会社員でも確定申告した方がいい人は? 年末調整済みでも“還付”あるかも

読了まで約 7

会社員で年末調整を終えている方は、確定申告など縁のないことのように思えます。しかし、年末調整済みであっても、確定申告をすることで“税金が還付される”ことがあります。どんなケースが該当するのかを知っておき、そのうえで取捨選択するのが得策です。(執筆者:税理士 伯母敏子)

年末調整と確定申告の違い

年末調整とは、そもそもどういうものでしょう。そして、年末調整と確定申告との違いや関連性はどうなっているのかを確認していきます。

年末調整とは

会社が従業員へ給与や賞与を支払う際に天引きした「源泉徴収の税額」と、その年に支払った「総額に対する税額」とを比較して、所得税額を正しく計算しなおすのが年末調整です。

その結果、「源泉徴収の税額」の方が多ければ、つまり給与から税金を天引きされすぎていた場合、会社は従業員へ税金を還付をします。一方、「総額に対する税額」の方が多ければ、従業員は不足分を追加納税しなければなりません。

1カ所から給与を受け取っていて年末までその会社に在籍していた会社員、パート、アルバイトの方は、年末調整によって納税が完了しています。改めて確定申告の手続きを必要はありません。

確定申告とは

一年間で得た全ての所得金額を合計し、それに対する所得税等を算出して、税務署に確定申告書を提出するのが確定申告です。その結果、納付する税金の方が多ければ税務署に差額を納税し、少なければ還付を受けることになります。

年末調整済みでも、確定申告で税額が変わることも

年末調整は会社などの給与支払者が行い、確定申告は納税者本人が行うという違いがありましたね。会社員の方は、「それなら会社に年末調整をしてもらうのが楽でいい」と思われるかもしれませんが、実は年末調整では所得控除できる項目が限られているのです。また、年末調整済みでも確定申告することで税額が変わることもあります。

年末調整が済んだら確定申告はしないものだと勘違いしてしまうケースも見受けられますが、確定申告はあくまで一年間で得た“全ての所得金額”を合計することから始まります。それは会社からの給与以外にも、副業している場合はその副収入なども当てはまります。

確定申告をしなければならない主なケース

会社員の方でも、任意ではなく確定申告をしなければならないケースをみておきましょう。

①給与の収入金額が2,000万円を超える場合
この場合には年末調整をすることができないため、必ず確定申告をすることになります。

②給与を1カ所から受けていて、各種所得金額(給与所得・退職所得を除く)の合計額が20万円を超える場合
例えば、副業がある場合や、保険金を受け取った場合などが考えられます。

③給与を2カ所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える場合
②③の場合は20万円を超えれば確定申告をしなければなりませんが、逆に言うと20万円以下であれば確定申告は不要です。しかし、ここで気を付けるべきは、20万円以下で確定申告不要であるにもかかわらず、他の要因で確定申告をした場合には、20万円以下の所得についても申告をしなければならないという点です。

④同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子、賃貸料、使用料などの支払いを受けた場合
この場合にはたとえ少額であっても確定申告が必要になります。

⑤給与について災害減免法によって源泉徴収の猶予や還付を受けた人

⑥在日の外国公館に勤務する人や家事使用人などで給与の支払いを受けるときに源泉徴収されていない人

会社員でも確定申告をした方がいい主なケース

会社員で確定申告をすれば税金が還付されるということは、言い換えれば源泉徴収された税金が納めすぎになっているということです。ですから給与所得の源泉徴収票で源泉徴収税額欄がゼロの場合には還付される税金もないということを確認しておきましょう。

また、前項③の繰り返しになりますが、確定申告をするということはその他の各種所得で“確定申告「不要」”だった事項についても申告する必要が出てくることも確認が必要です。

<会社員でも確定申告をした方がいい主なケース>
・医療費を多く払った人
・セルフメディケーション税制の対象となるOTC医薬品を1万2,000円超買った人
・マイホームを新築・購入、増改築・改修した人
・2,000円を超える寄付をした人
・上場株式等の配当がある人(課税所得900万円未満の人)
・年の途中で会社を退職してほかに収入がない人
・上場株式等の売却損が出た人

このうち、「医療費を多く払った場合」と、「上場株式等の売却損が出た場合」を例に挙げて見てみましょう。

【例1】給与収入500万円の人が20万円分の医療費をもとに医療費控除をする場合

年末調整で適用した所得控除が基礎控除(380,000円)のみの場合は、医療費控除後、所得税が1万円還付されます。この場合、20万円の医療費から10万円を差し引き、医療費控除額は10万円となります。

給与収入 500万円
給与所得 346万円
医療費控除額 100,000円
医療費控除前の所得税 210,500円
医療費控除後の所得税 200,500円
還付される所得税 10,000円

>>医療費控除の控除額を知りたい方はこちらの記事をチェック

【例2】株で損をした場合

株式投資については、源泉徴収ありの特定口座を利用していれば、確定申告は不要です。ところが上場株式等を売却した際に損が生じた場合には、その年分の上場株式等の配当(分離課税を選択した配当)や利子から生じた所得と、「損益通算」することができます。

さらに、損益通算で控除しきれなかった損については、翌年から3年間、確定申告によって「繰越控除」をすることができます。繰越控除を行う際には、各年においてまず譲渡所得等の金額から控除し、なお控除しきれない損失の金額があるときに配当所得等の金額から控除します。

例えば、2018年に損失が生じたとすると、次のように推移します。

◆2018年(損益通算)
源泉徴収された配当金 10万円
株式の譲渡損 110万円
翌年以降に繰り越す損失額 100万円

損益通算して確定申告をすると、配当金から源泉徴収された税金が還付になります。

◆2019年(繰越控除1年目)
前年から繰り越された損失額 100万円
株式の譲渡益 40万円 ⇒ 繰越控除でゼロに
配当等 5万円 ⇒ 繰越控除でゼロに

翌年に繰り越す控除額は100万円-40万円-5万円=55万円

◆2020年(繰越控除2年目)
前年から繰り越された損失額 55万円
株式の譲渡益 30万円 ⇒ 繰越控除でゼロに
配当等 5万円 ⇒ 繰越控除でゼロに

翌年に繰り越す控除額は55万円-30万円-5万円=20万円

◆2021年(繰越控除3年目)
前年から繰り越された損失額 20万円
株式の譲渡益 10万円 ⇒ 繰越控除でゼロに
配当等 30万円 ⇒ 繰越控除で10万円控除され、
20万円が課税対象に

>>株で損したら確定申告すべき! 損益通算と繰越控除で“節税”する方法

まとめ

今回は、会社員の方が知っておきたい確定申告の知識について解説をしました。申告書の提出期間は2019年2月18日から3月15日の間とされていますが、還付申告の場合は毎年1月1日から始まっています。早めに申告をすれば、その分早く還付金を受け取ることができます。

また、過去5年分までさかのぼって還付申告をすることができるため、2019年の確定申告では、2014年分まで申告する権利があります。確定申告することで税金が還付されることに気が付いていなかった年の分があれば、まとめてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2019年2月14日)のものです。

伯母敏子税理士の記事一覧

■2019年1月22日掲載:
「スマホで確定申告」のやり方を徹底解説 対象者、準備、手順は?

■2018年12月20日掲載:
【2018年版】「源泉徴収票」の見方を解説 チェックすべき項目はここ!

■2018年12月10日掲載:
東京都「ふるさと納税減収」 豊洲移転に五輪経費…財源は大丈夫?

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:伯母 敏子(税理士)

伯母敏子税理士事務所
大学卒業後、大手リース会社の営業職として中小企業経営者に向けた融資、リース契約、保険の販売等様々な金融商品の取り扱いを経験。その後、個人税理士事務所へ転職。平成27年に税理士試験合格。平成28年4月に税理士登録、平成29年11月に伯母敏子税理士事務所として独立開業。現在は新宿区神楽坂にて中小企業の経営、事業承継、法人成り、クラウド会計、経理事務改善の提案等のサポートを通じて中小企業経営者向けサービスを提供している。



確定申告を自動化! マネーフォワード クラウド確定申告

「マネーフォワード クラウド」シリーズのサービス資料