- 更新日 : 2025年9月19日
個人事業主と経営者の違いとは?制度・税制・信用の差を解説
個人事業主として事業を始める際、経営者との違いについて疑問に思う方も少なくありません。どちらも自ら事業を行う立場にありますが、法的な位置づけや責任範囲、税制、社会保険、信用力など、制度面では大きく異なる部分もあります。
本記事では、両者の定義からはじまり、開業費用や税金、確定申告、社会保険の違い、法人化を検討するタイミングなどを解説します。
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個人事業主と経営者の定義
個人事業主と経営者はどちらも事業運営に携わる存在ですが、法的な位置づけや組織の持ち方に違いがあります。ここでは両者の定義を整理します。
個人事業主とは
個人事業主は、法人を設立せずに個人の資格で事業を営む人を指します。事業を始める際には税務署へ「開業届」を提出し、個人事業主として一定の活動を始めます。フリーランスや一人親方など、自分の名前で契約を結び、収益を得る形で継続的に事業を行うのが特徴です。法人格を持たないため、事業に関するすべての責任や契約は本人に帰属します。
経営者とは
一方、経営者とは法人組織の代表者や管理者であり、株式会社や合同会社の代表取締役、社長などがこれに当たります。経営者は法人という法的主体のもとで組織を動かし、意思決定と責任を担います。ただし法律上、「経営者」という定義はないため、個人事業主においても、事業計画を立て、従業員を雇用し、財務や経営判断を行い、実態として「経営者的役割」を果たしますので、個人事業主が自らを「経営者」と名乗ることに問題ありません。
経営者自身が事業主体ではなく、あくまで法人の代表として業務を遂行する立場である点が、個人事業主との大きな違いです。
個人事業主と経営者の法的な違い
個人事業主と法人経営者では、事業の形態や法律上の立場に明確な違いがあります。ここでは、「個人」か「法人」かという組織形態の違いと、それに伴う責任の範囲の差について、わかりやすく整理します。
組織形態の違い
個人事業主は、法人を設立せずに個人の資格で事業を行う形式です。開業時には税務署に「開業届出書」を提出して事業を始められ、登記や会社法上の手続きは不要です。事業の契約や資産の保有も、すべて本人の名義で行います。そのため、事業と生活の境界が曖昧になる傾向があります。
一方で、経営者が法人を設立する場合は、株式会社や合同会社などの法人格を取得し、法人そのものが事業主体となります。法人は法律上「ひとつの人格」として認められ、法人名義で契約や資産保有ができます。経営者は法人の代表者として行動する立場となり、会社法に基づいて定款の作成や登記、役員の選任などの手続きを行う必要があります。法人化することで、経営主体と経営者個人の資産が法律上分離されるのが大きな特徴です。
責任の範囲とリスクの違い
最も大きな違いは、事業に伴う債務や損失に対する責任の範囲です。個人事業主は事業上の債務に対して「無限責任」を負っており、事業上の債務はすべて本人に帰属します。万が一多額の借金や損失が発生した場合でも、事業用資産だけでなく、個人の預貯金や自宅なども返済の対象となります。事業と個人の財産が完全に一体化しているため、失敗時のリスクは大きいのが実情です。
これに対して法人の経営者は、原則として「有限責任」です。法人が破綻しても、経営者個人が負う責任は出資した資本金の範囲にとどまり、個人の私的な資産が原則として追及されることはありません。法人と経営者の財産が分離されているため、経営上の失敗が即座に個人資産に直結するわけではありません。ただし、法人が融資を受ける際に経営者が連帯保証人になると、万が一返済不能になった場合は経営者の個人資産に影響が及ぶ点には注意が必要です。
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個人事業主と経営者の税金・確定申告の違い
個人事業主と法人の経営者では、課税の仕組みや確定申告の方法に明確な違いがあります。
個人事業主は所得税を中心に納めて確定申告を行う
個人事業主は、所得税・個人住民税・個人事業税・消費税(課税対象の場合)などが主な税負担となります。毎年1月から12月までの収入・経費を集計し、翌年3月15日までに確定申告を行って所得税を納めます。所得税は超過累進課税のため、所得が大きくなるほど税率が上がり、最高45%の税率が適用されることもあります。住民税と合わせると最大55%の税負担となる場合もあります。
個人事業主には「青色申告制度」があり、帳簿を複式簿記でつけて期限内に申告すれば、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。電子申告や電子帳簿保存による手続きが条件となるため、制度を正しく利用することで大きな節税効果が得られます。
法人は法人税を中心に納めて決算申告を行う
法人の場合、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税などが課されます。経営者個人は会社から役員報酬を受け取り、その報酬に対して所得税・住民税を個別に納める仕組みです。法人は年に一度、事業年度ごとに決算を行い、法人税の申告・納付を行います。
資本金1億円以下の中小企業の場合、所得のうち年800万円以下の部分には原則として15%、それを超える部分には23.2%の法人税率が適用されます。個人の所得税は所得に応じて税率が最大45%まで上がるため、高所得帯においては法人税の方が税率を低く抑えられる場合があります。
ただし、法人は赤字であっても納税義務がゼロになるわけではありません。法人住民税の均等割という制度により、たとえ利益が出ていなくても年間7万円前後の地方税を支払う必要があります。個人事業主であれば赤字なら税負担は原則発生しませんが、法人は赤字でも一定額の税金が発生する点が大きな違いです。事業の利益規模や今後の成長見込みに応じて、どちらの形態が適しているかを検討することが大切です。
個人事業主と経営者の初期費用・社会保険の違い
事業を運営する上では、開業・設立時にかかる初期費用や、継続的に発生する社会保険の負担にも大きな違いがあります。
開業・設立時の費用と手続きの違い
個人事業主として事業を始める際は、税務署に「開業届」を提出すれば主たる手続きは完了します。手数料も不要で、許認可等を除けば届出だけで開業が可能と言えます。資本金の要件もなく、必要な運転資金を自身で準備すれば事業を開始できます。開業コストが非常に低く、柔軟に始められる点が個人事業主の大きな特徴です。
これに対して法人設立には法定費用がかかります。株式会社の場合、登録免許税(最低15万円)や定款関連費用で、紙の定款では全体で約24万円かかります。ただし、電子定款を利用すれば印紙代4万円が不要となり、約20万円に抑えられます。 一方、合同会社の場合は、紙の定款で約10万円、電子定款なら約6万円が目安です。
会社印や印鑑証明の取得、設立書類の準備も必要です。また、法律上は1円から設立できますが、実務的にはある程度の資本金を準備するのが一般的で、信用面や融資の際の基準にも影響します。
社会保険加入義務の違い
社会保険の加入義務にも明確な違いがあります。個人事業主の場合、事業主本人は国民健康保険と国民年金に加入しますが、従業員が5人未満の事業であれば、健康保険や厚生年金への加入は義務ではありません(一部業種を除く)。そのため、社会保険料の負担をコントロールしやすく、費用面での柔軟性があります。
一方、法人を設立すると、たとえ代表者1人の会社であっても、法人として社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられます。法人が加入すると、保険料は会社と従業員(役員を含む)で折半となり、会社側には毎月保険料の半額を負担する義務が生じます。このため、法人経営では人件費だけでなく、社会保険料も固定費として大きく考慮する必要があります。
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個人事業主と経営者の信用度・取引の違い
事業運営においては、事業内容だけでなく、社会的な信用や外部からの評価も重要です。個人事業主と法人経営者では、その信用度や取引面において明確な差が現れることがあります。
個人事業主は柔軟性があるが信用力では劣る場面も
個人事業主は設立手続きが簡易で活動できる反面、社会的な信用度という点では法人よりも劣るとされる場面があります。たとえば、金融機関に融資を申し込んだ際や、大手企業と新規取引を始めようとした際には、「法人格がない」ことが障壁になることも考えられます。法人は法務局に登記されており、信用調査が容易であるため、企業としての信頼性が担保されやすいのです。
法人は資金管理や契約の面で有利
法人は会社名義での銀行口座やクレジットカードの開設が可能であり、事業資金と個人資金を明確に分離しやすくなります。これにより経理処理も整理しやすく、資金の流れが外部にもわかりやすくなります。一方、個人事業主は屋号付きの銀行口座を作成することも可能ですが、管理が徹底されないと事業と個人の口座を混在させがちで、信用情報が曖昧になってしまうことがあります。
こうした違いは、将来的に法人化を検討する際の判断材料にもなり得ます。信用面を重視する事業であれば、法人化によって取引の幅を広げる効果も期待できます。
個人事業主と法人経営のメリット・デメリット
個人事業主と法人経営者のどちらが自分に適しているかを判断するには、それぞれの制度における利点と課題を知ることが大切です。ここでは、両者の特徴を比較しながら、形態選択の参考となるポイントを整理します。
個人事業主のメリット・デメリット
個人事業主の大きなメリットは、開業や運営にかかるコストが低く、事業活動の自由度が高いことです。極端に言えば、税務署に開業届を提出するだけで事業が始められ、資本金も不要なため、初期費用の負担がほとんどありません。
個人事業主の事業所得は、事業収入から必要経費を差し引いて算出します。その後所得控除を差し引くことで課税所得が決まります。個人の手取りは、この所得から所得税、住民税、社会保険料などを支払った後の金額であり、収支の管理もシンプルです。
また、青色申告制度を利用すれば、最大65万円の特別控除が受けられ、所得が大きくなければ税率も低めに抑えられます。さらに、従業員が5人未満であれば社会保険の加入義務がないため、毎月の固定費も軽く、身軽な経営が可能です。
一方、デメリットとしては、社会的信用が法人に比べて低く見られやすいこともあり、大手企業や金融機関との取引で不利になることがあります。また、事業で損失や借金が生じた場合は、個人の全財産で責任を負う「無限責任」となるため、リスクの大きさは無視できません。帳簿作成や確定申告などの業務もすべて自力でこなす必要があり、事業が拡大するにつれて税負担や管理の負荷が重くなる傾向があります。
法人経営のメリット・デメリット
法人経営を選択する最大のメリットは、社会的信用度にあります。法人名義で契約できるため、金融機関からの融資や補助金の申請、取引先との契約締結の面で有利に働きます。法人格を持つことで、事業としての信頼性が外部からも評価されやすくなります。
税制面でも利点があります。法人税率は原則として所得800万円以下で15%、超過部分は23%と比較的低めに設定されており、所得が高くなった場合には個人よりも税負担が抑えられる可能性があります。また、役員報酬や福利厚生制度をうまく活用することで、節税や人材確保の手段としても利用できます。
一方で、法人化には設立費用や運営コストがかかります。設立時には登録免許税や定款認証費用が必要となり、維持するためには毎年の決算・税務申告、社会保険料の会社負担などの固定費が発生します。たとえ赤字でも法人住民税(均等割)は支払い義務があるため、利益が出ていない場合でも一定の支出が避けられません。
法人化を検討すべきタイミングと判断の目安
個人事業主として事業を継続している方にとって、法人化するかどうかは大きな転機になります。ここでは、法人化の検討に適したタイミングと、個人事業のまま継続すべきケースを解説します。
年間所得が800万円を超えると法人化の検討余地が出てくる
法人化の判断基準としてよく挙げられるのが、年間の所得水準です。一般的に、事業所得が800万円を超えるようになったタイミングが、法人化を検討すべき一つの目安とされています。これは、税制上の負担が個人と法人で大きく異なるためです。
個人事業主の所得税は超過累進課税が適用されます。課税所得が695万円を超え900万円までの部分には23%、900万円を超え1,800万円までの部分には33%の税率が適用されます。
一方、法人では800万円までの所得には15%、それを超える部分には23%の法人税率が適用されるため、全体的な税負担を抑えられる可能性があります。また、法人化すると代表者給与や福利厚生の導入が可能になり、節税策の幅も広がりますが、法人の場合には法人税と役員報酬に係る所得税の負担の両方があります。
さらに、取引先が増え信用力の向上が求められる場面、従業員の雇用を始めたい時期、あるいは事業リスクから個人資産を守りたいと考えたときも、法人化には大きなメリットがあります。社会的信用の向上や契約・融資面での優位性を得られるため、事業の拡大を見据える段階では検討の価値があります。
小規模事業や副業型ビジネスは個人事業のままでも適している
一方で、すべての事業が法人化に適しているわけではありません。事業の利益確保がまだ十分でなく、毎月の固定費に余裕がない場合は、法人化によるコスト増がかえって経営の負担となることもあります。法人には設立費用だけでなく、毎年の決算業務、法人住民税の均等割など、たとえ赤字でも発生する固定費があります。
副業として少額の収入を得ているケースや、一人で完結できるサービス型のビジネスを展開している場合など、将来的にも大きな組織化や拡大を見込んでいないのであれば、個人事業主のままで運営する方が適しているケースもあります。
このように、法人化は事業の発展に伴う戦略の一つであり、事業の規模・収益性・将来計画に応じて慎重に判断することが大切です。税理士や専門家に相談し、自分の事業に最適なタイミングでの法人化を検討しましょう。
個人事業主と法人経営の違いを理解して適切な選択を
個人事業主と法人経営者では、法的な立場や税制、責任、社会保険の取り扱いなど、あらゆる面で制度上の違いがあります。どちらの形態が適しているかは、事業規模や将来の計画、信用力の必要性などによって異なります。小規模で柔軟な運営を求めるなら個人事業主が向いており、拡大や対外的な信用を重視するなら法人化が選択肢になります。今回紹介した内容を参考に、自身の状況に合った形態を選び、持続的な事業成長を目指していきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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