• 更新日 : 2025年10月21日

個人事業主のリフォーム費用は経費になる?控除・確定申告・仕訳を解説

個人事業主が自宅を事務所として利用している場合、リフォームにかかる費用をどのように経費処理すべきかは、確定申告や節税の観点から見ても重要なテーマです。

本記事では、自宅兼事務所のリフォーム費用が必要経費として認められる条件や、「修繕費」と「資本的支出」の違い、住宅ローン控除やリフォーム減税制度の適用可否などを解説します。

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個人事業主の自宅兼事務所のリフォーム費用は経費として計上できる?

自宅の一部を仕事場として活用している個人事業主にとって、そのスペースをリフォームする場合に費用を経費として扱えるかどうかは重要です。ここでは、どのような条件で経費計上が可能なのか、また法人化しても変わらない点などを解説します。

業務用スペースの費用のみが必要経費として認められる

自宅兼事務所のリフォーム費用は、事業で使用している部分に限って必要経費等として計上できます。つまり、自宅のすべてではなく、事業活動に直接利用しているスペースが対象です。

自宅の20%を事務所スペースとして利用している場合、自宅全体のリフォーム工事にかかった費用のうち20%相当額のみが経費算入の対象になります。これは「按分(あんぶん)」と呼ばれる考え方で、事業と私生活を明確に区別するために必要です。

按分(基準となる数量に比例した割合で経費を割り振ること)の数値基準は法律に明記されていませんが、所得税法施行令や国税庁通達に基づき、その経費について「面積比」や「使用時間比率」「距離按分」など合理的な基準で区分割合を求めます。工事内容が事業用と居住用にまたがる場合は、見積書などで部位別に分けて記載し、証拠として残しておくことが望ましいです。

このような取り扱いは、所得税法第37条における「必要経費」に基づき、同第45条等に規定されています。必要経費として認められるためには、支出が「事業の遂行上、直接必要である」ことが条件であり、私的利用に関する支出は対象外です。

法人化しても全額経費にはならない

個人事業主が法人化しても、自宅兼事務所のリフォーム費用すべてを経費にできるわけではありません。法人名義で建物を所有している場合など特殊な事情を除けば、法人であっても事業使用部分に限定して費用を按分し、経費計上する点は変わりません。

これは、法人税法上においても「業務関連性のある支出」でなければ損金(法人にとっての経費)として認められないからです。法人の役員が自宅を業務利用する場合も、使用部分に応じた家賃相当額を支給し、法人側で経費にするなどの対応が必要です。

さらに、リフォームのために住宅ローンを利用した場合には、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」との関係も考慮が必要です。住宅ローン控除は、居住用部分に対応する借入金残高に対して適用されます。したがって、事業経費に計上すると、その部分は住宅ローン控除の対象外となるため、どちらが節税効果が高いかを検討し、適切に選択する必要があります。ただし、リフォームにおける床面積が一定面積以上で、かつ、居住部分が全体の1/2以上でないと住宅ローン控除の適用はできません。

住宅ローン控除は、所得税からの直接控除となるため、減税効果が期待できます。したがって、リフォームの資金調達手段と税務上の取り扱いは、慎重に検討すべきといえます。

修繕費と資本的支出では税務上の扱いはどう違う?

リフォーム費用がその年の経費になるかどうかは、「修繕費」と「資本的支出」のいずれに該当するかで変わります。ここでは、両者の違いと判断基準、対応方法を解説します。

修繕費はその年の経費として一括処理できる

修繕費とは、固定資産の通常の維持管理や原状回復を目的とした支出のことで、支出した年に全額を経費として計上できます。これは、通常の事業活動における消耗や損耗への対応として行われるものであり、税法上も「必要経費」として認められやすい分類です。

たとえば、屋根の雨漏り補修、トイレの水漏れ修理、エアコンの部品交換など、機能回復や老朽化対応といった目的で行う小規模な工事は修繕費に該当します。これらの支出は事業継続に不可欠であると判断され、確定申告でもその年度の必要経費として処理することが可能です。

また、修繕費は少額な工事にも適用しやすいため、支出額が比較的小さい場合や、リフォームの目的が明確に「現状維持」である場合は、税務署からも指摘を受けにくいとされています。

資本的支出は減価償却により複数年で費用化する

資本的支出とは、固定資産の価値を高めたり、使用可能期間(耐用年数)を延ばしたりすることを目的とした支出です。これに該当するリフォーム費用は、固定資産として資産計上し、税法で定められた耐用年数に従って毎年少しずつ「減価償却」により費用化していきます。

たとえば、建物の内装を全面的にリニューアルする工事や、新たに防音設備や非常用階段を設置するようなケースでは、資本的支出とみなされます。こうした工事は、事業用資産の価値や機能性が明確に向上するため、新たな固定資産の取得や資本的支出となり、単年度の経費としては認められません。

資本的支出に分類された場合、建物であれば木造住宅なら22年・鉄筋住宅なら47年などの耐用年数に応じた減価償却費として処理され、年間で分割して計上します。これは節税効果が年単位で分散することを意味します。

修繕費として扱える基準

固定資産の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりするかが不明である場合、修繕費と資本的支出どちらに分類されるかの判断は、国税庁で以下のような基準を設けています。

  • 周期的な修理・改良等
    おおむね3年以内の周期で繰り返される修理や交換は修繕費とみなされやすい。例:定期的な空調設備のフィルター交換。
  • 少額の修理
    1件あたりの工事費用が20万円未満である場合。設備交換であっても資本的支出扱いを回避できる。
  • 判断が難しい支出
    支出金額が60万円未満、または前期末における取得価額の10%以下である場合は、修繕費処理が認められる可能性が高い。

ただし、明らかに価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりする支出については資本的支出として扱われます。また、判断の根拠となる書類や工事内容を証明する資料の整備も必要です。

資本的支出でも即時経費化できる特例とは

資本的支出と判断された場合でも、少額減価償却資産の特例を活用することで、取得価額が30万円未満である設備や備品は、その年の経費として処理可能です(年間上限300万円まで)。たとえば、リフォームに伴い新しいエアコンや給湯器を導入した場合、その単価が30万円未満であれば全額を当年の必要経費にできます。

この制度は青色申告をしている中小事業者に限定されますが、令和7年度も引き続き適用可能です。科目区分や償却資産台帳への記載、確定申告時の減価償却明細書添付が必要になるため、制度を活用する際には正確な手続きが求められます。ただし、別紙を添付しなくても、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の摘要欄に「措法28の2適用」等と記載し、かつ、その固定資産の取得について明細を保管することにより適用を受けることができます。

経費計上には証拠書類の保管が不可欠

修繕費・資本的支出のいずれに該当する場合でも、工事内容や金額、用途を明確に説明できるようにしておくことが肝要です。契約書、見積書、請求書、施工前後の写真などを整理しておけば、税務署からの問い合わせや調査時にもスムーズに対応できます。

高額な工事については、「本当に修繕目的だったのか?」といった点が争点になりやすいため、原状回復であることを示す証拠の準備は必須です。

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リフォームに関する税制優遇や控除は?

事業経費としてリフォーム費用を処理する方法以外にも、個人事業主が活用できる税制優遇措置は存在します。ここでは、リフォームに関する代表的な減税制度と、活用方法について説明します。

住宅リフォーム減税による所得税控除

リフォームに対する代表的な優遇制度の一つが、「住宅リフォーム減税(リフォーム促進税制)」です。これは、耐震・省エネ・バリアフリーなどの特定の改修工事を行った場合、工事費用の一部が所得税から控除される制度です。

たとえば、バリアフリー改修を行った場合には、最大200万円の工事費用の10%(上限20万円)が所得税から直接控除されます。また、省エネや耐震改修については、250万円までの工事費用に対し、同様に10%(最大25万円)まで控除されます。

対象となる工事は、国が定める技術基準や施工基準を満たしている必要があります。個人事業主であっても、自宅として使用している部分に該当する工事についてはこの控除が受けられ、按分処理の対象とすることで事業用・居住用の双方で節税効果が得られます。

2025年12月31日までのリフォームに適用されることが現行制度で定められており、リフォーム計画を立てる際はこの期間内に工事を完了させるようスケジュール管理することが大切です。

リフォームローンと住宅ローン控除の適用

もう一つの大きな減税制度が、先述した「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」です。これは、マイホームの新築や取得だけでなく、一定の条件を満たすリフォームや増改築にも適用されます。

たとえば、リフォーム資金として住宅ローンを利用し、そのローンが一定の条件(償還期間10年以上、返済実績ありなど)を満たす場合、年末時点の借入残高の0.7%相当額が所得税から控除されます。控除期間は10年間で、1年あたりの控除額の上限は14万円、合計で最大140万円の減税効果が見込めます。

ただし、注意点として、事業用のスペースにかかる借入金は住宅ローン控除の対象外です。自宅兼事務所であれば、居住用部分についてのみ控除が適用され、事業用部分については按分除外されます。そのため、借入金の用途や対象部分を明確に区別しておくことが必要です。

参考:増改築等をし令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

リフォーム関連の減税制度を利用する際の確定申告手続きは?

リフォームに関する各種減税制度を利用するためには、確定申告時に正しい手続きを踏む必要があります。要件を満たすリフォームを行っただけでは自動的に税金が軽減されるわけではなく、所定の書類を整えたうえで申告しなければ控除を受けることはできません。

必要な書類と取得方法

控除の対象となるリフォーム工事(例:耐震、省エネ、バリアフリー改修など)を行った場合、まずはその工事が適用条件を満たしていることを証明する書類が必要です。「増改築等工事証明書」や「住宅耐震改修証明書」などを、施工業者や自治体から発行してもらい、確定申告書に添付して提出します。

また、工事費の領収書や見積書、補助金を受けた場合の交付決定通知書なども併せて提出が求められます。加えて、「住宅特定改修特別税額控除の計算明細書」も所定の形式で作成する必要があります。

所得税と固定資産税の申告先の違い

所得税の控除は国税庁への確定申告で対応しますが、固定資産税の減税(たとえばバリアフリー改修による軽減措置など)は、市区町村に対する別途の申請手続きが必要です。それぞれの制度で申請先が異なるため、提出先や期限を間違えないように注意しましょう。

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インボイス制度とリフォーム経費の仕訳・管理の注意点

令和5年(2023年)10月に開始されたインボイス制度は、個人事業主にとってリフォーム費用の処理にも影響を与えています。ここでは、インボイス対応の仕入税額控除や帳簿上の記録方法について整理します。

インボイスがないと消費税の仕入税額控除が受けられない

インボイス制度のもとでは、リフォーム業者が「適格請求書発行事業者」でなければ、支払った消費税相当額について仕入税額控除ができません。これは課税事業者の個人事業主にとって大きな影響を与えます。

課税事業者が工事代金110万円(うち消費税10万円)を支払った場合、インボイスがあればその10万円を税額から控除できますが、インボイスがなければ控除対象外となります。結果的に実質的な負担が増えることになります。

リフォームを依頼する際には、業者がインボイス発行事業者であるかを確認し、適格請求書(インボイス)を発行してもらいましょう。適格請求書には、登録番号・税率ごとの消費税額・取引内容などの明記が必要です。

帳簿の保存と記載要件が強化されている

インボイス制度により、帳簿の記載要件も厳格化されています。たとえインボイスを保存していても、帳簿(仕訳帳及び総勘定元帳等)に必要事項が正しく記載されていない場合、仕入税額控除が否認される可能性があります。

帳簿に記載すべき主な内容は以下のとおりです。

  • 取引年月日
  • 相手方の氏名または名称
  • 取引内容(リフォーム内容や対象部分など)
  • 税率ごとの金額と消費税額
  • インボイスの登録番号(請求書に記載されているもの)

複数税率(10%と軽減8%)が混在する場合や、課税対象外の項目(例:補助金など)が含まれる場合は、仕訳の科目分けや注記も明確にしておく必要があります。ただし、リフォームにおいては基本的に10%のみの税率となります。

仕訳処理のポイントと注意点

リフォーム費用を経費計上する際は、帳簿上の仕訳も適切に行う必要があります。修繕費として経費処理する場合の仕訳(税抜経理方式)は以下のようになります。

(例)インボイス対応業者からの請求:税込110万円、うち消費税10万円の場合

借 方貸 方摘要
修繕費1,000,000円普通預金1,100,000円事務室の業務用空調機の入れ替え工事 〇〇(株)
仮払消費税100,000円

インボイス非対応業者からの仕入れの場合、経過措置が設けられており、2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%、2029年9月30日までは同50%が仕入税額控除の対象となります。しかし経過措置終了後は仕入税額控除はできなくなり、支出金額を全額修繕費として処理することになります。

さらに、補助金を受けている場合には、その額を「雑収入」として計上し、総額処理が必要となる点にも注意が必要です。

リフォーム費用の処理と税制活用を正しく理解しよう

個人事業主がリフォーム費用を経費に計上する場合、自宅兼事務所であれば、事業利用部分に限って按分処理し、修繕費か資本的支出かで経費化の時期も変わります。さらに、住宅ローン控除やリフォーム減税などの制度を併用すれば、税負担の軽減も可能です。インボイス制度や帳簿管理のルールも加わった現在、適切な処理と書類整備がより重要になっています。リフォームと税務の両面から、制度を賢く活用していきましょう。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様

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