直面します。法人化の目安は明確に決まっているわけではありませんが、一般的には課税所得が800万円を超える頃から検討するのが妥当とされます。また、法人格を持つことで金融機関や取引先からの信用力の向上や取引拡大にも有利に働きます。一方で、設立費用社会保険料の負担増、税務の複雑化など注意すべき点も多く存在します。

本記事では、法人化の目安となる収入・所得水準を中心に、節税効果やメリット・デメリットなどを解説します。

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個人事業主の法人化目安となる収入・所得水準

個人事業主が法人化を検討する際、最初に考慮すべき指標の一つが「所得」や「売上」の水準です。税負担の観点からは、一定の課税所得や売上規模に到達したかどうかが大きな判断材料となります。ここでは、所得ベースと売上ベースの2つの観点から法人化の目安を整理します。

所得ベースの法人化目安は課税所得が約800〜900万円超

所得税は累進課税であるため、個人事業主の課税所得が増加するにつれて、税率も上がります。たとえば、課税所得が900万円に達した場合、適用される所得税率は33%です。これに加え、住民税(約10%)なども課されるため、実質的な税率は4割を超える水準に達します。

一方、法人税率は中小法人であれば所得800万円以下が15%、800万円を超える部分は23.2%に固定されており、一定以上の所得になると法人税率の方が低く抑えられます。この違いから、課税所得が約800万〜900万円を超えると、法人化によって節税効果が期待できるケースが増えてきます。

たとえば、課税所得900万円の場合、個人事業主では約143.4万円の所得税が課されるのに対し、法人化すれば法人税は約143.2万円となり、わずかながらも法人側の資産結果の方が有利になるケースもあります。さらに法人では、役員報酬や各種経費の計上による所得分散も可能となるため、法人の優位性が広がります。

税理士や会計ソフト提供企業の解説でも、課税所得が700万円台後半から法人化によるメリットが見込まれ始めるとされています。青色申告特別控除などを含めてシミュレーションしたうえで、実際に税額が下がるか専門家に相談することが望まれます。

売上ベースの法人化目安は年間売上1,000万円超

もう一つの法人化判断基準は、年間売上高です。注目されるのが、消費税の納税義務が発生する「売上1,000万円超」のラインです。日本の消費税制度では、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税の納税が必要になります。

かつては、法人を設立しても、資本金1,000万円未満であれば設立から2期は免税となる特例が存在していましたが、2023年10月にインボイス制度が導入されたことにより、状況は大きく変化しました。

インボイス制度の下では、たとえ売上が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者として登録すれば消費税の免税が適用されなくなります。その結果、顧客や取引先からインボイス対応が養成されることで、実質的に消費税の納税が不可避となるケースが増加しています。

つまり、売上1,000万円超を法人化の絶対的な基準とすることはできませんが、事業規模が拡大を示す大きな節目であることは確かです。この段階に到達したら、節税効果だけではなく、取引条件や社会的信用力の向上といった観点からも法人化の可能性を検討する意義があります。

節税以外で法人化を検討すべきケース

法人化の判断材料は税金面だけではありません。ここでは、節税以外の観点から法人化を検討すべきケースを解説します。

法人でなければ受けられない取引・事業機会がある場合

業種や業態によっては、取引先から「法人でなければ契約できない」と条件付けられることがあります。大手企業や官公庁との取引、公共事業の入札、あるいは特定の許認可業種では、法人格の保有が前提条件となる場合が多く見られます。

このような場面では、法人化によってビジネスチャンスが拡大します。さらに法人登記の存在は社会的な信用度が高まり、「継続的に事業を行う体制が整っている」と評価されやすくなります。個人事業主が引退や死亡した場合、その時点で事業は終了となるのが通常ですが、法人化していれば法人が契約主体となるため、事業承継が可能となり、継続性も確保されます。

このように、事業の安定性と信頼性の向上を求められる場面では、法人化が有効な選択肢となります。

資金調達や事業拡大を本格的に目指す場合

将来的に事業規模を拡大したい、あるいは成長のために外部資金を調達したいと考えている場合も、法人化を検討すべきタイミングです。金融機関の融資審査では、法人の方が会計処理が明確で組織体制も整っていると評価されやすく、結果として資金調達がしやすくなります。

また、株式会社であれば株式発行による資金調達を選択でき、成長フェーズにおける選択肢が広がります。法人化して社会保険に加入し、組織的な運営体制を整えることで、求人活動の面でも有利となり、優秀な人材の確保にもつながります。

事業のスケールアップを見据えるのであれば、早い段階で法人化しておくことで、成長に耐えられる事業基盤を強化しやすくなるでしょう。

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個人事業主が法人化することのメリット

法人化は節税だけでなく、経営面・社会的信用・リスク分散など多角的な利点があります。個人事業の成長や安定を目指す際に、法人化が有効な手段となる場面を確認しておきましょう。

税負担の軽減と経費計上の柔軟性

法人税は中小法人であれば課税所得年800万円以下の部分税率が15%、年800万円を超える部分の税率が23.2%であり、所得が一定額を超えると個人の累進課税(所得税の最高税率は45%、住民税を含めると55%程度)より有利になる傾向があります。

さらに法人では、自身に支払う役員報酬を損金に算入できるうえ、その報酬には給与所得控除も適用されるため、法人・個人双方で税負担を抑えられる仕組みが可能です。

加えて、法人であれば条件に応じて生命保険料や福利厚生費、退職金などを経費に計上可能です。特に生命保険料は、保険の種類(定期・養老等)や契約形態により損金に算入できる割合が定められており、節税と保障の両立が図れる点も法人ならではのメリットです。

欠損金の繰越や還付制度の活用

法人では、赤字(欠損金)の繰越期間が最大10年まで認められており、個人事業主の3年と比較して節税効果が長期にわたります。さらに、前期の黒字に対して当期の赤字を繰り戻して税金を還付してもらえる欠損金の繰戻し還付制度も、中小法人であれば活用可能です。これらにより、業績が不安定な時期でもキャッシュフローを安定化しやすく、税務上の柔軟な対応が可能となります。

社会的信用と資金調達のしやすさ

法人化することで登記情報が公開され、取引先や金融機関からの信用が高まります。その結果、法人のみを対象とする取引や案件への参加が可能となるほか、金融機関からの融資審査でもプラスに評価されやすくなります。創業融資や事業資金の調達も円滑になり、法人形態であれば将来的な株式発行などの手段によって外部資本を受け入れる選択肢も得られます。

有限責任によるリスク分散

法人は独立した法的主体であるため、出資者が負う責任は出資者の出資額に限られます。個人事業主のように無限責任を負う必要がなく、事業に失敗した場合でも個人資産まで影響を受けるリスクを軽減できるのも法人化の大きなメリットです。

個人事業主が法人化することのデメリット

法人化には多くの利点がありますが、一方で新たなコストや手続き上の負担も無視できません。ここでは、個人事業主が法人化することで生じやすいデメリットについて整理します。

設立・維持にかかる費用負担

個人事業は開業届を出すだけで無料で始められますが、法人化には初期費用が必要です。株式会社の場合、定款認証や登記免許税などで20〜25万円前後、合同会社でも10万円程度かかります。設立後は、利益の有無にかかわらず法人住民税の均等割(最低でも年7万円程度)が課され、赤字でも最低限の税負担が発生します。

さらに、税理士や司法書士への依頼料、社会保険料の会社負担分、決算公告費など、法人維持にかかる固定費が継続的にかかります。これらを上回るメリットが得られるか、事前の試算が不可欠です。

税務・事務手続きの煩雑化

法人化すると、会計処理や税務申告が大幅に複雑になります。法人には複式簿記による帳簿作成が義務付けられ、決算時には貸借対照表損益計算書などを作成し、法人税の申告書を整える必要があります。こうした事務は個人事業より高度な知識を要するため、税理士のサポートが必要になるケースが多く、その分の顧問料や決算料も考慮すべきでしょう。

また、法人設立時や従業員雇用時には、税務署や自治体、年金事務所などへの多くの各種届出が義務付けられています。手続きに漏れがあると罰則を受ける可能性もあるため、事務管理体制の構築が求められます。

社会保険料の強制加入によるコスト増

法人は、従業員の有無にかかわらず健康保険・構成年金への加入が義務付けられます。代表者1名だけの法人であっても、給与の約30%程度を保険料として本人と会社で負担する必要があります。

月40万円の役員報酬を設定した場合、会社負担分と個人負担分を合わせた保険料総額が毎月12万円前後かかります。このうち約半額(約6万円)が会社の負担となり、国民年金保険料のみだった個人事業時代と比較すると、資金繰りへの影響は大きくなります。

将来の年金額増加や福利厚生の充実による人材確保といった効果も期待されますが、コスト負担に見合うかどうかは慎重な判断が求められます。

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個人事業主と法人の税務上の違い

法人化を検討する際には、税務申告の方法や納税のタイミングがどう変わるかを理解しておくことが重要です。ここでは、個人事業主と法人の税務上の違いについて解説します。

個人事業主としての確定申告(所得税)

個人事業主は、毎年3月15日までに前年の所得を確定申告し、所得税・住民税を納めます。青色申告を選択している場合は、複式簿記で帳簿をつけることで最大65万円の特別控除を受けられるほか、家族への給与を「青色事業専従者」として経費計上することも可能です。所得税は累進課税で、課税所得に応じた税率が適用され、課税所得が増えるほど税率が高くなります。さらに、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の申告義務が発生し、個人事業税も業種に応じて課されます。

また、青色申告者であれば赤字を3年間繰り越して将来の黒字と相殺することも可能で節税効果を得られます。確定申告では、これらの税目を一括して処理する形になります。

法人化後の税務申告・納税(法人税等)

法人化すると、所得に対しては法人税、法人住民税、法人事業税が課され、決算期ごとに申告を行います。申告期限は決算日から2か月以内であり、個人の確定申告(毎年3月)と異なり、決算期を自由に設定できるため、納税時期を柔軟に調整できます。

法人税の申告は書類が多く複雑なため、税理士の支援を受けるケースが一般的です。また、法人の利益は法人に帰属しますが、代表者個人が受け取る役員報酬や配当は別途個人の所得税として申告が必要です。したがって、法人化後も個人の確定申告が不要になるわけではありませんが、事業所得の処理は法人側に移行するため、個人側の申告は給与所得中心に簡素化される傾向にあります。

最適なタイミングで法人化を検討しよう

法人化は、課税所得や売上が一定規模に達したときだけでなく、取引の拡大や信用力の向上を求める場面でも検討すべき重要な転換点です。節税効果や資金調達のしやすさといった利点がある一方で、設立費用や事務負担、社会保険料の増加といったコストも伴います。自社の収支バランスや今後の事業計画を踏まえたうえで、法人化のタイミングを慎重に見極めましょう。判断に迷う場合は、専門家の助言も取り入れながら進めることが安心です。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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