• 更新日 : 2025年1月28日

個人事業主が負担する従業員の社会保険料はいくら?経費にできる?

個人事業主が従業員を雇う場合、従業員は社会保険に加入する必要があるため、個人事業主には社会保険料の支払い義務が生じます。

社会保険には雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険・介護保険の5つが存在し、状況によってはすべての社会保険料の支払いが必要です。

本記事では「個人事業主が従業員を雇う際にどれくらいの社会保険料を支払う必要があるか」「支払った社会保険料は経費にできるか」などについて解説します。

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個人事業主が従業員を雇う時の社会保険

個人事業主が従業員を雇う場合、従業員は社会保険に加入します。どのような社会保険に加入するかは、個人事業主が雇う従業員の人数や、従業員の所定労働時間などによって異なります。社会保険の種類・概要・それぞれの主な加入条件は以下の通りです。

社会保険の種類概要主な加入条件
雇用保険仕事を失った労働者に対して必要な給付を行う制度
  • 個人事業主に雇用されている
  • 週の所定労働時間が20時間以上である
  • 31日以上継続して雇用される見込みがある
労災保険仕事中に負傷した労働者への給付を行う制度
  • 個人事業主に雇用されている
健康保険病気やケガによって生じる医療費の負担を軽減する制度
  • 従業員数が5人以上の個人事業主に雇用されている
厚生年金保険老後の生活を支援するための公的年金制度
  • 従業員数が5人以上の個人事業主に雇用されている
介護保険介護が必要な方が、少ない負担で介護サービスを受けられる制度
  • 従業員数が5人以上の個人事業主に雇用されている
  • 年齢が40歳以上である

従業員を1人雇うとき(雇用保険・労災保険)

個人事業主が従業員を1人でも雇うのであれば、雇用保険や労災保険への加入について考慮する必要があります。

雇用保険については、従業員が以下の2つの要件を満たす場合、原則として雇用保険の加入義務が生じます。

  • 週の所定労働時間が20時間以上である
  • 31日間以上継続して雇用される見込みがある

従業員が上記2つの要件を満たす場合は、パート・アルバイトなどの雇用形態や個人事業主・従業員の希望に関わらず、雇用保険に加入しなければいけません。従業員が雇用保険に加入する場合、従業員と個人事業主から雇用保険料が徴収されます。

また、労災保険については、所定労働時間などに関わらず個人事業主に雇用される従業員は原則として加入義務があります。従業員を雇っている個人事業主は、労災保険料の全額を支払わなければいけません。

従業員を5人以上雇うとき(健康保険・厚生年金保険・介護保険)

個人事業主が従業員を5人以上雇う場合、健康保険・厚生年金保険・介護保険への加入について考慮する必要があります。

個人事業主が従業員を5人以上雇っており、かつ従業員が以下のどちらかの条件を満たす場合は、健康保険と厚生年金保険への加入が必要です。

  • 従業員が正社員である
  • 従業員がパート・アルバイトで、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上である

なお、従業員を51人以上雇っている場合、パート・アルバイトであっても以下の条件をすべて満たすのであれば健康保険と厚生年金保険への加入対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上である
  • 給与が月額88,000円以上である
  • 2ヶ月を超えて働く見込みがある
  • 学生でない

また、介護保険については、健康保険に加入している40歳以上の従業員が加入します。

健康保険料(介護保険に加入する場合は介護保険料の金額も含む)と厚生年金保険料は、毎月の給与や賞与の額によって定められる「標準報酬月額」や「標準賞与額」を用いて計算され、個人事業主と従業員が折半して負担する仕組みです。

従業員が5人未満でも社会保険の加入はできる

個人事業主が5人未満の従業員しか雇用していなくても、任意適用を行っていれば従業員は健康保険や厚生年金保険に加入します。

任意適用とは、本来健康保険や厚生年金保険の適用を受けない事業所について、厚生労働大臣の認可を得て適用を受けられるようにすることです。

任意適用を行うには、従業員の半数以上が健康保険や厚生年金保険の適用を受ける旨に同意したうえで、厚生労働大臣から認可を得る必要があります。なお、従業員の4分の3以上が同意して厚生労働大臣の認可を得ていれば、任意適用からの脱退も可能です。

健康保険・厚生年金保険の任意適用を行うことで、従業員は病気・ケガ・老後の生活に関する不安を解消できるため、信頼感を持ってもらいやすくなります。一方で、任意適用を行うことで社会保険料の負担が増える点はデメリットであるといえます。

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個人事業主自身は社会保険に加入できない

社会保険のうち、雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険については給与所得者を対象にした制度であるため、原則として個人事業主自身は加入できません。

個人事業主が医療費の負担を軽くしたり、老後に年金を利用したりするには、健康保険や厚生年金保険とは別の制度を活用する必要があります。

個人事業主は、国民健康保険・国民年金に加入

国民健康保険は、健康保険をはじめとした他の公的医療制度に加入していないすべての人を対象にした制度です。健康保険と同様に、保険料を納める代わりに医療費の負担を減らせます。

また、国民年金は日本に居住している20歳以上60歳未満の人が全員加入する制度なので、個人事業主は厚生年金保険の代わりに国民年金への加入が必要です。個人事業主は厚生年金保険に頼らず、国民年金のみで年金の積み立てを行います。

個人事業主が加入できる国民健康保険の種類

国民健康保険には、都道府県と市町村が運営の主体である市町村国保と、業種・職種ごとに組織されている国民健康保険組合の2種類があります。

市町村国保は保険料が所得によって異なりますが、国民健康保険組合の場合は所得に関わらず均一の保険料を定めている場合があります。

所得が高いのであれば、国民健康保険組合に加入すると保険料を抑えられる可能性があるため、一度該当する組合の保険料を調べてみるのがおすすめです。

特別加入する場合を除いて個人事業主は労働保険に加入できない

労働保険は雇用保険と労災保険の2つを指す言葉で、原則として事業主を対象にした制度ではありません。

しかし、労災保険に関しては特別加入と呼ばれる制度を利用して加入できる可能性があります。特別加入とは、従業員を使用しない個人事業主をはじめ、労働者でない人が任意で労災保険に加入できる制度です。

従業員を使用しない個人事業主であれば、原則として業種を問わず特別加入が可能です。しかし、労災法で定められている以下の業種については、各業種に関わる特別加入団体を通じて加入します。

  • 個人タクシー業者、個人貨物運送業者など
  • 特定農作業従事者
  • 建設業の一人親方等
  • 指定農業機械作業従事者
  • 漁船による自営漁業者
  • 国・地方等が実施する訓練従事者
  • 林業の一人親方等
  • 家内労働者等
  • 医薬品の配置販売業者
  • 労働組合等の一人専従役員
  • 再生資源取扱業者
  • 介護作業従事者
  • 船員法第1条規定の船員
  • 家事支援従事者
  • 柔道整復師
  • 芸能関係作業従事者
  • 創業支援等措置に基づく高年齢者
  • アニメーション制作作業従事者
  • あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師
  • ITフリーランス
  • 歯科技工士

※「令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました|厚生労働省」を参考に記載

個人事業主が負担する従業員の社会保険料はいくら?

ここからは、個人事業主が従業員を雇用する際に社会保険料がどれくらいかかるのか、2つの例を挙げて紹介します。

1.30代の従業員を毎月20万円で雇っている場合

まず、以下の例において、個人事業主が支払う年間の社会保険料を考えてみます。

  • 東京都内で飲食業を営んでいる
  • 30代の従業員を1人雇用しており、協会けんぽに加入している
  • 従業員に支払っている毎月の給与額と、標準報酬月額はどちらも20万円
  • 年度は令和6年度を想定

前提として、30代の従業員からは介護保険料を徴収しないため、今回の例では雇用保険料・労災保険料・健康保険料・厚生年金保険料の4つを計算します。

社会保険料のうち、雇用保険と労災保険の2つは労働保険料として、年間の額をまとめて計算します。事業主が負担する年間の労働保険料について、計算式は以下の通りです。

(年間の賃金総額)×{(労働保険料率)+(雇用保険料率(事業主負担分))}

今回の例の場合、年間の賃金総額は20万円×12ヶ月=240万円です。

労働保険料率と雇用保険料率は業種によって異なりますが、飲食業の場合は労働保険料率は3/1,000、雇用保険料率(事業主負担分)は9.5/1,000です。そのため、事業主が負担する年間の労働保険料は以下の式で求められます。

240万円×(3/1,000+9.5/1,000)=30,000円

続いては健康保険料と厚生年金保険料です。健康保険料と厚生年金保険料は個人事業主と従業員で折半して毎月徴収され、徴収額は従業員の標準報酬月額に応じてあらかじめ決められています。

従業員の標準報酬月額が20万円の場合、個人事業主が負担する健康保険料は9,980円、厚生年金保険料は18,300円です。

よって、個人事業主が1年間で支払う健康保険料と厚生年金保険料はそれぞれ以下のようになります。

健康保険料:9,980円×12ヶ月=119,760円

厚生年金保険料:18,300円×12ヶ月=219,600円

最後に、労働保険料・健康保険料・厚生年金保険料を合計すると、1年間で支払う社会保険料は以下のようになります。

30,000円+119,760円+219,600円=369,360円

2.40代の従業員を毎月20万円で雇っている場合

もう一つの例として、以下の場合における年間の社会保険料を考えてみます。

  • 東京都内で飲食業を営んでいる
  • 40代の従業員を1人雇用しており、協会けんぽに加入している
  • 従業員に支払っている毎月の給与額と、標準報酬月額はどちらも20万円
  • 年度は令和6年度を想定

先ほどの例と異なる点は、従業員の年齢のみです。今回は従業員が40代なので、介護保険の加入義務があります。そのため、先ほど計算した金額に介護保険料の加算が必要です。

介護保険料は健康保険料と一体化して徴収し、両者の合計額は従業員の標準報酬月額によってあらかじめ決められています。従業員の標準報酬月額が20万円の場合、個人事業主が負担する健康保険料と介護保険料の合計額は11,580円です。

よって、個人事業主が1年間で支払う健康保険料と介護保険料の合計は以下のようになります。

健康保険料:11,580円×12ヶ月=138,960円

労働保険料の額と厚生年金保険料の額は、それぞれ1つ目の例と同じで30,000円、219,600円です。よって、今回の例における年間の社会保険料は以下の金額になります。

30,000円+138,960円+219,600円=388,560円
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個人事業主が負担した従業員の社会保険料は経費にできる?

従業員の社会保険料について、個人事業主が負担した場合は経費に計上できます。社会保険料の支払いが発生した際は、いずれの社会保険料も法定福利費として仕訳を切りましょう。

例えば、一ヶ月に支払う社会保険料として2万円の負担が発生し、翌月に支払うという場合は以下のように仕訳を行います。

借方金額貸方金額
法定福利費20,000未払費用20,000

なお、国民健康保険や国民年金など、個人事業主自身が支払う社会保険料は経費として計上できないので注意しましょう。

個人事業主も従業員の年末調整が必要?

個人事業主が従業員を雇っている場合は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員について年末調整が必要です。

雇用している従業員については12月下旬を目途に1年間の所得税を計算し、原則として翌年の1月10日までに税務署へ納税しなければいけません。納税後、1月末までに従業員へ源泉徴収票を交付しましょう。

年末調整を行うにあたって、従業員にいくつか申請書を記載してもらう必要があります。具体的には以下の通りです。

各申請書は年末調整が間に合うように記載してもらう必要があります。11月下旬までに申請書を取り寄せて、記載を依頼しておくとスムーズです。

なお、パート・アルバイトの従業員であっても、「給与所得者の扶養控除等申告書」が提出されていれば年末調整が必要なので注意しましょう。

個人事業主自身は確定申告で申告する

個人事業主は雇っている従業員について年末調整をする必要がありますが、個人事業主自身は年末調整の対象外です。個人事業主は毎年3月15日までに提出する確定申告にて1年間の所得を申告し、所得税を納税します。

なお、個人事業主自身が別の会社に勤めていて給与所得を得ている場合は、勤め先の会社で年末調整を行う必要があります。年末調整を行う日までに各種申告書を忘れずに提出しましょう。

個人事業主が法人化すると社会保険料はどう変わる?

個人事業主が法人化すると、個人事業主自身は健康保険・厚生年金保険への加入義務が生じます(個人事業主が40歳以上の場合は介護保険にも加入します)。

法人化すると、個人事業主は国民健康保険から健康保険への切り替えが必要です。国民健康保険は所得によって保険料が決まりますが、健康保険は役員報酬によって保険料が決まります。法人化する際に自身の役員報酬を低く設定すれば、健康保険の保険料も低くできます。

年金に関しては、国民年金に加えて厚生年金保険料に関する支払いが発生するため、単純に費用負担が増加するので注意が必要です。

個人事業主が法人化すると、健康保険や厚生年金保険の加入によって社会保障が手厚くなるほか、税負担を抑えられる可能性がある点もメリットです。

個人事業主は所得が高いほど税率も高くなりますが、法人の場合は基本的に一律の税率が適用されます。目安として年間所得が700~800万円に達している場合、法人化すると税負担が低くなる可能性があります。

しかし、年間所得700~800万円のラインはあくまで一つの目安であり、社会保険料や個人の所得税などによって法人化するほうが得なのかが変わる点は頭に入れておきましょう。

一方で、法人化することで法人税申告書や決算書の作成が義務づけられるため、事務作業が煩雑になるというデメリットもあります。法人化を検討する際は、事務作業にかけるリソースが確保できるかどうかを慎重に考えましょう。

従業員を雇う際は社会保険料の支払いに注意しよう

個人事業主が従業員を雇う際は、従業員が加入する社会保険について、事業主負担分の社会保険料を支払う必要があります。

雇用する従業員の人数や所定労働時間などによって、加入が義務づけられる社会保険が異なるため、どれくらいの負担になるかをあらかじめ把握しておきましょう。

また、従業員が加入している社会保険に関しては、個人事業主が負担した保険料は経費に計上可能です。一方で、個人事業主自身が加入している社会保険の保険料は経費に計上できないので、両者を混同しないことも心がけましょう。

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