• 更新日 : 2025年8月8日

電気工事士が個人事業主として独立するには?資格・費用・集客について解説

「いつかは自分の力で仕事をしたい」「技術を活かして独立したい」と考えている電気工事士の方は少なくありません。現場での経験を積む中で、自分の裁量で働きたい、収入を増やしたい、仕事の幅を広げたいという思いを抱くのは自然なことです。しかし、独立には資格や手続きだけでなく、資金計画や集客、保険、税務など、考えるべきことが多くあります。

本記事では、電気工事士が個人事業主として開業するために必要な準備や流れをステップごとに解説しながら、仕事の取り方、確定申告の基礎知識、保険の選び方、法人化の判断基準を解説します。

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目次

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電気工事士が個人事業主として独立開業するまでの流れ

電気工事士が個人で独立開業するには、資格だけでなく複数の法的手続きを踏む必要があります。開業準備から登録までの流れについて順を追って確認しておくことで、スムーズな独立につながりますので見ていきましょう。

ステップ1:資格を取得する

まず、電気工事士として独立するには、国家資格である第一種または第二種電気工事士免状の取得が必須です。どちらを取得するかで扱える工事の範囲が異なり、第二種は一般住宅などの低圧設備、第一種はビルや工場などの高圧設備にも対応できます。

ステップ2:電気工事業の登録を行う

電気工事業として工事を請け負うには、都道府県知事(または経済産業大臣)への登録申請が必要です。営業所が1県内なら都道府県知事、それ以上にまたがる場合は経済産業大臣が管轄します。

登録申請に必要な書類を整えて提出します。申請から許可までは通常数週間かかります。また、登録は5年ごとの更新制となっており、更新手続きを怠ると無効になります。

ステップ3:主任電気工事士を選任する

登録には、営業所ごとに主任電気工事士の配置が求められます。第一種電気工事士または第二種電気工事士で3年以上の電気工事会社などにおける実務経験があることが求められます。経験が不足する場合は、要件を満たすスタッフを雇う必要があります。

ステップ4:開業届を税務署へ提出する

資格取得後、個人事業主として活動するために、税務署へ「個人事業の開業届」を提出します。これは開業日から1か月以内が目安です。青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」も併せて提出しましょう。

第一種・第二種電気工事士の違いと業務範囲

電気工事士として独立する際には、所持する資格によって受注できる工事内容が大きく異なります。工事規模や対応可能な設備の違いを理解し、自分に合った業務展開を見据えることが重要です。

第二種電気工事士で対応できる範囲

第二種電気工事士は、主に一般住宅や小規模な商業施設など、受電電圧が600V以下の「一般用電気工作物」を対象とした工事が可能です。分電盤の設置や照明配線、コンセント工事などが該当し、個人事業主として独立した場合は一般住宅や小規模店舗、オフィスなどの仕事が中心となります。

第一種電気工事士が対応できる範囲

第一種電気工事士は、第二種で扱える範囲に加え、最大電力500kW未満で高圧受電する「自家用電気工作物」に関する工事も行えます。工場や大型施設、ビルの電気設備が対象となるため、より大規模な案件を受注できるようになります。

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個人事業主として独立するなら第一種電気工事士まで取得すべき?

個人事業主として電気工事業に独立する場合、第一種電気工事士の取得は必須ではありません。住宅や小規模店舗など、低圧設備を対象とした工事であれば第二種で十分対応でき、多くの独立開業者はまず第二種でスタートしています。ただし、将来的に工場やビルといった高圧受電設備を扱う案件に対応したい場合や、法人相手の大規模な仕事を受注したいと考えるなら、第一種を取得することで対応範囲が大きく広がります。また、電気工事業登録に必要な主任電気工事士としても、第一種を持っていればスムーズに登録要件を満たせます。したがって、独立当初は第二種で実績を積みつつ、必要に応じて第一種の取得を目指すのが現実的な選択肢といえるでしょう。

電気工事士としての独立開業に必要な費用と初期投資

電気工事士が個人事業主として独立するには、資格や登録だけでなく、実際に作業を行うための設備や環境整備のための初期投資が必要です。事業規模にもよりますが、余裕をもって500万円程度は見込んでおきたいところです。

作業車両と工具の購入費

大きな出費となるのが車両と工具類の導入です。軽バンや中古の作業車でも100万円前後、新車であれば150万円以上になる場合もあります。工具類は絶縁抵抗計・検電器・インパクトドライバーなどの電動工具、測定器、安全装備一式まで揃えると、最小限でも数十万円はかかるでしょう。

作業スペースと事務設備

資材や部品の保管用に倉庫や作業場を借りる場合、敷金・礼金・内装費が発生します。自宅開業であっても、パソコンやプリンター、事務机などの備品費が必要です。また、開業登録には手数料22,000円(都道府県により若干の差あり)、証明書発行費、名刺や広告印刷代などの細かい費用もかかります。

運転資金と資金調達

開業後すぐに利益が安定するとは限らないため、数ヶ月分の運転資金を確保しておくことが望まれます。資金が不足する場合は、日本政策金融公庫の創業融資や自治体の創業支援制度の活用も検討するとよいでしょう。車両や機材はレンタルやリースを使って費用を抑える選択肢もあります。無理のない資金計画と投資の見極めが、長く続けるための鍵になります。

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電気工事士として開業したら加入すべき保険

電気工事士として個人で開業する際は、工事中の事故や引き渡し後の不具合に備えた保険加入が欠かせません。万が一のトラブルに対応できるよう、業務内容に応じた保険を検討しておくことが大切です。

請負業者賠償責任保険とPL保険

現場作業には常に危険が伴うため、まずは「請負業者賠償責任保険」と「PL保険(生産物賠償責任保険)」の加入が推奨されます。請負業者賠償責任保険は、工事中に第三者に怪我をさせたり、隣家の設備を誤って破損したりした場合などの賠償リスクをカバーします。一方、PL保険は工事等を引き渡し後に発生した施工ミスや配線不良などに起因する事故に備え、火災や停電などによる損害を補償します。

労災保険の特別加入制度

従業員がいない個人事業主でも、労災保険の「特別加入制度」により自身の補償を確保できます。電気工事には高所作業や感電の危険があるため、万一の事故に備えて、療養補償や休業補償を受けられる体制を整えておくことが重要です。

その他の必要な保険

業務用車両を使用する場合は、事業用自動車保険への加入が必要です。また、事業全体を包括的にカバーする「事業総合賠償責任保険」、工事完了後の補修費に対応する「履行保証制度」も有効です。これらの保険は、都道府県の電気工事協会が団体制度として用意していることもあり、代理店や業界団体を通じて検討すると安心です。

電気工事士の確定申告と税務処理のポイント

電気工事士が個人事業主として活動する際には、業務特性に応じた税務処理や経費計上が必要です。工事業ならではの費用構造や申告方法を理解し、日々の記帳を適切に行うことで、無理のない節税と経営の安定につながります。

工事業に合った青色申告の活用

電気工事士の場合、工事規模が小さくても設備投資や材料費が多いため、青色申告による65万円控除が非常に有効です。配線材やスイッチ、分電盤といった材料費は現場ごとに発生しやすく、記帳が煩雑になりがちです。複式簿記により損益の把握が明確になるため、業績の見える化にも役立ちます。また、赤字が出た場合も翌年以降に繰り越して控除できるなど、工事件数が不安定になりがちな時期にも備えられます。

経費計上における注意点と実務例

電気工事士が経費として計上しやすいのは、工具類(ドライバー・検電器・テスター等)や消耗品車両費、ガソリン代、現場への交通費、労災やPL保険料などです。たとえば、1個10万円未満の工具は「消耗品費」として即時経費化が可能ですが、高額な測定器などは「減価償却資産」として処理し、「減価償却費」を費用として計上します。また、自宅を事務所兼作業場としている場合、家賃・水道光熱費の一部を家事按分により経費計上することも認められます。

工事業ならではの請負収入と帳簿管理

電気工事士の収入は「請負契約」が多く、案件ごとに入金時期や支払いサイトが異なる場合があります。一般には工事進行基準でなく、原則として発生主義で収入計上されます。材料費と人件費を明確に区分し、現場単位での収支管理ができるよう帳簿を整えることが、資金繰りの安定にも直結します。

電気工事士の集客方法

電気工事士として独立した後、安定した受注を確保するには、さまざまな集客手段を組み合わせて実践していくことが重要です。信頼と実績を積み上げながら、地域に根ざした営業基盤を築くことが求められます。

紹介による案件獲得

独立当初は、以前勤めていた会社や先輩、元請業者、知人などからの紹介による仕事の受注が基本となります。地元の工務店・リフォーム業者・設備会社・不動産管理会社との関係づくりは、有力な受注源となる場合が多く、長期的な取引に発展することもあります。まずは信頼関係のある業者からの下請け業務を着実にこなして、実績と信用を積むことが第一歩です。

マッチングサイトで新規顧客を開拓

最近では、電気工事職人と発注者をつなぐマッチングサービスの活用も一般的になってきました。代表的なサービスには「ツクリンク」「CraftBank」「助太刀」「デンキング」「請負市場」「電工広場」「4x4BOX」などがあります。これらのサイトに登録すれば、案件を探し、自己PRページを設けて受注につなげることが可能です。現場の条件や報酬が明示されているため、効率的な営業活動を行えます。

ホームページ・SNS・Googleの活用

一般顧客向けの集客では、Webでの情報発信が欠かせません。ホームページに施工事例や料金目安、対応エリアを掲載することで、信頼感を高められます。SNSでは、施工中の様子や完成後のビフォーアフター写真を定期的に投稿し、フォロワーとの信頼関係を築いておくと、口コミ紹介にもつながります。また、Googleビジネスプロフィールへの登録で「電気工事 地域名」での検索に表示されやすくなり、地域住民からの問い合わせが増える可能性があります。

協会・組合での人脈づくり

地域の電気工事業協同組合や一人親方組合に加入することで、横のつながりができ、情報交換や受注のチャンスが広がります。協同組合では保険や共済制度の利用も可能で、仕事面・生活面の支えにもなります。

法人化と個人事業主の違い【メリット・デメリット比較】

電気工事士として個人事業主でスタートし、事業が軌道に乗ると、法人化を検討するタイミングが訪れることがあります。法人化には信用力や税務上の利点もありますが、費用や手続き面での負担もあるため、メリットとデメリットをよく理解することが重要です。

電気工事士として法人化するメリット

法人化により、会社名義で取引を行えるようになるため、社会的信用が高まり、公共工事や大口案件、金融機関からの融資などで有利になる傾向があります。税制面では、法人税が概ね一定(資本金1億円以下の中小法人で15%、23.2%など)である一方、個人事業主は累進課税のため、所得が増えるほど税率も高くなります。そのため、一定以上の利益が出ると節税効果が期待できます。また、役員報酬や退職金制度、欠損金の10年間繰越など法人ならではの制度を活用できるのも強みです。社会保険の加入義務があるため、厚生年金・健康保険の保障内容も国民年金より手厚くなります。

電気工事士として法人化するデメリット

一方で、法人化には設立時の費用(株式会社は約22〜24万円、合同会社は約10万円)や、毎年かかる地方税の均等割(約7万円)など維持費もかかります。また、代表者本人の社会保険料事業主負担も発生し、会計処理や税務申告も複雑になるため、税理士に依頼する費用が追加で必要になるケースが多くなります。さらに、法人の利益は個人の資産と切り離されるため、自由に使うには役員報酬や配当という形式を取る必要があります。

個人事業主の特徴と法人化の判断基準

個人事業主は、開業・廃業の手続きが簡単で費用も抑えられるうえ、所得が低い間は税負担も少なく済みます。自由度の高さや経理の簡易さは魅力ですが、事業上の債務に無限責任を負う点、信用力に限界がある点が課題です。法人化の判断は、事業所得が年800万円を超えるあたりを目安とする意見もありますが、業種や経費のかかり方により異なるため、税理士等の専門家と相談しながら検討することをおすすめします。まずは個人事業として実績を積み、必要に応じて法人化へと進むのが現実的です。

電気工事士としての独立・開業を成功させよう

電気工事士が個人事業主として独立開業するには、資格取得、開業届の提出、電気工事業登録などの段階を踏む必要があります。第二種資格で始める方が多いですが、高圧工事や法人案件を見据えるなら第一種取得も視野に入れると良いでしょう。必要な資格を持っていれば、開業届や電気工事業登録を経て、個人事業主としてスタートできます。初期投資や手続きは確かにありますが、段階を踏めば決して難しくありません。小さな現場から始め、信頼と実績を積み上げることで仕事は広がります。独立は不安もありますが、自由とやりがいのある働き方を実現する第一歩です。事業を成長させたいなら法人化も視野に入れながら、まずは動き出してみましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例

データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。

ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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