- 更新日 : 2026年6月5日
160万円の壁は178万円に!税制の変更点・扶養・手取りを解説
178万円の壁とは、所得税の非課税枠を160万円から引き上げる令和8年度税制改正の新たな基準です。
- 所得税がかからない範囲が広がる
- 令和8年分から順次反映される
- 扶養や保険の壁は別に残る
令和7年度の非課税ラインは160万円に引き上げられ、令和8年度からは、給与年収178万円まで非課税の上限を引き上げる方針が示されました。パートやアルバイトの年収調整、家族の扶養、毎月の手取りにどう響くのでしょうか。本記事では、160万円の壁から178万円への変更点を、扶養や手取りへの影響、適用時期、社会保険との違いまで整理して解説します。
※本記事の内容は2025年12月公表の税制改正大綱をもとにしています。税制改正大綱は自民党が毎年12月頃に発表する改正のドラフトであり、国会での審議を経て翌年春頃に法律として制定されます。最終的に制定された法律の内容と異なる場合があります。
参照:令和8年度税制改正の大綱|財務省
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「160万円の壁」と「178万円の壁」とは?
給与所得者に所得税が生じない年収のおおよその上限を指し、令和7年度の改正で160万円まで広がりました。さらに令和8年度の改正でこの上限が178万円へ引き上げられたものが、「178万円の壁」です。
税金の壁と社会保険の壁は分けて考える
年収の壁は、「税金が生じる境界」と「社会保険料の負担が生じる境界」に分かれます。
いわゆる年収の壁には2つの系統があります。1つは所得税や住民税といった税の負担が始まる境界で、もう1つは健康保険や厚生年金の保険料を自分で負担する境界です。
160万円や178万円は前者の税の話で、後者は106万円や130万円といった数字で語られます。両者は根拠となる法律も判定の仕組みも異なるため、まとめて考えると混乱しやすくなります。働き方を考えるときは、税と社会保険を分けて押さえると整理しやすくなります。
178万円も160万円も基礎控除と給与所得控除の合計で決まる
178万円は基礎控除104万円と給与所得控除74万円、160万円は基礎控除95万円と給与所得控除65万円を合計した水準です。
給与所得者の所得税は、年収から給与所得控除を差し引き、基礎控除などの所得控除を引いた課税所得に税率をかけて計算します。
令和8年度の改正後は、基礎控除が最大104万円、給与所得控除の最低保障額が特例込み74万円となり、合わせた178万円までは課税所得が生じません。その前段である令和7年度改正による160万円は、基礎控除95万円と給与所得控除65万円の合計です。
いずれも最大額の控除が使えるのは所得が一定以下の場合に限られ、収入が増えると控除額は段階的に縮小します。
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「103万円」から「160万円」そして「178万円」へ
所得税の非課税ラインは、長く続いた103万円から令和7年度に160万円へ、令和8年度にはさらに178万円へと、段階的に引き上げられています。背景には物価や最低賃金の上昇があります。
| 年分 | 壁の名称 | 非課税ラインの目安 |
|---|---|---|
| ~令和6年分(2024年分) | 103万円の壁 | 103万円 |
| 令和7年分(2025年分) | 160万円の壁 | 160万円 |
| 令和8年分(2026年分)〜 | 178万円の壁 | 178万円 |
非課税ライン「103万円」は長く続いた
103万円の壁は、給与所得控除55万円と基礎控除48万円の合計から生まれた従来の非課税ラインです。かつては給与所得控除の最低額55万円と基礎控除48万円を合わせた103万円までが非課税でした。
この水準は約30年にわたり据え置かれ、収入を103万円以下に抑える働き控えが生じやすい状況が続いていました。物価や賃金が上がるなかで実態と合わなくなり、見直しが求められてきました。
令和7年度改正で「160万円」へ引き上げ
令和7年度税制改正により、所得税がかからない年収の目安は160万円に引き上げられました。改正の柱は基礎控除の拡大と給与所得控除の引き上げで、2つの控除を合算すると最大で年収160万円までが課税対象から外れる仕組みになりました。
令和7年度改正後の控除額は次のとおりです。
- 給与所得控除(最低保障額):55万円 → 65万円
- 基礎控除(最大・特例):48万円 → 95万円(合計所得132万円以下の場合)
- 非課税となる給与年収の目安:160万円(65万円+95万円)
ただし、基礎控除95万円が適用されるのは、合計所得金額が132万円以下の場合に限られます。収入が増えるにつれて控除額は段階的に縮小します。
令和8年度大綱で「178万円」まで引き上げ
令和8年度の改正では、基礎控除と給与所得控除をさらに広げ、課税最低限が178万円まで引き上げられました。年収178万円を12か月で割ると、月およそ14万円台が所得税のかからない目安になります。
令和8年度改正の概要は以下のとおりです。
- 給与所得控除(最低保障額):65万円 → 74万円(本則69万円+令和8・9年特例5万円)
- 基礎控除(最大・特例):95万円 → 104万円(本則62万円+令和8・9年特例42万円)
- 非課税となる給与年収の目安:160万円 → 178万円(74万円+104万円)
なお、基礎控除104万円が適用されるのは合計所得金額が489万円以下の場合に限られます。また、この上乗せの一部は令和8年分・令和9年分の時限措置で、令和10年分以降は内容が変わる見込みです。
所得が増えるにつれて控除額は段階的に縮小するため、178万円の非課税ラインはすべての人に一律に適用されるわけではありません。
令和7年度改正後から令和8・9年分への変化は次の表のとおりです。
◆ 基礎控除額
| 合計所得金額 (給与収入の金額目安) |
令和7年分 | 令和8・9年分※1 (大綱・令和8年分〜) |
|---|---|---|
| 132万円以下 (200万3,999円以下) |
95万円 | 104万円 |
| 132万円超 336万円以下 (200万3,999円超 475万1,999円以下) |
88万円 | 104万円※2 本則62万円+特例42万円 |
| 336万円超 489万円以下 (475万1,999円超 665万5,556円以下) |
68万円 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 (665万5,556円超 850万円以下) |
63万円 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 (850万円超 2,545万円以下) |
58万円 | 62万円 |
| 2,350万円超 2,400万円以下 (2,545万円超 2,595万円以下) |
48万円 | |
| 2,400万円超 2,450万円以下 (2,595万円超 2,645万円以下) |
32万円 | |
| 2,450万円超 2,500万円以下 (2,645万円超 2,695万円以下) |
16万円 | |
| 2,500万円超 (2,695万円超) |
0円(基礎控除の適用なし) | |
◆ 給与所得控除(給与等の収入金額別)
| 令和7年分 | 令和8・9年分 | |
|---|---|---|
| 162万5,000円以下 | 65万円 (最低保障額) |
74万円※2 (最低保障額) |
| 162万5,000円超 180万円以下 | ||
| 180万円超 190万円以下 | ||
| 190万円超 220万円以下 | 収入金額×30%+8万円 (65万円超~74万円以下) |
|
| 220万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円(74万円〜116万円以下) | 収入金額×30%+8万円(74万円〜116万円以下) |
| 360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円(116万円〜176万円以下) | 収入金額×20%+44万円(116万円〜176万円以下) |
| 660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円(176万円〜195万円以下) | 収入金額×10%+110万円(176万円〜195万円以下) |
| 850万円超 | 195万円(上限) | 195万円(上限) |
※1 令和8年度税制改正大綱の内容(国会審議を経て制定)
※2 基礎控除104万円は合計所得489万円以下の場合。74万円は本則69万円+令和8・9年特例5万円
所得税がかからない場合でも、住民税は年収110万円前後から生じることがあり、社会保険料は月額や勤務時間の条件で発生します。月額だけで判断せず、年間の見込みと合わせて確認すると安心です。
配偶者控除・扶養控除の年収要件はどう変わる?
控除額の見直しに合わせて、配偶者や子どもなど家族側の所得要件も引き上げられました。世帯で見ると、家族が少し多く働いても控除が外れにくくなります。
配偶者控除・配偶者特別控除の上限が広がる
配偶者控除の対象となる年収の上限が、123万円以下から136万円以下へ広がります。
令和8年度の改正では、同一生計配偶者の合計所得金額の要件が58万円以下から62万円以下に引き上げられたからです。
配偶者特別控除も、配偶者の年収が一定額を超えると段階的に減る仕組みは残りますが、2025年からは、満額(38万円)の控除を受けられる年収の上限が「160万円」へと引き上げられています。令和8年度大綱では対象範囲が調整される見込みです。具体的な数値は大綱成立後に国税庁から公表されますので、確定情報は最新の公表内容をご確認ください。
なお、扶養する側(納税者本人)の合計所得金額が900万円以下のときの控除額です。本人の所得が900万円(給与収入では約1,095万円)を超えると控除額は段階的に減り、1,000万円を超えると受けられません。
特定親族特別控除(19歳以上23歳未満)の上限も広がる
19歳以上23歳未満の子の収入を控除する特定親族特別控除は、子どもの年収が150万円以下であれば、満額の扶養控除が適用されます。
令和7年度改正で新設された「特定親族特別控除」は、子どもの年収が特定扶養控除の上限を超えていても、一定の範囲内であれば段階的に控除が受けられる制度です(19以上23歳未満の親族が対象)。
2025年分以降の改正後は、子どもの年収が150万円以下であれば、満額の扶養控除が適用されます。また、150万円を超えてしまっても、188万円以下であれば控除額が段階的に減額されつつも適用可能となりました。
令和7年度改正後の控除額は次のとおりです。
| 特定親族の合計所得金額(給与収入のみの場合) | 控除額 |
|---|---|
| 58万円超 85万円以下(123万円超150万円以下) | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下(150万円超155万円以下) | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下(155万円超160万円以下) | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下(160万円超165万円以下) | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下(165万円超170万円以下) | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下(170万円超175万円以下) | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下(175万円超180万円以下) | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下(180万円超185万円以下) | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下(185万円超188万円以下) | 3万円 |
令和8年度大綱の「所要の措置」により、この控除の対象範囲は合計所得62万円超(給与収入136万円超)を下限とする形に調整される見込みです。具体的な控除額の表については、大綱成立後の国税庁の公表内容をご確認ください。
「160万円」から「178万円の壁」へ、適用はいつから?
令和7年度改正による「160万円の壁」はすでに2025年12月1日に施行されており、令和7年分の年末調整から反映されています。令和8年度大綱に示された「178万円」への引き上げは別の改正として扱われ、適用開始のタイミングが異なります。
所得税は令和8年分から、月次源泉徴収は令和9年1月以降
178万円への引き上げは、令和8年分(2026年1月以降)の所得税から適用されます。
一方で、毎月の給与から差し引かれる源泉徴収税額表の改訂は令和9年1月以降の支払い分からとなるため、令和8年中は従来の税額表で天引きが続き、その差は令和8年分の年末調整で精算される見通しです。
住民税への反映は令和9年度(2027年)から
住民税は前年の所得をもとに計算されるため、反映は令和9年度(2027年度)からになります。
| 住民税の課税年度 | 対象所得年 | 給与所得控除(最低保障額) |
|---|---|---|
| 令和8年度 (2026年6月通知〜) |
令和7年分所得 | 65万円(令和7年度改正ベース) |
| 令和9年度 (2027年6月通知〜) |
令和8年分所得 | 74万円(令和8年度大綱の特例込み) |
したがって、令和8年分の所得については所得税は非課税でも住民税がかかるケースがあります。住民税への反映は令和9年度からとなる点に注意してください。
改正後も変わらない社会保険の壁(106万円・130万円)
178万円への引き上げは税の話で、社会保険の106万円や130万円の壁は別の仕組みとして残ります。これらは扶養から外れるかどうかや保険料の負担に関わるため、引き続き意識しておきたい基準です。
130万円の壁は配偶者の扶養から外れる基準
年収130万円以上になると配偶者などの扶養から外れ、自分で社会保険料を負担します。
130万円の壁は、健康保険の被扶養者でいられる年収のおおよその上限です。これを超えると自分で保険料を納めるため、手取りが減ったと感じるケースもあるでしょう。
令和8年4月からは認定方法が見直され、労働契約上の見込み年収が130万円未満であれば、残業などで一時的に超えても扶養にとどまれる扱いが明確になりました。なお、19歳以上23歳未満の方は150万円、60歳以上の方は180万円が目安となります。
この取扱いは令和8年4月1日から適用されています。労働条件が変わった場合は都度、勤務先の健保組合等に確認することを推奨します。
106万円の壁は勤務条件しだいで適用される
106万円の壁は、企業規模や勤務時間などの条件を満たすと社会保険への加入義務が生じる基準です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8万8,000円以上(年収換算約106万円相当)
- 勤務先の従業員数が51人以上(社会保健適用拡大の対象企業)
- 雇用期間が2か月以上見込まれる
これらの条件に当てはまる場合、被扶養者の資格を失い、自身で社会保険料を負担することになります。
- 年金制度改正法により、月額賃金の要件は公布から3年以内に撤廃される方向で、企業規模の要件も段階的に縮小されます。今後は賃金額より、週20時間以上働くかどうかが中心の基準になっていく見込みです。
年収の壁を理解して働き方を見直そう
令和8年度の税制改正により、所得税の非課税ラインは178万円まで広がり、給与年収178万円までは所得税がかからない見込みとなりました。これは令和7年度の160万円からさらに引き上げられたものです。基礎控除と給与所得控除の拡大により手取りが増えやすくなり、配偶者や子どもの扶養の範囲も広がります。
一方で、住民税は反映の時期がずれ、社会保険の106万円・130万円の壁は別の仕組みとして残ります。
税と社会保険を分けて確認し、年間の収入見込みをもとに、無理のない範囲で働き方を見直していきましょう。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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